私の思いと技術的覚え書き

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ブガッティ Type35のこと

2016-10-13 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 ブガッティと聞いてヴェィロンとか思い浮かべるのが普通なんだろうが、Type35がまず思い浮かぶ。このクルマは今から90年も前の1924年に登場したレーシングカーだ。通常ワークス製造のレーシングカーだと、ワークスにせよエンジンの供給を受けたプライベーターにせよ、複数参戦で予備車も入れて、せいぜい5、6台が製造台数となる。しかし、このType35は、初代が96台、Type35Aが139台(以下B、Cなどありそれぞれ違うが、数十台の範囲)と、通常想定されるレーシングカーとは製造台数が段違いに多い。それは、ブガッティ自信がワークス参戦する意志はなく、レーシングカーを販売して商売するというものだったかからの様だ。

 同車のことは、中村良夫氏の「レーシングエンジンの過去、現在、未来」でも触れているが、その要旨は以下の如くだ。『エンジンは直列8気筒SOHC・2Lだが、驚くべき高出力を発揮しているものでないが、非常に使い易い出力特性(つまり低中速を含めトルクバンドが広い)を持っていた。そして、優れたハンドリング特性とロードホイールディングによって(つまりコーナーリング性能が高い)、着実に勝利を勝ち取るという思考で一貫していた。このクルマは、1926年に577勝、1927年には806勝という輝かしい活躍の記録を残しているのだ。』

 しかし、本田コレクション(茂木サーキット内)にて実物を見たが、90年前のクルマとは思えないクリーンでシンプルなメカニズムには目を見張る。具体的に記せば、以下の様なところに感心した。
・サス・スプリングは多層枚リーフスプリングであるが、リーフどうしが擦れ合うために、それ自体がフリクションとしてのダンパー作用を持っている(故にバネレートを低めても乗り心地が悪い)が、それだけではダンピングは不足する。そこで、筒型ダンパー(オイル流動式)がなかった時代でも、摩擦板式ダンパーにリンクされており、速やかなスプリングの反力収束を行っている。
・ブレーキだが、現代の油圧式ではなく、自転車と同じくワイヤー式であり、これで4輪を制動する訳だが、なかなか制動力のバランスを取るのは難しい点もあっただろう。
・同じくブレーキはドラム式だが、ホイールと一体鋳造で作られている。
・インストルメントの中央左寄りに、短いレバーが上下に一定量ずつ動くようにノッチが付けられているが、どうやら点火進角を調整するものの様だ。ノック音やパワー感を感じ取り、手動操作していたのであろう。
・同じくインストルメント中央に茶色っぽいユニットが見えるが、何であるのか不明だ。しかし、色からしてベークライト樹脂だと思えること。そして、8本のパイプかコードの様なものがエンジンルーム方向へ伸びていることを合わせると、コイルおよびデストリビューターかもしれぬと想像している。
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