私の思いと技術的覚え書き

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エアバスA380のエンジン故障のこと

2010-11-26 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 先日、カンタス航空(豪)の最新鋭機エアバスA380が飛行中にエンジン1機が破損停止し、緊急着陸するという出来事がありました。エンジン故障の原因は明らかにされていませんが、ロールスロイス(クルマのRR社と異なりRR Plc 社)のエンジン設計もしくは製造に問題がある様です。このため、RR
Plc 社では、A380に搭載済みの一部エンジンを、無償交換を行うということが伝えられています。
 今回のA380のエンジン破損の詳しいことは発表されていませんが、少ない写真や比較的大きな破損部品が落下していることから、ジェットエンジンの心臓部とも云えるタービンブレードが何らかの原因で破損し、エンジンバレルとエンジンアウターカバーを突き破り破損せしめたものの様に想像します。
 ジェットエンジンの基本構造は、それ程に複雑なものではなく、エンジン前方から空気を吸い込み。エンジン前半部にある多段のコンプレッサーブレードで空気を圧縮し、エンジン後半部にある燃焼室内の燃焼でやはり多段のタービンブレードを回転せしめるものです。なお、タービンとコンプレッサーは同軸(メインシャフト)で接続され、連続運転を可能にしています。また、燃焼室内で生じた高温高圧の燃焼ガスはエンジン後端の排気ガスからジェット噴流として吹きだし、推進力を得ています。
 ところで、旅客機などに使用されるジェットエンジンは、エンジン前部のバレル径が比較的大きく、メインシャフト前端には大きなファンブレードが装着され、その回転により後方への推力風力を得ています。このファンブレードによる推力は、エンジンバレルの外側を流れて後方への推力として働きます。(高パイパス比と云う)このファンブレードの代わりにプロペラを装着したものを、ターボプロップエンジンと云い、現用の多発エンジンプロペラ機は、ほぼこの方式が採用されています。
 一方、ジェット戦闘機などのエンジンではエンジン前部にファンブレードはなく、エンジンの全長に渡って比較的スリムな形状となっています。ですから、ファンブレードによる推力はなく、すべてがジェットエンジンの燃焼噴流で得ています、なお、ジェットエンジンの燃焼室内の空燃費は石油系の燃料ですから約14:1程度のストイキメトリー(理論空燃費)であることが望ましいのですが、実際にはストイキで燃やすと、その高温により、いかにインコネル製の耐熱素材のタービンブレードといえども耐えられず、相当に薄め空燃費で燃やさざるを得ないのが実情の様です。従って、排出される燃焼ジェット噴流の中には、残存酸素が十分に残こされています。
 このことを踏まえ、燃焼室後部に燃料を噴射し再燃焼させるのがアフターバーナー(英ではリ・ヒート)という仕組みが戦闘機においては多用されています。しかし、アフターバーナーの使用により50%前後の推力アップが可能となりますが、使用中の熱効率は極端に低下し、例えば戦闘機でアフターバーナーON状態では、数キロリットルの燃料が数十分で消費されてしまうと云います。超音速飛行や急上昇や急加速を要する戦闘機においては、アフターバーナー機構は必用不可欠な装備ですが、燃費性能を重視する旅客機に装備されることはありません。ただし、過去の超音速旅客機ですが、コンコルドのエンジン(RR・オリンパス)には、アフターバーナーが装備されていました。
 この航空機用のジェットエンジンですが、ガスタービンエンジンの一種であり、そのコンパクトさに比して大出力が得られることから、メインシャフトの動力をギヤを介して伝達するギヤード・タービンエンジンなどは、ヘリコプターにも多用されています。また、米軍の戦車であるM1エイブラムスとか、我が国の自衛隊の護衛艦とかイージス艦の機関(4機使用)にも利用されています。


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