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最新軽自動車を評価する(スズキ・スペーシア)

2021-09-11 | 車両修理関連
最新軽自動車を評価する(スズキ・スペーシア)
 先日、スズキ・スペーシアの最新型をちょっと軽く見る機会があったので、幾つか気付いたところを書き留めておきたい。

 過去にも記しているが、今や高張力鋼板などの付加価値鋼板の使用率は、大きさが制限される軽自動車が一番高いと云われている。その一方で、亜鉛メッキ鋼板など、防錆性能としての付加価値鋼板は、軽自動車案外は少な様だ。このことは、塗膜の中塗りなどの省略と相まって、経時した場合の発錆びについて、軽自動車は、小型自動車以上と比べ、弱い傾向が見られると知見している。そして、軽の中でもススキがもっとも、その防錆性能の面での弱点を持つと知見している。

 一方、車両メーカーごとの利益率などのデータからは、スズキは案外良好な値を出していて、このことはスズキの原価低減への努力のなせる技だとも思えるが、これが防錆性能への弱点だとか、補給部品の細分化という面で、アフター修理へのユーザー負担を増やしてしまう傾向を感じる。このことを具体的に記せば、マッドガードとか、単品補給がなくセット部品での供給だとか、生産時の大物一体部品(サイドパネルなど)をその状態でしか供給しないなどということがある。他の多くのメーカーでは、サイドパネルなどの大物一体部品であっても、ロッカーパネル部、クォータパネル部、各ピラー部という形でカット部品が供給されるのが通例だ。

 スズキの場合、減価低減のため、ジムニー以外のほとんどの車種で、プラットフォームは共通化している。また、ダイハツなどでは、ボンネットやバックドアという大物蓋物パーツの樹脂部品化が進められているが、このことが必ずしも原価低減に結び付かないことは明らかだろう。その点、スズキは、ダイハツの様な樹脂部品価の拡大という面には減価的にも不利だと見ているのだろう、明らかに方向性が異なる。ただし、今やどの車種でもリサイクル率99.9%と記してあるのが通例だが、これはメーカーの実証ブラントでできると確認したモので、実態としても多くの金属リサイクル業の現場(自動車解体業)の実態を眺めると、樹脂部品だとかガラスを含めシュレッターダストに類する残渣物は産業廃棄物として土中に埋め込んでいるのが多くの場合の実態で、とても99.9%のリサイクルなんて欺瞞の数値だと判断できる。

 エンジンだが、プラットフォームと同様に、その時代毎に、特定型式の共通エンジンを使用しており、過去から、F6A→K6Aと移行してきたが、今回見たスペーシアではR06Aという新型エンジンが搭載されていた。未だ、このR06A車の実車走行は未体験なので軽々に判断できないのだが、それなりの知見を生かした上で、燃費や排ガス性能を向上させているのだろう。ただし、アイドリングストップは相変わらず付属している様だが、ブレーキペダルを踏んで減速中は、速度13km/h以下でエンジン停止するので、交差点左折とか駐車時に微速状態での前後移動時に、必ずしも車両が停止しなくても、エンジン停止と再始動を繰り返し、あまりの煩雑さに呆れ返るという現象は相も変わらずなのかもしれない。こんなモの付けて、型式認定におけるモード燃費を向上させても、実燃費にプラスとなるととは思えない。それでいて、再始動回数をカウントしていて、強化されたバッテリーの交換を促したり、強化されてはいるのだろうが、スターターも負担が大きいだろう。しかも、再同時の大電流で、その分のチャージ負荷からオルタネーターの負荷は一定時間高まると云うことで、どう考えても実使用におけるメリットは薄い機構だろう。

 エンジンルームを除くと、幾つかのことに気付くことを記しておきたい。

①シャシプレートが、今までスズキ車では青色アルマイト処理したアルミプレートに、各データが打刻されていたが、やはりコスト低減から選択されたのだろう、印刷されたラベルになっている。

②ボデーの溶接部位の合わせ目に塗布された、ボデーシーリングが、中塗り後に施されている。これは、最近の小型車以上でも事例は知見するが、従来はEDコート(カチオン電着ドブ漬け塗装)後に、シーリング工程があり、その後中塗り工程で、シーリング樹脂が表面に露出することはなかったのだ。その理由は、明確ではないが、十分紫外線などの暴露性能に強いシーリング材が開発されたことと、中塗り工程を省いてコスト軽減を図っているのかもしれない。

③近年のエンジンECUはエンジンルーム内の図の様な位置に装着されるのが常だ。このエンジンルーム内のECUは上からの防水は完璧だが、水没した場合は水が入ることになる。この理由は、各ランプもそうだが、内部の空気の結露を起こして不具合を防ぐため、換気用の小さなポートを持っているためで、このECUの高さまで冠水すると内部に水が入り込む。と云うことで、エンジンECUが冠水する水位までの冠水が認められれば、室内のジャンクションブロック(ヒューズ&リレーブロック)もこれ以下の高さであり、その他エアバッグだとか、AT、PS、他のECUもほぼ冠水しており、見積してみれば全損となると見なして良いのではないか。

 室内の計器板だが、ここが今回の観察で一番驚いたところだ。タコメーターもない、水温計も例によってなく、ゲージとしてはスピードメーターと燃料計だけだが、キーオンで点灯するインジケータの多さに驚いた。総数は20点を超えるだろう。この内、キーオン後、1秒もしないで幾らかはイニシャライズ動作が終わり消灯する。そして、エンジン始動後は、パーキング警告灯以外は消灯する訳だが、これが10年後のこのクルマの整備に投げ掛ける課題は多そうだ。しかも、その整備は、結構な知識が必用で、対応するOBDスキャンテスターを繋いで表示される項目の部品を替えれば直るというほど単純なものばかりではないだろう。




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