私の思いと技術的覚え書き

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日産・全契約社員を原則正社員に

2021-01-18 | コラム
 自動車産業は電気・電子産業がなくなってしまって以来、日本に残された最も得意分野の産業だ。しかし、その中で、20年前にルノー傘下になって以来の日産は、極端な大リストラを行うと共に企業規模を縮小させて収支を均衡させることで生き残りを図ってきたところだが、近年再度の苦境が伝えられる状況にあった。そんな中、日産では全契約社員を原則正社員化していくという施策を取るという。このニュースは、従来の経団連傘下企業の動きとしては、極めて異例なものなのではないかと思い書き留めたい。

 そもそも、企業にとって労働者は正社員が一般的な雇用形態として当然のことだろう。これによって、従業員の高いロイヤリティを維持したり、その社会的責任として期待されるコンプライアンスを保持したり、従業員同士の連携力を高めることでの生産性の向上とか高い顧客満足度が得られると考えるのが一般的なことだろう。しかし、経団連傘下の大手企業程、正社員、契約社員、派遣社員、子会社ど、様々な手法を巡らして、労働単価を切り詰めることでの原価低減とか業績改善に執着してきたと云える。それが、90年代初頭には1億総中流意識を持つと云われた日本社会が、正社員と非正規社員と云われる雇用形態の中で格差が生まれた大きな要因となったことは確かだろう。また、GDPは世界第3位を維持しているというものの、一人当りのGDPとなるとランキングは年々ダウンし、今や世界25位くらいで、韓国にも抜かれたという話しがある。

 そんな訳で、今回の日産の全正社員化は、外部から日産を見ている限り、さほどに経営環境が好転しているとは見えない中で、よくぞ取り入れた雇用処遇の改善処置だと感じる。

 ただし、ここには派遣社員のことは一切触れていない訳だが、契約社員以上に格差も大きく、その契約期間の更新スパンも短い派遣社員の問題を改善(できれば従来の特定技能者以外の派遣社員は原則認めないものに戻す)が早期に求められると思える。

 これは個人的思いだが、世の経営者で最も軽蔑すべきは派遣企業を経営している者ではないかという思いを強くしている。その代表者が竹中平蔵氏だが、そもそも派遣会社に所属する従業員とは、派遣先があろうがなかろうが給与は保障されるべきではないのか。しかし現状は、派遣会社は単なる仲介を行うだけで、その労働力の上前を横取りして収益を上げているなんて、受け業務の仲介を行っているにすぎず、企業としてなんのリスクがあると云うのだろうか。
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日産が全契約社員を原則正社員に、財務に余裕で人材確保へ
1/18(月) 16:00配信 
Bloomberg
(ブルームバーグ): 日産自動車は国内の主要拠点で勤務している全契約社員を原則的に正社員として登用する方針を明らかにした。業績の大幅悪化を受けて進めてきたコスト削減の成果で財務に余裕が出てきたこともあり、待遇を改善して人材の確保に努める。

日産広報担当の百瀬梓氏は「職場の業務ニーズや働く人々の価値観や就労ニーズの多様化に対応」するため、同社に在籍する契約社員を今年4月に正社員とすると明らかにした。現在800人弱いる契約社員を正社員化することで職場の一体感向上や効率・効果を高めた業務運営が可能となるほか、個々の社員のモチベーション向上やスキルアップを図っていくとしている。

事情に詳しい関係者によると、正社員と非正規労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指して政府が提唱する「同一労働同一賃金」の原則に対応する。職場管理の効率を向上させるのも狙いで、従来の契約社員制度は廃止するという。

日産は2018年11月のカルロス・ゴーン前会長の逮捕後に業績が大幅に悪化。前期(20年3月期)の純損益は6712億円の巨額赤字に転落。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり今期も6150億円の赤字を見込む。昨年5月に公表した事業構造改革計画では24年3月期までの4年間で生産能力を20%削減するなど年間固定費を18年度比で3000億円削減する方針を打ち出した。

その後、新車販売の回復や一過性の経費削減の効果も含めて7-9月期の営業損益は48億円の赤字と4ー6月期から赤字幅が大幅に縮小。今後は北米で投入した新型「ローグ」(日本名・エクストレイル)などで新車攻勢をかけて業績の本格回復を目指す。

雇用維持鮮明に

別の関係者は、正社員にすることで年収も増えることになると述べた。厳しいコスト削減を経て財務に余裕が出てきたため、業務に熟練した人材をつなぎとめる狙いもあると言う。

雇用期間を定めて労働契約を結び、雇用期間が終了すると契約を更新しない選択肢が取れる契約社員と比べて正社員は解雇へのハードルが高く、今後業績の悪化がさらに進んだ場合には収益の重荷となってくる可能性もある。

1999年、経営危機に陥っていた日産に出資したルノーから送り込まれたゴーン元会長による「リバイバルプラン」では、国内工場の閉鎖や2万1000人の人員削減などを柱とする厳しい施策を打ち出した。

直近の日産の赤字規模は当時に匹敵する規模となっているが、現段階で国内のリストラは実施しておらず雇用を維持する姿勢が鮮明となっている。
(c)2021 Bloomberg L.P.

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