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元TBS記者からの性被害を告発した伊藤詩織氏、なぜこれほど長く裁判で闘うことになったのか?

2024-07-16 | コラム
元TBS記者からの性被害を告発した伊藤詩織氏、なぜこれほど長く裁判で闘うことになったのか?
7/15(月) 11:36配信 JBpress

日本外国特派員協会で会見した当時の伊藤詩織氏(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 2017年10月24日、日本外国特派員協会で、ジャーナリストの伊藤詩織氏が元TBS記者の山口敬之氏から性的暴行を受けたと会見を開いた。その後、しばらく事件の報道が過熱し、伊藤氏と山口氏の両サイドが様々な情報を発信した。山口氏との裁判の後にも、伊藤氏は、SNS上での誹謗中傷に対して提訴している。

【写真】日本外国特派員協会で行われた元TBS記者・山口敬之氏の記者会見を聞く記者席の伊藤詩織氏

 伊藤氏をめぐる一連の裁判はその後どうなったのだろうか。7月9日、「伊藤詩織さんの裁判報告会」が都内で行われた。主催者は『伊藤詩織さんの民事裁判を支える会 Open the Black Box』。以下、多少の補足説明を交えながら、報告会で配布された資料と公開された情報を記したい。(長野 光:ビデオジャーナリスト)

■ TBS記者に対する1100万円の損害賠償訴訟の顛末

 伊藤氏は2017年の会見後、山口氏の件を含め、4つの裁判で争った。いずれの裁判も伊藤氏の勝訴で終わった。

 ■裁判(1):山口敬之氏への訴訟(終結まで約5年)

 2015年4月3日、伊藤氏は就職先の紹介を求めて、元TBS記者の山口氏と恵比寿で食事をした。その後、酒を飲んだ意識のない状態で、港区内のホテルで性的暴行を受けた。同年同月、伊藤氏は山口氏に対する準強姦容疑で警視庁に被害届を提出している。

 2016年7月、東京地裁は嫌疑不十分で不起訴決定としたが、2017年5月18日に「週刊新潮」で本件が記事化された。そして5月29日、伊藤氏が検査審査会に審査を申し立て、司法記者クラブで会見を行った(その後の流れは下記の通り)。

 【2017年9月28日】ホテルで意識のない時に山口氏から性暴力を受けたことに対して、伊藤氏が望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして、山口氏に対し1100万円の損害賠償を求め提訴した。

 【2017年10月18日】『Black Box』(文藝春秋)を出版。

 【2017年10月24日】日本外国特派員協会で会見。

 【2019年2月】山口氏が伊藤氏を相手に1億3000万円と謝罪広告の掲載を求めて反訴。

 【2019年10月7日】一審が終審。

 【2019年12月18日】東京地方裁判所より裁判の言い渡しがあり、伊藤氏が勝訴。

 【2020年1月】山口氏が控訴。伊藤氏は付帯控訴。

 【2021年9月21日】控訴審第一回口頭弁論。双方が意見陳述を行い、終審。

 【2022年1月25日】高裁判決の言い渡しにより、本訴(性被害事件)において伊藤氏の勝訴。山口氏の反訴は一部容認。

 【2022年7月7日】最高裁の決定により、双方の上告が棄却される。

 【2022年8月31日】双方が、判決により命じられたそれぞれの損害賠償金を支払い、民事事件は終結。

 【著者の関連記事】
◎ひょっとして自分も加害者かも……小説『ブルーマリッジ』が問う、変わる正義と過去の自分に向き合うということ(JBpress)

■ 元東大特任准教授に対する110万円の名誉毀損訴訟

 ■裁判(2):大澤昇平氏への訴訟(判決まで1年弱。被告からの控訴なし)

 2020年6月24日、大澤昇平氏(元東京大学特任准教授、AIベンチャーDaisy社長)が、伊藤氏を中傷するメッセージと画像をX(旧Twitter)に投稿した(その後の流れは下記の通り)。

 【2020年8月20日】伊藤氏は、大澤氏による中傷目的の投稿が名誉毀損であるとして、大澤氏に110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)の損害賠償を求め提訴した。同日、記者会見。

 【2021年7月6日】東京地方裁判所より勝訴判決が言い渡され、大澤氏に33万円の支払いと投稿削除の命令があった。

■ 賠償金が増額された漫画家との裁判

 ■裁判(3):はすみとしこ氏、他匿名の者2名への訴訟(判決確定まで約4年)

 2020年6月8日、伊藤氏が、漫画家のはすみとしこ氏がX上で発信した投稿で名誉を傷つけられたとして、はすみ氏に対して550万円の損害賠償と謝罪広告の掲載、リツイートした2名それぞれに対して110万円の損害賠償を求めた訴訟(その後の流れは下記の通り)。

 【2020年6月8日】二次加害目的の中傷イラスト投稿に対して東京地裁で提訴。同日、記者会見。

 【2021年11月30日】 東京地裁が伊藤氏勝訴の判決を言い渡す。88万円の損害賠償金支払いがはすみ氏に命じられた。リツイートした2名にはそれぞれ11万円の賠償命令。

 【2021年12月13日】リツイートした者のうち、1名が控訴。

 【2021年12月14日】はすみ氏が控訴。伊藤氏は付帯控訴。

 【2022年11月10日】高裁の判決では、「諸般の事情に鑑み」という理由から、はすみ氏の損害賠償額が110万円に増額された。リツイートした1名の賠償額も22万円に増額。

 【2023年9月14日】最高裁の決定により、はすみ氏の損害賠償金110万円が確定。

■ 元東大特任准教授に対する110万円の名誉毀損訴訟

 ■裁判(2):大澤昇平氏への訴訟(判決まで1年弱。被告からの控訴なし)

 2020年6月24日、大澤昇平氏(元東京大学特任准教授、AIベンチャーDaisy社長)が、伊藤氏を中傷するメッセージと画像をX(旧Twitter)に投稿した(その後の流れは下記の通り)。

 【2020年8月20日】伊藤氏は、大澤氏による中傷目的の投稿が名誉毀損であるとして、大澤氏に110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)の損害賠償を求め提訴した。同日、記者会見。

 【2021年7月6日】東京地方裁判所より勝訴判決が言い渡され、大澤氏に33万円の支払いと投稿削除の命令があった。

■ 賠償金が増額された漫画家との裁判

 ■裁判(3):はすみとしこ氏、他匿名の者2名への訴訟(判決確定まで約4年)

 2020年6月8日、伊藤氏が、漫画家のはすみとしこ氏がX上で発信した投稿で名誉を傷つけられたとして、はすみ氏に対して550万円の損害賠償と謝罪広告の掲載、リツイートした2名それぞれに対して110万円の損害賠償を求めた訴訟(その後の流れは下記の通り)。

 【2020年6月8日】二次加害目的の中傷イラスト投稿に対して東京地裁で提訴。同日、記者会見。

 【2021年11月30日】 東京地裁が伊藤氏勝訴の判決を言い渡す。88万円の損害賠償金支払いがはすみ氏に命じられた。リツイートした2名にはそれぞれ11万円の賠償命令。

 【2021年12月13日】リツイートした者のうち、1名が控訴。

 【2021年12月14日】はすみ氏が控訴。伊藤氏は付帯控訴。

 【2022年11月10日】高裁の判決では、「諸般の事情に鑑み」という理由から、はすみ氏の損害賠償額が110万円に増額された。リツイートした1名の賠償額も22万円に増額。

 【2023年9月14日】最高裁の決定により、はすみ氏の損害賠償金110万円が確定。

■ 裁判報告会で伊藤氏が語ったこと

 ■本報告会における伊藤氏のコメント(一部抜粋)

 私は今日、アゼルバイジャンの(首都)バクーというところから来ました。久しぶりの日本です。一連の裁判を思い出しながら「本当に長かったな」という感想です。

 刑事事件が終わった2017年の直後から、数名の弁護士の方々と出会うことができました。「裁判をサポートしたい(寄付したい)」という心あたたかい(一般の方々からの)声を当初からいただいていましたが、世の中にはいろいろなケースがある中で、自分だけがそうしたサポートを受けることに最初は抵抗がありました。

 しかし、2019年に山口氏側から反訴があり、請求額は1億3000万円でした。縮み上がり「これは1人では無理だ」と感じて、皆さんに声をかけて助けていただいた次第です。1人ではとても乗り越えられませんでした。

 精神的にも皆さんには大きく支えていただきました。たとえば、裁判がある時に、一緒に裁判所に行っていただいたり、メディア対応の面で助けていただいたり、そうしたサポートがあったからこそ、私個人の問題で終わらせるのではなく、「この問題を司法の中で問いかけてみよう」と考え、一連の行動ができたと思っています。

 この問題は最初の訴訟だけでは終わりませんでした。その後に、オンライン上で誹謗中傷が始まり、相当な恐怖を感じました。結果的に海外に移住する決断もしました。

 性暴力を受けて、裁判をして、その後にオンライン上で言葉の暴力を受ける。それが怖いから助けを求められなくなる。それではダメだと思いました。性暴力に対して、もっと声を上げやすい社会にしたかったのに、逆に「負のロールモデルになってしまっているのではないか」という思いがありました。

 本来であればこの裁判は、性暴力の訴訟1つで終わるところでしたが、周囲の方々からのサポートもあり、2020年から誹謗中傷の裁判も行うことができました。

 当時はまだ前例が少なかったので、評論家の荻上チキさんなどに相談しながら、SNSにおける「いいね」の定義を一緒に考えるところから始めました。意見書を書いていただくなど、ここでも多くの方のサポートがあり、このようなチャレンジができたと思っています。

 民事裁判では、損害賠償の支払いの判決が出ても、支払いを逃げることができます。どのケースかは特定しませんが、2つのケースではまだ支払いが済んでいません。いろんな司法の穴があり、どうやったら私たちが生きているこの社会の法律の中で正義を勝ち取れるのか。大きな課題だと思います。

 こうした裁判では大きな費用が伴う場合があります。同じようなことが他の人にあった時に、どうしたらそんな金額を1人で背負うことができるのかと疑問に思います。しかし、私としては民事裁判を支えていただいたことに、心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。長野 光

#元TBS記者からの性被害を告発した伊藤詩織氏


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