野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

ニホンジカとヤマビル

2023-02-05 | 兵庫の自然

ヤマヒル

前回ニホンジカが増え、兵庫県での獣害について述べたが、このニホンジカといっしょにくっついて困った生物がいます。ヤマヒルです。ヤマビルは環形動物門(ミミズやゴカイなどの仲間)のヤマビル科に属す、日本産ヒル類のうち唯一の陸生吸血種である。体長1.5~8cm。3本の黒い縦筋があるのが特徴。シャクトリムシの様に歩き、意外に早く移動する。おしりと口の吸盤は強く、離れにくい。

丹波や但馬の山道をハイキングのときに、痛みもなく、血をすいとられたかたもいるかもしません。

兵庫県でおこなっている小学校の自然学校で児童が血をすわれ、大変だったと聞きました。

一度に吸われる血の量は多く、その後、血が止まりにくいのが。遭遇した児童には不安の原因かとおもいます。

足から体を登っていき、移動が早いので、首筋まで達することもあり、知らない人は上から落下してきたと思われています。パンツや服の隙間から入り込み、口の吸盤で張り付き、吸血するのです。

ヤマビルの活動

ヤマビルが活動するのは、5月~10月

晴天日: 夕方~朝までに活動; 雨天、多湿日: 一日中活動

 登山やハイキングの昔のガイドブックには注意する場所は鈴鹿や京都北部の林の中にヤマビルがいるので注意することがありました。昔のハイカーは喫煙者が多く、吸われたらタバコの火を押し付けるとか、その灰をクズ口にこすりつけると血が止まりやすいと教わったことがありましたが、いまはタバコを吸う人が少なくなり、忌避剤を紹介しています。

 ヤマビルもニホンジカの増加とともに遭遇する地域が増えています。

三重県では「鈴鹿では昭和30年代以前までは稜線から近江側に多かったが、それ以後は伊勢側にも増えました。霊仙、御池、藤原、青川谷あたりまでの石灰岩質(これも古成層質)までに多い。」と呼びかけています。

 近年、北は秋田、山形、南は宮崎、鹿児島の33都府県にまで拡大しています。最近では里山近くの住宅地周辺にまで吸血被害が及んでいます。

 ヤマビルの栄養源が動物の血液なので、ヤマビルの分布拡大は寄主動物(シカやイノシシ)の増加によるものと考えられている。

 DNA 判定による兵庫県におけるヤマビルの吸血動物種の同定結果があります。播磨および但馬地域で採取されたヤマビル 80 個体については、46%の個体からシカの血液が検出され、次いで、イノシシが 22%、人が 17%であったと報告されています(環境文化創造研究所 2005)。

この調査後もヤマビルが見られる範囲が増え、県森林動物研究センターが2019年に調査した県内のヤマビルの分布をみると都市部以外遭遇する可能性があるようです。


兵庫のニホンジカ

2023-02-05 | 兵庫の自然

福島大や奈良教育大などの研究チームが紀伊半島にすむ野生のニホンジカの遺伝子を調べた結果、奈良公園(奈良市)のシカが独自の遺伝子型を保っていることが分かった。2023/1/31)

奈良教育大のホームページから

「⚫ 奈良公園のシカは周辺地域と近縁ではあるものの独自の遺伝子型を持つ集団であること

⚫ 奈良周辺地域のシカ集団は1000年以上消滅状態だったこと

⚫ 奈良公園のシカが1000年以上生き残れたのは人間の保護によると考えられること」

という成果がアメリカ哺乳類学会( The American Society of Mammalogists )の学会誌『Journal of Mammalogy』に発表される。奈良公園のシカは“神のシカ”として大切に大切に守られてきたが、科学的にも特別なシカだということがわかったと奈良県では驚きをもって話題となっています。

 

兵庫県のシカと今回調べられたシカのDNAの違いはまだしらべられていない。

 いま、兵庫県のシカは困りもの。増えすぎたシカは私たちに身近な問題になっています。

「播州清水寺の境内に20種類約100鉢のアジサイが並べられ、青や紫、ピンク色などの花で彩っている。以前は群生するアジサイの名所だったが、近年はシカが開花前に新芽を食べてしまうとみられ、花が激減。」(神戸新聞NEXT2022/6/14)

「猪名川町北部の大野山頂にある大野アルプスランド。(中略)青色や紫色をしたアジサイの観賞を楽しめる。一昨年、シカに新芽を食い荒らされ、花は2割ほどに減ってしまった。」(神戸新聞NEXT2017年07月01日)

 三田市でおこなっている里山活動でも、作業地の周辺でもイノシシおよびシカの活動が活発にみられる。里地が耕作放棄地になっている場所もあり、里地里山保全活動のいったんとして里地もなにかうえようと耕作を数年前からはじめた。柵もあり、シカやイノシシが食べないであろうとバジルをうえたが、パジルはかじられることもなく、次の年は欲張って枝豆をうえたが、これはシカに全部食べられてしまった。

 今年は、寒くてエサがすくなったせいか、村の人が植えていた玉ねぎが全滅したそうです。

山口県では絶滅危惧のニホンジカだったのが、1950年代。今では増えすぎて同じような農業被害が。

今では多くの自治体で増加したニホンジカの個体数管理に取り組んでいます。