野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

アマゾン自然学校のテキスト(アマゾンの樹木)

2023-02-07 | 市民講座

アマゾンの樹木
本来、人と木の間には、切っても切れない関係がある。まず、建築や道具の製作に関し
て、木は人類に大きく貢献している。木堂住宅はもちろんのこと、レンガやコンクリート
建築物でも、仕上げや内装の各部分に木材が使われることが多いし、生活で用いている家
具はほとんど木材でできている。また、橋や船の建築材にも木材が使われることが多い。
ただし、同じ木といっても、その材質にはそれぞれ特徴があるため、各用途に応じて適切
な木材が選ばれる。
次に木は?果や核果などの実を結んで人に滋養を与えてくれる。また、中には果実のみ
ならず、幹や樹皮から油や薬の成分がとれるものもがある。しかし、もともと樹木は虫や
バクテリア、黴(かび)などの害から自らを守るための成分を樹液や油の形で体に含んで
いるものだが、これらの成分を人が利用する場合は、毒や薬になったり、木材に耐久性を
与えたりする。
さらに、木は人に安らぎや癒しを与えてくれる。木々には人目をひく綺麗な花をさかせ
たり、心地好い香りを漂わせるものがある、そういった木が一本でもあると、辺りの景観
を引立たせたり、群生している場所にたたずんでいると気分が高揚したりする。花をさか
せなくても、木々の緑は人に安らぎを与え、森に入れば、森林浴ではないが、体の隅々ま
で洗われるような清々しい気持ちにあるものである。
アマゾンの自然の一つの特徴は植物の多様性があげられ、本来樹木だけでも実に様々な
種類が存在したものだが、近年の乱開発や乱伐はトメアスーも例外でなく、牧場のために
皆伐採されたところはもちろんのこと、外見は原生林のように見えても、有用なものが切
り出された後の森であったりして、貴重な樹木資源が失われつつある。
しかし、豊富な資源を含む自然の森を保護したり再生に取り組む一部の動きもあること
も確かである。トメアスーでは、アグロフォレストリーの取り組みもその一例である。
アグロフォレストリーは、短期作物から始め、次に中期作物から永年作物へと時系列的
に収穫を行っていきながら、樹木作物を育て、最後に用材として利用する農業システムで
あるが、この畑とて全くの自然生態を比べると、人工的なものであるから、地域に残され
た原生林や再生林は極力そのまま残したいところである。
アマゾンの森の樹木にはどのようなものがあり、人にどのように利用されるか、ここで
は代表的なものだけではあるが、あげてみることにする。


1.アカスタニア・ド・パラ
(1)その不思議な種
 実はブラジルナッツとして有名。

ナッツとして食するこの木の種は、土の中に埋めておいてもなかなか芽を出さず、そ
のうちに蟻やネズミに食べられてしまうため、苗を作るのは容易なことではない。
表面がガサガサした種皮に覆われた一粒のナッツの重さは15g、長さ5cm ほどの大
きさがあり、直径15cm ほどの厚くて堅い球状の殻の中に、このナッツが20粒ほど詰
まって、重さ1kg前後の一個の果実となっている。
この重くて堅い実は、とくに夕方から夜中にかけて落下する性質を持つが、原生林の中
では30~40mの高さから落ちてくるので、木の下にいると危ない。しかし、面白いこ
とに、途中で枝に当たったりしないかぎり、果実は回転することなく落下し、穴のある果
実の先の方を下に、穴はないが柔らかい生り口を上にした姿で、実の三分の一から半分く
らいの部分が土に埋まってしまう。こうなると、穴から水は入らないが、湿気が十分に保
たれる形となり、次第に生り口の部分が腐れて穴があくころになると、芽が5~10本束
になって出てくるが、そのうち外果皮も腐れて小苗となる。そこからが不思議な事だが、
我々が食用とするナッツが次第に肥り始め、木質化しながら幹と根の分かれ目となってい
くのだ。つまり、大木になってもひとまわり太い根元の部分はあくまで一粒のナッツが肥
大してできたものというわけである。
(2)果実の利用
果皮の外側の皮はすぐに腐ってしまうが、堅固な内果皮、つまり殻は細工すると様々な
器に仕上がる。炭にすると普通の焼き方でも白炭のような活性炭ができる。
ナッツは生のままでも食べることができるが、さらに、調理、加工の仕方で、さまざま
な形の食べ物となる。また、実の中心にあるヘソの部分は、乾燥した後、容器にいれ水を
加えて夜露に晒して飲むと肝炎の薬となる。
(3)材木としての利用
 用材としての品質は中程度であるが、木質が美しく、成長も速いため、森林農業の最
終目標作物の一つとして考えることができる。
(4)人に安らぎを与えてくれるパラグリの木
 まっすぐ伸びたパラグリの幹は30~40mの高さに達し、原始林の中にあって一番
上に樹冠を広げる。開花時期になると、直径20~30mにもなる樹冠全体が黄色い花園
と化し、パラグリが集まった辺りは、空から眺めると、まるで楽園をみるごとくなる。一
本を眺めても、なぜかしら犯しがたい自然の趣と神秘をひとに感じさせる不思議な力を持
つでではある。