野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

ブナ林の林床のシダ植物

2023-02-20 | 兵庫の自然

ブナ林で有名なのは白神山地のブナです。

兵庫県にもブナがあります。日本海側に氷ノ山のブナと、太平洋側では六甲山や妙見山山頂付近で見られます。

ブナは恐竜が絶滅した6500万年のあと新生代第三紀に誕生したといわれている。第三紀は地球全体が温暖化しており平均気温が20度を超えていた。北極周辺にはセコイアやマツ、トウヒなどの針葉樹。南側にブナをはじめとしてカエデ、ミズナラ、カツラなどの落葉樹が生えていました。(周極第三紀植物群)

第四紀になり氷河期と間氷期を繰り返し起こるようになると、針葉樹が南下をはじめ、ブナの群落に入り込み、ブナの群落は分断されました。東アシア、ヨーロッパ、北アメリカの東部に群落は残り、それぞれの地域で生き残り、進化をとげました。

 日本のブナ林にはブナ林でよくみられるシダ植物があり、オシダ(オシダ科)・ミヤマイタチシダ(オシダ科)・シノブカグマ(オシダ科)・ミヤマベニシダ(オシダ科)など、4種類以上のシダ植物があります。

 シダ植物も、気候の変動に合わせて進化してきました。この4種類は、ブナと同じように氷河期の生き残り植物です。兵庫県篠山の多紀アルプス小金岳には、オシダ、ミヤマイタチシダ、シノブカグマの3種類のシダが、頂上直下付近に生息しています。

 

 しかし、小金岳は、標高が少し低く、ブナの木はありません。最小限の気候条件で生き長らえています。地球の温暖化はなんとしても防がないと、次の子どもたちにこの豊かな自然を渡せなくなるのではないかと危惧(きぐ)しています。

 

オシダ(オシダ科)・

夏緑性のやや大型のシダ植物。ブナ林域の谷筋の崩積土の集積する場所などに生育する。

ミヤマイタチシダ(オシダ科)・

少し標高の高い場所に自生しており冷涼な場所を好むシダ。これは葉脈が凹んでいるから表面の葉脈がよく見える。

シノブカグマ(オシダ科)・

常緑性。山地の陰湿な林床で見られる。

ミヤマベニシダ(オシダ科)

日陰のやや湿った林床や林縁に生育する夏緑性シダ。


シダ植物の進化

2023-02-20 | 兵庫の自然

小学校で植物のつくり「根・茎・葉」を学びます。その後、中学1年でコケ・シダについて学びます。

シダの根・茎・葉はどれと先生に聞かれて答えるとたいてい間違ってしまいます。

植物の学習のむつかしいところです。(見えているところは「葉」で茎は地面の下)

シダは種子をつくらず胞子でと、顕微鏡でみせてもらうと小ささがわかるけど、教科書だけで学ぶと、テスト対策で胞子ということばさえおぼえればOK。でも、自然の不思議なしくみ「胞子」のイメージがつかめるだろうか。

野外の観察でもシダ植物は見分けにくい植物です。花がなくて地味な存在です。

今回は シダ植物の進化の話です。

陸上植物の化石は、古生代オルドビス紀前期(約4億7000万年前)のゼニゴケの仲間の化石です。(胞子の化石が見つかっています。)

陸上にはコケ植物の世界でした。その後、植物は乾燥にも耐えるように進化します。シダ植物の誕生です。リンボクの仲間(シダ植物ヒカゲノカズラ綱)が多く生えていました。このシダが地面に埋まって石炭になります。古生代デボン紀中期(約3億8500万年前)になって、種子植物が出てきます。

コケ植物についで進化したシダ植物ですが、進化したのは、根・茎・葉の分化がみられることです。

また、成長して背が大きくなるために、管状中心柱という、維管束(師管や道管などの集まり)を持ちました。

 シダ植物の茎をうすく輪切りにして顕微鏡で、維管束をみることができます。

 もっとも原始的な中心柱はウラジロの中心柱です。中心柱はただ一本の維管束からできています。

(原生中心柱)カニクサなどにもみられます。

 次に進化したのがハコネシダの中心柱です。中心に髄があり、そのまわりに管状の維管束があります。(管状中心柱)イワヒメワラビ・フモトシダ・クジャクシダなどでみられます。

 次に進化したと考えられるのは、リョウメンシダです。リョウメンシダの茎は環状に並んだいくつかの維管束からできています。(一環網状中心柱)。ワラビは網状中心柱が同心円状に二重になっています。(二環網状中心柱)

進化は単純から複雑に移行すると考えると、シダ植物進化は、中心柱は原始的な原生中心柱から管状中心へ、管状中心柱から網状中心柱へ進化したと考えられています。

地面の下から茎を見つけて比較すると進化のレベルがわかります。