第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

武装せよ!当直研修医のためのERのTips288個のレジデントクエスチョンの凄さ

2021-09-14 22:30:31 | 書評;献本御礼のコーナー

アンディーこと安藤裕貴先生から新しい書籍

「武装せよ!当直研修医のためのERのTips288個のレジデントクエスチョン」

を献本頂きましたので、どれどれ、ふむふむ、ホレホレ、惚れ惚れと読ませて頂きました。

うーむ・・、これは、一言で言えば、【現場感】です。指導している現場が見えてしまうので、そのERを見学させてもらっている指導医レベルは唸ります。

このような書籍を作り上げる事ができるということは、多分本物の御人です。ガチで優秀で、おそくら殆どの研修医の先生が一緒にERで過ごしていたら絶対リスペクトを一心に受けているだろうなぁ、悔しいなぁ〜という感情が起こり、誰の目にもERの指導風景が映像化されると思うのです。

 

研修医向けのアンチョコ本はあまりERの魂が入っていない(このときは、コレとコレとコレをやっておけ的な)ことが多いのですけれども、これは違います。

多分、研修医向け??(タイトル的にはそうであるのかもしれませんが)研修医向けの内容では絶対にありません。初診や当直を行う医師、プライマリーケアに携わる医師は全員読んだほうが良い内容と判断します。多分知らないことだらけだと思います。だからタイトルはレジデントを消したほうがいいかも?というのが後から感じたFeedbackです。

 

僕が特に驚いた点は3つに集約されます。

1つめ レジデントクエスチョンは研修医レベルの疑問ではない、研修医がふと指導医に質問をする時に、指導医側が懐をえぐられるような、冷や汗を書くような、というよりもPubMedをすぐに調べなきゃ!!って焦るレベルのクエスチョンなんです。これを、研修医レベル??うーん、まぁ僕の能力が研修医レベルなのだと思います。最近の研修医は超優秀なので全然OKです、悔しくなんか無いです!! ただ知識を紹介する本は5万とありますが、この本は知識の現場での使い方とそのメリット、デメリットまで教えてくれる工夫があります。

 

2つめ 無駄な事が全く無い・・なぜこのような疑問を解決していくスタイルをとったのか?なんとなく考察してみました。なぜなら、すごく読みやすくて、わかりやすくて、ちょっと調べるのに非常に良いからです(文献もしっかり読み込んである事が誰の目にもわかります)。医学書にありがちな、網羅的に全てを少しずつ載せていくという戦略は、僕のQuality improvement and safetyの戦略的にも超ブブーです。

推察するに、長い年月をかけて指導医が他者に相談や質問され続けてきた、そしてこっそり調べて学んできた蓄積をまとめた、または研修医やベテランの先生達が頻回に躓くことをまとめたのかもしれません。

そして、これらを徹底的にリストアップします。その最も重要な事を抽出する作業をすれば重要なことは上位20%の項目で約80%の需要に答える事ができます。

この書籍のトップ288は、おそらくはERの現場の90-99%を網羅するかもしれません。これは分析学的にPareto Chartの理論と同じなのです。

この手法は驚きました。多分、経営学やマネージメント理論が採用されています。

 

3つめ Physical や検査の意義、考え方、ベイズ理論を用いた診断学の根本的な内容を重視して、ERの現場で必要Physical などを絞って網羅的に入れてもらっています。これも驚きました。正直、Physicalは役にたつ(High yield)なものと、そうでないものとがあります。この本は、役に立つものだけ、忙しい現場で診断に寄与する可能性が高いものを抽出してくれているからです。面白いPhysical 的にPPPT(patellar-pubic percussion test)を役に立てることがデキるように記載されていたり、ERの本でこのような臨床医の心構え的な感性を感じ取ることは初めてであったかもしれません。とても感銘をうけておりました。

 

強いて欠点をあげるとすれば、表紙が漫画的だったので内容がそっち系か誤解しやいかもしれません。そのギャップもあえて狙っているだろう安藤先生の深淵は計り知れません。僕だったら、このレベルの書籍は海外の正書に匹敵するので格式高く、売り出すと思います。

 

“Andy’s ER clinical pearls”

 

こう名付けて相応しい書籍です。

(改定版の時は僕が表紙を作りたいです。)

Amazon ↓ 表紙はコレです。



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