第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

デザイン思考

2020-11-02 16:04:29 | Harvard medical school

デザイン思考とは?!

まさかの医学部でデザインを学ぶ?なぜ、高額な授業料を払って、デザインなんかせなあかんねん。

と少しでも思った自分がいたとしたら、それは恥じねばならない間違いであると確信しました。

3年前くらいにグロービス大学院の田久保先生とお寿司やさんに行った時に今の大きな企業の開発者やトップ層はデザインを学んでいるとおっしゃていた意味がようやく今頃わかりました。狭義の芸術ではなく、デザインシンキングの意味だったのかとふと思い出しました。

授業はTim Brownの有名な本とTEDxから始まります。

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Designers -- think big!

Tim Brown says the design profession has a bigger role to play than ju...

 

 

これは、名プレゼンです。芸術的な意味のデザインから⇨デザイン思考へ。これからの医療の質の改善はここは切っても切り離せないテーマになると思います。

 

例えば、取手が前にあるポットをみた時に、「なんて不便で、利用者のことを考えていないのだろう!」と気づくかもしれません。どんな物や物体や形やデザイン、システムなども目的に合致しているか、合理的か、美しいかなどを考えることができそうです。

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Introduction to Conceptual Models - Intro to the Design of Everyday Things

This video is part of an online course, Intro to the Design of Everyda...

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他にはこのように、なぜ普段使っているものはこのような形やサイズや色なのか?などなど様々考える方法があると思います。普段使っているスマホはなぜ、このような手触りで、色で、サイズで、操作はこのようになったのか?全てに意図があったのだろうと思います。言い換えれば、視点や視座と視野を調整するという普段の僕の考えにぴったりマッチします。

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Understandable and Confusing Design - Intro to the Design of Everyday Things

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これも授業で紹介されていました。

 

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Definition: Affordance - Intro to the Design of Everyday Things

This video is part of an online course, Intro to the Design of Everyda...

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ということで、本題に入ります。要約すると下記になります。(後日追記します。)

授業のワークショップで行ったものは版権の問題でUPできませんが、ハーバード大学ハッソ・プラットナー・デザイン研究所からデザイン思考の5段階になります。

共感 (Empathise)
使用者の思考を理解し、そのニーズを探る。なぜ?なぜ?なぜ?を繰り返す。なぜその物、サービスetcが欲しいのか、手に入れた先に何を求めているのかを繰り返し考える。自分がユーザーの気持ちになった時、どんな感情を抱くかを徹底的に考える。これはRCAの5Whyに通じる考え方。

定義 (Define)
ニーズの本質は意外と自分も含めて理解していないことが多いです。顕在的ニーズのみではなく、潜在的なニーズ最適解を考え抜くことをニーズの定義かと思います。定義は、これからの概念化の下地となるので、慎重に決めていきましょう。

概念化 (Ideate)
定義、具体的かつ明確なアプローチを洗い出します。一番楽しい作業です。質よりも量をガスガス出すと良い。RCAなどの結果から、思いつく限り、次々とアイデアを出します。その後、分類して収束させ、形にしていきます。感覚的には日本ではKJ法的なやり方が一番良いと思います。GoodleのWhiteboardが良いかもしれません。

試作 (Prototype)
概念化したものが機能するように実装してみます。まず動かすことが第一目的であるため、なるべく負担をかけずに行うことが重要です。今まで見えなかった課題点を浮き彫りにすることがゴールです。研究や医療の質介入でいえばPilot studyの内容です。

テスト (Test) 
そのまえにプロトタイピングしたものについてフィードバックを得る。Defineで決めたニーズを全て満たすか?。大切なことは、ユーザーの顕在的ニーズ+潜在的なニーズを満たしているか。

 

一つ驚いたのが、Beth Israel Deaconess Medical Center (僕らの本拠地になります)の中に、Management Engineerという部門があってそこにデザインシンキング専門の職員がいること・・・。はっ??

そんなこと・・・日本の大学病院でもっとやったらいいのにと思います。

なぜハンコが必要か?(今でこそ時流が動いていますが)

なぜ物理的に職員がそこにいないと行けないのか?(今でこそ時流が動いていますが)

なぜ短期的ビジョンやメリットなどの目に見えるものしか評価できなくなりやすいか?

地方の大学病院として本質的な目指すべきアウトカムは何で、僕らにとってユーザーとは誰で、ユーザーフレンドリーな仕事とは何か?どうしたらそれを達成できるか?

前例がないからできないとか、決まっているとか、まずはそこから脱却して、新しい思考をえぐり出すためにはフリーにしてあげたデザイン思考部隊が大学病院内に確かに存在すると全体がとても仕事しやすくなるのではないかと勝手に思いました。このような教育スタイルや、こういう新しい学びは、MGHのフェローや、BWHの後期研修医も非常に驚いていました。ちょっと僕のブログでは感動が伝わらないのが無念です。すいません。

 

良いデザインの特性は発見性と理解性

Two of the most important characteristics of good design are discoverability and understanding.

Discoverability: Is it possible to even figure out what actions are possible and where and how to perform them?

Understanding: What does it all mean? How is the product supposed to be used? What do all the different controls and settings mean? The doors in the story illustrate what happens when discoverability fails.

全ての人間によってつくられた物にはデザインがあるという事実に気づく


Industrial design: The professional service of creating and developing concepts and specifications that optimize the function, value, and appearance of products and systems for the mutual benefit of both user and manufacturer (from the Industrial Design Society of America’s website). 製品やシステムの機能、価値、外観を最適化し、ユーザーとメーカーの双方の利益になるようなコンセプトや仕様を作成・開発する専門的なサービスのこと

Interaction design: The focus is upon how people interact with technology. The goal is to enhance people’s understanding of what can be done, what is happening, and what has just occurred. Interaction design draws upon principles of psychology, design, art, and emotion to ensure a positive, enjoyable experience. 人々がテクノロジーとどのように相互作用するかに焦点を当てている。目的は何ができるか?何が起こっているか?そしてちょうど起こったことに対する人々の理解を高めること。インタラクションデザインは、心理学、デザイン、アート、感情の原理を利用して、ポジティブで楽しい体験を実現。

Experience design: The practice of designing products, processes, services, events, and environments with a focus placed on the quality and enjoyment of the total experience.

トータルな体験の質と楽しさに焦点を当てて、製品、プロセス、サービス、イベント、環境をデザインすること。

                           ↓

よく学習した、エンジニアなどの専門家あまりにもロジカルに考えすぎるために、”実際に使う人”のことを想像しにくくなる傾向がある。医師もそうかもしれない。ユーザーが使用方法に問題があり、それをあげた時にそのデザインの提供者は動揺するけれども実際には、ユーザーが自分たちが思うような使い方をしないということが当たり前であることを気づいておく。

これは患者さんやスタッフが”自分が意図としない行動を行うかもしれない”ことを気づいて受け止めておこなければならない。

⇨Human Centered Design

 

経験の設計。*Norman, Don. The Design of Everyday Things: Revised and Expanded Edition (pp.3-5). より

 

先生たちは、僕のスマホスタンドが一番の楽しいデザインにうつったようで、980円のスタンド様ありがとうございます。

またBeth Israel Deaconess Medical Center (僕らの本拠地になります)の中に、Management Engineerという部門の様子。

これ見ると、僕らのプログラムの教員はほとんど女性なのと、MGHやBoston children hospital、BWHなどのハーバードの病院からの同級生たちの多くはやはり女性で、QIやPatient safetyはなぜ女性のHospitalistが多いのだろうかと思ったナゾが解けました。

病院全体を俯瞰しながら、柔らかくコミュニケーションをとりながら交渉するという難しい能力は女性にこそ向いているのかもしれません。また周囲の安全に対して敏感であるのもやはり女性脳が向いているのかもしれません。今日はすごく納得したディスカッションでした。