和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

俳諧。蕎麦の味。

2022-07-16 | 地域
歌枕に対して、俳枕というのがあるらしい。

気になるので、そこを詳しく。
尾形仂著「俳句の可能性」(角川書店・平成8年)に、
「関東の風土と俳枕」と題する文がありました。
とりあえず、ここははじまりから引用。

「 関東は、行政的には東京・埼玉・神奈川・千葉・茨城・
  栃木・群馬の一都六県から成っている。

  律令体制下、七世紀から八世紀にかけて成立した旧国名でいえば、
  武蔵(むさし)・相模(さがみ)・安房(あわ)・
  上総(かずさ)・下総(しもうさ)・常陸(ひたち)・
  下野(しもつけ)・上野(こうずけ)の
  坂東八か国にあたる。・・・・           」(p54)


うん。はじまりからだと、あれこれ引用したくなるのですが、
まあ、いいや、前半をカットして俳諧の江戸時代へとゆきます。

「 近世の開幕とともに、文化のうえで長く後進的地位に立たされ
  てきた関東も、新興都市江戸を中心に、新しい庶民詩として
  登場した俳諧の花が咲く。

  経済の中心地日本橋は江戸俳壇の中心となり、
  新開地深川は蕉風俳諧の拠点となった。

  芭蕉の『蕎麦切(そばきり)・俳諧は、都の土地に応ぜず』
  (「風俗文選」)という遺語は、

  京の貴族の伝統文芸である和歌に対し、
  直截簡明な俳諧の、蕎麦の味がよく似合う、
  江戸的・庶民的性格を道破したものといえる。・・」(p60)


「 『俳枕』の語を生んだのも、また江戸である。

  それは芭蕉の先輩格にあたる高野幽山が、
  諸国を遍歴して成った俳書に名づけたもの。・・・

  『能因歌枕』にあやかったものではあるが、
  空想の地誌歌枕に対し、実地の見聞に基づいたところが違う。
  
  歌枕も、俳諧の目で実地にとらえ直されるとき、俳枕となる。

  
  連歌師・・の『類字名所和歌集』(元和3年・1617)のあげる
  関東の歌枕は、

  武蔵野・玉川・霞が関(武蔵)、箱根・鎌倉・足柄(相模)、
  葛飾・香取の浦・角田川(下総)、霞の浦・鹿島・筑波(常陸)、
  伊香保沼・利根川・佐野(上野)、
  室の八島・黒髪山・標茅(しめじ)が原(下野)など
  49にとどまるが、

  素外の『名所方角集』(安永4年・1775)に
  俳枕としてあげるところは176に及ぶ。

  圧倒的に増えたのは日本橋などの江戸の名所と、
  江の島などの相模の名所。
  それに日光・銚子というのも江戸時代らしい。

  一茶は放浪の間、これらに漏れた両総・安房の
  農漁村を俳枕に転生させた。・・・      」(~p61)


はい。こうして地名を引用していると、いつのまにか、
旅をして、旅館にでも泊まって枕している気になります。
そうそう、忘れずにご当地蕎麦を食べ歩きたくなります。                





 

コメント
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