跳箱

跳び箱でも飛箱でも飛び箱でもとびばこでもいいけどそこはそれ跳箱なんです。体育日和のお供にどうぞ。

スタバの事情

2007-09-26 00:47:56 | メディア
Appleと提携して自社店舗でiTuneの曲を大盤振る舞いすると報道されている米Starbucksですがリリースによると配布されるのは、

Starbucks will also offer the Starbucks Card Plus Two, a limited edition re-loadable Starbucks card with added bonus value. When a Starbucks Card Plus Two is registered online the cardholder will receive two complimentary song downloads of their choice on the U.S. iTunes Store.

で、限定版のStarbusks CARD(スタバのプリペイドカード)にiTunes Storeで2曲落とせるプレミアが付く、ということなのですが、落とせる曲はiTunes Storeの全取り扱い曲ではなく、

“Song of the Day” will offer hand-picked songs from top artists including Bob Dylan, Joss Stone, Dave Matthews, Bebel Gilberto, John Mayer, KT Tunstall, John Legend, Annie Lennox, Joni Mitchell, Keith Urban and Paul McCartney plus great music from up-and-coming artists such as Sia, Band of Horses, Hilary McRae, Frederico Aubele and Sara Bareilles.

ってことで、Starbucks傘下のHEAR Musicが権利を保有している(もしくは利用許諾を得ている?)調達ライツコストの安い曲に絞られる模様。(ま、プロモですから)

米Starbucksはコーヒーチェーンとしてはバカげた大きさの企業ですが、ご他聞にもれず北米での店舗展開は飽和しつつあり、既存店舗あたりの売上成長率は低下しているので、顧客来店頻度と単価向上はぜひ図りたいところでしょうし副商材として手がけ始め、自前レーベルを立ち上げるまでになった音楽販売事業も軌道にも乗せたいでしょう。(他社経営の実店舗への商材=CD展開をしたのでは本末転倒ですがWiFiを配備したStarbucks店舗ならiTunesの店舗を自社店舗内に併設しているに等しいとマーケティング担当者なら屁理屈こねられそうですし)おまけに、さして利用が増えているように見えない(IR的にはシカトな)T-mobile HotSpotの利用が伸びればなおハッピーってことで。いやー、見事な皮算用であります。

どうも一見ウマい手のようですが、ほんとにStarbucks CARDが150万曲/日ということは75万枚/日も捌けるもんなんでしょうか?Starbucks的には失敗してもさしたるリスクの無いプロモ計画なのでAppleと組んでも失うものは無い、ということなのでしょうけど、10000店舗を動員して一日一店舗あたり75枚捌かなくちゃいけません。

ちょっと計算してみませう。

2006年度の米国内におけるNet revenuesは$5,097,515Kでここに直営とライセンス営業の合計8,896店による売上が計上されている。ここから、すべてひっくるめて1店舗あたりの売上は$573,012/年で$1,569/日と判る。Tall Rate(今日のお勧めなんかが売れ線だともっと安いが)の値段がたしか普通は(グランドキャニオン界隈などありえない場所にあるスタバはそれなりに値段が高いので)$2.95だったと記憶しているので、これを客単価と仮定すると来店客数は532人/日。つまり毎日の来店客というか正確には購入客の14%に新規にStarbucks CARDを買ってもらわないとこれだけの曲数をさばくことはできない計算になる。ちなみにキャンペーン期間は一ヶ月ちょっと続くのでこの間ずっと...。売り場の苦労が偲ばれます。

来店頻度、という単語を持ち出すまでもなくかなり難しい目標らしいことが判りますが、これ、カードを無料配布(つまりデポジット$0にして、カードコストもスタバ持ちにする)すれば一瞬でクリアできそうな目標とも思えますが、これをやると

1:来店促進
2-1:自社ライツ副商材認知向上
2-2:自社ライツ副商材がiTunesで販売されていること、つまり販路認知の向上
3:客単価向上
3-1:デポジットによる売上の前積み
3-2:T-mobile Hot利用促進による顧客滞留時間延長とコーヒー販売上積み(T-mobileからのキックバック収入期待?)

くらいと考えられるキャンペーン目標の内、一番大事な部分がカード発行コストの持ち出しという追加コストも担ぐことになっ他挙句、将来実現できるかもしれない利益という逃げ水化してしまいますから、よっぽどの近眼な担当者でなければやらないはずです。(つうか、このキャンペーン設計者は結構優秀そうなので十中八九やらないでしょう)やったところでカード稼働率低下に悩むのが関の山ですから。

要するに、プリペイドカードを$15.00で売って、$2.95のラテとおまけの自社ライツ(つまりコスト安い)楽曲を2曲提供して差し引き$12.05残高の残高のあるカードは財布の肥やしにしてもらえたらラッキー、という企画なんでしょう。

ここまで見てくれば、容易に想像が付くところですが実際のところ、ぶち上げた規模の1/10の実績で落着したら妥当なところ、1/5なら大成功といったところじゃないでしょうか?

注:写真はそーゆうややこしいこと一切関係ないもんねとばかりロゴまで古式ゆかしいPike Place Marketの片隅にて今も営業中なスタバ1号店。もうちょっと買う気をそそる一号店オリジナルグッズくらい作っててもよさそうなもんですが...。

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6 コメント

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5000万曲 (mohno)
2007-09-28 18:42:01
では、お言葉に甘えて、コメントします(まだ『まっとうな経済学』を読んでいない)。

そのニュースリリースですが、Starbucks Card Plus Two はオマケの話ではないでしょうか。上記の引用部分を読むと、「オンラインで登録した人に無料で2曲」とありますから、ここはカード単位ではなく、人単位の話ではないかと思われます。ここだけで“5000万曲”を考えるなら(理屈では)2500万ユニークユーザーという話になり、売り場の苦労という以前に、あまりにも非現実的な気がします。

そうではなく、Starbucks の(普通にコーヒーを買いにきた)客は、(Starbucks Card とは関係ない)「今日の歌」カードが無料でもらえるということなんじゃないでしょうか。つまり、客のうち「 iTS を使っている人」「“今日の歌”が欲しい人」が全体の14%くらいいるということではないかと推測しています。「今日の歌」が毎日特定の1曲なのか、ある程度まとまった数の選択肢があるのかはわからないですが。こういうものが iTS の「流通量」に計上されるのか興味深いところ。

ちなみに、Starbucks Card や Wi-Fi をリードしていた人物が社内にいるのですが、残念ながら「知ってる?」と気軽に聞ける関係ではありません:-)
そこね、 (跳箱管理人)
2007-09-28 20:15:20
~registered online the cardholder will receive two complimentary song downloads~

でしょ?そーなんだよね。そうとも読める。

Starbucks Card Plus TwoをiTunesにレジストレーションするスキームがわからないとどうにもならないので来月向こうに行ったついでに買ってみようかと。

本来的にStarbucks Cardはリロードして繰り返し使ってもらってなんぼのアーキテクチャのはずなんで、まっとうに考えるならおひとり様一回限り、とするのがキャンペーン設計のお作法にかなっていると思うんですが、ご指摘の通り2500万ユニークユーザーに配布という謎の超巨大キャンペーンになってしまうので、そこは複数回購入アリで試算した次第。

ちなみにStarbucks Cardと関係ない今日の歌カードというケースは前後の説明とつじつまが合わなくなってしまうので、そりゃあ無いだろってことで排除してたんですが...。

Starbucks利用者とiTunes利用者の重複率については、きちんと考察してみる価値があると思うけどiPod所有率が頭打ち(要するに買い替え需要中心の安定したマーケットに遷移中)という状況と現時点の普及率から考えて14%では読みとして大きすぎるはずです。(めんどくさいので計算してない)

なんにしても5000万曲ってのは大きな規模のキャンペーンなんですよ、というアナウンス効果を狙っただけのような気がかなりしてます。(と、すると跳箱も釣られた口となりますが)

まあいいや、実際、キャンペーン始まったら続報あるだろうし、続報入らなくてもどうせ向こうに行く用事あるし。
余談 (mohno)
2007-09-29 01:19:43
> アナウンス効果
> キャンペーン設計者は結構優秀そう

という点に異議はありませんので、以下、余談として。

「Song of the Day」は Starbucks 側が hand select した「日替わりの“1曲”」なのではないかと思います。つまり、「Bob Rylan のナントカ」とか「Joss Stone のカントカ」と書かれたカードが、37日間、配られるのではないかと。リリースに何人ものアーティスト名が具体的に並べられているのも、それを推察させます。

そうであれば、150万枚の無料カードのために150万曲分のロイヤリティを払う必要はなく、1~2桁以上安い契約費用で済ませられるでしょう。ともすれば、アーティスト側にはアルバムのプロモーションになるからと費用負担なし、というケースすら考えられます:-)

店舗側は、ただカードを配るだけですから、1店舗あたり150枚程度のカードを捌くのに苦労はないでしょうし、客側は違う曲が欲しければ毎日来店することになります(だから、毎朝のルーチンワークの一部になると)。カードを配りきったら、キャンペーンが終わったときに「キャンペーンは大成功、5500万曲以上を配布!」というメッセージも出せますしね。なんと優秀なキャンペーンでしょう:-)

というわけで、続報お待ちしております。
多分、 (跳箱管理人)
2007-09-29 04:09:37
見落としているんだろうと思うんだけど、Hear Musicのサイトを一度見てみたら?

それからリリース原文をきちんと読んでおくこと。

かなり勘違いをしていると思われ。
Re: Hear Music のサイト (mohno)
2007-10-03 18:05:27
たしかに、そのサイトは見てなかったんですが、
http://www.hearmusic.com/#STARBUCKS_|_ITUNES/SONG_OF_THE_DAY
をみる限り、あまり外れていないような。:-)
勘違いしてたらごめん (rbw)
2007-11-30 21:41:36
FMのパワープレイがスポンサ経由でなくなったということ以外に、クリエイタ側でのメリットはあるん?