跳箱

跳び箱でも飛箱でも飛び箱でもとびばこでもいいけどそこはそれ跳箱なんです。体育日和のお供にどうぞ。

スタバの事情

2007-09-26 00:47:56 | メディア
Appleと提携して自社店舗でiTuneの曲を大盤振る舞いすると報道されている米Starbucksですがリリースによると配布されるのは、

Starbucks will also offer the Starbucks Card Plus Two, a limited edition re-loadable Starbucks card with added bonus value. When a Starbucks Card Plus Two is registered online the cardholder will receive two complimentary song downloads of their choice on the U.S. iTunes Store.

で、限定版のStarbusks CARD(スタバのプリペイドカード)にiTunes Storeで2曲落とせるプレミアが付く、ということなのですが、落とせる曲はiTunes Storeの全取り扱い曲ではなく、

“Song of the Day” will offer hand-picked songs from top artists including Bob Dylan, Joss Stone, Dave Matthews, Bebel Gilberto, John Mayer, KT Tunstall, John Legend, Annie Lennox, Joni Mitchell, Keith Urban and Paul McCartney plus great music from up-and-coming artists such as Sia, Band of Horses, Hilary McRae, Frederico Aubele and Sara Bareilles.

ってことで、Starbucks傘下のHEAR Musicが権利を保有している(もしくは利用許諾を得ている?)調達ライツコストの安い曲に絞られる模様。(ま、プロモですから)

米Starbucksはコーヒーチェーンとしてはバカげた大きさの企業ですが、ご他聞にもれず北米での店舗展開は飽和しつつあり、既存店舗あたりの売上成長率は低下しているので、顧客来店頻度と単価向上はぜひ図りたいところでしょうし副商材として手がけ始め、自前レーベルを立ち上げるまでになった音楽販売事業も軌道にも乗せたいでしょう。(他社経営の実店舗への商材=CD展開をしたのでは本末転倒ですがWiFiを配備したStarbucks店舗ならiTunesの店舗を自社店舗内に併設しているに等しいとマーケティング担当者なら屁理屈こねられそうですし)おまけに、さして利用が増えているように見えない(IR的にはシカトな)T-mobile HotSpotの利用が伸びればなおハッピーってことで。いやー、見事な皮算用であります。

どうも一見ウマい手のようですが、ほんとにStarbucks CARDが150万曲/日ということは75万枚/日も捌けるもんなんでしょうか?Starbucks的には失敗してもさしたるリスクの無いプロモ計画なのでAppleと組んでも失うものは無い、ということなのでしょうけど、10000店舗を動員して一日一店舗あたり75枚捌かなくちゃいけません。

ちょっと計算してみませう。

2006年度の米国内におけるNet revenuesは$5,097,515Kでここに直営とライセンス営業の合計8,896店による売上が計上されている。ここから、すべてひっくるめて1店舗あたりの売上は$573,012/年で$1,569/日と判る。Tall Rate(今日のお勧めなんかが売れ線だともっと安いが)の値段がたしか普通は(グランドキャニオン界隈などありえない場所にあるスタバはそれなりに値段が高いので)$2.95だったと記憶しているので、これを客単価と仮定すると来店客数は532人/日。つまり毎日の来店客というか正確には購入客の14%に新規にStarbucks CARDを買ってもらわないとこれだけの曲数をさばくことはできない計算になる。ちなみにキャンペーン期間は一ヶ月ちょっと続くのでこの間ずっと...。売り場の苦労が偲ばれます。

来店頻度、という単語を持ち出すまでもなくかなり難しい目標らしいことが判りますが、これ、カードを無料配布(つまりデポジット$0にして、カードコストもスタバ持ちにする)すれば一瞬でクリアできそうな目標とも思えますが、これをやると

1:来店促進
2-1:自社ライツ副商材認知向上
2-2:自社ライツ副商材がiTunesで販売されていること、つまり販路認知の向上
3:客単価向上
3-1:デポジットによる売上の前積み
3-2:T-mobile Hot利用促進による顧客滞留時間延長とコーヒー販売上積み(T-mobileからのキックバック収入期待?)

くらいと考えられるキャンペーン目標の内、一番大事な部分がカード発行コストの持ち出しという追加コストも担ぐことになっ他挙句、将来実現できるかもしれない利益という逃げ水化してしまいますから、よっぽどの近眼な担当者でなければやらないはずです。(つうか、このキャンペーン設計者は結構優秀そうなので十中八九やらないでしょう)やったところでカード稼働率低下に悩むのが関の山ですから。

要するに、プリペイドカードを$15.00で売って、$2.95のラテとおまけの自社ライツ(つまりコスト安い)楽曲を2曲提供して差し引き$12.05残高の残高のあるカードは財布の肥やしにしてもらえたらラッキー、という企画なんでしょう。

ここまで見てくれば、容易に想像が付くところですが実際のところ、ぶち上げた規模の1/10の実績で落着したら妥当なところ、1/5なら大成功といったところじゃないでしょうか?

注:写真はそーゆうややこしいこと一切関係ないもんねとばかりロゴまで古式ゆかしいPike Place Marketの片隅にて今も営業中なスタバ1号店。もうちょっと買う気をそそる一号店オリジナルグッズくらい作っててもよさそうなもんですが...。

iPhoneあれこれ まだ続く

2007-09-25 17:41:13 | メディア
iPhoneあんまり好きじゃないくせに発売後一月も経たない内に入手してケチ付けまくり(まあ発売半年前からケチ付けてますが)、iPhoneを賛美する諸々の御仁から顰蹙を買い倒している昨今でありますが先日、英国版がO2より、まるっきりひねりも無く発売されるらしい旨発表された際に、3Gのラジオは電気食いすぎるとJobs氏がのたまった件をけなしたのは記憶に新しいところでありますが、先週のCNET報道によるとドイツではT-mobile、フランスではOrengeにてiPhoneを取り扱うことになる(みたい)との事。ほほう?

英国市場はT-mobile、Orenge、VodafoneとO2がどんぐりの背比べをしている市場なので、どこと組んでも大差無いといえば大差ないはずですが、元BT系列とはいえ、現在はスペインのTelefonica系列に組み込まれているO2と(英国市場限定で)Appleが組んだのはなぜだろうと思っていたのですが、独、仏市場での動きが上述の報道通りで決着するなら、Appleは市場毎の分割統治(できるほど競争力あるか謎ですが)を狙っているということかもしれません。

となると、Appleの最優先課題はAppleらしく(Appleにとって)利益率の高い提携であり、シェア確保はさして優先していない可能性が高く、ワールドワイドシェア1%という目標は字義通りの目標ではなく、ワールドワイドで差別化ブランドとしてのニッチプレーヤーとして存在感を獲得する、という程度の意味しか持っていないのかも。

とすると目指す姿は伝送レイヤーを持たず、アプリケーション層の支配だけをする閉じたエコシステムの構築なのだろうと想像できます。とするとあまり強いキャリアとは組みにくいはずでVodafoneの名がどこからも聞こえてこないのはその辺にも理由がありそうです。

となると日本での提携候補本命と一部で言われているNTT DoCoMoではありますが、プロダクト&サービス本部とは話がつかない可能性が高いんじゃないでしょうか?法人営業本部ならやりたがりそうですが、こちらはApple側が難色を示しそうです。となると孫氏の鶴の一声が絶大な影響力を発揮するSoftBank Mobileで、という話もありそうだなぁ。なお、正直なところ3GPP2系のauはほとんど可能性が無いと考えております。

どっちにしろ、2008年以降の3G版投入されてからの話ですが。

iPhoneそんなに好きかね?

2007-09-20 04:23:46 | メディア
と普段スルーしているのに、珍しく突っかかってしまったのは松村氏のこちらのエントリ

Appleがスタバと協業するとの9/6付け報道について、

これがStarbucksだけのモノであり続けるのは、いささかもったいない気がしないだろうか

と問うているけれども跳箱には本気で思考しているようには思えない。iPhone持って六本木をうろついている自分に酔ってるだけじゃん?(なぜそんな行動で酔えるのかそもそも非常に疑問ですが...。)

日本レコード協会によればすでに着うたフルの類による移動体向け音楽配信事業は1,129,400万円規模(まだまだ小さいねぇ)とインターネット(要するにPC向け)配信の126,500万円の10倍近い規模に成長している。

AppleはWiFiを伝送手段とせざるを得なかったがゆえに特定の効果的なシナジーが期待しえる規模のパートナーと提携するしか選択の余地が無かっただけ、とは考えられないんでしょうか?

音楽配信というコンテンツサービスの視点から考えるなら、端末制約条件がゆるい(たとえば3G端末ならなんでもあり)とした方が機会損失減るのでハッピーだし、電波届くところならどこでも売り場となりえる方がこれまた機会損失が減るのでハッピーです。後はその"場"に居合わせた顧客に購入機会があることを意識させる仕掛けさえあれば携帯電話向けの配信スキームの方が応用範囲広いよね。(iPod利用者の方が購入意欲は高いかもしれませんが)

あとは、アフィリエイトモデルなどの利益分配の仕掛けとTags(メタデータといってもいい)と認証認可(つうか決済)フレームワーク(SSOとベタに言ってもいい)を利用した購入フローがあればいい。TagsにはFelica2.0でもQRコードでもなんでも使えるし、認証認可はOMA DRM2.0とデジタルマネーの類を使って匿名化してしまってもいいでしょう。Appleとスタバの提携はこの部分の仕掛けをシステムの制約をそのまま利用する形で構成しているだけなので、ビジネススキームがスケールフリーしません。これはいまいちな実装です。

ちなみにFMC(ゲスト端末をどう扱うかにもよりますが)を利用することでiPhone or iPod + WiFiという縛りにちかい構造を作ることも可能でしょう。

すれ違う人のiPodの中身をサーチできたりするとさらに面白い

なんてのもそれこそFeliCa2.0やBluetoothで十分できる。てことは携帯電話なら対応端末の稼働台数にもよるけどすぐ実用化できることは請合う。が、十分に簡単な操作で、かつ十分に低消費電力で、十分にプライバシーを守って実現できるか?と問われるとかなり疑問が残る。

しかしなんでこの人はこんな出歯亀的なサービスを欲しがるんでしょうか?

iPhone(とか)あれこれ 

2007-09-19 23:02:31 | メディア
今年の一月に江島氏絶賛なiPhoneにきっちりケチ(江島氏のブログコメント欄参照のこと)つけ(カメラ付いてたのな、買ってから気づいたよ)てたんですが、概ね跳箱的予想通りに事態が推移している点、ゲンナリするほど予想外が少なくてつまらなかったんですが、CNETによると英国版も米国既販売製品スペックのまま発売するとのこと。

CNETにも移動体通信網をちょっとは判っている書き手がいるらしく、跳箱もTom Krazit氏指摘の懸念点にはすべて同意であります。

補足するなら手元のm:metrics資料によると今春時点で米国市場における3G契約数は13%を超え(2700万超えてます)ている(し、データを見る限りTiping Pointは突破した模様)とのことなので、

米国では少し事情が異なり、iPhoneが使用している基本的なGSM規格と互換性がある3G技術は普及が始まったばかり

という状況認識は少々採点甘めじゃないでしょうか?

また、そもそもJobs氏が主張する、

「3Gチップセットは電力を大きく消費する」とJobs氏は言い、さらに3Gチップセットでは2008年まで十分なバッテリ寿命を得ることができないと考えている

との主張のうさんくささについて突っ込んでおいて欲しかったものです。W-CDMAなんて受信30mA、送信60mA程度しか消費しないので802.11gが200~500mA消費するのと比べてどこがどう電力を大きく消費するのか?とか。(もっとも、そんなこと知らなくても無線LAN立ち上げているとき恐ろしい勢いでバッテリーがヘタる経験をしている各位はピンときそうなもんですが)

なお、Appleは世界市場で当面1%のシェア獲得を目標にしているらしいのですが、これはざっと年間1000万台の販売を指します。プライスアクションによって急激なえびぞりカーブを実現(したとAppleは主張している)し2ヶ月で100万台を捌いた(ことになっている)わけですが、これでは一年掛けて(売れ行きがまったく落ちないと仮定して)も600万台売れるかどうか(新発売効果入れても)です。ざっと40%ほど足りないんですがどうやって穴埋めするつもりなんでしょうか?

ところでX01Tがまるっきり発売される気配が無いのでG900を日本語化して緑色のUIMで動かしているんですが実務的には非常に快適であります。しかし、同時期に調達したN904iW53CAをいぢってみて思ったんですが、日本に限らず、大多数の携帯電話ユーザーにはiPhoneを含むスマートフォンってコストパフォーマンスの悪い選択肢になる可能性が高いんではないかと予感した次第。

跳箱的には920SHの完成度に期待したいところ。

パブコメ締め切り祝い

2007-09-10 16:57:57 | メディア
携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会がパブコメを募集していた件、9/7に無事締め切りを迎えたので外野的に遠吠えしてみる。


提案概要
利用者がサービス提供事業者や受信端末の形態などの情報利用の周辺条件を意識せず、どのような状態であっても、一貫した情報利用が可能となるサービス体系の実現を希望する。

ビジネスモデル分野
広告、プロダクトプレースメントを含むアフィリエイト等の無償モデルから情報課金や端末指定にいたる有償モデルまですべての事業モデルを許容するべきと考える。
大量の視聴者を獲得しえる時間帯またはコンテンツに関しては無償モデルによるサービス提供が適しており、特定少数による強い需要が想定されるコンテンツまたは配信資源稼働率の低い時間帯においては有償またはアフィリエイトといったモデルが適していると考える。
これらの事業モデル多様性を担保しえる制度および技術選択が望ましい。

制度分野
VU周波数利用機構(仮)といった一種のゼロ種事業者的プラットフォーム事業者を市場参加を希望する事業者の資本参加によって設定し、米国において700MHz帯利用についてgoogle社が提案しているような利用条件の公平な動的割付の実行者としての権限と義務を負わせることによって希望事業者に対する参入機会の確保と収益機会の確保を同時に実現することを提案する。

技術分野
今後、全世界で普及が進むであろうIPTV技術標準の携帯端末向け仕様を標準化提案を含め日本発で行うことを想定する。利用者にとって提供事業者の違いや利用条件の違いを意識する必要性を最小限とするため、個人認証を必須条件とし、正当な条件に基づく情報利用の最大化を実現するためMarlin乃至OMA DRM2.0以降といった転々流通を実現可能な著作権保護技術の採用を想定する。また、SSO技術の採用によって提供事業者をまたがってもシームレスなサービス利用を実現することによって利用の敷居を低く保つことも肝要と考える。

どんなもんかと。

すごい教科書

2007-08-10 21:13:00 | メディア
毎度おなじみサンフランシスコはユニオンスクエアのBorders工学書コーナーで立ち読みして、あまりの網羅っぷりとそれに伴う詰め込みっぷり、なにより全体像理解の高度さに絶句した、

Wireless Communications

Cambridge University Press

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の日本語版が発刊した

ゴールドスミス ワイヤレス通信工学 基礎理論からMIMO、OFDM、アドホックネットワークまで
Andrea Goldsmith
丸善

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ので早速取り寄せてざっと読みしてみた。うーん、濃厚であります。

本書一冊で携帯電話どころか無線通信に関する技術知識の基礎が網羅的に得られることを請合います。が、索引込みで850ページにすべてを突っ込むという荒業を実現しているために個々の項目についての説明は非常にさっぱりしています。記述内容が良くわからん、という事態に陥った時は章毎に纏められた参考文献を当たっていく必要があるでしょう。(ただし参考文献が英文論文中心なので初心者はここで挫折する可能性高いです)

読めば読むほど味の出る本です。翻訳に当たった各位の力量もすばらしいと思います。いやー、久しぶりにベタボメです。

さて、この教科書を使って勉強を進めるに当たって確率過程(ランダムプロセス)とフーリエ解析の基礎知識が必要だろうと著者は指摘しています。

跳箱としては現在入手可能な範囲で、

統計学のための数学入門30講 (科学のことばとしての数学)
永田 靖
朝倉書店

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ウェーブレット解析の基礎理論
新井 康平
森北出版

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を推薦しておきます。フーリエ解析は目的じゃなくて手段なんで、ウェーブレットを勉強しておいたほうが実用的でしょう。

ちなみに実用的じゃない方面に関心がある方には、

虚数の情緒―中学生からの全方位独学法
吉田 武
東海大学出版会

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指数・対数のはなし―異世界数学への旅案内
森 毅
東京図書

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をお奨めしておきます。単純に楽しいです。

ところで、本書はその名の通り、狭義のワイヤレス通信工学を取り扱っているので、当然のことですが、通信網サービスの全体像を本書によって学ぶことはできません。

構成要素としては、

情報通信網 (電子・情報通信基礎シリーズ)
五嶋 一彦,北見 憲一
朝倉書店

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の章建てなんかが手頃でしょう。が、この本も初学者向けに構成要素を網羅的に取り扱っている上に180ページしかないので各項目の記載内容が凄まじく薄いです。この本一冊で完結させるのではなくとっかかりの一冊として取り扱うといいでしょう。

少なくともワイヤレス通信工学がスルーに近い取り扱いをしている部分で跳箱が実務上重視する範囲を取り扱っている教科書として、以前にも紹介している、

最新コンピュータネットワーク技術の基礎
川島 幸之助,増田 悦夫,宮保 憲治
電気通信協会

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トラヒック理論(に基礎を置いたシステムサイジング)を勉強しておいた方が良いと思います。(強烈に推奨)ここが解っていないと網サービスの事業計画などは書くことができません。

なにはともあれ、良い本が訳されたもんです。まずはメデタイ。

Information Visualization

2007-08-09 22:18:02 | メディア
いったいどういう基準でUIデザインしているのか、どうもよくわからないSiteSneaker2007 betaは、

ウェブをぶらぶら見る“ぶら”ウザが作りたかった

ためにこうなったらしい。うーむ。

跳箱も情報を視覚化して表現するのが大好きなクチ(なのでMathematicaが大好きです。6欲しいです。5.1のまんまだよ...。)なので情報視覚化と訳されるInformation Visualizationは関心分野の一つであります。(適当な入門書など挙げたいところですが和書にいいのがないのでxightあたりをリンクしとく)

なので、編集工学研究所のCRONOSは結構面白いと思ってたし、その翌年あたりにGrokkerが発表(当時はデスクトップアプリだった)された頃は結構注目してたんですが、モノにおけるユニバーサルデザインのように身体性に還元しにくいコト(情報含む)における普遍性を持ったデザインの実現ってやったことある人ならすぐ気付くとおり、民俗というか社会習慣の制約を受けつつ、一種の社会関係資本を形成していく、くらいの勢いの要るテーマだったりするので、なかなか普及に至らないんですが、ゆえにオモシロイとも思ってたりするので、まったりフォローしていきたいところです。

今回のSiteSneakerについてはgoo Labの3D検索実験っぽさを感じるのですが、跳箱的にはCone Treesのような構造が見える系が好み(とはいえ、構造図系って文字情報も含めてきれいに表現することに成功している(と感じられる)事例が少ないのでなんとかならんかなぁ。ワーマン先生再びでありますよ。

理解の秘密―マジカル・インストラクション (BOOKS IN・FORM Special)
リチャード・ソウル ワーマン
NTT出版

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SWIMあたりに頑張ってもらわないとなぁ。ガムバレ~。

既成事実化に余念のないYOUTUBE

2007-08-03 00:11:02 | メディア
米国版において昨年末に実装するはずだった "New Content Identification Architecture"を今年9月に提供開始と証言するも舌の根も乾かぬうちに、それって難しいかも?と手のひらを返し、相手があきらめるのをひたすら待っているだけなんじゃないか?と、ふとYouTubeに偉大なる首領サマ級の不気味さを感じたのですが跳箱主観でありますからほっといてください。

日本語版YouTubeがまだ存在しなかった今年2月に日本の権利者団体とYouTube創業者は協議していたが、権利者団体と合意形成を図ることなく日本語版の投入に踏み切り、日本法を尊重することもなく、日本語版の投入から一ヶ月以上経ってから日本の権利者団体との二回目の協議の場を(ようやく)持ったところで、

「究極的には、サーバ内にあるすべての日本発コンテンツ(正確には著作権を侵害している内容)を一度、すべて削除する」(松武氏)ことを差しており、JASRAC・菅原氏も同様の意思が24団体の総意であることを暗に認めた

と強硬論が噴出しても当然とも思えます。

それにしても、

YouTube上に無断掲載されるコンテンツの多くがテレビ番組であるにもかかわらず、放送事業関係者(放送局、日本民間放送連盟など)が当日の会見で登壇しなかったことについては「単にスケジュール上の問題」(菅原氏)と説明した

どっちつかずの態度に終始する関係者の決断力の無さにはゲンナリします。こんな人々を担い手として想定しなければならないコンテンツグローバル戦略ってほんとに実現できるんだろうか?この点、かなり強く疑問符を付けたい。

モノじゃなくてコト

2007-08-01 16:04:52 | メディア
モノからコトへ、(by 竹内 薫)じゃないですが、エクスペリエンスのデザインが大事なのはいまさら言うまでもありません。

物質をめぐる冒険―万有引力からホーキングまで (NHKブックス)
竹内 薫
日本放送出版協会

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が、

コミュニケーションという本来の目的を忘れるようなものにしたい。『街を育てたいから○○さんにメール打たなきゃ』というようになったら面白い

という猪子氏の企画は本末転倒というか、どこまでも内向きに落ち込んでいく倒錯美とでもいうものでしょう。

もともと2画面端末の企画はかなり前(跳箱が知る範囲でも5年以上)からありましたが、かの2画面特許裁判の影響やらなんやらで公開試作が発表された頃には、だからなに?な物体に成り下がっていた記憶があります。と、いうか画面が複数個あること自体は価値じゃないでしょ?ダブルカセットデッキ(高校生のころ持ってたなぁ)と同じでしょ。良い悪いは置いといて、当時、オリジナルテープ作ったり、友達同士でテープダビングしたりする習俗が広く見られたからこそ、カセットデッキをニコイチした企画は受け入れられたわけであって、ユースケースありきで機器をデザインしないと説得力は生まれないでしょう。せめてデナインジャーになぜ2画面が必要なのかきっちりプロを納得させる力のある説明つけないとねぇ。

KDDIの人にどうしたら商品化されるか聞いてみたがわからなかった

だろうねぇ。KDDIの人も相当困ったと思うよ。

要するに内輪受けは内輪でやってくれ、ということでしょう。事業性に関する考察が欠落したやってみたいからやってみる、系の思考とビジネスの接点は企業をタニマチとしたパトロン経済でしか成立し得ないでしょう。ところが、ネットワークの中立性に関する懇談会通信・放送の総合的な法体系に関する研究会の動きを見ても解るように、世界市場における事業存続と発展か、さもなければ死か?といったくらいの危機感をもってイノベーションを模索しているのが現在の日本のICT産業関係者の立ち位置であろうと思います。趣味に走っている状況じゃないんじゃないかと。

たとえば、ちょっと古い話だけどJeff Han氏がTED2006(ちなみに次のTEDは来年2月、すでにWait listだけど)で発表したマルチタッチ(iPhoneのマルチタッチとはやってることはほぼいっしょだけど別物)面白かったし、最近でも同じ系統でVNC on your iPhoneなんかイケていた。

ハードウェアを作る(もしくは作りたい)のであれば、ネットワーク外部性といった文化的、社会的制約に依存せず、ハードウェア自体が生み出すエクスペリエンスによって幅広い層の需要を喚起する企画を志向してはどうだろう?(まあリアルフリートみたいなスノッブ路線もありっちゃありだけど、オルタナティブでしかないんで、ここは一発、正統イノベーション系を所望したいんであります)

喉元、過ぎてないから

2007-07-31 02:32:34 | メディア
跳箱的に粘着しているYouTubeが昨年、年末までに "New Content Identification Architecture"を導入して著作権侵害をシャットアウトするんであるといっておきながら今年も折り返し点を過ぎているにもかかわらず、いまだに提供できていない件について続報が入った模様。

技術に疎い迂闊な弁護士が、オーバーランした、というだけのような気もするけれども、

YouTubeを10月に買収したGoogleは、デジタルビデオフィンガープリントのライブラリ構築を計画している。GoogleとYouTubeの代理人を務める弁護士の1人、Philip Beck氏は、このコードを使えばYouTubeにアップロードされる映像をコンピュータシステムがスクリーニングできるようになる、と述べた。Beck氏はさらに、映像の著作権の有無をチェックするスクリーニングプロセスには数分しかかからない、とも加えた。

ほほう、ほんとに実用になるレベルで実装できたら凄い技術ですがホントにできるんかいね?実用的なレベル、というからには、掲載されている著作権侵害ファイルを最低でも過半数は検出、除去できないとなぁ。常識的に考えれば過半数処理できてもケチ付き捲るだろうけど。(口が悪い跳箱がこんなに譲歩するくらいですから、相当難しいことである、と理解いただきたい)

Beck氏の陳述に対するコメントを求められたGoogleは、再びあいまいな回答をしている

だろうね。技術的に少しでも良心が残っていたら安請け合いはできないはずです。もっとも、技術的良心に従ってのことではなく、単に時間稼ぎを狙っているだけなんじゃないかと思いますが。それにしても、本気でスクリーニングを自動化しようとすると原本データ(ようするにパクリ元のビデオとか番組とか)を全部収集する必要があるんですが、このあたりどう準備するつもりなんでしょうか?

まさか、ネットにおけるファイルの正統性検証を行う一種の著作権管理事業者になろうなんて焼け太り狙いだったりするんでしょうか?

わーお?

モデルチェンジ

2007-07-30 17:23:15 | メディア
ついさっき、米国の移動体通信ARPUについて触れたところだからついでに日本のARPUについても拾っておこう。

Willcomが以前から手がけていた組込分野に携帯電話会社もぼちぼちデータ通信機能内蔵ノートPCといった形で手を出し始めた模様でなにより。ソリューションと称して携帯電話端末販売に紐付けることを想定したSI案件(腸ねん転おこしているんじゃないかな案件多し)より、よほどストレートに世の中の役に立ちます。(ハンドオーバー性能その他)とはいえ、料金体系は保守的で実験色が強く、今後に向けたデータ集めにとどまるような気もします。

なんにせよ、日本の移動体通信サービスを再び"やわらかく"し(経済学的な意味で)効率的な状況の実現に向けて軌道修正するために、こういった動きには注目したいところです。とはいえ、一定以上の販売実績を挙げないと、この手のチャレンジはあっという間にしぼんでしまうので、少々はらはらしながら注目することになりそうです。(売れるといいなぁ)

さて、日経が纏めたデータなど眺めていると、もうしばらくすると音声ARPUの絶対防衛圏死守のために一見、コンシューマ向け音声定額(おそらくはミニマムコミット+プライスキャップか)投入もありえる状況となってきたようにも思えますが、なんら技術的裏づけの無いマーケティング主導の音声定額を日本のキャリアが正面切って仕掛けるとは考えにくいので、音声IP化というか、IP based RANというかFemtocellの実現(SoftBankは2008年と言っているらしいですが、法改正その他の仕込を考えるともうちょっと先になるのでは?)によるFMC商用化のタイミングまではお預けになるのではないかと。

となってくると、今後数年はトリッキーなマーケティングと単発技術(商品)で目先をごまかし続けなければならないはずで、しばらくまったりするのかも。なんて思ったりもしますが伏兵WiMax絡みで面白いことが起こりそうな予感もあるので、まだまだ楽しめそうな市場です。

すまん、まとまらなかった。

チープ

2007-07-19 17:19:14 | メディア
Il Fornaioで昼飯を食ったあと、アポまでの時間つぶしにUniversity Ave.をプラプラ。ひやかしで入ったはずのAppleストアなのに出てきたときにはiPhone8GB入りの白いビニール袋を持っていたのはなぜ?

まあいいか。

あれから一週間、朝からバタバタと北京からの団体客を捌いて客にちなんで遅めの昼飯をなじみの中華屋でかっこんではたと、iPhoneどーしたっけ?と思い出したが吉日とばかり午後のアポをすっぽかしてインチキアクティベーションにいそしみ、しばしいぢくってみた。結論、

なんともチープな機械だ...。

パッと見のインパクト重視のデザインで実質的にはローテク商品です。UIはよくできていますが、個人で買うなら数世代待ったほうがいいでしょう。現時点では実用品としてはWindows Mobile積んだスマートフォンの方が優れていますね。(あ、IMAP対応したメールクライアントは良いなと思いますが)

Appleが絶望的なまでに移動体通信技術を理解できていないことが解る(もしくは事実を認めたくないがゆえの妄想発言か?)ITMediaのiPhone発売日掲載の記事を見つけたので参考までリンク張っとく。

やっぱりAppleは技術企業じゃなかったんだね。

YOUTUBE開き直る再び

2007-06-20 03:52:48 | メディア
曰く

我々の理念は、ユーザーのビデオを共有することだ

"ユーザーのビデオ"とは"ユーザーが作成した(または著作権を持つ)ビデオ"なのか、"ユーザーがテレビ放送などを受信し録画した、またはDVDなどからコピーしたビデオ"なのかどうにもよくわからないのはいつものことなので、まあどうでもいいかなのは例によって例のごとくYouTubeのこと。(おお、この書き出し久しぶりな感じ)

6/19サービス開始となっていますが、YouTube Japanは早くも著作権侵害臭がぷんぷんするこんなのとかこんなのとかこんなのがうじゃうじゃアップされておりまして、Hurley氏の、

Hurley氏:YouTubeは当初からコンテンツの著作権にバリューがあるという考えを持ち、きちんとルールを守ってきた。権利を有する者だけがそのコンテンツをアップロードする権利があると考えている。

というセリフが空虚感たっぷりで素敵です。

そもそも、YouTubeは昨年9月にNew Content Identification Architectureを2006年中に出すから著作権侵害問題は解決される、という立場だったはずですが、いまだに公開されておらず、著作権侵害は続くよどこまでも状態となっています。やらなければならない公約を後回しにして国際展開を優先するこのあつかましさ。

どうよ?それ?

それから規約廻りについてですがマッキーファンクラブ会員(だれかほんとに作ってくれ!)としては、

お客様は、当該本ユーザー投稿が公表されているかを問わず、YouTubeはいかなる本ユーザー投稿に関する秘密保持をも保証しないことを理解しています。

という鬼畜生な規定はまあアリと見なすにしても、

お客様は、自己の本ユーザー投稿及びそれらの投稿又は公表に伴う結果につき単独で責任を負うものとします。本ユーザー投稿に関連して、お客様は、お客様が、本ウェブサイト及び本サービス条件において企図された方法での本ユーザー投稿の掲載及び使用を可能にする、全ての本ユーザー投稿に対する一切の特許権、商標権、企業秘密、著作権若しくはその他の財産権を保有するか、又は、これらを使用し及びYouTubeをして使用させるのに必要なライセンス、権利、同意及び許可を有していることを確認、表明及び/又は保証します。

という規定については、それは責任逃れなんじゃないか?と突っ込みたい気持ちでいっぱいですし、日本の著作権法を回避する目的も含んでいるであろう、

お客様は、(i)YouTubeウェブサイトが、カリフォルニア州のみを拠点とするとみなされること、及び(ii)YouTubeウェブサイトが、カリフォルニア州以外の法域で、特別又は一般的であるとを問わず、YouTubeに対して人的管轄権を生じさせない、受動的なウェブサイトとみなされることに合意します。
本サービス条件は、カリフォルニア州の抵触法の原則を顧慮することなく、カリフォルニア州内の実体法に準拠します。
全面的又は部分的にYouTubeウェブサイトから生じる、お客様とYouTubeとの間のクレーム又は紛争は、カリフォルニア州サンマテオ郡所在の管轄権ある裁判所により専属的に判断されるものとします。

といった準拠法表示と裁判管轄規定に加え、ミレニアム著作権法準拠をうたうためと見られる著作権の侵害に冠する通知は非常に問題が多いと考えます。

それに、"ユーザーのビデオを共有"という理念を振りかざしておきながら、

各国版の展開にあたっては、BBC、France 24、Spanish Antena 3、Cuatro TV、the Portuguese RTP、the Dutch VPRO、NPOなどの放送局や、Chelsea FC、AC Milan、Barcelona FC、Real Madridなど欧州のサッカーチーム、グリーンピース、Friends of the Earth、UNHCER、Medicins du Mondeのような非営利団体など、数多くの海外の大手コンテンツパートナーと契約を結んだ

ってなどういうことですか?言っていることとやっていることが一致してません。でたらめです。

こんな利用者を道具扱いするサイトに喜んでせっせと著作権侵害コンテンツをアップして自身には一銭にもならないトラヒック増大(によるYouTubにとっての収益機会増大)に貢献し、違法行為を繰り返すことによって自身の法的リスクを増大させるお人よしな利用者はそれはそれで面白い生き物だと思えてくるから不思議です。

FONの問題 その後のその後

2007-06-16 04:40:15 | メディア
インフラただ乗りや、リスクの利用者への押し付け等々、なにかと問題が多いFONが2007/05/18に利用規約を改定したというので、どれほどまともになったんだろう?と期待(ウソ)しつつチェックしてみることにする。改定されたの一ヶ月近く前ジャン、と指摘される向きもあろうけど、半年も前に書いたエントリにいまだにコメントが付いたりするので、フォローしといたほうがよかろうと。

それに、先日届いた日経コミュニケーション6/15が特集1で"FONはどれだけ使える?"と程度の低い(跳箱主観でありますからこの点突っ込み不要に願います)記事を掲載していたり、日経ビジネスも、さもNTTがFONを応援しているかのような明らかに間違った印象を読者に与えかねない大変程度の低い記事を掲載するなど、このところ日経系媒体は伊藤忠から大口の広告でも貰ったんか?と疑いたくなるような程度の低いFON翼賛記事を書きまくっているので、突っ込まずにはいられないというのも正直なところ。

新しくなったFONの利用規約でも、以前、リスクを利用者に転化していると指摘した、

「Linus」 または「Bill」の カテゴリを選択したユーザーは、本利用規約を承認し、「FONコミュニティー」に登録する前に:
(i) 「FON ソーシャル・ルーター」または「FON ソフトウェア」と互換性のあるルーターを入手し、
(ii) 「Fonero」との帯域のシェアを許可する契約を「ISP」と締結する必要があります。

条項がまるごと残っています。

また、以前から指摘されていた電気通信事業法上のリスクに対応するためと考えられますが、

6.1.「あなた」が「Linus」として登録する場合は、「あなた」はルーターを「FONコミュニティー」に接続し、FONに登録することで、「FONホットスポット」を形成することを理解しています。他の「ユーザー」は、この「FONホットスポット」を通じてインターネットにアクセスできます。これらの本利用規約に従ってこの設備を提供および管理することの対価として、「あなた」にはすべての「FONホットスポット」にアクセスする権利が与えられます。

と書かれていますが、この定義で営利性が完全に否定できるか少々疑問が残ります。

さらに蛇足感の強い、

「あなた」が電気通信事業法に基づく電気通信事業者としてFONホットスポットを提供する行為は認められません。

を記述して、参考事例として、

また、以下のような行為を行った場合には、電気通信事業を営んでいる行為と見なされる可能性があります。
-外形的に他人の需要に供すると認められる複数のルーターの設置
-外形的に他人の需要に供すると認められるステッカーの掲示

を挙げていますが、FONマップだって外形的に他人の需要に供すると認められる標章でありましょう。なにやってんだか...。

さらには、利用者が電気通信事業法に違反するリスクの高いサービスを提供しておきながら、

「あなた」が行う行為が電気通信事業を営む行為に該当するにも関わらず電気通信事業法に基づく登録または届出を行わない場合は、電気通信事業法第177条または第185 条により罰せられる恐れがあります。万一FONが電気通信事業を営む者を発見した場合には、FONは「あなた」に警告をするとともに、すみやかに是正されない場合には契約を解除いたします。

ですと。大変ユーザー思いな会社ですな。(はあと)

さらに繰り返し、エンドユーザーに危険=責任を負担させるべく、

「あなた」が「Linus」である場合には、「ISP」との契約上の義務の適合性について単独で責任を負うため、「あなた」はISP ユーザー規約において帯域のシェアが許可されているかを確認しなければなりません。FONは「あなた」がISP との契約に違反している事実を把握した場合、FONはあなたにその旨を通知し是正するよう警告します。警告が3 回に及んでも是正されない場合には、FONはあなたとの契約を解除することができます。

と記述しています。

もうひとつおまけに、

「Fonero」はいかなる場合も「通信の秘密」を侵してはなりません。「通信の秘密」を侵した場合には、電気通信事業法第179 条の罰則が適用される可能性があります。また、FONがその事実を確認した場合には当該「Fonero」との契約を解除するとともに、監督官庁へすみやかに事実を報告することがあります。

と日本では「Bill」は提供されていないわけですからFONによって「Linus」であり「Fonero」であるところの「あなた」が電気通信事業者としてFONホットスポットを提供する行為は認められていないにも関わらず、電気通信事業法上のリスクは「あなた」が負うことになる、と謎の主張を展開しています。

消費者保護の観点から考えてどうにも問題が多いとしかコメントのしようのない規約です。

以前も指摘したように、日本の大手プロバイダの多く、(日本のISP契約のうち2000万契約以上、個別ISPとしては@Nifty、OCN、Yahoo BB、BIGLOBE、DION、ぷらら)では明示的または黙示的にFONの利用を禁じています(または禁じていると思われます)が、FONの公式サイトでは世界中のISPほとんとが、FONと友達ですと、不当表示の疑いがもたれる記述を平然と行っています。

少なくとも、提携先となっている日本のISPはBB.exciteとisao.net、Interlink、Brastel Internet Provider、i-revoのみ。以前にも書いたが、BB.exiteの利用者数はせいぜい3~5万人(契約数ベース)、isao.netは今やCSKの100%子会社になってしまっているほど凋落していて経営指標が入手できませんが、isao.netのキャンペーン規模が1000人とbb.exciteの1/3にとどまる点から推測すると、1~3万契約あるかないか、といったところでしょう。同様にBrastel Internet Providerも1~3万契約あるかないか、Interlinkとi-revoは特段の記載が無いので1万契約以下と想定します。

とすると、多く見積もっても、日本でFONを明示的に接続可能と表明しているISPは5社、せいぜい13万契約(実際は、6~7万契約)しか無いと思われます。

実際問題、Flet's ISDNなどのナローバンド回線でISPと接続している利用者はFONにとってあまり魅力的な「あなた」ではない(まあ、ナローバンド利用者な「あなた」にとってはただ乗りのチャンスでありますから、結構食いつく(ついてる?)かもしれませんが)でしょうから、ブロードバンド契約数をベースに推論を進めますと、今年3月末時点のブロードバンド契約数は2644万に達していますので、FONが提携しているISPの保有している契約者数は、全体の0.5%程度に過ぎません。

その0.5%のISPシェアのそのまた10%つまり全体の0.05%、つまり1.3万程度がFONを使ってくれたらラッキー、程度のスケール感しかないFONが、

世界中のISPほとんとが、FONと友達です

とは片腹痛いです。というよりほとんど誇大妄想じゃないでしょうか?

ちなみに、冒頭で紹介した日経コミュニケーション6/15号はFONが日本国内で1万5881件のAPを獲得していると報じており、上述の試算と非常に近い値となっています。とはいえ同記事でも接続できたAPは5割と記載されているので実数は7000~8000に過ぎないと思われますが...。

FONは相変わらず問題が多いと指摘せざるを得ません。

googleあれこれ リターンズやっぱり

2007-06-12 01:33:07 | メディア
Privacy Internationalのことを英監督機関などと恐ろしい誤訳をしてくれるCNET(つうか、ここんち、翻訳早いんだけど意図的&凡ミスな誤訳多し)によるとgoogleとPrivacy Internationalがフレーミング(誤用でありますか?そうですか)中であるとのこと。

念のため指摘しておきますと、Privacy Internationalは、同団体のWebサイトに記載があるように、

Privacy International (PI) is a human rights group formed in 1990 as a watchdog on surveillance and privacy invasions by governments and corporations. PI is based in London, England, and has an office in Washington, D.C. PI has conducted campaigns and research throughout the world on issues ranging from wiretapping and national security, to ID cards, video surveillance, data matching, medical privacy, and freedom of information and expression.

由緒正しい

an independent, non-government organization

であります。

なにをどう訳すとNGO=非政府組織が監督機関などと訳せるのかぜひ問い詰めてみたいところです。ところでどうでもいいですが、非政府組織に監督機関を任せる、などという無茶にチャレンジしている政府機関があったらそれはそれで面白すぎるのでぜひ取材してみたいところでもあります。

話をPIの発表したレポート、A Race to the Bottomに戻しますと、PIはなぜgoogleの慣習に問題があるかについて、具体的に、

Google account holders that regularly use even a few of Google's services must accept that the company retains a large quantity of information about that user, often for an unstated or indefinite length of time, without clear limitation on subsequent use or disclosure, and without an opportunity to delete or withdraw personal data even if the user wishes to terminate the service.
Google maintains records of all search strings and the associated IP-addresses and time stamps for at least 18 to 24 months and does not provide users with an expungement option. While it is true that many US based companies have not yet established a time frame for retention, there is a prevailing view amongst privacy experts that 18 to 24 months is unacceptable, and possibly unlawful in many parts of the world.
Google has access to additional personal information, including hobbies, employment, address, and phone number, contained within user profiles in Orkut. Google often maintains these records even after a user has deleted his profile or removed information from Orkut.
Google collects all search results entered through Google Toolbar and identifies all Google Toolbar users with a unique cookie that allows Google to track the user's web movement.17 Google does not indicate how long the information collected through Google Toolbar is retained, nor does it offer users a data expungement option in connection with the service.
Google fails to follow generally accepted privacy practices such as the OECD Privacy Guidelines and elements of EU data protection law. As detailed in the EPIC complaint, Google also fails to adopted additional privacy provisions with respect to specific Google services.
Google logs search queries in a manner that makes them personally identifiable but fails to provide users with the ability to edit or otherwise expunge records of their previous searches.
Google fails to give users access to log information generated through their interaction with Google Maps, Google Video, Google Talk, Google Reader, Blogger and other services.

と、明示的に問題点を指摘しています。

株主資本主義チックに考えるなら、「文句あるなら使わなければいいじゃん」と突き放すことも出来ますが、自由主義社会ではもろもろのNGO(もちろん個人でもよろしくってよ)が企業行動を監視し、問題行動を社会に対して告発していくのも、もちろん有りでありますから、じゃんじゃんヤリあって落としどころを見つけていってくださいまし、と願うものでありますが、上述のレポートを発表した翌日に、PIが公表したAn Open Letter to Googleによると、

I am writing to express my concern not just at this unfortunate result, but also at communications between Google Inc and members of the media during the period immediately prior to publication of our report. Two European journalists have independently told us that Google representatives have contacted them with the claim that "Privacy International has a conflict of interest regarding Microsoft". I presume this was motivated because Microsoft scored an overall better result than Google in the rankings.

googleはPIがMicrosoftをエコヒイキしたんではないかと、

According to our sources, your representative or representatives made particular reference to one member of our 70-member international Advisory Board. This man is a current employee of Microsoft. I can confirm that he joined our Advisory Board well before he was headhunted by Microsoft. At the time he was the director of a leading UK non-governmental organization and had more than six years extensive involvement in the work of Privacy International. He is a decent, skilled and honorable man who upon his appointment with Microsoft offered us his resignation. We refused to accept it, and he continues to serve on the Board in a private capacity. As an exceptionally skilled IT and security expert he is a superb resource in our day-to-day work across many fields of privacy. To infer that he in any way influences our decisions with regard to Microsoft is not just inaccurate but it is also insulting.

PIのとあるメンバーについて個人攻撃を仕掛けていると非難しつつ謝罪を求めていて、どうも陰湿な方向に話が流れ始めているようであります。ちなみに跳箱はこの件について、現時点ではgoogle側の公式の返事も傍証となりそうなエビデンスも見つけられていないので、事実関係は不明でありますが、エリン・ブロコビッチばりにPIが勝って(なにをもって勝利とするかもナゾであります)も、それもどこまで本当やらと不透明感が増していくところがいやーな感じ。(実はどっちでもいい)

さて、実のところ、いい加減株価PVも頭打ち感が出てきたように見受けられるgoogle的には、以前指摘したように、

個々の利用者にとって有効なオントロジーを組み込んだセマンティックWebを実現するためには個人認証が欠かせないから個人弁別可能な認証スキームを組み込んだ(というか認証スキームの組み込みが利用者にとって納得性の高い)サービスを構築して、あわよくば広告収益以外に実体経済におけるマネーフローに食い込むことによって収益機会を増や

したいんでしょうが、これまた以前指摘したように、

冗談抜きでgoogleの上下分割(アナロジー)を本腰入れて議論する必要があるかもしれません。特に欧州市場においては喫緊の課題

つう予感が現実の問題として浮上してくるかも。

ぶっちゃけ、跳箱は跳箱的要求を満足させるレベルでSemanticしようとするなら、最低でもゼロ二つ三つ分、伝送、記憶、演算の価格性能比を向上させる必要があると考えておりまして、簡単に言うと光スイッチ、光メモリ、量子計算機が秋葉原で特売品になる時代に実現されるものであろうと考えています。跳箱が定年退職するまでに何とかしてほしいです...。

当然、誰かさんが好きな表現だとネットのあちら側で資本集約すればこちら側で何とかするより早く実現させることも可能なのではないかという議論もありましょうが、あちら側とこちら側で使っている技術が根本的に大差ないものである以上、それはある程度の役割分担を設定したあちら側とこちら側の共同作業の形(一種のP2Pというか分散処理エコシステム)で徐々に形成されていくものではないかと想像してます。

そのような社会システムの形成過程ではAuthentication、Authorization、AccountingとそのトリガーとなるIdentity managementをどのような体制によって実現するかは秩序形成の根幹を成す重要なテーマであると認識しているので、この辺の議論はつまらない個人攻撃やら泥仕合やらでS/N比を低下させることなく、真摯にかつ徹底的に遣り合っていただきたいものであると心から思います。

とりあえず跳箱の現時点での感想としては、googleあんたちょっとセコイよ?な感じであります。