跳箱

跳び箱でも飛箱でも飛び箱でもとびばこでもいいけどそこはそれ跳箱なんです。体育日和のお供にどうぞ。

オオカミが来てる

2007-08-09 20:56:30 | 通信
6月のJPNICによるIPv4アドレス枯渇予測の発表を受けて総務省はインターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会を立ち上げるとのこと。相変わらずナイス連携プレーであります。

本来なら関心項目毎の経緯把握のためだけにメモを残しておしまい、のはずだったんですが、研究会メンバーに二木さんが入っててちょっとびっくり。あとで話を聞きに行かなければ。ついでに晩飯たからなければ。てゆうか役員就任おめでとうございますっていつの話だよ...。(遅い)

諸行無常

2007-06-20 02:38:01 | 通信
ピッカピカのSonus Networks製VoIPゲートウェイを引っさげ、日本全国3分20円という当時としては破壊力抜群の料金体系を武器に華々しく登場したフュージョンも、携帯電話の普及とメールなどの通信手段の増加に伴う総音声通信時間の減少やADSLや光回線の普及にともなう050系IP電話の一般化による価格訴求力の低下のあおりを受け、あっという間に"その他大勢"として埋没してしまった今日この頃。

東京電力で継子扱いされていた日々に終止符を打ち、楽天グループ入りするとのこと。

eBayによるPayPal買収は本業におけるコア機能の自前化と位置づけられたので、買収されたPayPalは大切に育ててもらえる可能性が高そうでしたが、楽天によるフュージョン買収は所詮周辺機能、しかもオンラインサービス企業なら、なるべくなら避けて通りたい音声による同期通信機能(カネも手間もかかるのであまりうれしくない)の買収であるため、フュージョンにとってあまり幸せな将来像が描けないのがなんではあります。

当期損益-14.55億円とはいえ、売上541億円、総資産143億円、純資産40億円、資本金109億円の会社を議決権比率で54.27%取得するのに要した費用が6.73億円でしかない点から、法人顧客を一件2500円で買っただけ、とも思えてしまいます。

まさに、楽天の立場に立てばリリースでも触れられているように

法人取引先約27万社の顧客基盤

が、目当てであったのかもしれません。

とはいえ、フュージョンの音声呼サービスを利用している法人が楽天にとって扱いやすい顧客(もしくは出店者候補)であるのかと問われると少々疑問が残ります。それでも手を出さざるを得なかったのだとすると、やはり、楽天本体の事業成長性が限界に来ているということなのかもしれません。(別段目新しい指摘じゃなくてごめんね)

スマートに中継系サービスばかり提供してきたためにフュージョンには顧客離れを防ぐ手段があまりありません(050番号には番ポがありませんから電番変更くらいか)から、親会社が異動して、どの程度顧客数を維持できるかも今後の見所であります。

TBSが楽天子会社になるようなら少しは光明も見えたかもしれませんが、TBSは無事防戦準備完了したようですし...。

オオカミが(やっと)来た?

2007-06-20 01:15:25 | 通信
これまでも識者によってさまざまな場でIPv4アドレス枯渇の問題は指摘されていたし、IPv6利用によって得られる新たなメリットの提示もなされてきたけど、笛吹けど踊らず、てな感じでエンドユーザー周辺でのIPv6導入はからっきし進んでいなかったのは各位ご承知のとおり。(ご承知で無い方はこの先読まないでいいっす)

さて、本日、業を煮やしたJPNICがリリースを発表、曰く、

最近10年間の急激なインターネットの発展によって、 現在インターネットで利用されているIPv4アドレスについて、 地域インターネットレジストリの未分配 IPv4アドレスの在庫が2010年には無くなると予測されています。
この在庫が枯渇しても既存のインターネットが使えなくなるわけではありません。 一方、中長期的にインターネットを拡張、 発展させるといった視点から考えると大きな制約となり、 時間が経過するほど問題は深刻になることは確実かつ不可避な状況です。


ついにオオカミがやってきたぞと。

JPNICが公開しているIPv4アドレスの在庫枯渇に関して、という資料に掲載されているGeoff Huston氏によるIPv4アドレス在庫枯渇予測グラフはよく出来ています。よく味わいたい向きは、同氏の作成されたIPv4 Address Reportを一読されると良いでしょう。

一部には、IPv6なんかスキップしてGENIに直行すべし、なんて議論もあるようですが、2Gサービスをスキップして3Gに突撃しようとしたらずっこけた欧州の故事を引くまでも無く(この比較が強引という向きカモン、受けて立つぜ)物事はステップバイステップで進むのが王道であると信じる跳箱的には、いま、ここにある危機、といった風情の今回のリリースによって世間の関心が集まる(わけないが)のは大歓迎なんであります。

同じく6/19発表のgooリサーチの調査結果によると、概ねIPv6対応しているWindowsXPは84.86%の普及率に達しており、VISTAも8.68%(いずれも複数回答)に達している。通信事業者側がIPv6サービスへの切り替えを伴う商材開発(いわゆる通信サービスのことね)を進め、ルータの置き換えが進みさえすればIPv6移行は実はさほど難しくない状態になっていることがわかります。

ところで、japan.internet.comの本件記事表題のつけ方はあまりいただけない。

Vista 使用者未だ1割に満たず

事実ではあっても、"未だ"と失望感を表明するのであれば、XP普及時などと比較して普及速度が遅くなっている、等々の論拠を示すべきでありましょう。2005年の国勢調査によれば日本の一般世帯数は4822万世帯、丸めて4800万世帯として、今年3月の消費動向調査によるPC普及率71%をかけると、1世帯1台しか保有していなかったとしても3408万台のPCが一般世帯で利用されており、そのうちの295.8万台はすでにVistaを利用している計算になるわけですから、2月からの5ヶ月間、いや、大負けに負けて半年=6ヶ月間でこの台数をたたき出したことになりますから、一ヶ月に49.3万台(もしくは49.3万ライセンス)を平均して売り続けていることになります。

こんな恐ろしいスピードでこんな高価なソフトが売れているって事実を突きつけられているにもかかわらず、"使用者未だ1割に満たず"などと嘆いている記者は想像力が欠如しているか麻痺していると指摘せざるを得ません。まったくもって嘆かわしい。

さて話を戻しますと、かようにIPv6のコンシューマ展開を実現するための土壌は整いつつあるように思われるのですが、web2だかSaaSだかコンテンツだかの業界からはこのプラットフォームチェンジという一大商機を活用するアイディアが一向に聞こえてこないのはどういうわけでしょうか?低廉なマルチキャストやPAN向け認証等々いくらでも事業機会があるっていうのに。

まったくもって嘆かわしいのであります。

Wynn

2007-01-17 19:01:07 | 通信
去年IDCに噛み付いた件について、執念深くWynnの朝飯会で蒸し返してやろうとてぐすね引いて早起きしたものの...。

結局、ICDの主要顧客はモノ売ってなんぼのメーカー様なので放送や通信市場をモノ=端末なんぼ売れるか?という視点からしか見ざるを得ないんである、ライフタイムバリューなんて云ってもメーカーに相手にしてもらえないからしかたないんである、と身も蓋も無い独り言を聞かされてずっこけた。

ああ、すまん、つらい立場だったのね。

モノがコモディタイズしつつある状況でモノから収益を上げることに執着するのであるなら、それこそ反重力級の超発明によって世界の仕組みを作り直さなければならないだろうと思う跳箱としては、古巣の業界のあまりの変化の無さに少々苦い思いをしてしまったのはホントの話。

例によって黒焦げのベーコンはいただけなかったけど卵がおいしかったのとクロワッサンが絶品であったことが特記事項でありましょう。根拠地Sandsから近いのもマル。

こういうときこそ騒ぐべし

2006-12-09 00:32:48 | 通信
10月の携帯電話契約数推移の件について、11月に針小棒大である、無駄吠えするべからず、と森氏いぢめをしていた件について出来立てほやほやの11月のTCA統計を見たら、NTT DoCoMoグループの契約数が-17,500の純減となったことが判明していてさすがに跳箱も少々驚いたのはここだけの話です。

慌ててドコモ 純減 11月の検索キーでググってみたところ、現時点で記事が上がっているのは産経と系列のIZaだけ。TCAの発表は7日なので、8日の本日時点ではもっと記事が出ていてよさそうなものですが、熱しやすくさめやすいというかなんというか...。

NTT DoCoMoの契約数が純減に転落したのは携帯電話史上初めてのことなので、こういうときこそ森氏や渡辺氏のようなフリーライド派(とレッテル貼っておく)は騒ぐべきでしょう。(さすがに、こういう状況だと擁護論展開するのが難しいんで、それはそれで燃えます)

ちなみにその他の11月の契約数増減は、KDDIの契約数は324,900件の純増、ソフトバンクは68,700件の純増となっており、全体では376,100件の純増を維持して総計94,453,700契約となった模様。

シェアは、DoCoMo55.4%、KDDI28.3%、ソフトバンク16.3%で先月と変わらず。9400万分の2万だと0.02%にしかならないですからDoCoMoの退潮著しい、などというためには、少なくとも11月の減少数の10倍の規模(つまり月次20万契約とか)で減少していかないと、目に見えて減っている感は出ないでしょう。とはいえ、純増減の月次推移で見るなら、純増10万割れすら珍しく(前回は2005年10月の90,100件)ここ3年の平均月次純増数が175,000件にもなろうというDoCoMoが純減ということは実は非常に大きな事件なのです。(と正直に書いておこう)これがこれまでも時たま見られた局所的な事件なのか大きな流れなのかはまだ判りませんがこれからしばらくTCAの統計から目が離せません。

P.S.
NikkeiNetが2006/12/08/23:27に創業以来初の契約者減って見出しで記事アップしたね。

新聞ストック見てみたら、日経の12/07夕刊にも出てた。てゆうかちゃんと市場は反応してる。いまごろ朝刊を読んでてアレですが、日経、日経産業両方の12/08朝刊に載ってるね。あ、12/08の朝日、毎日、読売、産経の各紙朝刊も載せてるなぁ。紙媒体読む習慣が無くなりつつあるってのも問題だ...。

問題が多い件のその後

2006-12-08 21:03:52 | 通信
先日、説明になっていないし、問題が多いと指摘したFONの規約その他の問題点について、普段まるでコメントもトラバも付かない跳箱には珍しく反応をもらったのでコメントまとめレスがてら頂いた情報も付け加えてエントリしておこう。

まず、とおりすがり氏からOCNの約款上、FONは利用可能なのではないかと疑問を投げかけられた点について。

どうも自営通信設備といった単語の意味を間違えて理解しているようなので、歴史を説明しておこう。自営電気通信設備、といういまどき、通信機器は自分で買い揃えるのが当たり前の時代においては、いったいなんのことやら?な単語は電電公社および公衆電気通信法(もちろん廃止されてます)が生きていた昭和の昔においては市場開放の足音とともにやってきた一種ハイカラな言葉だったのはダイヤルの付いた黒電話(てゆうかいまどきの子にはダイヤルナンバー~、とか云ってもピンとこないんだろうなぁ。跳箱は一個持ってるよ)世代には懐かしい話だったりします。

今のように電話でもなんでも通信機器がどこででも入手できるようになったのは、昭和60年4月1日の電気通信事業法施行以降のことで、(いわゆるNTT法による電電公社民営化とセットになっていた)同法の施行に伴い、端末設備等規則が施行され、認定機関としてJATEが設立されてからのことです。

それ以前は、それこそ明治23年の逓信省時代から基本的に通信事業者(当時はお役所)が供給(というかレンタル)する直営端末しか利用できなかったのです。細かいことを言えば、昭和28年に船舶電話と構内交換設備(要するにPBX)が自営可能になったり、昭和32年に付属電話機(説明がめんどくさいからぐぐってくれ)利用が認められたり、昭和33年に地域団体加入電話(今は絶滅危惧種ですな)が認められたり、昭和44年に集団電話(これまた絶滅危惧種)が認められたりして非常にのんびりしたペースで極部分的に網開放(端末開放、じゃないのは網を運営している通信事業者側視点で語られるから)は進んできたわけです。その後、昭和47年にようやくデータ通信が認められて付属電話機ではなく、本電話機(実態はデータ通信端末、だけどね)を自営化することが可能になったんですが、こんなこと若い人は知らないんだろうね。(とおりすがり氏が若いかどうかしりませんが...。)

とまあ、いろいろと歴史的経緯もあって自営電気通信設備、という単語は立派な法律用語でありまして、

市販の通常のHUB、ルーター、無線LANアクセスポイント・ルーター

は立派な自営電気通信端末であり、これらを組み合わせたものは自営電気通信設備なのです。

この辺りの情報通信の歴史、って結構面白いので勉強してみたいなら昔書いたこのエントリとか読んで見てください。

同様に回線終端装置という単語も法律用語です。

回線終端装置の定義でも、回線の終端に接続すると言っているくらいですから、終端の先は契約者回線や加入者回線には含まれないと考えるのが妥当かと

と推理されていますが、ここは推理するところではありません。たとえば、事業者が提供する網を終端させている終端装置の先につながっている自前のPC(のたとえばNIC)はこの場合、自営電気通信端末となり、終端装置の先にLANを構築していればLANは自営電気通信設備となります。

OCNの約款のいやらしいところは、再掲しますが、第75条(3)利用停止条件に、

契約者回線、加入者回線又は外部接続回線に自営端末設備、自営電気通信設備、当社以外の電気通信事業者が設置する電気通信回線又は当社の提供する電気通信サービスに係る電気通信回線を当社の承諾を得ずに接続したとき

原則なんでもかんでもダメ、と規定しているところなんですが、とおりすがり氏にはよく理解してもらえなかったようで残念です。

この辺り、普通になにかの契約を結ぶときもひっかかりやすいポイントなので、

契約解釈の限界と不明確条項解釈準則

日本評論社

このアイテムの詳細を見る


などで勉強しておくと良いでしょう。それにしても約款の適正化ってのはなかなか進まないものです。

さて、一連のとおりすがり氏の主張の中で一番問題がありそうなのは、以下の、

これもダウトですね。FONはISPに許可を得ることを要求してはいません。接続が規約に違反しないか確認することを要求しているだけですので、規約を確認すれば済むことです

という点なのですが、先に記述したように、OCNの約款は「明示的に許可していない事項については許可したとみなしえない」構造になっていますので、とおりすがり氏が暗黙の内に立てているらしい「明示的に禁止していない事項については禁止されていないとみなす」という立論スタイルでの解釈は危険でしょう。

FONが、

(ii) 「FONero」との帯域のシェアを許可する契約を「ISP」と締結する必要があります。

とわざわざ断っている理由について再考することをお奨めします。

この点を含めて、Sabotenboy氏が非常に有益なコメントを付けてくれていますので感謝しつつ再掲しておきます。

---以下Sabotenboy氏コメント再掲---

既に他所で大手ISPからの見解を収集している方がいます
http://d.hatena.ne.jp/blackjapan/20061206/FON

各社の利用規約の各自の解釈はさておき(どうせいつでも一方的に変更可能なんですから)、基本的にFONは受け入れられていないようですね

FONの各種文書を読んでると、いまひとつな点が多く、はっきりいって見切り発車のツケをユーザに負わせようとしている意図が透けて見えます
(どうして大手ISPの了解を取り付けてからスタートしなかったのか、それは断られたからでしょう)

どうせISP側からFON利用という規約違反を検知出来ないだろうし、出来たとしても責任はユーザーに負わせておけば...、これはただ乗りに他ならない様な気がしますね

あと蛇足ですが、裁判管轄は非専属なのでなんだったら東京地裁に訴えることも可能ですよ、でも英国法ベースの裁判を日本でやることになるので、英国法の規定が「証拠」として用いられる変則裁判になる上、扱う弁護士の問題もあり現実的でないですけどね
また本邦居住者に対して英国の裁判所で裁判を起こされたら、...個人レベルでは対応できないでしょうね、小さな会社でも難しいと思います

LA FONERAも、キャンペーン期間中ですら送料込みで約千円、キャンペーン後は約三千円とすると、メンバー加入にあたって大したインセンティブにはならないので、欧州に比べ安価な無線ルーターが入手しやすい日本では、ISP側のムードが変わらないとビジネスとしては早晩アウトの様な気がします

勝手な思い込みでコメントしてみました^^;

---再掲ここまで---

Sabotenboy氏が紹介されているセリザワ氏の体当たりなエントリは現在、FON利用を検討中の各位にとって大変参考になる資料といえるでしょう。セリザワ氏にはお手数ですがぜひOCNの回答も掲載いただきたいものです。(期待してます。なんなら各ISPの利用者数データ出しますので網羅的にやりませんか?ちょっと面白いかも。)

ちなみにセリザワ氏も指摘されていますが、BB.exciteの規約は実は10/1から変更されていません。一部記事で伝えられるFONとのID連携も実施するならプライバシーポリシーも変更が必要になるのではないかと考えているのですがプライバシーポリシーも10月以降変更されている形跡が無いのも気になります。

Sabotenboy氏が指摘されている通り、跳箱もFONは大手ISPに相手にされなかったのだろうと思います。excite山村社長はどうもニッチャーを目指しているようでもあり、通信事業が本業というわけでもない点がFONの話に乗れたポイントだったのかもしれません。

非専属の件について丁寧な解説ありがとうございます。ご指摘の通りであります。ゆえに「求めている」んです。(にやり)

ところで、一部2chなどでFONの所在地等の記載がどうの、という話題に日本法人の住所を記載していたりするけれども、機器販売については日本法準拠(契約主体はFON Japan K.K.と読めるがホントか?)でサービス利用は英国法準拠(契約主体は英国法人)という変則契約のナゾを考えるとそれでよいのか?誤認が誤認を呼んでしまうのではないかと危惧してますし、「フォネロプロミス」の拘束力についても謎があります。

The Fonero PromiseとはユーザーとFONの間における、世界にWiFiコミュニティーを広めていくためのお約束です。 La Foneraを購入し設置することで、私はFoneroとしてFONコミュニティーの一員となり、FONの目指す世界WiFi市民の創造に賛同いたします。つまり自分のアクセスポイントを他のユーザーに開放することは、Foneroとしてのマナーであり、具体的には1日の大半において他のFoneroからのアクセスが可能になるよう私のアクセスポイントを開放いたします。

上記の謎の宣言に同意しないと注文できないのであればフォネロプロミスは機器販売契約の一部をなしている可能性があるんですが、このあたりどうなんでしょうね?

FONとexciteの提携について考える。結構ナゾだらけ。

2006-12-06 19:33:06 | 通信
跳箱が考えるに日本のISP利用者の内ざっと2000万契約では利用に問題がありそうFONと現時点で唯一、業務提携を発表しているexciteについて少々検証してみる。

exciteのリリースでは

FON WIRELESS Limited(本社:イギリス、 ロンドン)の子会社であるフォン・ジャパン株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役社長:ミゲル・オーティスーカナバーテ・ロペス、以下 フォン・ジャパン)と、日本市場での本格的なFONプロジェクトの開始にあたり、業務提携

と日本法人と提携したと記載されているけれども、先日も紹介したとおり、利用者はFONのサービスを英国法人と契約して利用することになっている。

「BB.excite」の会員および、エキサイトの運営するポータルサイト「エキサイト」利用者に向け、FONの認知拡大のために合同でプロモーション活動を実施

と記載されているが現時点では、エキサイトトップページのお知らせ欄に一行、「エキサイト、日本上陸のFONと提携」とニュースリリースへのリンクが記載されているのみ。BB.exciteのキャンペーンページに飛ぶとようやくワイワイWiFiキャンペーンなるページにたどり着ける。


疑問点1:
FONの英国法人と日本法人の役割分担が不明瞭。exciteは日本法人と業務提携し、キャンペーンページで利用をある種斡旋しているにもかかわらず、実際に利用申し込みをしようとするとなんら説明も無く英国法に基づいて、英国法人と契約することを求められるのはどうもひと手間を惜しんでいるように思われてならない。


キャンペーン対象者はBB.exciteのISP契約者でかつ東京都内在住者に限られるとのことだが、日経マーケットアクセスに掲載されている国内主要プロバイダーの加入契約数(2006/03末)で掲載下限はWAKWAK(NTT-ME)の26万加入で、BB.exicteの名前は掲載されていない。つまり、調査漏れで無い限りBB.exciteの契約数はWAKWAK以下の規模に留まると思われる。

2003年4月のITMediaの記事によるとBB.exciteの利用者はBフレッツが8割を占めるとのことなので、現在もBB.excite利用者の大多数がBフレッツ契約していると想定すると、タリフによればほぼ5000円/月の収入となっているはず。

exciteの個別中間財務諸表の概要によると平成19年3月期の第二四半期のブロードバンドサービス売上は4.25億円、月次平均(めんどくさいから伸びは無視ね)1.4億円。これを5000円で割ってあげると契約数は2万8千件ほどになる。要するに3万契約程度の事業規模と推定される。これがたとえすべてマンションタイプの契約であったとしても7割増しで5万契約程度に増えるに留まる。

余談だが、NTT東/西双方のBフレッツサービスを取り扱っているので、契約者は全国に分散しているはず。総務省の発表しているブロードバンドサービス契約数の推移を見ると全国の契約全体に占める東京の比率は16%弱になるので、BB.exciteの今般のキャンペーン対象者数は、4800人から8000人の間と推測される。
キャンペーンでは抽選で3000名様に2006/12/04-12/25の期間中に応募すればモニターに参加できる、と謳っているが、対象者全員が応募したとしても当選確率は62%から37%なのでよほどのことが無い限り応募すれば当たると思っていいはず。

2006/12/04付けのNikkei IT Proによると

例えばニフティは「現時点で@niftyの回線を使って第三者にFONのネットワークを使わせることは,契約違反に当たると言わざるを得ない」との見方を示す

と先般、跳箱が危惧したとおりのコメントをすでに発表していた。大手(跳箱の数えた範囲でも2000万契約)は同様の方針を打ち出す可能性があると考えます。ちなみに前出の日本の総務省資料によると、日本のブロードバンド契約数は2421万(2006/03末)なので、市場の8割程度から締め出される可能性があるとも云えます。


疑問点2:
このような環境下で、推測で3~5万契約しか保有していないと思われるBB.exciteのみをパートナーとして、

2007年内に日本国内のAP数を7万5000台とする

目標設定はハードルが高すぎる可能性があるのでは?


疑問点3:
Nikkei IT Proの別の記事によると、

BB.exciteのユーザーは、BB.exciteで使うID、パスワードをそのままFONで利用できる

と記載されているがBB.exciteサービス利用約款第41条(個人情報及び秘密情報の保護)規定に違反しない形でシングルサインオンを実現するためにどのようなパーミッション取得スキームを用意しているのか不明です。


疑問点4:
前出の記事によると、

世界144カ国で展開されており、その会員数は約16万8000人

と2005年11月にサービス開始してから一年をかけて世界144カ国合計で獲得したFONの利用者数実績があるわけですが、

日本では2007年末までに7万5000カ所のLaFonera設置を目指す

と日本では同程度の事業期間に全世界で年間獲得した利用者数の44%にあたる利用者数を一国で獲得すると計画しているらしいのですが、インターネット利用者数分布比率からみて、突出していると云わざるを得ません。(一方は人、一方は箇所、なので、@ITの記事にあるように、エイリアンが90~99%を占めるとすると、日本だけで75万から750万の利用者を獲得しようとしている、とも取れ、そこだけでもかなり謎ですが)どのような特殊要因が働いて日本において突出した成功を収めえるとFON経営陣が考えているのか理解に苦しみます。

他にもBillを開始するとなると電気通信事業法上、Bill会員はどう位置づけるべきか(これはやっぱり個人であっても電気通信事業者なのか?)等々疑問符がさまざまに付くのですが、あまりにも情報が不足していて結論めいたことを導くことができそうにない。


とりあえず、ひとつの目安としてBB.exciteのキャンペーンが12/25の当初予定通りに目標モニター数を確保して終了を迎えるのかどうか注目してみたい。

-2006/12/26追記-
いつの間にかFONサイトの法的なお知らせや個人情報保護方針、もっとFONを知ろう、といったページがトップページにリンクが用意されているにもかかわらずログインしなければ表示されないようになっていた。そんなに見られちゃ困ることが書いてあるのだろうか?個人情報保護法的にどうなん?ちなみにFONコミュニティに登録するページに行くといつの間にか登録事項の最後にパーミッション取得用のダイアログボックスが表示される構成になっていてそこで表示できるようになっている。(気づかない人は気づかないだろうねぇ)

しかもご丁寧に、

私がLinusまたはBillとして登録している場合、契約先のインターネットサービスプロバイダはWiFi接続をFONアクセスポイントとして利用することを承諾しています。

と念押しすることにしたらしい。ある意味良心的ですな。

もう一点、La Foneraの購入ページからナゾだったフォネロプロミスが無くなってる模様。従前ページで契約した利用者と現在のページで契約した利用者の契約内容は異なるんでしょうか?それとも現在の契約に引きなおされるんでしょうか?これまたナゾです。

説明になっていないし、問題が多い。

2006-12-04 23:14:39 | 通信
例によってCNETによるとFON Japanは、

同社が提供する無線ルータ「LaFonera」を自分の利用する回線に接続することで、ほかのユーザーが利用できるアクセスポイントを開設できるという無線LANの共有サービス

を開始するとのこと。だれもが疑問に思うであろうポイントについてCNETが突っ込みを入れたところ、

ISPによっては契約ユーザー以外のネットワーク接続を規約で禁止している場合などもあるほか、ISPのインフラをただ乗りしているのではないかという意見については、レベニューシェアによる提携が成功していることを強調。FON WIRELESSの創始者でCEOのMartin Varsavsky氏は「全世界で多くのオペレーターがパートナーになっており、事実彼らの収益は高まっている。つまりただ乗りでない」と説明

したそうですが、ここは日本で、日本のISPと契約している日本のインターネット利用者は日本の法律と契約先ISPの約款に基づいてサービスを利用しているのであって、世界のどこかで、だれかが儲かっているかどうかはまったく関係ありません。

日経マーケットアクセスによると契約者数500万超のISPは@Nifty、OCN、Yahoo BBの3者。で、@Nifty会員規約第17条では営業活動の禁止が謳われています。

OCNの約款では第75条(3)に利用停止条件として、契約者回線、加入者回線又は外部接続回線に自営端末設備、自営電気通信設備、当社以外の電気通信事業者が設置する電気通信回線又は当社の提供する電気通信サービスに係る電気通信回線を当社の承諾を得ずに接続したとき、と謳われています。

Yahoo BB(BBテクノロジーサービス規約)では、第20条2で、会員は、第三者に対し、本サービスを利用させることはできません、と謳っています。

上記の通り、3社の規約、約款で小計1500万契約以上がFONサービスを利用できないことが判ります。さらに、400万契約超のBIGLOBEでも、会員規約第24条(3)で、他の会員のユーザID等(第10条第10項に定める認証機能が付与された会員に係る特定電子媒体の固有情報およびこれが付帯する会員に係る特定電子媒体を含みます。本号において、以下同じ。)を不正に取得もしくは使用し、または他の会員もしくは自己のユーザID等を不正に他の会員もしくは第三者に使用させる行為、を禁じています。

もひとつおまけに、300万契約超を抱えるDIONでもインターネット接続約款第70条(3)で、当社の承諾を得ずに、当社が設置する電気通信設備に、自営端末設備、自営電気通信設備、当社以外の電気通信事業者が設置する電気通信回線又は当社の提供する電気通信サービスに係る電気通信回線を接続したとき。を利用停止条件として謳っています。

念のため、200万契約超を抱えるぷららでも会員規約第15条(3)高速回線を利用されている場合に会員宅内に多数の端末や大量のアクセスのあるサーバを設置するなどして、通常の利用を超えた大量の通信量(トラフィック)が継続的に発生する場合、同(4)では、その他、他の会員の統計的な平均利用方法と比較して大幅に上回る利用が継続して発生する場合、と念の入った書き方でサービス契約の中断、解除条件を謳っています。

さて、ここまで紹介した6社の事例だけでも日本のISP契約のうち2000万契約以上でFONの利用は規約・約款違反になる可能性があると指摘して間違いでは無いでしょう。少なくとも、@Nifty、OCN、Yahoo BB、BIGLOBE、DION、ぷららをISPとして利用している方はFONのサービス利用について、きわめて慎重に判断されるべきでしょう。

この点について、FON社はFON利用規約において、

4. 事前要求
「Linus」の カテゴリを選択したユーザーは、本利用規約を承認し、「FON コミュニティー」に登録する前に:
(i) 「FON ソーシャル・ルーター」または「FON ソフトウェア」と互換性のあるルーターを入手し、
(ii) 「FONero」との帯域のシェアを許可する契約を「ISP」と締結する必要があります。

とFONを通じて他者へのアクセスを許可するためにISPと締結しなければならない契約義務をエンドユーザーに課すことでFON自身がISPと契約締結する義務を負うことを回避しています。

しかも、日本でFONを利用するユーザーにも、

19. 裁判管轄と準拠法
本契約は、英国法に準拠し、解釈されるものとし、当事者は英国の裁判所の非専属的裁判管轄に属することに同意します。

と、英国法を準拠法として適用し、裁判管轄も英国裁判所とすることを求めています。

このWebサイト上には特段の注意書きが無く(2006年12月4日23:00現在)利用規約のなかにひっそりと、エンドユーザーとISPの間でトラブル画発生した場合の解決の責任はエンドユーザーにあり、FONは責任を取らないことを記載するだけ、という処置には納得できません。

しかも明示されていないリスクとしてエンドユーザー個々人が契約しているISPとトラブルに見舞われる可能性も想定しなければなりません。

---2006/12/08追記---
続報というかコメント欄への返信などを新エントリにしてみましたのでよろしかったらこちらもどうぞ

鎌田氏喜ぶかもしれないけど時代錯誤臭がするぜ。

2006-11-30 00:07:44 | 通信
IDCによる

show that interest in WiFi access and location-based services are highest in the U.S. and U.K., while storage capacity, music quality, and photo quality are the highest in Germany, India, and China.

であるという。ローコストで広帯域の伝送手段への関心の高い市場と端末単体で利用できる機能への関心が高い市場という色分けが示されているが利用者のプロファイルがわからないのでなんともツッコみにくいのがアレです。

続いて、

monthly average revenue per user (ARPU) rose everywhere except Germany as survey respondents switched from traditional mobile phones to smartphones.

ということなんですが、(以前、森氏に匂わせたことがありますが)リスクを回避=価値流出を容認してまで得た利得がスマートフォンユーザーARPUのささやかな増大に留まったのだとしたら、これら市場におけるボトルネック独占の機会を当該市場で事業展開しているキャリアは永久に失うことになる可能性があると考えます。(てゆうか、手数料30%も取ってたら公式コンテンツ市場育つわけ無いし)

ここはもう宗教論争になってしまう可能性があるけど、

IDC also believes that customer experiences and satisfaction levels related to operating systems (OS) are emerging as a competitive differentiator and ARPU driver over mobile phones, especially as a wider segment of both business and consumer subscribers are adopting smartphones.

この主張についてはかなり強く疑問符を付けたい。鎌田氏は喜びそうだけど、IDCはそんな、ん十年前のMicrosoft勃興期のモデルがいまさら繰り返されると本気で考えているのだろうか?IDCのフォーカスエリアから見ると、まるでPC市場の勃興期のように思えるのかもしれないけど、Informaovumの連中が聞いたらまるで違う視点を提供してくれると思うよ。てゆうかなんていうのかぜひ聞きたい。てゆうか聞いてみよう。

なにはともあれ、CESに合わせてWynnで朝飯会やるってことらしいので早起きして覗いておこう。楽しみがひとつ増えたからまあいいか。

P.S.
この件を取り扱ったCNETの記事がなんともお粗末。新人の練習原稿みたいなやっつけ仕事でいただけないです。リリース丸写しじゃん。

予想外の件、あれ、安くないです。

2006-11-13 17:26:26 | 通信
先日、予想外割引を発表した孫氏(個人的にはキライだけどあのキチガイっぷりはいまどき貴重と感じる今日この頃)の新料金プランについて、あまり考えもせず好意的に書いてしまったのが引っかかっていたところにCNETの永島氏ががんばってそれって安いのか?と切り込んでいるんだけどいまいち歯切れが悪いのが気の毒になったんでちょっと他のエントリの続きを書く前にちゃっちゃとやっつけてみる。(て、仕事しないでなにやってんだか...。)

永島氏はエイヤで5000円ケースなるものを想定しているんだけど、これじゃうまくいかないはず。

まず、いまさら生まれて初めて携帯買うんですな新規加入者はレアなパターンなので除外して、Vodafone(ことによったらJ-Phone)時代からのユーザーが料金プランを乗り換えるケースと、一部で騒ぐ輩のいるMNP(利用実績はいまのところ全利用者の0.1%程度だが)を利用して他キャリアから嫁いでくる乗り換えユーザーのケースの二つを考えることにする。

まず、料金プラン乗り換え検討組(ちなみに跳箱は藤原紀香姫のオミアシなCMに乗せられてドルフィンを使い始めた口、さすがにデジタルホン時代は...)から行ってみよう。

ソフトバンクはVodafone時代の2005年6月で月次ARPU公表をやめてしまったので使えるデータは四半期単位のものしかない。2006年1-3月の総合ARPUは5672円となっているが、プリペイドARPUははずしてポストペイドだけにすると、6042円になる。非音声ARPUは31.5%となっているので、音声(基本料込み)ARPUは4138.77円となっている。Vodafone時代になってからの料金プランではあるけど最低価格の料金プランはライトコールパックの3500円、ハッピーボーナスは付いていたとして、3年目割引率30.8%を適用すると2772円が最低支払い額での利用者。これを下限にして6042円が平均になるようにべき乗分布させると...、おろ?全体の55%は最低料金パック分しか使ってないはず、などと出た。ビデオリサーチの資料(本文のP6あたり)の数値と近いから、まあ、こんなもんか...。

超過分の従量通話料は21円/30秒なんで、従来のバリューパックの料金相当(昼42円/1分、夜31.5円/分どちらも税込)なのでこんどのプランはあまり魅力がない。ソフトバンク顧客にばかり電話するならメリットもあるだろうけど日本の携帯電話利用者はドコモ55.5%、KDDI28.1%、ボーダフォン16.3%(これに書いた)なので、アドレス帳に10人載ってたら8人はソフトバンク以外の携帯電話の利用者だと思って間違いない。(コミュニティにおけるロックイン発生の可能性については別途検討の価値あるけどね)

すると、以前の料金プランでバリューパックシルバー契約3年未満の利用者でソフトバンク携帯に確信犯的に掛け捲っている、といった特殊な層でないと料金変更のメリットは小さい可能性が大である。となるなぁ。普通に考えて特にグループを意識的に形成していない場合8割を超えるはずの他者向けの通話料金が旧バリューパックシルバーなら、昼31.5円/夜21円/分、ゴールドなら昼21円/夜15.75円/分以下プラチナ、プレミアと安くなっていく。新しい料金体系では42円/分換算なので、25%も従量通話料が高くなる。ソフトバンクの現在の音声ARPUは前述したように4138.77円なので、この音声ARPUに合う旧料金プランバリューパックの基本料金ハッピーボーナス3年目適用して2699円に減額すると、従量通話料は1440円となるので、従量通話料金昼料金97%の夜料金3%の構成比で割ってみる。なんでかというと平成16年のデータだと、携帯電話のトラヒックは当時のVodafoneでいう昼料金時間帯(07:00-01:00)が97%を占めるから。要するに、約34分33秒従量通話で話していたことになる。(ちなみに音声ARPUにはオプション月額使用料は入っていないと仮定しているんだけど、これ、900円くらい付いている人たぶん多いはず。まあいいや。)
新しい料金体系だと、84%が他社向け呼で課金対象になるんで、従量通話70課金単位(30秒課金だから)のうち59単位1239円が課金されることになる。バリューパック契約の場合ならソフトバンク携帯向け通話が人並みにあれば16%くらい従量通話料金が下がる計算になるけど、バリューパックシルバー以上の場合は請求総額は高くなる可能性が高い。あれま。

ところでTCAの加入者数データを時系列に読めば、継続利用者数の分布は概ね決められる。デジタルホンとデジタルツーカーだった時代からこの会社はざっと月次145000人平均で利用者を増やしてきたのに2004年3月に念願の1500万人の大台に乗せてから高原状態に陥ってしまって伸び悩んでいる。ちなみにJ-PhoneからVodafoneに変わったのが2003年の10月なので、利用者数の観点から言えばVodafoneによる経営は失敗だったといえる。(どうでもいい...。)話を戻すと、2004年3月までの利用者累計については他キャリアと同等の年次1%のチャーンレートを適用し、2004年4月以降については、新規獲得は従来どおりできていたと仮定してざっと年次12%(なんじゃそら)のチャーンレートを設定して分布を求めると、とりあえず、結果は一致するのでまあいいやで採用。(ほんとは、最低でも長期利用に対する基本料金割引のインセンティブ要因を補正してあげる必要があるんだけどめんどくさいからパス)すると、2005-2006の二年分についてちょっといびつになった正規対数分布がえられる(ハズ)。平均利用年数は5年弱と出た...。よっしゃ、これならハッピーボーナス3年つけて計算しても贔屓したことにならない。

なんとも、検討するほど、この(想定外割)料金プランはちゃんとソフトバンクのARPUがいままでより高くなるように計算されつくしているらしいことが判ってきた(様な気がする)。たぶん、上位20%の利用者は得をすることになると思うけど200分とか制限かけてたところにミソがありそうだなぁ...。(また今度気が向いたら検討してみる)

てなわけで、他社から乗り換えのケースについてはバカらしくなったので検討するのやめます。てゆうか跳箱は料金プラン変更しません。以上。

P.S.
ソフトバンクからクレームきたらどうしよう?てゆうかみかかの鉄人、今こそ甦ってほしいよ。

経営目標が違うとやることがこうも違ってくるとは...。

2006-10-24 02:44:17 | 通信
先日、森氏に反応してエントリを起こした際にチラッとWillcomのスマートフォン販売目標は移動体通信事業においては小さすぎると指摘した件について、八剱氏に鞭打つのはあれなんで控えていたのですが10/10にご退任のリリースが出ておりまして、後釜はなんとびっくり喜久川(マツケン)政樹氏でありましたと。この人事の点から考えてもJ-CASTが指摘するとおり、カーライルからにらまれたんかも、と悼む(おいおい)次第。

一方、ソフトバンクモバイルは想定外(イタい)ならぬ予想外割なる新料金プランを打ち出してバッチこいであるとのこと。勇者だ...。
というか跳箱はさっそく料金プラン変更してみようかと。

ファンダメンタルも大事なんだけど、最後は経営者の「意思力」だったりするんじゃないかと思います。当然、裏目に出ることもあるんだけど。なにげに宇野氏が正気に返ってしまった日本のICT産業界でほぼ唯一のキチガイ(敬称)経営者となってしまった感のある孫氏(個人的にはちょっと恨んでるけど)には行き着くところまで行ってほしいです。はい。

P.S.
こうなってくるとカーライルは次世代PHS(どうでもいいですけどいつの間にかMoUのサイトがカッチョよくなってたよ)に再投資する原資確保のために上場させたいのか出口が欲しいだけなのか興味深深です。
再投資しないつもりなら802.16eで人口カバー率(とりあえず)目標97%くらいで月額3500円フラットレートな事業者を誰か作ってください。(てゆうかマジで作らない?)てゆうかその前に免許なんとかせねば。

森氏にとって"海外"とはOne Microsoft Way限定か?

2006-10-16 16:56:37 | 通信
他人様が血のにじむような努力をして積み上げ、育て上げてきた市場をタダで欲しい、欲しいんだい、と玉川高島屋南館5Fのおもちゃ売り場で駄々をこねる3歳児のようなエントリにあきれかえったのは二ヶ月前のことでしたが、またも知ったかぶり(ええ、間違いないです)今回のエントリも、相当いただけません。

まず一項目の記述は、二段落目の前半まで単なる思い込みをネチネチ書き綴っているだけで見るべきものなし。このあたりのこと書きたいなら、せめて総務省総合通信基盤局事業政策課あたりにヒアリング(電話して聞くのが恥ずかしいなら最低限ここくらいは読む)してから書くべきでしょう。(つうか、端末だけ見て通信サービスを語るなんてな木を見て森を見ず、ってんです。)そもそもMNP導入に至った経緯やその後のMVNO導入の経緯等等、移動体通信分野における競争政策をきちんと追っかけていれば森氏の主張は的外れとわかりそうなものなんですが...。

続く一項二段落目後半の指摘についても、

海外メーカー製品は、日本のケータイ市場の中ではきわめて特殊な立場におかれることも多い

と、ナゾの主張を展開していますが、(たしかにDoCoMoのHTCやRIM製端末の扱いのぞんざいなことったらない。SBはそれなりに大事にしている)いわゆる、携帯電話フォームファクタの端末については海外メーカー端末でもきちんとラインナップ内に位置づけ()られているので限りなく的外れに近いと言えます。

ほかにも、

海外では一般的なPCとの連携によるスケジュール情報の表示や同期、Microsoft Officeなどで作成されたファイルの閲覧など、「小さなPC」としての機能に優れるなどの利点も存在

などと主張していますが、どの辺の機能がどこの国のどんな人にとって一般的だと主張しているんでしょうか?あたかも日本(と前後の文脈からして韓国も入れておこうか?)以外ではそういった機能が一般的(というからには最低限、当該市場で過半の利用者によって使いこなされているって主張なんだろうね?)な機能として受け入れられていると主張しているらしいのですが、森氏の指摘するような機能を搭載した海外市場で流通している携帯電話、というブツで該当するモノを引き当てるとWindows Mobile 5.0を搭載したPDAしか思い当たるモノがないのです。(Symbian OSも2005年にExchenge ActiveSyncのライセンスを受けてつい最近Sony Ericssonからこれに対応したM600i(かなりかわいい端末だけどカメラ付いてないのとMemorySticMicro対応なところが萎えます。惜しい)とP990iこっちはフリップ付きのPDA、このデザインいまいち好みじゃない)が発売されましたが、まだ出たばっかりで「一般的な」機能と形容するのはかなり無理があります。

森氏は(Windows Mobile搭載、百歩譲ってSymbian搭載の以下同)PDA端末が粗略にあつかわれたのが気に入らないようですが、欧米市場(これ、一緒くたにするのはお勧めしません、まるで違う市場です)でもPDA端末(SmartPhoneのことね)はまだまだ新顔に過ぎません。ちなみに米国のC社の場合、販売中33機種の内、PDAは9機種、1/3強を占めるようにはなっていますが、販売台数ベースで見るとまだまだ少数派です。(調査データはカネ出して買って読むべし)繰り返しますが無意識に「海外」として想定していた米国市場の状況で、そんなもんです。欧州市場はさらにまるで様子が違うのであしからず。(てゆうか説明しだすとえらく長くなるので割愛)中国、東南アジア、西アジア、ロシア、南米、アフリカ等々もちろんそれぞれの事情があるので全部異なる。青柳先生に聞いて御覧なさい。

まさか森氏はMcCarran(ラスベガスの国際空港、CESなどのイベントは収容客室数の関係もあってカジノホテル街で行われている、フラミンゴのスロットは何気に出る!どうでもいい)でタクシー待ちしながらBlackBerryでメール打ちまくっている出展者とビジターの群れがアメリカの平均的な利用者像だ!なんて勘違いしているんじゃないだろうね?

さて、McCarranのタクシー乗り場にうじゃうじゃいるように見えるBlackBerry使いだって、実は世界中あわせてたったの550万人しかいない。米国の携帯電話利用者全体(1.8億台/2005年)から見ればほんのわずかなもんです。Windows Mobile使いはもっと少ないのでまだまだ少数派なのです。アンダスタン?

むしろ、日本や欧州の市場を日本人が感心するような精密さで調査した北米キャリアが、事業価値の流出につながりかねないPDAフォームファクタ端末を取り扱っている事情について考察しておいたほうがいいんじゃないかな?

何回か指摘したと思うけどファンダメンタルが違えば適切なマーケティング手法は違ってくるんだよ。

蛇足だけどこの項について指摘しておくと、そもそも森氏って他人に語れるほどにはネットワーク(というか網、というかそもそもクライアント・サーバモデルもか?)を理解できていないんじゃないかと疑われる記述が以下の一文。

PCに接続した際のデータ通信は、使えたとしても通常のパケット料金割引の対象にはならないケースもしばしば

素直に読むなら、携帯電話から自宅(またはオフィスの)PCにVPN接続するケースを指すように思われますが、おそらく森氏の主張は、

1:携帯電話にプリインストールされたブラウザから、携帯電話のパケット通信サービスを経由して、
2:iモードサイトやEZ Webサイトに接続するならば定額サービスの対象となるが
3:パソコン向けにチューニングされたサイトにアクセスすると従量通信料金が課金される

ことを指摘しているのではないかと思いますが、パケット定額サービスの料金を適用するための条件は約款上明示されているんですから、携帯電話からのアクセスを伸ばしたいWebサイト運営者が自社のコストで対応するための対策を施せば済む話です。携帯電話からのアクセスを認めるフリーダイヤル番号設置者とそうでない設置者がいるのとおなじことでしょう。

まあ、いいや、次にいこう。

二項目、表題のパンドラの箱って部分に直接かかる垂直統合事業モデルのほころび(と、森氏は言うが、サービスのコモディタイズ=陳腐化に過ぎない)として、勝手サイトへのアクセスの増加とフルブラウザによる俗に言う一般サイトアクセスの増加を指摘しているけれども、この点、前項で森氏が指摘している点と主張が齟齬をきたしている。どうもよく理解しないで書いているらしい。

4:現在の価格設定であればパケット定額サービスを新規に契約してもらったほうがデータARPUは高くなる
5:パケット定額サービスを契約してもらうためには利用可能なコンテンツ数が多いほうがよい
6:ただし、自社の網に過度の負担がかからない範囲であれば

したがって、(公式・勝手問わず)iモードサイトに対するアクセスであれば奨励できる

のが(たとえば)DoCoMoの立ち位置でしょう。

そもそもDoCoMo自身、バケ・ホーダイを発表した2004年時点にすでに、

「定額制を入れるとその分は下がる。単にトラフィックに依存しないで、新たな収入源を探す」
 新しい収入源は、同氏が「リアル連動」と呼ぶ外部機器との連携に求める。徐々に赤外線や非接触ICチップ──FeliCaなど外部インタフェースの搭載を進めてきた同社だが、通信とトランザクションなどを組み合わせて「新スキームで新ビジネスを始める」(立川氏)目論見

とITMediaで当時のDr.立川社長のコメントが記事になってます。この2年間の歩みを見れば有言実行してますね。偉いなぁ。

なので、

iモード開始以来隆盛したコンテンツプロバイダという、ケータイ産業生態系を形成する数多くの事業者の没落を招く

なんて、予言になってないのです。2年前にすでにDoCoMoのトップによって公言されていた方針転換の結果が現在なので、もし、本当に没落している事業者(連結ベース、モバイル単独は売上減ってて当たり前)があるならその会社は退場するべくして退場に向かっているといえるでしょう。(ざっと見たかぎりそんな会社無かったけど)

で、木を見て森を見ず、ネットワークサービスとはなんなのか?が根本的に理解できていないらしい森氏は、

ケータイキャリアはICチップを利用した電子マネーやカードサービスなどの導入を促進させているものの、それらは基本的にケータイ電話そのものに還元されうる訴求価値である限り、その効力はあまりない

と、FliCaベースの決済系サービスなどを"携帯電話端末が提供する価値"であり、ネットワークサービスが提供する価値ではないと主張していますが、これが大きな間違いであることはPOSやクレジット系のサービス開発をした事のある人ならすぐにピンとくるはずです。(認証系全般そーだなぁ)

森氏にはどうも理解はおろか想像もできないみたいですが、現在の移動体通信サービスおよび周辺業界はまさに、

より現実の世界と仮想の世界を、(公式とか勝手とかにかかわらず)つなぐことによる価値を提供することにシフトすることを真剣に考え

考えただけじゃなくて実行に移しているところだといえます。

P.S.
森氏が愛してやまないらしいWindows Mobile 5.0搭載の国内事例、WillcomのW-Zero3については2006年度にシリーズ全部で50万台の販売を目指しているんだそうな。日本の携帯電話市場はざっと9000万台、24ヶ月で更新されるので、年4500万台、少なく見積もっても4000万台市場なのに、です。

森氏が知ったかぶって描いて見せた携帯電話サービス市場の将来変化については、森氏が説教をたれた当事者であるDoCoMoが設立したモバイル社会研究所が、携帯電話サービスの変容とその将来に関する調査研究、というワーキングペーパーを発表しています。(ほかにも多数面白いレポート、論文があるので参照されたい)

つうか、森氏、レイヤーも粒度もバラバラなことを一緒くたにフィーリングで書く癖はやめて欲しいです。ほとんど突っ込みようも無いほど散乱した文章の問題点を指摘するのは結構難しいのです。

VoIPの話で思うこと、っていうかたぶんOverlay Multicastの話

2006-10-07 01:34:33 | 通信
粘着質なお友達に囲まれているらしい坂和くんはBusiness Weekの記事をさっくり紹介して次にいっちゃったみたいだけど、こことても大事な内容が含まれているのでフォローしておこう。

Friis氏とZennstrom氏にとってKaZaAは習作(というか、P2Pアーキテクチャの勉強)だったらしく、サービスの実装例としてSkypeも拵えるだけ拵えておいて、それでどう儲かるのかを示さないままeBayに売っぱらって(って、まだボードメンバーやってるけど)今度はVoDをP2Pでやるというのが趣旨らしい。

F氏とZ氏は経営者じゃなくて開発者(つうか一種のビジョナリー)なんだろうなぁ。

Skypeについてはインターネット電話な世界を切り開いたとか持ち上げる向きもあるけど彼らはあの分野では実は後発参入者だった、って話はだれか覚えているかな?

ほんとにインターネット電話は使えるし集客力がある、ってのを最初に証明したのは1999年の秋だったか冬だったかにサンノゼのインキュベーションセンターの片隅でサービスを開始したdialpad(創業当時は韓国資本だったなぁ)だった。バナー広告を表示するVoIPアプリ(確かJAVAアプレットだった)を使って全米の固定電話網に無料で電話がかけられる(確かプロプライエタリなプロトコル使ってたような気が)ってんで、一人暮らしの学生さんが実家に電話かけるのに最高!とかいいながら使っていた。

これは当時としては(今考えても)かなり過激なサービスで恐ろしい勢いでユーザーを獲得していたけどやはりPSTNに電話をタダでかけさせる、というコンセプトには無理があったわけで、VoIP to VoIPならタダだけどPSTNとの通話は有料なんて具合にサービス内容が後退していったのが懐かしい。
dialpadに刺激されてか日本でも半年か1年遅れくらいで日本国内のPSTNにタダで電話がかけられるRiRiRi Phone(これはつぶれた)とか、ただTel(これは生き残っているけどかなり寒いことになってる)とかにょきにょき生まれてたもんです。

さて、前置きが長かったけど、dialpadやそのまねっ子サービスは途中で息切れしたけどSkypeは生き残ったのはなんでだろう?

跳箱的には、dialpad達は市場参入が早すぎた、というありがちな答えにはとびつきたくない。無料の(PSTNにつながる)VoIPサービスというインパクトは常時接続サービス(当時はまだまだダイアルアップが主流だったし、某リセ○ト系の連中なんかあと10年は常時接続の時代なんか来ないと豪語していた...。)普及のきっかけのひとつになったと思う。

おそらく、dialpadをはじめとする初期の参入者のサービスは利用者獲得にPSTNへの無料接続というあまりにキラーな武器を持っていたがゆえに、その網接続料をいかにして捻出するかに頭が行き過ぎていたんじゃないだろうか?

初期に活躍したVoIPサービス事業者はNAT越えに苦しんでいた(電話がタダでかけられるらしい、という期待を胸にサイトを訪れたユーザーはJAVAアプレットをクリックしてテンキーを操作するだけで電話がつながると思っていたのに、自分のPCじゃつながらなかったり、片端側音声しか通らなかったりといったトラブルに出くわし、FAQを見るとルータの設定をあーしろ、こーしろ、と指示されてあまりの複雑さに利用をあきらめる、なんてケース続出)けど、SkypeはuPNP依存せずにSTUN(のようなもの)を利用してエンドユーザーにルータ設定をどうしろ、とか余計な作業を発生させないように配慮していた。つまり初期参入者より一段高いEase of Use(懐かしいな、この表現)を実現していた。

さらに、PSTNへの通話(発呼)は原価率(固定費込み)を高くするのでオミット。(後にSkype-Outという形で実現、PSTNからの着信(着呼)を可能にするSkype-Inはさらに後)この点、集客力という点では初期参入者に劣ることになるけど、(収入と比べて)莫大なコストがかかるPSTNへの接続を切り捨てたことと、P2P型のアーキテクチャ(SIPだってH323と比べれば十二分にP2Pライク)を採用したことによって、固定費を小さくすることで小資本でも生き延びられる可能性が高まったのと、Skypeを利用したいユーザーは自分が通話したい相手にもSkypeを勧める必要が生まれたので利用者獲得は鼠算(というかスケールフリー)になる。

もちろん、勧められた新規獲得利用者が簡単にインストールできて、トラブルフリーで、さらに通話品質に満足がいく、といった条件を満足させないといけない。が、Skypeはこれをやってのけたからうまく利用者を獲得することに成功できたんだろうと思う。

ただし、初期の市場参入者はもちろんSkypeにも問題はある。まず初期参入者の最大の問題は通信費を広告収入でまかなおうと考えた点。単純に日本のケースだけ考えてみても、広告市場は5兆円程度でしかない。これに対して通信市場は18兆円。PSTNと接続するコストを広告でまかなう、というアプローチではそもそも通信市場を飲み込めないのは明白と、根本的にこまった構造を抱えていた。

Skypeだって固定費が小さくてPSTN接続コストを賄える単価で顧客に費用転化しているからつぶれはしない(というか潰れにくい構造になってる)だろうけど、有料の音声通話サービス市場をぶっつぶすだけに終わってしまってSkype自身、収入という面では置き換え市場獲得の恩恵に浴しているとはいえない。(経営者個人としてはeBayへの売却で潤ったんだろうけど...。)IP常時接続サービスの提供事業者は、こういったキラー(というんだろうか?この場合)アプリの存在によって恩恵に浴したかもしれないが、多くの場合、PSTN事業者でもあったりするので痛し痒しだったろう。

で、今度のVoD話だそうな。(いやー、今回の前置きは画期的に長かったなぁ)

坂和くんによると、

このクライアントソフトはP2Pで他のマシンと接続してデータをやりとりするが、ただし映像自体はストリーミング配信されるため、データがローカルに保存されるわけではない(Venice Project側では複数のバックアップサーバを配置し、ユーザーが観たい時にいつでもコンテンツを観られるようにするそうだ)。これの仕組みにより、コンテンツ保持者が最もおそれる違法コピーの流通を防ぐことが可能になるという

て、ことなんで、どうもOverlay Multicast(詳しく知りたい向きはこれなんか読んどくよろし)を利用した配信ネットワーク構築を目指しているらしい。

Overlay Multicastといえばつい最近もYahooが実験してたし、一年前には、スカパー(つうか山○氏、そろそろホワイトバンドはやめたほうがいいと思う)がキャスティング・グリッド(あれ、グリッドの本職筋には評判悪かったなぁ)と称してアイディアだけぶち上げていたのが生々しい感じです。

Yahooの実験結果によるとサーバリソース消費を1/5に削減できたってことなんで、既存の商用VoDシステムアーキテクチャと比較すると画期的なコスト競争力を実現しているといえそう。

F氏とZ氏の企画アプローチはこれまでのところ、既存アーキテクチャと比較して圧倒的に小さなサーバサイドリソースで従来サービスと同等のエクスペリエンスを提供すると同時にEase of Useを高い次元(というか、いわゆる昔の感覚でいうスイッチポン、今風に言うとワンクリック)でまとめて面倒な作業を徹底的に自動化(つうか不可視化)するところにあるので今回の企画もシステムデザインとしてはなかなかのデキが期待できそうです。

が、

彼らのデザインしたサービスは、KaZaAは言うに及ばずSkypeも含め社会的責任(たとえばE911対応の件とか)という領域についての認識が甘い点について、それぞれの畑のプロから結構な非難を集めているのは各位ご承知のとおり。
大人気ないシステムを作るのはかまわないのですが、社会制約(法規制含む)を無視(ないし軽視)してレガシーフリーなシステムを作ればそれらの制約を考慮(せざるをえないケース含め)したシステムを作っている連中よりエレガントに作れて当たり前です。

ストリーミング配信だから違法コピーされ得ない、という主張(これがF氏とZ氏の発言そのままかどうか疑問ですが)が事実だとしたらあまりに素朴な主張で、勇んで売り込みに行っても帰りのレッドラインじゃ、ユニバーサルスタジオ帰りの家族連れに囲まれつつ肩を落とす羽目になること請け合いです。(つうか彼らメトロなんか乗らないだろうけど...。)

これまではKaZaAにしてもSkypeにしてもアーキテクチャも利用獲得もP2Pのお作法で済んでいた(ゆえにルールは自分で作れたからビジネスデザインの自由度は非常に高かった)けれども今回のモデルではライツホルダとの交渉が必要で、仕入れ条件にビジネスが縛られるようになる点とか、これまでと違ってこれからの市場ではインフラただ乗りが許されるかどうか微妙とか、かつてなくハードルが高いビジネスにチャレンジすることになると思うけどその点、了解してるのかぜひ聞いてみておきたいところです。

再編の第一幕を見逃したらしい。

2006-08-17 17:47:31 | 通信
NRIの北氏が去年の一月にぶち上げて今年の一月に自己否定した(しかし、今、字面だけ見るとはっきりそうとは解らないように書いてあるところがプロだなぁ)MNP不発当確の件について、いまさらながら儚い希望を託したいと未練たらたらな森氏のこちらのエントリ

ちなみに森氏のエントリ自体は北氏の主張をなぞっているだけなので、きちんと議論を追いかけたい向きにはNRIの北氏が発表したレポート類を漁ることをお勧めします。(北氏のレポートは風向きに敏感なので、ある意味役に立つんじゃないかと)

MNP導入はツーカーの退出(auによる吸収)という形で市場再編(整理)を実現したのでとりあえず十分でしょ、第二幕は新規周波数割り当てを受けた新参事業者のS-inからやねぇ、という結論に持っていかなかったところから見て森氏は実はMNPの効果うんぬん、とか、移動体通信市場の再編動向を含む競争政策そのものには興味がなかった模様。

結局のところいいたいのは、

長期的には利用形態がより自由になって、モバイルという独自のサービス領域が「消滅」するきっかけになればと思う

の一点でしかないらしいところが何なんですが...。

で、どうも「モバイルという独自のサービス領域」という言い回しをしている点から無意識に(旧式化しつつある)今日的な意味でのInternet的なモノ(とか価値観)を自明な標準と考えているらしいのですが、この方はいつまで米西部開拓時代的なInternet観を振り回すつもりなんでしょか?

森氏が愛してやまないらしいgoogleだって知的財産権と折り合いをつける必要性を感じ始めている(どこまでわがままが通るのか実験中とも)し、移動体通信事業者と契約して国内外のキャリア公式検索エンジンの地位を手順を踏んで手に入れたりして、徐々に現実世界の制約条件を学び始めているのにね。

確かに森氏が渇望して止まないように、"なにやってもいい新天地"が、9000万からの一意に特定できる課金可能なユーザー込みでいきなり公開されたらそりゃ面白いだろうけど、その市場を形成するためにこれまでキャリアが何兆円つっこんだかまるで考慮されていない点に無邪気さを通り越して盗人猛々しいとすら感じる跳箱は変人でしょうか?


NGNフィールドトライアル、申し込むなら今っ。

2006-07-21 20:11:55 | 通信
NTTからNGNフィールドトライアルのインターフェース条件が開示されやした。参加受付も。

業務連絡だけだとさびすぃので突然池田センセに噛み付いてみる。

池田センセはNGNの採算性に疑問符をつけておられますが、網間接続の実務をやったことのある人ならだれでもすぐにピンと来る通り、n個のネットワークをn'次のPOIでもってつなげてきちんと動作させるのは非常に大変なので、相接したいです~、と突如申し込んでくる(たいてい素人の)お客さんに、あ、NTTさんに接続申し込まれたらいっかーすか?全部いっぺんにつながるし便利っすよ?とスルーパスするのは自分のためである以上にお客さんのためでもあると思ったり。

これ、同じことがSAML2.0でフェデレーションするときどーすんの?とか、いろいろなところでおんなじ問題があったりするので、上下分離してきっちり動かさなきゃなインフラはひとまとめに管理しよう、という考え方に賛成したくなることがあるのは秘密です...。でも、上下分離して自然独占の局地な状況が現出した際に、インフラ事業体をどうコントロールするのか?と問い直すとやっぱそれダメだよなぁ、となって以下ループなんでなんなんですが。

セマンティックでオントロジーな網と社会を実現するためのインフラとしてツールかルールかっつうとツールで解決なNGNに魅力を感じるのは事実です。インターネット的な解決を図るのもいいすけど、802.16eできちんと置局計画組んで置ききれるんすか?無理っすよねぇ、とも。となるとやっぱ餅は餅屋で、と考える次第。

ちなみに、池田センセは音声通話収入減少の話もされてますが、いまのNTTに音声通話収入維持を主張している人なんてもういないじゃないすか(まだいるんすか?跳箱は最近そーゆう人って絶滅危惧種と認定しているので保護すべきとまで思っているっすよ)。

これからの通信インフラ投資は、限りなく無料に近づいてゆく電話料金との戦い

なんて何時の時代の話すか?とっくの昔(かれこれ5年以上)続いて、いまや(従量通話料をめぐる第一ラウンドは)終局に近づいている戦いっすよ、それ。

センセご自身が、これまでNTTは、需要におかまいなしに10年計画で設備投資を行い、総務省はそれに甘えて投資のインセンティヴを考えないで非対称規制を続けてきた

要するにNTTは経済合理性の無い判断をするキチガイである、と論評されておりますが、ほんとにそうなんすか?恐ろしく早い速度で技術革新が進む分野で巨大なインフラ敷設をやらなくちゃいけない事業者が10年単位でロードマップを予測して人やモノを突っ込むのって、そんなにおかしなことっすか?

NTTは「計画経済」的な設備投資計画にこだわらず、キャッシュフローを重視して「開放規制が行われるのなら、NGNはやめる」と宣言

なんてして、あっちへふらふら、こっちへふらふらするようになったら通信技術面で亡国の道を歩むことにならないかと少々不安です。むしろ、きっちり投資計画を組んで国内消費で無理なく回収する計画を立てると同時に国際標準化の場で営業し切れていない政府筋とか、そっちの方が問題なんじゃないすか?海外市場でのシェア獲得が読めるなら、電電ファミリーからの調達単価をひっぱたいてNTTの負担を軽くすることだってできるじゃん?

話を戻すとWeb2.0(しつこいようだけど跳箱はこの言葉キライ)というよりセマンティックな網とサービスと経済を実装するためのインフラとしてNGNにはがんばれ(はあと)と黄色い声援を送りたくなる次第。(あ、結論出た)

ということで跳箱的には今日からNGN推進派っつうことで。(だから?)


7/24、CNETにFuji Sankei Business iからの借り物記事が掲載される。なんかこの件について不自然に扱いが小さいのなんで?