インフラただ乗りや、リスクの利用者への押し付け等々、なにかと問題が多いFONが2007/05/18に利用規約を改定したというので、どれほどまともになったんだろう?と期待(ウソ)しつつチェックしてみることにする。改定されたの一ヶ月近く前ジャン、と指摘される向きもあろうけど、半年も前に書いた
エントリにいまだにコメントが付いたりするので、フォローしといたほうがよかろうと。
それに、先日届いた日経コミュニケーション6/15が特集1で"FONはどれだけ使える?"と程度の低い(跳箱主観でありますからこの点突っ込み不要に願います)記事を掲載していたり、
日経ビジネスも、さもNTTがFONを応援しているかのような明らかに間違った印象を読者に与えかねない大変程度の低い記事を掲載するなど、このところ日経系媒体は伊藤忠から大口の広告でも貰ったんか?と疑いたくなるような程度の低いFON翼賛記事を書きまくっているので、突っ込まずにはいられないというのも正直なところ。
新しくなったFONの
利用規約でも、以前、リスクを利用者に転化していると指摘した、
「Linus」 または「Bill」の カテゴリを選択したユーザーは、本利用規約を承認し、「FONコミュニティー」に登録する前に:
(i) 「FON ソーシャル・ルーター」または「FON ソフトウェア」と互換性のあるルーターを入手し、
(ii) 「Fonero」との帯域のシェアを許可する契約を「ISP」と締結する必要があります。
条項がまるごと残っています。
また、以前から指摘されていた電気通信事業法上のリスクに対応するためと考えられますが、
6.1.「あなた」が「Linus」として登録する場合は、「あなた」はルーターを「FONコミュニティー」に接続し、FONに登録することで、「FONホットスポット」を形成することを理解しています。他の「ユーザー」は、この「FONホットスポット」を通じてインターネットにアクセスできます。これらの本利用規約に従ってこの設備を提供および管理することの対価として、「あなた」にはすべての「FONホットスポット」にアクセスする権利が与えられます。
と書かれていますが、この定義で営利性が完全に否定できるか少々疑問が残ります。
さらに蛇足感の強い、
「あなた」が電気通信事業法に基づく電気通信事業者としてFONホットスポットを提供する行為は認められません。
を記述して、参考事例として、
また、以下のような行為を行った場合には、電気通信事業を営んでいる行為と見なされる可能性があります。
-外形的に他人の需要に供すると認められる複数のルーターの設置
-外形的に他人の需要に供すると認められるステッカーの掲示
を挙げていますが、FONマップだって外形的に他人の需要に供すると認められる標章でありましょう。なにやってんだか...。
さらには、利用者が電気通信事業法に違反するリスクの高いサービスを提供しておきながら、
「あなた」が行う行為が電気通信事業を営む行為に該当するにも関わらず電気通信事業法に基づく登録または届出を行わない場合は、電気通信事業法第177条または第185 条により罰せられる恐れがあります。万一FONが電気通信事業を営む者を発見した場合には、FONは「あなた」に警告をするとともに、すみやかに是正されない場合には契約を解除いたします。
ですと。大変ユーザー思いな会社ですな。(はあと)
さらに繰り返し、エンドユーザーに危険=責任を負担させるべく、
「あなた」が「Linus」である場合には、「ISP」との契約上の義務の適合性について単独で責任を負うため、「あなた」はISP ユーザー規約において帯域のシェアが許可されているかを確認しなければなりません。FONは「あなた」がISP との契約に違反している事実を把握した場合、FONはあなたにその旨を通知し是正するよう警告します。警告が3 回に及んでも是正されない場合には、FONはあなたとの契約を解除することができます。
と記述しています。
もうひとつおまけに、
「Fonero」はいかなる場合も「通信の秘密」を侵してはなりません。「通信の秘密」を侵した場合には、電気通信事業法第179 条の罰則が適用される可能性があります。また、FONがその事実を確認した場合には当該「Fonero」との契約を解除するとともに、監督官庁へすみやかに事実を報告することがあります。
と日本では「Bill」は提供されていないわけですからFONによって「Linus」であり「Fonero」であるところの「あなた」が
電気通信事業者としてFONホットスポットを提供する行為は認められていないにも関わらず、電気通信事業法上のリスクは「あなた」が負うことになる、と謎の主張を展開しています。
消費者保護の観点から考えてどうにも問題が多いとしかコメントのしようのない規約です。
以前も指摘したように、日本の大手プロバイダの多く、(
日本のISP契約のうち2000万契約以上、個別ISPとしては@Nifty、OCN、Yahoo BB、BIGLOBE、DION、ぷらら)では明示的または黙示的にFONの利用を禁じています(または禁じていると思われます)が、FONの公式サイトでは
世界中のISPほとんとが、FONと友達ですと、
不当表示の疑いがもたれる記述を平然と行っています。
少なくとも、提携先となっている日本のISPはBB.exciteとisao.net、Interlink、Brastel Internet Provider、i-revoのみ。以前にも書いたが、BB.exiteの利用者数はせいぜい
3~5万人(契約数ベース)、isao.netは今やCSKの100%子会社になってしまっているほど凋落していて経営指標が入手できませんが、isao.netのキャンペーン規模が
1000人とbb.exciteの1/3にとどまる点から推測すると、1~3万契約あるかないか、といったところでしょう。
同様にBrastel Internet Providerも1~3万契約あるかないか、Interlinkとi-revoは特段の記載が無いので1万契約以下と想定します。
とすると、多く見積もっても、日本でFONを明示的に接続可能と表明しているISPは5社、せいぜい13万契約(実際は、6~7万契約)しか無いと思われます。
実際問題、Flet's ISDNなどのナローバンド回線でISPと接続している利用者はFONにとってあまり魅力的な「あなた」ではない(まあ、ナローバンド利用者な「あなた」にとってはただ乗りのチャンスでありますから、結構食いつく(ついてる?)かもしれませんが)でしょうから、ブロードバンド契約数をベースに推論を進めますと、今年3月末時点の
ブロードバンド契約数は2644万に達していますので、FONが提携しているISPの保有している契約者数は、全体の0.5%程度に過ぎません。
その0.5%のISPシェアのそのまた10%つまり全体の0.05%、つまり1.3万程度がFONを使ってくれたらラッキー、程度のスケール感しかないFONが、
世界中のISPほとんとが、FONと友達です
とは片腹痛いです。というよりほとんど誇大妄想じゃないでしょうか?
ちなみに、冒頭で紹介した日経コミュニケーション6/15号はFONが日本国内で1万5881件のAPを獲得していると報じており、上述の試算と非常に近い値となっています。とはいえ同記事でも接続できたAPは5割と記載されているので実数は7000~8000に過ぎないと思われますが...。
FONは相変わらず問題が多いと指摘せざるを得ません。