相手方配偶者が面会交流を拒否した場合
問)現在別居中の妻との間で、未成年の子の親権者を妻に指定する合意を調停でとりかわしました。
しかし、妻は、子どもを連れ去られるからといって、調停中の面会交流をかたくなに拒否しています。
このような場合、別居中の子との面会交流の頻度は標準的にどれくらいの頻度なのでしょうか。
また、面会交流は絶対に認められないものでしょうか。
答)面会交流の頻度に関する東京家庭裁判所に係属した離婚事件の統計的分析結果によると、月に1回とするのを筆頭にしています。
また、取り決めないとするケースも多いです。
ついで、面会交流を拒否する相手方配偶者に対する働きかけとして、調停中に家庭裁判所で何度か試験面会を重ね、連れ去りの疑念を解きほぐす方法や、第三者機関の仲介による実現などの方法があります。
1.離婚調停中若しくは離婚後の親権者でない親の面会交流権の頻度に関する統計データ
東京家庭裁判所が公開したデータによれば、離婚調停中の子と別居している親と子の面会は、
・1回/月とするのが28%
・2回/月とするのが13%
・2ヶ月に1回とするのが9%
・1年に1回とするのが8%
としていて、残りは、特に決めていない場合がほとんどです。
また、離婚後、親権者でない親と子の面会交流についての調停事項は、
・1回/月とするのが約20%
とするほか、特に決めていないのが50%です。
平均的には一月に1回と定めるが相当のようです。
また、近時は、宿泊面会、いわゆるお泊まり面会(1泊若しくはそれ以上の宿泊を伴う面会交流)も認められるケースが増えてきています。
なお、特に決めていないのが多いのは、調停事項などで、親権者でない親と子の面会交流を定めても、これに違反した場合の制裁に強制執行(例えば家庭裁判所といった国家機関が、親権者の意思に反し実力行使によって、取り決めた面会交流権を実現するなど)が認められないのが原則であることに起因しています。
面会交流の取り決めに違反した場合には、違反1回に対していくらかの金員を支払わせる間接強制か、あるいは面会交流を実現しなかった債務不履行責任を追及して損害賠償を請求するほかありません。
2.最新の判例の動向
親権者でない親(元夫)が、親権者によって面会交流が実現しなかったという理由で間接強制(実現するまで一定の期間、いくばかの金員を支払わせることによって心理的圧迫を加え、間接的に面会交流を実現する強制執行のひとつ)に基づく金銭の支払いを求めた事案で、最高裁判所小法廷は以下のように判断を示しています。
「 子との面会交流の定めに反して、父との面会を認めなかった母に対し、間接強制として金員の支払を命じることは、面会日時、頻度、時間、子の引き渡しの方法などが具体的に定められている場合には許されるが、これらが十分に特定されていない場合には許されない。」(最高裁判所平成25年3月28日第一小法廷決定(三件あり いずれも許可抗告棄却)
最高裁(第一小法廷)の理由:子との面会交流について定める場合、子の利益が最優先されるべきであり、柔軟に対応できる条項に基づき、両親の協力の下で実施されることが望ましい。一方、面会交流を定めた家事調停、審判は、給付を内容とするものであるから、執行力のある債務名義と同一の効力を有し、性質上、間接強制をすることができる。高知家裁の審判では頻度や各回の時間は定められているが子の引き渡し方法の定めはないので給付が十分に特定されているとはいえないから、間接強制はできず、これを認めなかった高松高裁の決定は相当である。福島家裁郡山支部の調停調書では頻度、時間などが必ずしも特定されておらず、子の福祉に慎重に配慮して協議して定めるとしていることに照らすと給付が特定されておらず、本件調停調書に基づき間接強制決定をすることはできず、これを認めなかった仙台高裁の決定は相当である。札幌家裁の審判では面会交流の日時、各回の面会交流の長さ及び子の引き渡し方法を定め給付の特定に欠けるところがないから、本件審判に基づき間接強制決定をすることができ、これを認めた札幌高裁の決定は相当である。よって、本件許可抗告はいずれも理由がない。(3件とも、裁判官5人の全員一致 補足意見なし)
3.弊事務所の経験から
弊事務所は訴訟代理権、代理交渉権が認められない行政書士事務所ですので、弊事務所の経験は、あくまで夫と妻という両当事者の協議のお手伝いにすぎないのですが、この協議離婚による協議の場でも、ご依頼されるご夫婦の関係が著しく反映されるところです。
つまり、離婚するとはいえ、双方に信頼関係があり不信感がない場合のご夫婦では、子どもの連れさりなどの懸念もなく、当事者双方の合意による公正証書の作成でも、特に決めることはありません。
逆に、双方に不信感があって、親権者になる親が離婚後の元配偶者を警戒している場合には、事細かな決定事項を離婚公正証書に記載する傾向があります。
なお、幸いなことに弊事務所でお手伝いさせていただいた案件で、離婚成立後、面会交流権が親権者による妨害で実現しないけどどうすればいいのかといったご連絡はいまのところありません。
4.連れ去りの不安の除去
離婚後、いきなり当事者同士だけで面会交流を行った場合に子の連れ去りの不安があると一方当事者が強く主張する場合には、最終的な面接交流の可否や頻度を調停調書に記載する前に、まず、家庭際場所で何度か試験面会を行うこともあります。
これは、家庭裁判所の中にある、壁の一部がマジックミラーになっている部屋で、子を連れ去るなどの疑いあると一方当事者から主張されている他方当事者が子と面会を行い、その様子を疑問を持つ一方当事者及び家庭裁判所調査官が観察します。
そして、この観察を何度か繰り返すことで、不安を和らげる方法です。
そして、試験面接において特段の問題がなかったにもかかわらず、なお他方当事者と未成年子との面会交流をかたくなに拒む一方当事者に対して裁判所が一定頻度の面会交流の履行勧告を出す理由のひとつになります。
また、裁判所が一定頻度の面会交流を認める審判を下したにもかかわらず、なおも面会交流を拒む一方当事者に対し、違反に対して制裁としていくばかの金員を支払わせるといった間接強制が認められたり、審判条項の不履行によって不法行為が生じたとして他方当事者に対する損害賠償が認められたりもします。
5.FPICについて
FPICは、元家庭裁判所調査官を中心としてグループです。
「夫婦は別れても、親子は親子」
をスローガンにしています。
FPICは、面会交流を円滑に実現するため、子どもの両親である元夫婦が協力できるように、有料で、
・カウンセリング
・面会交流ルールの相互確認
・面会交渉の日時、場所の連絡調整
・面会交流の場所の提供と子の受け渡し代行
・面会交流の際の付き添い
といった援助サービスを提供しています。
また、離婚後のシングルマザーさんの就業支援や親子の絆を強くし、子どもの健全な育成に役立つイベントもたくさん紹介していただけます。
私も仕事柄、池袋にあるFPICには何度も足を運んだ経験があります。いつも対応が親切丁寧で、また、元家庭裁判所調査官という経歴もあって、アドバイスも経験に裏打ちされ、深い洞察力を感じています。
取り立てて広く宣伝しているわけではないのですが、その幅広くて良質なサービスのおかげでしょうか、口コミレベルでその存在が広まっているようです。
私との雑談に応じてくださった職員の方(もちろん家庭裁判所の元調査官さんでした)は、毎日膨大な量の相談メールが来ているが、がんばって誠実に対応するよう努めているとおっしゃっておられたのがとても印象的でした。
詳細は下記のご連絡先まで
FPIC
http://www1.odn.ne.jp/fpic/
公益社団法人 家庭問題情報センター
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E-mail:fpic@nyc.odn.ne.jp
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