『みんな、本当はおひとりさま』 久本雅美 著 幻冬舎
話言葉で肩肘張らずに楽に読めた久本雅美さんのエッセイ本。新聞の書評を読み図書館で予約して借りて読んだ本です。仕事、恋愛、家族、友達のことなどについて久本さんの日頃の人との向き合い方や物事に対する姿勢や考え方がよく伝わってきたエッセイでした。久本さんが豪快で何事もあまり気にされないようなイメージをテレビを通して勝手に抱いていましたが、この本を読むと、そのイメージとは違って、本当は真面目で誠実な方だということがよくわかりました。誠実であることを常に大切にされていてよく気を遣われる方なのだなあと思いました。本のタイトルにある「おひとりさま」のことを書いておられる本の中では上野千鶴子さんの本を一番最初に思い浮かべるのですが、上野さんの著書で言及されている「おひとりさま」に係わるシビアな面のこととほぼ同じようなことを書かれていても明るく希望が持てるような書き方で表現されていたので共感できた箇所がたくさんありました。また、久本さんが尊敬されている黒柳徹子さんの「おひとりさま」の格好良い生き方はお手本になる生き方だと紹介されていました。気付いたら一人だったけれど、後悔もしていないし、不幸せでもないし、既婚者でも独身でも人生を切り拓いていくのは自分しかできないし、誠実に生き抜くことをモットーに生涯現役を目指しながら明るく潔く生き抜こうとされていると語られていて元気が出そうなメッセージも伴っていたように思った本でした。
この本の中で印象に残った箇所が二つありました。ひとつは、久本さんが座右の銘のようにされている「桜梅桃李」(おうばいとうき)という言葉について書かれていた箇所でした。26歳のときに友達に教えてもらわれた言葉だったそうで、今でもこの言葉が心の支えになっておられると書かれてました。「桃は桜にはなれないし、李も梅にはなれない。花を咲かせる時季も違えば、咲かせる花も違う。だから、自分らしい花を咲かせていけばいい。それぞれの個性を大切にすること。」という意味だそうです。「人と比べて、落ち込んでいるなら、昨日の自分と今日の自分を比較したほうが前向き。」と考えることに感動されたと書かれてました。この言葉は初めて知りました。自らの人生を自分らしく、自らが幸せと思える生き方を明るく生き抜くことが大切なんだろうなあと思いました。
また、ご家族のことを書かれていた箇所でご両親が亡くなられても子どもの生き方をずっと見守ってくれていると信じておられてきちんと生きることが最高の親孝行と語っておられたことが印象に残りました。大阪城公園を散歩しているときに、「頑張って生きてるよ。」と亡き母に時々一人で語りながら自転車で走っているときが多々あります。ほぼ同じようなことを考えておられた方がおられたということに共感できましたし、勇気付けられました。