先日、映画「いとみち」を観賞しました。越谷オサム原作小説の映画化作品です。原作本は読んでいませんでしたが、単行本の本の表紙は何回も見かけてました。メイド服で三味線を弾いている高校生の本の表紙が珍しかったので記憶に残りました。4月に青森を旅したときにも映画の宣伝ポスターをあちらこちらで見掛けました。この映画のHPにも掲載されていましたが、全編青森ロケで青森の景色がたくさん出てきた映画でした。高校1年生の相馬いと(駒井蓮さん)が主人公。いとは津軽三味線の名手の祖母(西川洋子さん)と大学で民俗学を教える父(豊川悦司さん)と青森のJR五能線板柳駅の近くの自宅で3人で暮らしています。いとは祖母の津軽三味線を弾いているのを見様見真似で津軽三味線を上手に弾くようになり、津軽三味線が特技になっているという高校生でした。いとは高校生の世代には珍しい激しい津軽弁を話し、訛りと人見知りで本当の自分を見せたり伝えたいことを言葉で表現するのが不得意な高校生でした。特技の津軽三味線も気乗りせず、弾かないまま過ごしていたときに、スマホを眺めていたら、青森駅の近くのメイドカフェでアルバイトを募集していた記事を偶然見て、メイド服を着て接待する津軽メイド珈琲店でアルバイトをすることになります。そこで、出会った店長や先輩のメイド仲間とともに仕事をしながら、少しずつ、成長していく様がほのぼのと描かれていました。ある日、津軽メイド珈琲店の社長が逮捕され、メイドカフェ閉店の危機がやってきますが、いつのまにかこのお店で働いていることと仲間たちが好きになっていたことに気付き、メイドカフェでいとが得意とする津軽三味線を弾かせて欲しいと提案し、津軽三味線のLIVE演奏が聴けるお店として新規一転していくというスト-リーでした。
人見知りで友達を作るのも苦手、思っていることを言葉で伝えるのが苦手だったいとが、徐々に自分自身を見つめ直し、発見しながら、カフェで奏でた津軽三味線の音色は言葉とはまた違っていた力強さを感じました。最後のほうにシーンで、父がいとに掛けた「けっぱれ」の言葉は「頑張れ」というよりもいろいろなものを含んでいた思いやりのある包み込むような言葉でした。メイドカフェで出会ったいろいろな人々との出会い、父や祖母からいつも大切に見守られていた日々を感じながら、いとが少しずつ前向きに変わっていく姿に「けっぱれ」と応援したくなるような映画でした。
映画の中でいつも見えていたずっしりとそびえていた岩木山、りんごが実る木々の美しい風景などが見守ってくれている青森の大地の上で、伝統の津軽三味線が奏でる響きは、それぞれの立場や抱えているものは違えども同じ大地の上で根を張ってともに繋がっているその地の人々の力強さが伝わってきました。
途中、浅虫温泉の海岸の風景が出てきていたことやメイドカフェのお店で飾ってあったりんごのかたちをしたライトがお土産品に売られていたのを思い出しました。青森にまた行きたいなあと思った映画でした。