壮絶だなプロの仕事は・・・。
この本を読んでいると,自分も某かのプロでありながら,
そう思って仕舞う。
今回は,「技」を極める者たち・・・。
靴職人の山口千尋氏,
へら絞り職人の松井三都男氏,
花火師の野村陽一氏の登場でござる。
どなたも,逆境を乗り越えた方々でござる。
その生き様に頭が下がるのでござる。
あちきの父親も職人だった。
スーツを作る職人で,丁稚として住み込みで働き,
仕事を習った。
厳しい徒弟制度のもとで腕に技を刻んでいった。
肩の仕上がり,襟の形,
皺の寄り方に細心の注意をはらった。
そうして,何よりも着る人の身に立った仕上がりを第一にした。
あちきが高校に入った頃,
英吉利から来た技師の弟子になった。
当時でもかなりの技術をもっていた父だが,
それにはこだわらなかった。
給料は勿論ない。
一番お金がいる頃で,
母は,内緒で夜中に内職を行って家計を助けた。
重労働をして帰宅し,家事をして,内職する毎日だった。
当時,吊したスーツがバカみたいな値段で売れるため,
仕立屋も,仕方なく廃業したり,
そういった仕事の手伝いを行ったりした。
しかし,あちきの父はそうはしなかった。
世の中には,
良いスーツには,何十万も掛ける人が必ずいるのでござる。
もっと学んで,もっといいモノが作りたい。
その意志で新しい仕立て方法を学んでいった。
おかげで,目が見えなくなるまで仕事の依頼は続いた。
あちきの体型がコロコロかわるので,
あちきには1着もスーツを作ってくれたことはない。
最後に,カシミアのコートを作ってくれるということで,
採寸を行ったが,実現はしなかった。
技を極めた者のコート。
袖を通したかったなあ。