Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

食生活と農業政策

2007-07-27 08:24:47 | 農村環境
 食料の未来を描く戦略会議というものが、この7/17に初会合を開いたという。安倍首相が出席して食料の未来を描くということだ。有識者10人をメンバーに来年3月までに国民に向けてのメッセージをまとめるようだ。初会合ではメンバーが共通認識を持つために、日本の食料事情が話題とされたという。食料自給率40%代を低迷し、なかなかあがらない現状を踏まえて、これを上げることが第一の目標となるのだろう。農水省の考えでは、「国内供給力が高まるような食生活の改善であり、これを国民に広く理解、実践してもらう」ためのものだという。7/20付け日本農業新聞によれば、その真意は「日本型食生活への回帰など、食事体系全般の見直しである」らしいが、格差があって当たり前だという認識の今の政治、そしてそういう考えがけして少なくない国民の中で、どれだけそんな過去への回帰みたいなことが実践できるか疑問は多い。もちろんわたしの今までの一貫した考えは、かつての基本的な生活スタイルにどこかで戻さない以上、これ以上の前進だけでは行き詰るというものである。だからスタイルはけして正しくないとはいわないのだが、では農業政策をどう捉えているのか、というとその一貫性のなさでよく解ってくる。

 日本の人口は1億以上を数える。その中に格差があれば、低所得者は安いものを供給せざるをえない。ではそうした低所得者が自給率をあげるような食生活をするとなると、民主党のいうような小規模農家への所得補償が必要となる。ところが自民党の政策の基本は、いまだに大規模農家への転換、そうした農業者の担い手育成に走っている。コストダウンさせて国内農産物の価格を下げる。そして自給するという考えになるのだろうが、外国から輸入される農産物並みに単価を下げることで自給率をあげるという考えは、果たして確実なのかどうか、ということになる。そのラインを4ヘクタールの個人農業者と踏んでいるのかどうか知らないが、今までの農業政策は、それが適わなければその数字を変更してきた。政策の多くもそなのうだろう、適合しなければ変えざるをえないことは解るが、とくに農業は工場生産物のような早急な対応はできない。そして土地という大きな空間を舞台とするし、山とは異なり周辺には人が住み、さまざまな環境との葛藤がある。そうしたリスクを負いながらその空間でことを進めるというのも簡単なものではない。

 ではどうしたらよいのか、ということになるのだろうが、もっとも簡単なものは国民の所得が高ければ、安全なものを消費するという意識はあがるだろう。ところが安倍首相にしても自民党にしても、今の考えはそうではないし、現実的にも無理?かもしれない。では次の考えはこうだ。低所得者に農業を展開してもらう。もちろん一定の所得があることは前提となるし、今までのような単一品目への特化を奨励するような施策はないものとする。加えて民主党の言うような所得保障もないものとする。その環境としては、ある程度の経済至上主義は控え、環境政策との整合を図れば、もっとも具体化しやすい施策だと思うし、その時期にあるようにも思う。大変良いと思うのだが、これは低所得者層が反対するというよりも高所得者や大企業が反対するだろう。なぜかといえば、自給的生活は、経済を衰退させるこてとは必死だからだ。

 そんな現状でありながら、ここにきてバイオエタノールが話題になっている。安易にバイオエタノール生産を目標とした農業復活策を口にする人もいるが、こと食生活事情とトレースすると問題が多い。世界的な環境問題時代に、どう食糧事情と整合させた方針を見出すか、注目したいものだが、この「食料の未来を描く戦略会議」もどこかパフォーマンス的な雰囲気が漂うが違うだろうか。
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