Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

草刈のホンネ

2007-07-29 11:09:35 | 農村環境
 日本農業新聞の7月13日紙の「本音のホンネ」において、山下惣一氏が草刈のことについて触れている。草刈については今までにも何度も触れているし、自らその苦労に思うところも多いので、さまざまに考えている。とくに山間地域における草刈がどうなっていくのかというところは、悩み多き問題だと思うが、世の中はそんな非生産的な世界をあまり考えてはいない。そうした空間をどう維持していくかということを農政がまったく考えていないわけではなく、しばらく前から行われている中山間地域の直接支払いといい、今年から始まる農地・水・環境・・・もそうした地域維持に向けた施策であるとは思う。ところが、具体的に何もしなくてもお金をもらえるわけではない。とくに集団的維持という流れが強く、集落とか団体とか、個人を対象にしたものではない。というのなら集落が機能しているうちにこうした施策をするべきだったと思うのだが、今や機能しなくなった、あるいは機能させるだけ若い人がいないという状況に陥っている集落も少なくない。そうした集落維持のために、外部の手を借りようとするが、果たしてそんなにうまくいくのか、という印象は強い。

 山下氏は佐賀県に住んでいる。「田んぼの畔畔に除草剤を撒く人が急激に増えている」という。これもまた、わたしも何度も触れてきているが、わたしの周囲のように果樹園の多いところでは、水田地帯と違って、除草剤が撒かれて茶色に変色している姿をよくみる。山下氏も言うが、電気柵(イノシシの防御のため)を設けた場所は除草剤を使っているという。草刈の際に難儀をするのは、石があったり鉄線があったり、支障となるものがある場合だ。だからどうしても除草剤を使いたくなるものだ。それを避けるともなれば、手で刈ることが必要になる。自宅の庭に芝でも植えていると、障害物の際が機械で刈れないのと同じである。

 新潟県で「みどりの畦畔づくり運動」が行われていると聞いて、その実施要領を送ってもらって笑ってしまったと山下氏は言う。その内容には触れていないが、新潟と言えば平らな水田の畔にも除草剤を撒くということでよく知られている。高級なコシヒカリの裏で、大量の除草剤が撒かれているということで、最近話題の危ない中国の農産物ではないが、けして自国の状況も安心できるものではない。何より「緑の畦畔を」と言わなければならないほど、緑ではない畦畔が当たり前になっているとしたら、大変なことだと思わないだろうか。

 さて、集落への手の施しは遅いのではないか、と述べたが、きっともっと早い段階に策がとられていたとしても、農村の人々が留まったとは思えない。それはあくまでも今年から行われようとしている施策の代価を、現実のそこで暮らしていくために必要な代価と比較してみてのことだ。山下氏は、最後に一級河川での草刈の費用について触れている。堤防の草刈は坪3万円という。1ヘクタールにすれば、30万円ということで、施策として支払われる代価がいかに少ないかということになる。しかし、現実的にそんなに高い代価を支払うことは財政難の国ができるわけがないし、そうした行為に対しての無関係な人たちの批判も少なくないはずだ。いかに「美しい国」という言葉がまがい物かがよくわかるたろう。いっさたいどこに「美しい国」を築こうとしているのだ・・・。
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