Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

自然の残る電車道の脇

2007-07-25 08:28:46 | 自然から学ぶ


 ノカンゾウについて別の日記で触れた。ヤブカンゾウばかりでなかなかノカンゾウが見えない、とそんなことを思いながら車窓から橙色の花を追ってみた。電車の通る空間と、そこに隣接する水田地帯との間に、こうした橙色の花の姿が見える。七久保駅の南側、そして北側など飯島町から伊那市までのJR飯田線沿いにはそのあたりに多く見られる。ではこの空間から離れた水田の土手に咲いているかというと姿はない。なぜかというと、飯島町の場合はほとんどのエリアで昭和40年代から50年代を中心にほ場整備が行われた。だからいじられた土地には、なかなかその姿を見せないのだ。そこへゆくと電車の通る空間と、水田地帯の間にはそこそこの手がつかなかった空間が残っていたりする。そんな空間に橙色の花が咲いているのだ。車窓をあっという間に流れていってしまうから、なかなか正確にヤブカンゾウかノカンゾウか判断はできないが、花の様子からノカンゾウらしき姿は見えない。ヤブカンゾウである。それでも整備された空間にはそのヤブカンゾウですら姿を見せないのだから、手の付けられなかった空間に咲くヤブカンゾウも貴重なものだし、意外と線路沿いにそんな空間があることを教えてくれる。

 七久保駅から南、しばらくの間は線路沿いに耕作放棄地が目立つような空間がある。そんな耕作放棄された水田に丈の高い草が伸び放題なのだが、そうした雑草の中に、ユウスゲが姿をのぞかせている。それもわずかではなく、けっこうたくさん咲いている。ユウスゲはカンゾウとは異なり、夕方から花を開く。これもまた手の付けられていないような空間に姿を見せる。七久保以北ではちょっと線路沿いにユウスゲの黄色い花は見ない。群生しているところはけっこう多いが、どこにでもあるというほど多くはない。山口県では絶滅危惧II類だという。ニッコウキスゲに似ているが、花の色はこちらの方が透き通るほど黄色い。レモンイエローと紹介している人がいるが、そんな感じだ。

 夏の夕方というのは、どことなく夏の終わりを思わせるほど切ないときがある。翌朝再び暑い日ざしがやってくると、うんざりしてしまうが、だからといってそれがやってこないと夏の終わりを感じてしまって寂しいものだ。知らす知らずそんな日がやってこなくなるわけだが、そんな意味でユウスゲは明日も再びやってくる夏の日を確実に印象付けてくれるのかもしれない。夏の陽が落ちる空間に、ユウスゲはとても似合うのだ。

 写真は、犬の散歩に出かけた際に、時おり訪れるため池で撮影したものだ。ユウスゲの姿はけっこうため池に行くと見ることができ。近くにある二つのため池はもちろんだし、妻の実家の裏にあるいつも訪れるため池にもユウスゲがたくさん咲いている。
コメント


**************************** お読みいただきありがとうございました。 *****