Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

子どもたちの変化

2007-07-05 08:26:06 | ひとから学ぶ
 3ケ月が過ぎた。転勤してもそうだし、高校に通い始めた息子もそうだ。もちろんそうした環境は初めてだし、加えてわたしは子どものころ以来という毎日の電車通いというものも始まった。単身で暮らしていたこの3年間に比較すれば、ずいぶんと若い世代と同じ空間にいる時間が長くなった。そんな3ケ月で見えてきた不幸な現実に少し触れておいて、またしばらくの後にそれがどう自分の中で理解できたか、また考えたいと思っている。

 息子が思うように勉強をせずに、進まない課題を横に居眠りをしている姿を毎日のように見てきた。まだ3ケ月、されど3ケ月。課題の多さはしだいに頭の中で山積にされていき、どこかで崩れ去りそうになるだろう。まるで自分に課せられたさまざまな宿題と同じで、すでに10年も山積みにしたままのものもある。自らの行動に問えば、「なぜできない」と息子に言うこともできないが、同じことをして欲しくないからやかましく息子に問うことになる。あたりまえのことを当たり前にこなす、ということがなかなかできなくなった若者、といってしまえばそれまでだが、それは大人も同じで、加えて社会も行き詰まり感がある。

 かつてPCなるものがなく、すべて手で文書が処理されていた時代の書類をこのごろ仕事でひっくり返している。わたしがまだこの世に生を受ける前のものも紐解いているが、その時代とわたしが就職した時代ではそれほど変化はない。だから、自らアナログの時代をある程度経験しているから、今との違いを歴然と感じる。かつてはすべて手で記録され、また活字文書はタイプで打たれていた。その時代の労力と、今のキーをたたけば文字がいくらでも記録され、またコピーが簡単にできる労力、比較にならないほどそこには時間的な差があると思うのだが、かつてはそれで十分仕事が間に合い、また多くの事業がこなされてきた。ところが今はどうだろう。時間をことごとく短縮しているにもかかわらず、できあがっているものは、あまり形として見えない。それは感覚的なことで実際は違うのかもしれないが、自ら毎年余裕がなくなっている現実を体感しながら「どうしたんだろう」と思うことは最近多くなった。毎日のようにその違いを考えているが、果たして何が短縮され、何が労力として加わったのか。

 と、そんなことを思いながら再び息子の現実を捉える。ケイタイが一般的になってまだ間もない。息子のクラスでもケイタイを持たない人は誰もいない。高校にも連絡網なるものがあって、連絡がやってくるのだが、それがケイタイのメールなのだ。先日もあまりにひどいのでケイタイを取り上げていたら、連絡網が届く。電源を切っていたので、気がつくのは遅かった。まるで相手が常に待ち受けているようにそんな連絡がやってくるが、それで確実な連絡ができるとは到底思えない。にもかかわらずそうそしたシステムを選択した息子たちに、どんなに機能的であってどんなに経済的であっても、正しいシステムではないと諭すが理解できない。

 メールの存在については以前にも触れているが、確かに相手に不快感なくこちらの用件を伝達することができるかもしれない。もちろん経済的だとは言うが、ここに大きな不幸がある。経済的だという視点だ。世の中効率だけを選択するから、言い訳に「経済的」とか「効用がある」というと、反論できなくなる。しかし、そんな選択を子どものころから受けているから、それに疑問をもたなくなる。連絡がとれなくて問題があったとしてもそれはそれでもう仕方のない世界。そう思うのだが最善の策がとれなくてそうなるとしたら、どんなに堅実で経済的であっても正しいとは思えない。そんな不思議な現実が、今や子どもたちだけではなく世間一般に広がっている。それを疑問にならなくなると不幸は山となるだろう。

 経済的な選択のいっぽうで、文化祭にみんなで同じような姿をする。卒業式なんかもどこかで流行れば同じような姿が広まっていく。同じことをしていないと不安になることもわかるが、その選択をだれもがしていたら、「疑問」という言葉は浮いてこない。それぞれの能力が異なるはずなのに、同じことを選択する。おのずと格差が生まれる。本来なら、それは格差ではなく、それぞれの違いを納得して、オリジナルな自分を作り上げていく原点だと思うのだが、それが相成らんのだ。自分をどれだけ理解できるかが、個々の能力の向上への道だと思うのだが、表面上は皆同じだ。社会も昔と変わらずにたたずんでいるが、実は意識の変化はとてつもなく大きい。何がどう変化してきているのか、とくに子どもたちの世界はこれからの姿を描く。教育論議が盛んだが、現実の姿と変化をもっと認識できるような場面が必要だと思うのだが、…。
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