スポーツ障害 || その4 病期ごとの対処2/3

2018年09月09日 | スポーツ障害

さて、前回の続きです。 

日常生活レベルの動作では痛まないが、痛みのために競技ができない状態にあるStage3では

患部の回復を積極的に促すためのセルフケアと並行して患部に負担をかけずに行えるトレーニングに取り掛かります。

だらだら書くと読みにくいと思いますので、項目ごとにまとめてみます。

 

セルフケアについて

具体的なアドバイスはケースバイケースなので、ここでは何を目的とするかについてお話します。

この時期、ダメージを負った組織はコラーゲンの繊維で覆われ瘢痕化し関節の動きが妨げられています。

ですので、まず手始めに関節の可動域を取り戻すことから始めましょう。

固くこわばった筋々膜に対してストレッチ、フォームローラー、テニスボールによる筋膜リリースなどがおススメです。

ただし、この時期の患部はデリケートなので刺激はソフトに抑えましょう

追いかけ過ぎは禁物です。

 

追いかけ過ぎにならないための工夫

1、はじめに関節の可動域を確認します。

  痛みを感じずに動かせる範囲を確認しましょう。

2、ストレッチや筋膜リリースを実施します。

  眉間にしわが寄らずにできる強さが目安です。

3、再度関節の可動域を調べ、可動性が広がっているか確認します。

  この時、痛みが強まったり可動性が1、の時よりも狭まるようならばセルフケアは中止します。

  好転しているようならば2→3を繰り返します。

そしてここがポイント‼  

ひとつ前のセットと比較して可動域の変化や痛みの軽減といった良性の変化がみられなくなったら、たとえ硬さや痛みが残っていてもそこで打ち止めとします。

一度に柔軟性を変えられる幅には限度がありますから、それを無視して痛みや硬さを完全に取り去ることに固執してしまうと刺激過多でダメージを負ってしまいます。

こうしたケース、結構多いのでご注意ください。

過ぎたるは及ばざるがごとし。

治るためには回復を待つ時間も必要な要件であることを忘れずに!

 

患部に負担をかけずに行えるトレーニングについて

これは工夫のしどころですね。

ただただ回復を待つのでは、故障によって損なわれた能力以外の能力も弱まってしまいます。

円滑な競技復帰のためにも患部に無理なく元気な部分を鍛えましょう。

例えばシンスプリントやジャンパー膝。

上半身のトレーニングなどを考えてみると、患部への負荷は排除できることが分かると思います。

ダンベルやマシントレーニングなど下肢への負荷のかからない種目であれば攻めた負荷設定でのトレーニングができますね。

他にも下肢の筋バランスの崩れを考慮した場合、体幹筋のトレーニングを行うなんて選択も可能です。

私の場合、ペルビックティルト(下に動画あり)やバランスボールなどのトレーニングを選択することが多いですね。

その理由は、末梢の故障の背景には体軸の機能不全が絡んでいるからなんです。

普段の練習ではできないレベルで徹底的にこの部位の能力を引き上げることに時間を費やすことで、

再発の予防や復帰後の成長の幅を引き上げる効果が期待できます。

このように、怪我というネガティブな事象も考え方ひとつでポジティブに活かしてゆくことが可能となるのです。

 

膝の痛みへの運動療法:ペルビックティルトによる下肢体幹の調整

 

 

患部の機能回復のための特殊な手法について

その1:MWMs

私の治療やケアサポートではStage2への移行を促すために運動併用モビリゼーション(MWMS:モビリゼーション・ウィズ・モーションズ)と言う手法を使います。

この手法は関節運動を妨げる硬さを安全に取りのぞきつつ神経制御を正常化する効果を持っていますので覚えておいて損のない手法です。

そもそも故障を負った関節は正しい軌跡で関節を動かすことができない状態にあります。

こうした関節はある方向へは動きを失い、またある方向への支えを失い、動かすたびにガタガタと異常な運動を繰り返してしまいます。(モーターコントロールの喪失)

この異常運動はトレーニングなどの反復動作による故障(RSI:反復性緊張損傷)の原因となりますので今後の運動訓練を始める前に正さなくてはなりません。

 

ちょっと話が脱線しますが…

じつはこうした異常運動、故障を自覚する前から存在しているんです。

スポーツ障害ではそうした無自覚に存在する異常運動の繰り返しで傷めてしまった、という側面があることを付け加えさせていただきます。

ちなみにこの無自覚な異常運動を「関節機能障害」なんて呼ぶのですが…話を本題に戻します。

 

重複しますが、異常運動をただすためには関節する骨同士が構造的に無理なく動くことを邪魔する「硬さ」を解消し、

構造的に無理のない動き収める神経制御(神経による筋肉のコントロール)を取り戻す取り組みが求められます。

これに対して、この運動併用モビリゼーション(MWMS)という手法はとても良い仕事をしてくれるということなんです。

運動併用モビリゼーションの適応条件は、このエクササイズを行う過程で「痛みや違和感を感じずにできること」です。

普通に動かすと痛い、でも、運動併用モビリゼーションでは痛まない!

ということであればGOサインです。

通常6~8回を良性の変化を確認しつつ、3~5セットほど行います。

まずは自重で無理なく関節を動かせるようになったら今度は負荷を高めてゆきます。

その2:スタビライゼーション

スタビライゼーションとは関節の安定性を再建するための運動療法の一つです。

MWMSよりも負荷が強くなるのでStage3の後期あたりから取り入れるます。

 

文章だけではわかりにくいと思いますので、MWMSからスタビライゼーションへの流れをまとめた動画を紹介します。

アスリートリハビリ~肩関節の調整から動的安定性の強化まで~

・肩関節のMWMS~3:47

・肩関節のスタビライゼーション3:48~4:58

スタビライゼーションは負荷の軽いものから順に紹介しています。

初めからすべてをやらなきゃならないのではなく、痛みや不安感のない範囲でできる種目を選んで実施します。

そうして関節の可動性と支持性が高まってきたところで徐々に競技動作に慣らしてゆきます。

 

続く


最新の画像もっと見る