スポーツ障害||その5  各病期ごとの対処3/3

2018年09月25日 | 治療の話

さて、大分お待たせしておりますが、ようやく最終回です。

長文となりますが、お付き合いください。

 

今回はStage2・1の対処について。

と、その前にちょっと復習。

 

Stage:運動開始時には痛みがあるもののアップで消える。

Stage:運動開始時に痛みがあるもののアップでいったん消えるがトレーニング(競技の練習)終盤に再び痛み出す。

 

この運動開始時の痛みの正体は、傷跡の引き攣れでした。

傷跡の硬さが動く中で和らいだ結果として痛みが消えるという段階がStage1・2共通の特徴です。

Stage2に進行するとトレーニング(競技の練習)終盤に痛みが生じます。

この終盤の痛みの正体はStage1よりも患部のダメージが深く、傷跡となった組織自体の耐久性が低いためにトレーニング(競技の練習)終盤には患部が耐えきれずに炎症が生じたことによる痛みでした。

そうした諸問題への対処を以下にまとめてまいります。

 

○基本のルール

実はリハビリ全般での共通したルールでもあるのですが、トレーニングの際には「患部の違和感を上限とした負荷設定」を厳守してください。

組織は健常な組織でも耐久限度上限近くの負荷がかかってきたときには痛みを生じます。

この負荷がかかり続けると壊れてしまうということを「痛み」という形で教えてくれるのです。

これは怪我を負った組織や委縮した組織でも同じこと。

そのキャパは正常な組織よりも低いので、より軽い負荷でも痛みとして感知されるわけです。

つまり、ギリギリ痛みが感じられるレベルの負荷であれば再受傷してしまうというリスクは回避できると考えることができます。

でも、だからと言って痛みを負荷の上限を判断する指標にするのは危険です。

ゆっくりとしたモーションで徐々に負荷を高めながらおこなうトレーニングであれば、組織が傷ついてしまう前のレベルでの痛みを感知できるでしょう。

でも、ジャンプやスプリント、投擲といったクイックな運動では負荷が一気にピークを迎えますから、患部が破綻してしまわない範囲のコントロールが難しいため再受傷を避けるには不向きです。

安全に使える指標は、故障した関節や筋腱にかかる負荷が危険水域に近づいたときに痛みより先に発せられる「違和感・不安感」です。

『あ、やばそう!』って感覚、怪我をしたことがあればお分かりいただけると思います。

この感覚をアプリヘンジョンサイン(不安徴候)といいます。

痛みを赤信号に例えるならばアプリヘンジョンサインは黄色信号といったところです。

より安全な指標として、アプリヘンジョンサインは非常に役に立ちます。

着実に回復するためには違和感・不安感を上限として、その上限までのパフォーマンスが回を重ねるごとに高まってゆくのを根気よく待つことです。

リハビリは慌てず急がず根気よく、です。

怪我の度合いにもよりますが、きちんと上記のルールに沿ったリハビリを積めば軽い故障で3~4週間、中等度で2~3か月で元のパフォーマンスまで戻ります。

ただ、重症例では半年からそれ以上かかったり、後遺障害として残ったりと結果はまちまち。

アクシデントによる怪我は別として、オーバートレーニングによるシビアな故障は負わないに越したことはないのです。

怪我をしてしまった時には目先の結果に固執しないでクレバーに振舞いましょう。 

 

○ウォーミングアップ「運動開始時の痛み」への対処

1、運動の可否の見極め

さて、Stage1・2の特徴としては「運動開始時の痛み」がありました。

これは患部に生じた炎症後の傷跡(繊維化・瘢痕化した組織)が運動時に引き伸ばされることで起こる痛みだと説明しました。

このように炎症の落ち着いた時期であれば動きながらストレッチがかかることで痛みは解消されます。

しかし、すべての動き始めの痛みが必ずしも炎症が落ち着いた後の痛みである保証はありません。

時にはまだ炎症が落ち着いていないせいで動作痛が出ている場合もあるのです。

その見極めにはStage3のときと同じく、MWMSがおススメです。

例えば肘が痛いとします。

そうしたときには肘関節のMWMsを行ってる最中の痛みの有無を診るのです。

この手法を行っているさなかに痛む場合は炎症が潜んでいるか、いまだ組織の回復が追い付かず脆いため自重での動作も控えなくてはならない状況にあることが分かります。

そうした反応が返ってきた際には2~3日、患部への運動刺激を外しましょう。

患部の状態が落ち着けばMWMsで痛むことはなくなり、安全にトレーニングに移ることができます。

 

参考資料として下記の動画をご覧ください。

MWMSの解説は0:38から1:38の部分となります。

 

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)のセルフケア // とよたま手技治療院

 

無事にMWMSができる状態であればStage3の時と同じくスタビライゼーション(バランストレーニング)※に移り、競技練習への備えとします。 

「スポーツ障害その4」に肩関節をターゲットとしたMWMsとスタビライゼーションを含む動画を載せています。

話は少し脱線しますが、

私の介入では「競技練習」に移る前にウォームアップとして故障部位に対してMWMSとスタビライゼーションを取り入れています。

MWMsとスタビライゼーションを取り入れる理由は、患部の関節運動を正常化し、さらにこれから取り組む運動に耐えうる水準に関節の支持性を高めておかないと容易に再受傷してしまうからなんです。

不用意な再受傷を未然に防ぎ、着実な競技復帰を実現するのためにMWMsとスタビライゼーションは大いに役立つ手法です。

しかし、治療の領域で知る人ぞ知るMWMsも、リハビリの分野でお馴染みのスタビライゼーションも、スポーツの領域ではまだまだ一般的な手法ではないので、ここで伝えるうえで曖昧模糊とした話で終始してしまうのが歯がゆいところです。

私がスポーツの現場での仕事をする際には、これらの神経筋骨格系の機能を正常化する手法の数々を一連のルーティンとしてまとめてクライアントに提供しています。

「パフォーマンスチューニング」と名付けて提供しているのですが、まだまだ一般的な手法として広まっていないのでここで紹介したMWMs・スタビライゼーションはプラスアルファのお話として記憶にとどめておいてください。

パフォーマンスチューニングに関する指導依頼はとよたま手技治療院へ。

お待ちしています。

 

さて、脱線終了。

競技開始時の痛みの見極め(鑑別)の話に戻します。

 

MWMSですが、スポーツを指導される方にはぜひ知っていただきたい手法なので、そういう手法があるということを知っていただけたらと言及させていただきましたが、そもそもMWMSが一般的な手法ではありませんのでもう一つ現実的な対処を挙げさせていただきます。

例えば、痛む動作に対するパッチテストのような手法もあります。

以下に手順を説明します。

1、初めに痛む動作を選びます。

2、その動作の中でどの角度で痛みが出るのか、また自覚的な痛みの強さを確認します。

3、痛みを感じる角度の前に「張り感」や「違和感」「不安感」を感じる角度があるはずです。

そこまでの振幅で10回ほど動きを確認します。

4、一息ついてもう一度痛む動作を確認します。

痛みの軽減や痛まずに動かせる可動域の拡大などがあれば炎症は落ち着いていると判断できます。

つまりはその先のトレーニングができるということが分かります。

良性の変化があれば「3⇔4」を繰り返し、故障部位へのウォームアップとします。

 

○競技動作への取り組み 

Stage3・4での対処の主眼は怪我の回復と休養期間中の身体能力の低下をいかに阻止するかでしたが、Stageからはいよいよ競技復帰に向けた準備として競技動作を用いたリハビリに移ります。

ただし、対人競技ではゲーム形式の練習はまだ外しておきましょう

フェイントなどへ対応するためのランダムな体勢の変化に傷跡となった組織が耐えられるようになるのはもう少し先の話です。

まずは患部が競技に関する基本動作を競技レベルで行える状態になるまでの強化を目指しましょう。

初期にはジャンプ動作をともなわない、脚が地面に接地したままできる動作をゆっくりと正確に行うよう心がけましょう。

例えば、野球肩などではこの時期にゴムチューブ(セラバンド)を壁から引きながらの投球動作などを行うことがあります。

こうした例で私が注意するのはどの局面でも肩関節を弛緩させずに動くこと。

特にコッキングで肩関節前面の筋(肩甲下筋・三角筋前部繊維)が脱力してしまわないように注意を促します。

肩関節の違和感の出現を上限とし、スピードや負荷を上げてゆきます。

素早い動作でも肩関節を滑らかにコントロールすることができたらようやく軽いキャッチボールに移行します。

それも問題なければ徐々に出力を上げてゆきましょう。

でも、違和感が出たらそこまでです。

くれぐれも痛みに挑まないようにしましょう。

これがなにより一番重要!

何度も書きますが、痛みはその組織が持つ耐久限度を超える(もしくは超えそうな)刺激が与えられた時に生じるサインです。

回復のカギは患部に痛みが感じられない範囲の負荷に減らす工夫をすることです。

多くのケースでは「痛いながらも競技自体ができるから…」と痛みを我慢しつつ競技を続けてしまうのですが、それが落とし穴なんです。

それで切り抜けられるのは成長期にある18歳位まででしょう。

その回復も成長に向けた旺盛な代謝を日々繰り返される怪我の修復に浪費した結果なので、その間の努力は身体能力の向上にはつながりにくく、競技者としての成長も頭打ちとなっていることに注意が必要です。

中学~高校生の成長期は地力を高める大事な時期です。

その後の競技者としての成長も成長期に培った地力を土台に磨かれてゆくものですので、この時期には極力大きな地力を育てたいところです。

そのためにも不用意な怪我は「しない」「させない」

怪我をしたら長引かせずに治すことを第一に考えましょう。

「競技を続けていればどっかしらが痛いのは当たり前」とやってるうちにシビアな故障へと傷が深まっていったケースが五万とあるということはスポーツとともに青春を駆け抜けた経験を持つ方であればよくご存じのはずです。

過ちは過ちとして正視して、けして美談にしないこと。

次世代には同じ過ちを繰り返させないこと。

これは指導する大人の務めだと思います。

リハビリは先を見据えて、いたずらに競技への復帰を急ぎすぎず、おおらかに取り組みましょう。 

焦りは禁物です。

治り際が一番危ない時期ですから。

もうそろそろ復帰が見えてきた…なんてときに限って大きな故障を負ってしまう。

これ、結構よく聞く話なんですよね。

治療してきて断言できるのがこの時期に故障を繰り返す人はこの時期の過ごし方が絶対的に間違っているということです。

動けるようになるとすぐに元の練習メニューに戻してしまう。

そして、痛みがあっても練習の手を緩めない。

でも、そこに落とし穴があるのです。

そうしてしまう気持ちは痛いほどわかります。

動き始めの痛みもいったんは消えますし、終盤戻ってきた痛みもこらえられない程ではない…

しかも、そこそこの力が出せてたりもするわけです。

そうなると早く元の力を取り戻したくなるのが人情です。

しかし、患部にとって限度を超えたトレーニングが繰り返されれば再びStage3や4へと逆戻りしてしまいます。

ここは本来我慢のしどころなのですが、スポーツの現場では「競技をしていたら痛いのは当たり前」といった間違った観念が根づいていますので、そうした間違った対処を繰り返してしまうのも無理からぬことかもしれません。

しかし、改めるべきは改めないと…

戦略がものをいうようなスポーツだとだましだまし怪我と付き合っていっても競技者として上位に上ることもあるでしょう。

ですが、陸上競技やウエイトリフティングのようにフィジカルがものをいう競技ではそうはいきません。

選手としての人生は決して長くはありませんから、半年・一年のロスは非常に大きな損失です。

そうした損をしない(させない)ためにも故障に気が付いた時点で「今現在のベスト」にしがみつかずにクレバーな対応を心がけなくてはなりません。

勇気のいる話ですがすべての事象は理の中にあるのです。

強くなるには強くなる理があり、怪我をするには怪我をする理があります。

治るにも治るための理から外れることはないのです。

円滑な競技復帰のために選手も指導者もこの時期の過ごし方のルールを守っていただきたいですね。

安定した競技復帰を果たすためには患部の強度を健常な組織と同じレベルに引き上げるというステップを着実に踏むことが重要です。

その際の条件はもうご存知の通り、「痛みに挑まない」ことと「患部の違和感を上限とした負荷設定を守る」ことです。

ここを押さえてトレーニングを積んでゆけば安定的な回復を引き出すことができるのです。

 

○練習中に違和感が生じた際の対処

運動開始時の痛みを解消するためにMWMsなどのセルフケアをウォームアップに取り入れるようにお勧めしましたが、運動中に違和感が生じた際にも同様の対処を試します。

インターバル中にセルフケアを行って違和感を解消できるか試し、消えるようならばその先の練習へと駒を進めます。

しかし、アップで効果的だったケアエクササイズをしてもなお違和感が引かないようでしたら患部の組織はオールアウトしたと考え患部を使う練習はそこまでとします。

それから、ケアエクササイズがスタティックストレッチやラクロスボールやフォームローラーによる筋膜リリースであった場合、練習中に行うのをためらう方もいると思います。

理由はそれらの手法が運動神経を鎮静化させる効果を持つため筋出力が削がれるから、というものです。

でも、「痛み」というのはそれ自体が強力な筋力発揮の抑制因子です。

違和感のうちに散らせるものなら散らした方が力は維持できますし、正しく動ける状態でのトレーニングの方が安全性も運動による学習効果も高く、再受傷のリスクを低減できます。

こうした理由から、故障をしている時期には練習中にスタティックストレッチ/筋膜リリースを取り入れることも視野に入れてください。

故障時の特例みたいなものですね。

  

以下にセルフケアの一例として「肘の痛みの対処法」の動画を紹介します。

「特例」の手法の一例として、コンプレッションストレッチをご紹介しています。

肘の痛みのセルフケア|ベンチプレス、スナッチやジャークでの肘の痛みに~テニス肘・ゴルフ肘にもおススメ~

  

○テーピング/サポーターなどの装具による補強

これも上記同様、テーピングによって関節運動が安定するのならテープやサポーターの助けも借りましょう。

でも、油断は禁物です。

あくまで「痛みに挑まない」をルールとして遵守しましょう。

 

↓下肢の故障を例に

膝・足首の調整:ニーテープとアンクルテープ(TOYOTAMA TAPE)の張り方

動画の手法は関節のコントロールに関する深部感覚受容器に働きかけることで正常な筋バランスを取り戻す手法です。

状態が悪ければ筋バランスの改善では関節の支持性を取り戻せない場合もあります。 

そうした場合はエラスティックテープやコットンテープなどでの固定も視野に入れましょう。

 

○アイシング

練習後は速やかにアイシングをしましょう。

傷害された後の組織は脆い上に敏感で、すぐに炎症を起こします。

炎症という現象はまさに火事のごとく周囲の正常な細胞まで殺してしまいますので、ほったらかしにするとダメージからの回復に時間がかかってしまいます。

炎症が過度にならないようにとどめるために、練習後には速やかなアイシングお勧めします。

特にStage2ではアイシングを忘れないようにしてください。

氷嚢を使って10~15分のアイシング、氷嚢を外して5分の休憩。

これを2~3セット行います。

 

競技への復帰

運動開始時の痛みも癒えたあたりから実戦形式の練習に戻ります。

しかし、初めから10割の練習量をこなそうとせず、徐々に運動量・運動強度を上げてゆくようにしましょう。

経験上の話となりますが、Stage4からここまでの回復に係る期間は中等度で2~3か月、重症のものでは半年~といった印象です。 

Stage2と3を行き来して長くかかるものは途中でルールを無視して再受傷したケースです。

強い選手ほど「あと少し…」というところで魔が差してしまうので注意が必要です。

怪我をしたらバリバリだったころの自分ではなく今の自分を向き合うことが大切です。

それってすごく勇気のいることだったりするのですが、

そこをこらえて着実に積んでいければ怪我と痛みのループから抜けだせる日が来るということを記し、本シリーズの締めとさせていただきます。

以上、スポーツ障害への対処でした。

 

<あとがき>

人生100年時代。

健康余命やアンチエイジングへの関心が高まりを見せる今、高強度トレーニングへの理解も単純な「筋肥大」から神経系を含めた「機能強化」へと進化してきています。

スポーツをはじめとした活発な身体活動は美容と健康を保持増進するための力強い味方になります。

しかし、時に故障の憂き目にあうこともあるのも事実…

残念なことに一旦故障をした後の対処を間違うと、何度も同じ個所をを故障してしまったり、故障が身体のあちこちに飛び火するということもあるわけです。

でも、それは治しようのないものなのかというと決してそうではないんです(後遺障害は別として)。

故障を負った方の多くは痛みが引いたらすぐに元の運動負荷に戻してしまいます。

これが不味い。

傷が癒えたとはいえ怪我前より脆くなった患部にもとの強度の運動に耐えうる強度があるとは限りません。

むしろ、多くの場合は耐えられないケースの方が多いんです。

怪我を負ったあとは段階を追って故障個所を強化すること。

果てのない暗闇の中を進むような心細さを感じるかもしれませんが、明けぬ夜はありません。

事実、20代で半月板を削り取ったパワーリフターが30代で自己ベストを更新し続けるケースだってあるんです。

70代、変形した膝の痛みで歩くことすら辛い状態だったバレエダンサーも、きちんと手順を踏んだら再び跳ぶことができるようになったケースだってある。

それらは決して珍しいことではないんです。

彼らは絶望的な状況にあっても自分を信じて、あきらめずに、そしてクレバーに歩を進めた結果、競技復帰を手に入れたんです。

諦めず、そして焦らずに、コツコツと積み上げれば、またもとのようにスポーツを楽しむことができる日を迎えることができるんです。

この記事が故障のループから抜けられずに困っていらっしゃる方のもとに届くことを、切に願ってやみません。

 

2018/9/25 古川容司


スポーツ障害 || その4 病期ごとの対処2/3

2018年09月09日 | スポーツ障害

さて、前回の続きです。 

日常生活レベルの動作では痛まないが、痛みのために競技ができない状態にあるStage3では

患部の回復を積極的に促すためのセルフケアと並行して患部に負担をかけずに行えるトレーニングに取り掛かります。

だらだら書くと読みにくいと思いますので、項目ごとにまとめてみます。

 

セルフケアについて

具体的なアドバイスはケースバイケースなので、ここでは何を目的とするかについてお話します。

この時期、ダメージを負った組織はコラーゲンの繊維で覆われ瘢痕化し関節の動きが妨げられています。

ですので、まず手始めに関節の可動域を取り戻すことから始めましょう。

固くこわばった筋々膜に対してストレッチ、フォームローラー、テニスボールによる筋膜リリースなどがおススメです。

ただし、この時期の患部はデリケートなので刺激はソフトに抑えましょう

追いかけ過ぎは禁物です。

 

追いかけ過ぎにならないための工夫

1、はじめに関節の可動域を確認します。

  痛みを感じずに動かせる範囲を確認しましょう。

2、ストレッチや筋膜リリースを実施します。

  眉間にしわが寄らずにできる強さが目安です。

3、再度関節の可動域を調べ、可動性が広がっているか確認します。

  この時、痛みが強まったり可動性が1、の時よりも狭まるようならばセルフケアは中止します。

  好転しているようならば2→3を繰り返します。

そしてここがポイント‼  

ひとつ前のセットと比較して可動域の変化や痛みの軽減といった良性の変化がみられなくなったら、たとえ硬さや痛みが残っていてもそこで打ち止めとします。

一度に柔軟性を変えられる幅には限度がありますから、それを無視して痛みや硬さを完全に取り去ることに固執してしまうと刺激過多でダメージを負ってしまいます。

こうしたケース、結構多いのでご注意ください。

過ぎたるは及ばざるがごとし。

治るためには回復を待つ時間も必要な要件であることを忘れずに!

 

患部に負担をかけずに行えるトレーニングについて

これは工夫のしどころですね。

ただただ回復を待つのでは、故障によって損なわれた能力以外の能力も弱まってしまいます。

円滑な競技復帰のためにも患部に無理なく元気な部分を鍛えましょう。

例えばシンスプリントやジャンパー膝。

上半身のトレーニングなどを考えてみると、患部への負荷は排除できることが分かると思います。

ダンベルやマシントレーニングなど下肢への負荷のかからない種目であれば攻めた負荷設定でのトレーニングができますね。

他にも下肢の筋バランスの崩れを考慮した場合、体幹筋のトレーニングを行うなんて選択も可能です。

私の場合、ペルビックティルト(下に動画あり)やバランスボールなどのトレーニングを選択することが多いですね。

その理由は、末梢の故障の背景には体軸の機能不全が絡んでいるからなんです。

普段の練習ではできないレベルで徹底的にこの部位の能力を引き上げることに時間を費やすことで、

再発の予防や復帰後の成長の幅を引き上げる効果が期待できます。

このように、怪我というネガティブな事象も考え方ひとつでポジティブに活かしてゆくことが可能となるのです。

 

膝の痛みへの運動療法:ペルビックティルトによる下肢体幹の調整

 

 

患部の機能回復のための特殊な手法について

その1:MWMs

私の治療やケアサポートではStage2への移行を促すために運動併用モビリゼーション(MWMS:モビリゼーション・ウィズ・モーションズ)と言う手法を使います。

この手法は関節運動を妨げる硬さを安全に取りのぞきつつ神経制御を正常化する効果を持っていますので覚えておいて損のない手法です。

そもそも故障を負った関節は正しい軌跡で関節を動かすことができない状態にあります。

こうした関節はある方向へは動きを失い、またある方向への支えを失い、動かすたびにガタガタと異常な運動を繰り返してしまいます。(モーターコントロールの喪失)

この異常運動はトレーニングなどの反復動作による故障(RSI:反復性緊張損傷)の原因となりますので今後の運動訓練を始める前に正さなくてはなりません。

 

ちょっと話が脱線しますが…

じつはこうした異常運動、故障を自覚する前から存在しているんです。

スポーツ障害ではそうした無自覚に存在する異常運動の繰り返しで傷めてしまった、という側面があることを付け加えさせていただきます。

ちなみにこの無自覚な異常運動を「関節機能障害」なんて呼ぶのですが…話を本題に戻します。

 

重複しますが、異常運動をただすためには関節する骨同士が構造的に無理なく動くことを邪魔する「硬さ」を解消し、

構造的に無理のない動き収める神経制御(神経による筋肉のコントロール)を取り戻す取り組みが求められます。

これに対して、この運動併用モビリゼーション(MWMS)という手法はとても良い仕事をしてくれるということなんです。

運動併用モビリゼーションの適応条件は、このエクササイズを行う過程で「痛みや違和感を感じずにできること」です。

普通に動かすと痛い、でも、運動併用モビリゼーションでは痛まない!

ということであればGOサインです。

通常6~8回を良性の変化を確認しつつ、3~5セットほど行います。

まずは自重で無理なく関節を動かせるようになったら今度は負荷を高めてゆきます。

その2:スタビライゼーション

スタビライゼーションとは関節の安定性を再建するための運動療法の一つです。

MWMSよりも負荷が強くなるのでStage3の後期あたりから取り入れるます。

 

文章だけではわかりにくいと思いますので、MWMSからスタビライゼーションへの流れをまとめた動画を紹介します。

アスリートリハビリ~肩関節の調整から動的安定性の強化まで~

・肩関節のMWMS~3:47

・肩関節のスタビライゼーション3:48~4:58

スタビライゼーションは負荷の軽いものから順に紹介しています。

初めからすべてをやらなきゃならないのではなく、痛みや不安感のない範囲でできる種目を選んで実施します。

そうして関節の可動性と支持性が高まってきたところで徐々に競技動作に慣らしてゆきます。

 

続く


スポーツ障害||その3各病期ごとの対処1/3

2018年09月02日 | スポーツ障害

またまた間が空いてしまいました。

コンスタントに更新できず心苦しいのですが、ここの所忙しくって…

はい、いいわけです。

もういい年ですから泣き言いわずにやることやんなきゃですね…(-_-;)

 

さて、

前回はスポーツ障害の病期についてお話ししました。

スポーツ障害の病期は大きく分けて4つの段階があるという話です。

Stage1:運動開始時には痛みがあるもののアップで消える。

Stage2:運動開始時に痛みがあるもののアップでいったん消える。しかし、トレーニング(競技の練習)終盤に再び痛み出す。

Stage3:日常生活レベルの動作では痛まないが、痛みのためにトレーニング(競技の練習)ができない。

Stage4:常に痛みがあり日常生活レベルの動作も困難になる。

これを踏まえて、今回は各病期ごとの対処についてまとめたいと思います。

Stage1~4の順で紹介してきましたが、障害の回復は重症から軽症へと変化してゆきますので

対処編では状態の悪い順に説明することにします。

 

Stage4】

Stage4では傷の状態は強い炎症や損傷をきたした急性期と呼ばれる状態ですので競技は禁止です。

少なくとも受傷直後から3日は安静(動き回らず横になって過ごすという意味の安静です)にします。

セルフケアについて

受傷直後から強い炎症が落ち着き一心地つくまでは、痛めた個所以外の補強も避けましょう。

この時期には消炎剤の服用や患部のアイシング、患部の安静・保護を目的としたテーピングやサポーターなどの装具の使用を検討します。

ちなみに、患部に無理がかからないならば周囲の関節への穏やかなストレッチは可能です。

例えば後ろに反ると腰が痛むような場合、股関節前面の硬さ(股関節の伸展制限)や胸の硬さ(胸郭の伸展制限)を取ることで腰部の負担を減らし回復を促すことができます。

裏を返せば股関節や胸の動きの悪さを補うように腰部が働き続けたせいで腰部の故障をしたということなのです。

このように一部の関節に故障を負う場合、その背景要因として隣接した関節の動きの悪さが隠れています。

そうした背景要因への対処はStage4でも患部に負担がかからなければ行ってOKです。

ただし、その判断は一般の方には難しいかもしれません。

自身で判断する場合は「患部が痛まないこと」を条件としてください。

基本この時期はあまりいじくりまわさず身体が自身の傷を治すのを邪魔せずに待つ事が重要となります。

まさに果報は寝て待て。

受傷した組織の種類や損傷の深さにもよりますが、だいたい3~6日の安静で激しい炎症が落ち着き、自覚的にも一心地つける日がきます。

(血管網の多寡によって回復の速度に違いが出てきます。筋などの血管網の発達した組織は早く治り、靭帯や軟骨といった血管の分布が少ない組織の回復には時間がかかります。)

傷が浅ければこの時点で、深ければそこからもう数日待つと日常動作ができるまでに回復します。

日常動作ができるようになったことを確認したらSTEP3まで回復したとお考え下さい。

補足:損傷部位ごとの回復速度の目安※あくまで目安です

筋々膜の故障なら3日~1週間

靭帯や腱なら~3週間

軟骨や半月板、椎間板なら3~5週間

※傷がきれいに治るのではなく炎症や過敏性が落ち着くまでの目安となる期間です。

残念なことに軟骨や半月板、椎間板などの組織は一度傷つくとそのまま傷が残ることが多い組織です。

 

つづいてStage3…

と行きたいところですが、今日のところはここまで。

続きは次回!

なるたけ間を置かずに更新したいと思います(あくまで希望…)。

では!


スポーツ障害 || その2 障害の深さ~病期の話~

2018年08月14日 | スポーツ障害

さて、だいぶ空いてしまいましたが…

今回はスポーツ障害の「病期」についてお話しします。

 

「病期」というのは故障の深さを判断する指標のこと。

スポーツ障害の病期は大きく4つのステージに分けられます。

Stage1:運動開始時には痛みがあるもののアップで消える。

Stage2:運動開始時に痛みがあるもののアップでいったん消える。しかし、トレーニング(競技の練習)終盤に再び痛み出す。

Stage3:日常生活レベルの動作では痛まないが、痛みのためにトレーニング(競技の練習)ができない。

Stage4:常に痛みがあり日常生活レベルの動作も困難になる。

 

では、各病気を説明します。

 

Stage1では、ダメージを負った患部が一応の回復を終え「こわばっている」状態です。

私たちの組織は炎症後に縮むんですね。

それが引き攣れて痛むというのが「運動開始時の痛み」の正体です。

引き攣れた組織も動かされるなかでストレッチがかかり、引き攣れがなくなったことで痛みから解放されたというわけです。

しかし、ダメージを負った直後の組織は弱くなっていますので、

健常な部位に比べて運動後には強い筋肉痛に見舞われやすく、回復にも時間がかかります。

この時期に、患部の回復を待たずに健常な部位に合わせたトレーニングを重ねるとStage2へと足を踏み入れてうので注意が必要です。

 

Stage2ではいったん消えた痛みが終盤に戻ってきます。

これは患部が萎えて脆くなっているためです。

Stage1同様、患部の腫れは一応の終息を得たところからのトレーニングスタートなので、コワバリが取れた時点では痛みが消えます。 

しかし、度重なるダメージが十分に回復していないせいでStage1 よりも患部の運動負荷に対する耐久性が低いため、

後半はオーバートレーニングから局所的な炎症を起こしてしまうんです。

こうした状態に入った初期は練習後しばらく痛みますが、翌日には患部の「はり感」や「だるさ」に落ち着いたりします。

ここで油断してしまうんですよね。

特に成長期にある子供たち(~18歳)は回復力が高いのでこうした状況でも悪化を免れて現状を維持し続けたり、

持ち直したりするから見逃されがちなので周囲の大人はよくよく注意しなくてはなりません。

「悪化しないからいい」のではなく、旺盛な「成長する力」を競技力を高めるために使わずに怪我を治すために使い続けてしまっては競技力の向上につながりません。

本末転倒です。

成長期は地力を育む大切な時期です。

子供たちが貴重な「成長力」を無為に消費することの無いように、大人が目を光らせてあげてほしいなと思います。

ちなみに、練習後の痛みは徐々に長く残るようになります。

練習の翌日には引いていた痛みが翌日も残るようになり、終盤の痛みがより早い段階で現れるようになり…

それを無視し続けるとStage3へ足を踏み入れることになります。

 

Stage3ではさらに患部のダメージが深まった状態です。

状態としては炎症の一歩手前の亜急性期といったところです。

練習による患部の炎症が辛うじて収まってはいますが非常に不安定な状態だとお考えください。

この時期には日常生活動作は辛うじてこなせるものの、

競技動作のような強い筋力発揮には患部が耐えられなくなってきます。

ちょっと動くと脆くなっている患部が強い痛みを訴え、すぐに炎症を起こしてしまうような不安定な状態です。

本人が『これは病院に行かなくちゃダメかも…』と考えだすのもこの時期。

でも、試合が目前に控えていたりすると『今は病院に行っている場合じゃない』と無理を押して練習を継続したりします。

仮にこの時期、病院でレントゲンやMRIをとっても大きな損傷が見つかることはあまりありません。

「大した怪我ではない」と太鼓判を押されてしまうことすらあるので気を付けなくてはなりません。

画像診断的には大した怪我ではないと言われても、痛みの出方が「このあとビッグウェーブが来る」ことを物語っているんです。

なので、この時期に入ってしまった時点でアウト。

治療・回復に専念しなくてはならないんです。

本人の気持ちを考えると、それを宣告するのが身を引き裂かれるほど辛い。

でも、その後の競技人生を大きく左右する事態なので、冷静な判断が必要となります。

この時期に無茶して頑張るとStage4へと移行してしまいます。

 

Stage4では急性期、つまり怪我の状態になります。

痛みのために日常の動作に支障が出てきますし、練習どころではなくなります。

なので、病院嫌いの人も観念して病院へ行くのもこの時期。

そして、レントゲンやMRIで初見が取れだすのもこの時期です。

ちなみに、画像診断上「大したことないけどね」って言われることもままあるのですが、

症状の出方で判断した方が良い。

ここまで酷くなると怪我自体が治るのに数週間(以上)、そこからリハビリに数か月。

当然、長期の練習からの離脱が待っています。

しかし、多くのケースで痛みが落ち着いたら急に練習を再開してしまうんですよね…

たとえば膝を痛めた選手がいたとします。

「痛みが落ち着いた!よし、まずは軽くジョギングから!」

よく見る光景ですが、これアウト!

痛みが引いても患部は萎えてしまっていますから、安全で正しい関節運動を維持できません。

少なくとも「走る」という瞬発的な筋力発揮をともなうような動作はリスキーです。

運動を安全に行うには、膝関節が正常なコントロールを取り戻せていないといけません。

私だったらスクワットテスト(しゃがみ動作と起立動作)やランジテスト(踏み込み動作)といった一連の動作で

下肢-体幹に異常運動(ニーインやニーアウト、トレンデレンブルグやデュシェンヌ)が出ていないことを確かめてからGOサインを出します。

異常運動を認めた場合は異常運動を修正するための一手を打ちます。

それにはバランストレーニング(関節のスタビリティの再建)やフォームを意識した軽負荷でのスローリフティング(スクワット・リバースランジがおススメ)が有効です。

でも、現場ではそもそも問題を抽出する「評価スキル」が浸透していませんから、

「痛みが落ち着いた!よし、まずは軽くジョギングから!」となる…(-_-;)

故障個所の異常運動(←関節ががたついた状態をイメージしてください。)は意識にのぼりにくい上に故障の原因そのものです。

そうした問題をそのままにして運動を繰り返せばどうなるでしょうか?

「復帰⇔再受傷」の繰り返しとなるのです。

再受傷のたびに患部は脆くなってゆき、競技成績は下行の一途をたどり

最終的には競技を継続できず引退…

 

私もそうでした(´-ω-`)

でも、いまはウエイトリフティングをできるまでに回復しています。

やりようはあるんです。


次回は各病気ごとの対処についてお話ししたいと思います。

 


アスリートリハビリ~肩関節の調整から動的安定性の強化まで~

2018年08月01日 | スポーツ障害

書きかけのシリーズもあるのですが、肩の障害の相談でちょうど強化の段階に差し掛かってきた患者様が増えてきたので、参考資料として動画を挙げさせていただきました。

肩に限らず関節の故障の後、痛みが落ち着いたからと競技復帰したがすぐにまたぶり返してしまった…

という経験を持つアスリートは多いのではないでしょうか。

その理由は意外と簡単なんです。

 

痛みが引いた≠元に戻った

 

このことをイメージできないために、知らず知らずの内に患部に無理を強いてしまうことが再発を繰り返す原因です。

再発を繰り返してしまわないためにも競技復帰の前に患部の動的安定性を育むという一歩を踏んでいただきたいと思います。


この動画は肩関節の故障を例に「痛みが落ち着いてきた辺り」から行うリハビリのメニューを紹介しています。

 

ウエイトリフティング(ジャーク動作での故障)を対象に話を進めていますが、どのスポーツでの肩の故障でも活用いただけます。

野球肩の方にもおすすめです。

 

後半の強化のためのエクササイズは痛まずにできるものを選び、

やり込んでオールアウトを狙うのではなくゲーム感覚で「いかに上手に再現するか」を目標に取り組んでください。

 

故障後のガタついた関節を競技レベルでコントロールできるようになるためには、

その取り組みが神経系の適応を狙うトレーニングであることと同時に支持強度の向上にも役立つものであることが大事。

 

回復の時期による「神経系の適応」と「支持強度の向上」の優先順位を考えると、

たとえ軽負荷であっても正しい関節のコントロールが成されることが最初の課題となるので、

初期には動画の前半にある「肩の調整」のみか極軽負荷でのバランストレーニングでの対応となります。

 

その次に来るのが強い負荷でもコントロールを失わない強さを手に入れるという課題となりますので、

動画の後半を占めるバランストレーニングが主軸を占めて行くことになります。

 

競技復帰はそれらが充分にクリアできたあとの話。

 

動画の手法は神経制御の正常化と強化をバランスよく行える方法となりますので、

肩関節のスポーツ障害からの円滑な競技復帰、そして障害予防の一手としてお役立てください。

 

【アスリートリハビリ~肩関節の調整から動的安定性の強化まで~】


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