私ごとですが、先日38歳の誕生日を迎えました。
昨晩、妻より遅めのお誕生日のプレゼントに
ある歌い手(あえて「うたいて」と呼ばせていただきたい)のライブのチケットとCDを貰っちゃいました。
ある歌い手
それは「竹原ピストル」
で、そのCDのタイトルが
「ROUTE To ROOTS」
原点への道?という意味で良いのでしょうか。
さて、前置きはこの辺で、本題。
この日の夜は手技療法の練習会でした。
この日のテーマは「触診」でした。
実は前回もテーマは触診
前回も触診、今回も触診(笑)
僕らの仕事において「触診」は全ての技術の根幹にあるもので、
この仕事をつづける以上、一生追いかけ続けるスキルです。
触診の感度が高まれば高まるほど、
出来る仕事の精度が高まるもんですから、やらなきゃ損!ってなものなのです。
この日の勉強会は
「触診力の高め方は、日々の臨床でこんな切り口を持てば良いんだよ」
といったメッセージをこめてすすめました。
ざっと、流れを紹介すると、
1、触診としての「触り方」の練習
調べる面に対して、いかに均質に触れるか?
如何にして接触面からの情報を感じとるのか?
2、層触診の練習
皮膚表面から深層の組織の感触の違いを読み取って、異常な組織を見つける方法です。
3、マイオフェイシャルリリース(前回の復習)
筋膜の縮みあがった方向を探り、的確なストレッチを掛ける方法。
延び難くなった方向を「制限」「バリア」と言います。
いわゆるストレッチのように、制限の方向へ引き延ばしてゆく場合を
「直接法:ダイレクトテクニック」
と言います。
4、マイオフェイシャルリリース:インダイレクト
筋膜には自動性があると言います。
確かに、
脳脊髄液の流れによる(とされている)「一次呼吸」と呼ばれるリズムに沿って律動的に動いてます。
制限(縮みあがった)を持った筋膜は、
制限方向へと引き込まれるような動きが感じられます。
インダイレクトテクニック:間接法としての筋膜リリースでは、
「引き込まれる方向」へただただ寄り添うように着いてゆくことで制限を解いてゆきます。
これ(4番)、この日のメインテーマでした。
はじめに自分の大胸筋に対して制限を見つけて、
ダイレクトテクニックで解除してみました。
拍子抜けするほどの軽い力でも、
少々時間がかかりますが、大きな変化が付くことをみんなで体感しました。
で、今度はインダイレクトに挑戦。
私:
「まずはじめに直接法で筋膜の制限方向を確認しましょう」
「次に、ただただ均質に触れることに集中しましょう」
「そしてどこに動いてゆくのか、手で眺めてみましょう」
「作為は持たないように、ただ寄り添うような心持で、じっと耳を傾けるように」
「どうです?動きは感じますか?」
参加者の先生方は「…。」
私:
「そろそろ『焼き上がった』頃でしょう。
制限を確認してみて下さい。」
参加者の先生方の驚きの声と喜びの眼差し。
『ね、ちゃんと変わるでしょう!?』と得意満面な私。
でも、「変わる」事が判っただけじゃ道半ば。
筋膜の動きを追えるようになることがゴールですから。
そこで、「律動的な動き」を追う練習として、
こんなことをしました。
5、「一次呼吸」を触知する
「一次呼吸」というのは、脳神経を養っている脳脊髄液の「分泌⇔吸収」のリズムです。
「分泌」されると、脳を包む頭蓋骨と脊髄を包む硬膜管が膨らみます。
「吸収」されるとそれらは縮むわけです。
筋膜は全身を包みこむ一枚のシートだと言われますので、
この一次呼吸による動きは全身に伝わって行くのです。
「分泌」に合わせて背骨はS字を弱め、手脚は外旋します。
「吸収」ではその逆となります。
筋膜の一部にむらが生じると、一次呼吸による動きが崩れてきます。
その動きの崩れを感知することができれば
「障害部位」の検出に応用することができます。
○パートナーの脚から一次呼吸の動きを探る練習
両脚首を優しく両手で包んで、「内⇔外旋」方向の運動を探る。
私がガイドとして、患者役の先生の頭の動きを「内、外、内、外…」と読んで伝えてゆきます。
次に術者役の先生の手の上から私が手を添えて同じく動きを伝えてゆきます。
そのリズムを術者役の先生が感じられるか?を練って行くわけです。
○仙骨の動きを探る練習
この仙骨は頭蓋骨と連動して「前傾⇔後傾」を繰り返しています。
その動きを探ることで触診の感度を練ろうという訳です。
ところで、
仙骨は上半身と下半身をつなぐ要石のような部分です。
ここは、あらゆる運動で強い負担に晒されます。
なので、関節構造も強く出来ています。
厳重に靭帯でもおおわれています。
それで足りない部分を手足から続く筋膜で補強しています。
それを踏まえたうえで、
靭帯はそれ自身が制動装置であると同時に
「(脳が)自身の動きを知るためのセンサー」の役割をにないます。
動きに合わせて引き延ばされる靭帯から中枢へと『いま引っ張られています』と情報が送られると
その運動を邪魔する筋緊張をOFFにする反応が自動的に送られます。
仙骨は強い負担に晒されるところですから、機械受容器が他よりも沢山配置されています。
そこに筋膜リリースを掛けるとどうなるでしょうか?
なんと、仙骨を支えている筋肉たちがリラックスするんです。
つまり、手・足・体幹の筋肉たちがリラックスするんです。
つまり、この仙骨を自由にすると、その変化は非常に広範囲に広がるんです!
(注意:これだけ(仙骨への手入れ)で全てが丸く収まるような気もしてしまうかもしれませんが、
現実はそう甘くありません。)
介入前に患者さん役の先生は、前後屈・側屈・回旋といった全身運動をチェックします。
動きずらい方向を確認したらレッツトライです。
数分、仙骨の動きを追いました。
そして、再チェック。
患者さん役の先生から聞かれる驚きの声。
こうして、触診の練習に加えて
カラダの持つ仕組みをリアルに理解することを繰り返した2時間でした。
触診が出来ればどこに何をすればいいのかが判ります。
触診が出来れば自分が手を下した事で、
患者さんの問題点に、キチンと変化が付いているのか
そうでないのかが判ります。
その作業は自分の仕事の精度を上げてくれます。
こうした作業は繰り返せば繰り返すほど、触診の感度を上げてくれます。
触診の感度が上がれば上がるほど、問題点を見つける力も、治療手技の精度も挙がって行きます。
つまり、日々の臨床そのものが自分を高めてくれる場になるんです。
私はそのことを集まってくれた先生方と共有したかった。
そうした考えは、積み重ねた自分自身の時間が出した答えだと思っていたのですが、
ここで話は、ようやく冒頭に繋がります。
どうでもいい話ですが、
若いころ、合気道の道場で指導員をしていたことがありました。
(センスがなかったので、挫折してしまいましたが(笑))
その合気道の師匠が
行住坐臥 一切の事象 是 最善の道場也
つまり、「自分を取り巻く全てが、最高の道場なんだ」と言っていました。
家に帰って、
妻からCDをもらって、
タイトルを見て、
「ROUTE To ROOTS」
ああ、そうか。
一人で納得。
道場の下りを「練習の場」とするとおかしな感じなので、
自分が磨かれてゆくということで、
「先生」にさせていただいて私の業界にあて込みます。
で、「臨床こそが最高の先生なんだ」と…
なるほど、探して探して見つけた答えが、
スタート地点に戻ってきたと。
なんだかえらい遠回りしてきましたが、
昔の自分が選んだ道も、まんざら間違っていなかったんだと、
妙に得した感じがしたりして。
で、BLOGのネタに書いちゃった。と。
とにかく、
臨床を「最高の先生」にするには「触診力」がカギを握っているよ。
色んな技も、「それ」を種にのびた枝葉なんだと、
私は言いたいのです。
CDのタイトルにニンマリしつつ
「これからも、クローズドはマニアックに行こう」
と、心に決めた38歳でした。
以上、先日の勉強会の模様でした。