ストレスが引き起こした肩関節の痛み

2021年05月18日 | 治療の話

このところ、肩関節の痛みの相談でちょっと興味深い例が続いてます。

故障自体は肩峰下インピンジメント症候群というよくある相談…

肩を挙げると水平から10度の範囲で肩関節に痛みを生じるという故障なんですけども、

何が興味深いって、その原因に普段だったらマイノリティなはずの要因が治療のカギを握っていたケースが続いてるんです。

肩峰下インピンジメントには大きく分けて二つのタイプがありまして

1,腕を前へならえから頭上に挙げる動作で痛む「屈曲型」

2,腕を横から開く動作で痛む「外転型インピンジメント」

この二つがあります。(実際には混在していますが)

この原因として、猫背による肩甲骨の位置異常、それによる肩関節周囲筋のアンバランスが挙げられます。

でも、ときおり混ざり込む原因に「第2肋骨の下制」という機能障害があるんです。

この第2肋骨って骨は腕の運動の軸になっていて、

この肋骨が下に引き下げられてしまうと腕を横に挙げるときに胸が連動できず、肩関節にかんぬきがかかってしまうんです。

そうして発生したインピンジメント症候群は第二肋骨の問題を解消しなくては治りません。

 

でも、第二肋骨が原因となるケースはいつもなら少数派。

それがこのところやたらに多い。

『あれ?今まで見過ごしてきたのかな?』

って心配になるぐらい多い。

この第2肋骨は何が原因で引き下げられているのだろう?

と探ってゆくと、決まってみぞおちの硬さが見つかります。

みぞおちあたりの筋膜が縮むと胸骨ごと上半分の肋骨をおじぎさせてしまいます。

とくに第1第2肋骨は影響が強く出ます。

このみぞおちは慢性的なストレスがあるとまず硬くなるところなのですが、

なんでストレスが続くとみぞおちが縮むんでしょう?

それはもぞおちの下に内臓神経節という内臓の知覚の中継点があるからなんです。

胃腸などの消化管の粘膜が傷つくと、その傷からの刺激をみぞおち付近の内臓神経節が受け取ります。

すると神経節周囲の筋も反射的に緊張を高めます。

なので、胃腸炎があったりするとみぞおちが硬くなってしまうんです。

ところで、ストレス性胃炎とかよく聞きますけど、心理的なストレスで胃腸の粘膜が傷つくのってなんだか不思議だと思いませんか?

これにもちゃんと仕組みがあるんです。

人はストレスを感じると交感神経が興奮します。

交感神経の慢性的な興奮状態は細胞の成長や再生を遅らせます。

消化管の粘膜細胞は3日で寿命を迎えますが、寿命を迎えると剥がれ落ち、新たな世代の粘膜細胞とバトンタッチします。

しかしながら、交感神経の興奮が続くと次世代の粘膜細胞の成長が遅れます。

でも、粘膜細胞は3日で寿命を迎え、剥落してしまうわけです。

するとどうなるか?

まだ粘液を吐き出せないような未熟な粘膜細胞が表に顔を出すことになるわけです。

消化管の粘液って胃腸が自分自身を消化しないための防御壁なんです。

その粘液が出ないとどうなるかはわかりますよね。

溶かされちゃうんです。

自分で自分を消化しちゃう。

こうして慢性的なストレスが胃腸炎を作り上げるんです。

慢性的にみぞおちが硬くなって、腕の軸の第2肋骨が動けなくなって、肩関節に無理な動きが繰り返されて

そうして肩が壊れてしまうということです。

そうそう、もう一つ説明しなくてはならないことがありますね。

第2肋骨がとくに動きを失う理由について。

みぞおちの筋膜が縮んだ時には第一肋骨も等しく影響を受けるはずなのに第2肋骨の問題が大きく出るのはなぜか?

それは、気持ちが落ち込んだ時にとられる姿勢がカギを握っています。

「はぁ~」とため息をついているときって、うなだれてますでしょう!?

あの姿勢では胸も落ちくぼみます。

すると胸骨が背中方向へ圧縮を受けることになるのですが、

胸骨は「胸骨丙・胸骨体・剣状突起」という3つの骨で構成されていて、胸骨丙と胸骨体の間は胸骨角という関節があるんです。

うなだれて胸骨が圧縮を受けたとき、この胸骨角を支点とした動きが圧縮方向に起こるわけですが、

この胸骨角につながっているのが第2肋骨なんです。

なもんで、第1よりも第2肋骨の障害が顕著に表れるんですね。

 

話をまとめると、

ここ最近のおかしな肩の故障の数々は

コロナ(関連の社会案が原因だと思いますが…)のストレスでみぞおちが硬くなり、

第二肋骨が下に引き込まれて肩関節が外転型インピンジメントが生じていたと、

つまり心因性のストレスが原因で痛めた肩(関節)ということ!

「心因性のストレスが原因で痛めた肩(関節)」とだけ書くと突飛な話だけれど、

身体を丁寧に読み解いてゆくと荒唐無稽な話ではなくなるから面白いですね。

 

そういえば、どこかの歌に「人はときに心に身を引きずられ、また身に心を引きずられ」なんて歌詞がありました。

こうした症例に気が付いたとき、心と体は密接にリンクしているんだなって妙に感心してしまいます。

でも、患者さんを治癒に導くということを考えると、心の問題が絡んでいる分、難しさを感じますね。

身体の故障は何とか出来るけど、ストレスのでどころに関しては政治に頑張っていただくほかありません。

しかし、どうもうまくいっている様子はなく…

こうなると、メンタルマネジメントが回復のカギになりそうですね。

さて何ができるか…

スポーツや趣味に時間を使ってストレス発散に努めていただくことでしょうかね!?

あれもこれも自粛×2!

でも仕事は通常営業で!!

となると、なかなか思い切ったストレス発散も難しいですね。

当分は故障の火が付いちゃあ消してのくり返しとなりそうですねぇ… (;´Д`)ハァ~



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