もも裏が痛むとご来院のAさん。
長引くテレワークで腰の疲労の蓄積は自覚していたが、年始にとうとう腰を痛めてしまったそうな。
腰自体は治っていたそうだが、最近になって今度はもも裏が痛みだしたとご来院。
経過からは椎間板由来の腰痛に続発する坐骨神経痛が想起された。
※腰部椎間板ヘルニアなのでは発症初期には腰痛、それが落ち着き始めてから下肢痛というパターンが少なくない。
しかし、ご本人的には神経痛というよりハムストリングスの故障のように感じているという。
確認のため前後屈を確認。
ハムストリングスの長さは十分。
となると、Aさんの心配するハムストリングスの故障の線は薄くなる。
腰椎の動きに伴った痛み(下肢痛)も現れない。
となると、どうも腰椎由来の故障の線も薄い。
Aさんと私、双方の予想を裏切る結果となった。
さて困った…とはならない。
病態を見極めるにはもう少し情報収集が必要だ、となる。
私「どんなことをするときにもも裏が痛みますか?」
と聞くと
A「床のものを取ろうとしたときなんかが痛むんですよね。」
と返ってきた。
私「ちょっと再現していただけますか?」
Aさん、膝を曲げずに股関節から身体を折り曲げてものを拾う動作を再現。
A「このとき痛みます」と、痛みの再現もあるという。
はて?先ほど前屈動作では痛がっていなかったはず。
何が違うのか?
もう一度再現してもらい、注意深く動作を観察。
すると、痛みを感じる動作では痛めている方の脚に重心が移っていることが判明。
なるほど。
おそらくは小殿筋のトリガーポイント由来の痛みだろう。
確認のために仰臥位で小殿筋の長さを左右比べると、痛めている側の小殿筋の短縮を確認。
組織を探ってみると後部繊維の線維化を発見。
どうやら犯人は小殿筋後部のトリガーポイントのようだ。
治療では鍼を選択。
無事トリガーポイントを解除し、事なきを得た。
このところテレワークをされる方から大腿外側や膝の外側の痛みを寄せられるケースが意外とおおい。
みなさん外側広筋や腸脛靭帯の故障を心配されるが、調べてみると小殿筋由来であるケースが多い。
これは座りっぱなしであることが原因だろう。
股関節の運動が安定するには骨盤部への腹部筋群と大殿筋の機能が保たれることが重要なのだが
座位ではどちらも機能低下に陥りやすい。
主たる支えを欠いた身体は補助装置である股関節の外転筋や内転筋を代用する。
しかし、所詮は補助装置。
じきに過労に陥りAさんの小殿筋のように「痛み」という悲鳴を上げることになる。
こうした例に出くわすと、通勤という運動がもたらしてきた福音の大きさを実感する。
転じて、テレワークでは意識的に身体を大きく使う時間を設けることを推奨したい。
ラジオ体操でもいい。
チェアスクワットでもいい。
股関節をしっかり曲げ伸ばしする動作を含んだ運動をチョイスすることで、
テレワークによる健康被害は大幅に減じるだろう。
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