図版引用:Anatomy trains second edition Churchill Livingstone
お話しの前に、下の図を見てみてください。
図版引用:Karageanes Principles of Manual Sports Medicine LWW
上の図は「後面深層のアウターユニット」の資料としてあげました。
右の大腿二頭筋→仙結節靭帯→右起立筋・対側の胸腰筋膜深層(と言いつつ左の腸肋筋と下部僧帽筋、そして三角筋後部へと緊張が伝播しているケースもしばしば…)といった「仙腸関節」の”支え”を補強する軟部組織群です。
仙結節靭帯から先を、背骨をまたいで「Y字型」に繋がっているとご想像ください!
図版引用:Anatomy trains second edition Churchill Livingstone
左上肢に描かれている筋群が「ディープフロントアームライン」です。
一番上の図にもあるように、二頭筋は上部僧帽筋への繋がりも持っています。
さあ本題。
動画は2011年7月のものです。
主に起立筋の緊張からくる骨盤の捻転機能障害への対処法として使う技です。
そして、その起立筋の緊張は二頭筋や腕橈骨筋といった上肢の屈筋の緊張の影響を受けているという前提を証明している技法でもあるんです。
YOUTUBEの動画の整理をしていたら見つけたんですが、今ではもう使わなくなっていた”手”。
でも、改めて見てみて『中々いい手だな』とちょっと関心してしまいました。
…自画自賛ってやつですね(;´∀`)
何が「いい」って腰が固いのに「腕」の関与を「逃さず」「いっぺんに」解除できるのがいい!
ものぐさな私ならではの発明だなって、5年前の自分を褒め褒めしちゃいました。
この技法が成り立つ背景について、ちょっと説明足せてください。
これは私の臨床経験からの発見なのですが、
「ディープフロントアームライン」(byトーマス)という腕の筋膜群に生じた緊張は
肘関節を屈曲位に保持(肘が曲がるってこと)してしまいますので、
上肢の重心が前腕の中心にある関係上、肩甲骨には前傾が生じます。
つまり、肘が伸びずらくなると肩が前に出っ張るってことです。
すると同側の胸郭には前方へのトルクが生じます。
つまり、腕の重心が前に出て、肩も前に出る分、それにつられて背が丸まるってことです。
ほっといたら腕の重さに負けてどんどん”お辞儀”してしまいますから、
身体は反射的に”真直ぐに立とう!”と「後面深層のアウターユニット」でカウンターバランスをとるんです。
平たく言えば、バランスをとるために背中の筋肉で引き返すってことです。
そうして互いに緊張を高めあって何とか重心を安定させるんですね。
こうした働きが反射的に、つまりオートマティックに出てくるってんですから、身体ってすごいですよね。
ちなみに、こうした背景で起こりがちなのは「肩こり」「腰痛(この場合屈曲型腰痛)」です。
腰痛は解りそうなもんですが、「肩こり」は意外でしょう⁉
でも上位肋骨に腕を伸ばした腸肋筋の過労は肩甲骨の内側(肩甲骨内縁)に強いコリを作ります。
「病膏肓に入る」
なんていう肩甲骨の内縁の痛みがそれです。
もっと表層の筋の仕業と言われがちですが、私の見立てではその多くは腸肋筋の付着部の故障です。
他にもこの状況では肩甲骨を支える筋の過労による「肩こり」それに「頭痛」なんかも出てきます。
面白いと思いませんか?
腕の緊張が故障の切っ掛けになっているのに腕には大して問題が出てこないんですものね。
むしろ割を食わされて帳尻を合わせるために一肌脱いだ方に症状が出ている。
でもって、このように相互が緊張しあってバランスしている場合、
どちらか一方のグループに緊張や短縮を残すと、もう片方もすぐに緊張を取り戻してしまうから
解除するのにけっこう難儀するんです。
気になるところだけほぐそうとしても関連のある患部から離れた筋」残った緊張がすぐに患部の緊張を呼び起こして振出しに戻してしまうんです。
徒手医学では「身体は全体が一つのユニット(機能単位)として働く」と考えていますが、
上記の臨床経験からも『ほんと、そうなんだなぁ』と感心しちゃいます。
何はともあれ、そうした背景がある以上、痛いところだけ見ていては治せるものも治せないのです。
これは私の持論でもありますね。
で、動画の方法は関連した腕の筋膜群も下肢から体幹の筋膜群もまとめて介入できるのが偉い!
久しぶりに、ちょいと自分にかけてみたところ思った以上に切れもいい!
なんで使わなくなったのかが不思議なくらいです。
こりゃ明日の治療でリバイバルしてしまうでしょうね。
してしまうな。(*´ω`)