小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

谷崎潤一郎 「病蓐の幻想」

2006-09-05 23:51:03 | 小説
歯齦膜炎から寝付いた神経衰弱気味な男が、病床で幻想に悩まされる。
非常な痛みに襲われて苦しんでいると思ったら、その痛みを音楽に変えて演奏を試みたりと、自虐趣味的な様子も垣間見えて、この作家らしいです。
そして、歯の痛みの次には、大地震の来る心配にとりつかれ、家屋の倒壊シュミレーションを行って(分析がなかなか科学的)、逃げ道を必死で考える様子がおかしいです。

関東大震災の7年前に書かれていて、その想像力に感心します。
実際に震災が起こった後には、関西に移住しているところをみると、地震に対する恐怖心の強さがわかりますね。

中公文庫『潤一郎ラビリンス〈7〉怪奇幻想倶楽部』に収録されています。

潤一郎ラビリンス〈7〉怪奇幻想倶楽部

中央公論社

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