小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

石川啄木 「事ありげな春の夕暮」(心の姿の研究3)

2006-04-22 23:59:59 | 
前回の「大宴会」ばかりでなく、やはり、春の夕暮れには何か起こるらしいです。

「遠い国には戦があり……       (第一連)
 海には難破船の上の酒宴……

 質屋の店には蒼ざめた女が立ち、  (第二連)
       :(略)

 何か事ありげな--          (第三連)
 春の夕暮の町を圧する
 重く淀んだ空気の不安。
 仕事の手につかぬ一日が暮れて、
 何に疲れたとも知れぬ疲がある。

 遠い国には沢山の人が死に……   (第四連)
       :(略)

 あ、大工の家では洋燈が落ち、    (第五連)
 大工の妻が跳び上る。」

第一連と第四連では、世界の状況を示し、それぞれに続く第二連と第五連では、身近な庶民の生活を描いて、両者の結びつきが示されていますね。
中心の第三連については、春の気だるさの感じから、なるほどと思わせます。
何と言っても、ラストが見事です。
岩波文庫『啄木詩集』などで。
啄木詩集

岩波書店

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