現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

パンとサーカス-大衆から愚衆へ-

2014-10-04 08:49:54 | 日記
 「パンとサーカス」とは、古代ローマの詩人ユウェナリスが当時の世相を風刺して使った表現だ。権力者から与えられる「パン」(食糧)と「サーカス」(娯楽)によって大衆が政治的無関心になり、皇帝達の統治が容易になることを表現している。

 自民党の安倍政権はアベノミクスというブードゥー経済を使って株高と円安を作り出し、この影響は大衆には少ないものの、資産家には大きな恩恵をもたらし、その恩恵をマスコミがアベノミクスによる効果として宣伝し、パンがあたかも振ってきたような演出を行った。しかし、多くの民衆の実感が伴っていないことから、アベノミクスの化けの皮がはがれつつあり、アベノミクスというおまじないをマスコミが繰り返しても効果は徐々に薄れてつつある。
 他方、Jリーグ創設から徐々に増えているようなスポーツに関する報道、スポーツニュースであるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催決定により、スポーツに関する話題がさらに増えていくだろう。古代ローマを揶揄した「パンとサーカス」という言葉だが、「サーカス」(circenses)とは当時の娯楽を象徴的に例えた言葉であり、実態はグラディエーターによる剣闘などであり、今の時代でいうと「スポーツ」がピッタリくるものである。スポーツ以外にも「アニメ」や「ゲーム」も含まれることは言うまでも無い。
 しかし、観戦者の一体感や熱狂度から考えるとスポーツを超えるものはないだろう。応援をする試合観戦者が「ニッポン」を連呼する姿、多くの観戦者が同じようにタオルを回転させる仕草、先導者に併せて手拍子を打ち、チーム名を連呼する。サッカーであればゴールの瞬間に一斉に観客が立ち上がり熱狂する。この観客の一体感こそ為政者が求めるものであり、それゆえスポーツを応援する国会議員なども多いのだろう。(この一体感を生み出すものとして有名なものが、参加者全員で運動や行進などを行うマスゲーム。ナチス時代のドイツや北朝鮮、あるいは宗教団体(創価学会等)などが好んでいるもの。集団行動も似ている。)

 スポーツと公共事業は、実は、切っても切り離せないものである。しかし、その実態を大衆になかなか伝えない。例えば、今年国民体育大会が開催される長崎県では、約80億円をかけて陸上競技場の改修を行っている。また、ガンバ大阪は新スタジアムを建設する予定だが、140億円の寄付金の募集を行っている。
(関連サイト)
県立総合運動公園新陸上競技場(仮称)整備の基本設計(長崎県庁)
国体先催県開・閉開式整備状況(p.2、岐阜県議会特別委員会資料)
みんなの寄付金でつくる日本初のスタジアム(ガンバ大阪関連)
 そして、新国立競技場の建設に至っては、現在の国立競技場の解体費用を含めて、総工費1,692億円が見込まれている。この金額は、ガンバ大阪のスタジアムが10個建設できる金額である。約100億円と言われる2万人収容の陸上競技場(スタジアム)が16個も建設できる金額である。これだけの巨費を投じて国民にサーカスを提供するというのである。
 スポーツの振興が公共事業に繋がっていることから、議員は「パンとサーカス」のみにあらず、スポーツを振興しようとするのだろうか。

 国内問題や政治から目を遠ざけるためには、「パンとサーカス」が最適なものである。アベノミクスとスポーツを囃し立てれば、大衆は愚衆となり、政権批判は消え去り、政権の支持率は上昇する。さらに近隣諸国、具体的には韓国、北朝鮮、中国の国内問題(事故や不正、とんでもない事件)などをより多く報道し、日本国内の問題の報道を減らせば、大衆の愚衆化はさらに進展するだろう。
 栄華を誇った古代ローマ帝国、パクス・ロマーナは失われ、ローマ帝国は崩壊した。歴史を学ばない民族に未来はない。流浪する民族を維持するためにユダヤ人は聖書を作り、戒律を守らせてきた。聖書も戒律もない日本人の将来はどうなるのか、歴史を学び、過ちを繰り返さないようにすることが大切だ。
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