創発企業経営

起業13年目の会社の経営、事業報告

会社の所有者(1)

2011年09月21日 | 経営

起業に際し、外部から投資を受けるならば、経営者は当然、上場か売却のEXITを意識することになります。

そうなると企業の所有者についても理解しておく必要がありそうです。

私は90年代に米国企業の日本事務所に勤めていました。 私の勤める企業は堅調な利益を上げ、中西部の伝統的優良企業でしたが、突然ニューズウイークで批判されました。 競合他社に比べて成長率が低く株価が低迷していると。 当時のCEOがこれに経営努力を一層していくと即座に反応しました。 それは、迅速かつ真剣な対応でした。

当時、日本社会にいた私には、この変化の背景、経営者の危機意識の大きさの理由がわかりませんでした。 しかしこれが、その後の米国、やがて欧州や日本に飛び火した、企業再編、買収、リストラクチャリングの前兆でした。


90年代の米国の株主と企業の経営者の関係について、P.F. ドラッカー( チェンジリーダーの条件より 「企業の所有者が変わった」 ダイヤモンド社)によると以下のような背景があったといいます。

大企業には、通常、従業員の数以上の株主がいます。

ドラッカーによれば、米国では、年金基金を中心とする機関投資家全体が米国の大企業と中堅企業の株式の約4割を保有している。 投資家は、債券に関し当然高水準のリターンを求めます。 この背景がありながら、持ち株が大きくなりすぎたために、もはや簡単に売ることができない。 株主たる年金基金は、企業の仕事の成果に責任を持つべき立場になったが、株主は所有者でありながら、保有株式を売却できない。 と言って、オーナ経営者にもなれない。 年金基金は、そのような困難な立場で、しかも大企業の仕事と成果に責任を負っていたといいます。

90年代の米国の企業の変化と混乱は、このことについての経営者と株主の理解が曖昧で、資本構造については会社は株主のもの、株式の転売はいつでも可能と思われていた節があります。 企業経営者が株を売却されては困ると過敏に反応したのはそのせいです。

実際、敵対的買収や企業再編で一時的に株価が上昇し、株主が売却益を得られるように見えても、実際に受け取るものは現金でなく、ワラント債や無担保債であわてて売却する頃には、価値自体疑わしくなっているといいます。

しかし、実際企業買収(敵対的買収を含む)、再編が行われたのは株主が株式を売却する意思があったからです。 つまるところ、何が起こったかといえば、
「企業の乗っ取りと解体は、知識労働者に対する裏切りで、生産的かつ献身的に働く上で必要な信ずべきことを全て否定する」行為であった。 また 「その後、経営が良くなった企業は殆どない」。

結局、株主にも、従業員にもメリットがなく富の消失があり、株主が会社を自分の所有物として(語弊はありますが)おもちゃにした結果、誇りをもって働いていた人は傷つき、本来発生すべき富も消失した。

90年代以降の社会構造の変化は企業の本質を変えたでしょうか? 答えはイエスでありノーです。 一つ言えるのは当時も今も自動車のような製品は健在で製造業に関して言えば、国際化の流れの中で、海外に製造拠点は移転しつつも、開発や経営に携わる知識労働者に対するニーズは根強く存在します。

ドラッカーはそれを 「組織の使命と目標のための経営」と呼んでいます。



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