情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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靖国神社廃止の議~自民党総裁石橋湛山

2006-08-29 22:47:57 | 有事法制関連
1956年(昭和31年)12月、自由民主党第2代総裁に当選、内閣総理大臣に就任した石橋湛山が「靖国神社廃止の議 難きを忍んで敢て提言す」というタイトルで,以下のような社論を昭和20年10月27日号東洋経済新報に掲載している(阿修羅←クリック)。

■■引用開始■■

甚だ申し難い事である。時勢に対し余りに神経過敏なりとも、或は忘恩とも不義とも受取られるかも知れぬ。併し記者は深く諸般の事情を考え敢て此の提議を行うことを決意した。謹んで靖国神杜を廃止し奉れと云うそれである。

靖国神社は、言うまでもなく明治維新以来軍国の事に従い戦没せる英霊を主なる祭神とし、其の祭典には従来陛下親しく参拝の礼を尽させ賜う程、我が国に取っては大切な神社であった。併し今や我が国は国民周知の如き状態に陥り、靖国神杜の祭典も、果して将来これまでの如く儀礼を尽して営み得るや否や、疑わざるを得ざるに至った。殊に大東亜戦争の戦没将兵を永く護国の英雄として崇敬し、其の武功を讃える事は我が国の国際的立場に於て許さるべきや否や。のみならず大東亜戦争の戦没者中には、未だ靖国神杜に祭られざる者が多数にある。之れを今後従来の如くに一々調査して鄭重に祭るには、二年或は三年は日子を要し、年何回かの盛んな祭典を行わねばなるまいが、果してそれは可能であろうか。啻に有形的のみでなく、亦精神的武装解除をなすべしと要求する連合国が、何と之れを見るであろうか。万一にも連合国から干渉を受け、祭礼を中止しなければならぬが如き事態を発生したら、卸て戦没者に屈辱を与え、国家の蒙る不面目と不利益とは莫大であろう。

又右の如き国際的考慮は別にしても、靖国神杜は存続すべきものなりや否や。前述の如く、靖国神杜の主なる祭神は明治維新以来の戦没者にて、殊に其の大多数は日清、日露両戦役及び今回の大東亜戦争の従軍者である。然るに今、其の大東亜戦争は万代に拭う能わざる汚辱の戦争として、国家を殆ど亡国の危機に導き、日清、日露両戦役の戦果も亦全く一物も残さず滅失したのである。遺憾ながら其等の戦争に身命を捧げた人々に対しても、之れを祭って最早「靖国」とは称し難きに至った。とすれば、今後此の神社が存続する場合、後代の我が国民は如何なる感想を抱いて、其の前に立つであろう。ただ屈辱と怨恨との記念として永く陰惨の跡を留むるのではないか。若しそうとすれば、之れは我が国家の将来の為めに計りて、断じて歓迎すべき事でない。

言うまでもなく我が国民は、今回の戦争が何うして斯かる悲惨の結果をもたらせるかを飽まで深く掘り下げて検討し、其の経験を生かさなければならない。併しそれには何時までも怨みを此の戦争に抱くが如き心懸けでは駄目だ。そんな狭い考えでは、恐らく此の戦争に敗けた真因をも明かにするを得ず、更生日本を建設することはむずかしい。我々は茲で全く心を新にし、真に無武装の平和日本を実現すると共に、引いては其の功徳を世界に及ぼすの大悲願を立てるを要する。それには此の際国民に永く怨みを残すが如き記念物は仮令如何に大切のものと錐も、之れを一掃し去ることが必要であろう。記者は戦没者の遺族の心情を察し、或は戦没者自身の立場に於て考えても、斯かる怨みを蔵する神として祭られることは決して望む所でないと判断する。

以上に関連して、茲に一言付加して置きたいのは、既に国家が戦没者をさえも之れを祭らず、或は祭り得ない場合に於て、生者が勿論安閑として過し得るわけはないと云うことである。首相宮殿下の説かれた如く、此の戦争は国民全体の責任である。併し亦世に既に論議の存する如く、国民等しく罪ありとするも、其の中には自ずから軽重の差が無ければならぬ。少なくも満州事変以来事官民の指導的責任の住地に居った者は、其の内心は何うあったにしても重罪人たることを免れない。然るに其等の者が、依然政府の重要の住地を占め或は官民中に指導者顔して平然たる如き事は、仮令連合国の干渉なきも、許し難い。靖国神社の廃止は決して単に神社の廃止に終るべきことではない。

■■引用終了■■



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3 コメント

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集団的自衛権行使と自民党総裁選 (東西南北)
2006-08-31 22:02:26
 次期、自民党総裁が9月に決する。最有力候補は安部晋三候補である。



 安部晋三候補はナイーブな印象の下に、集団的自衛権の行使と教育基本法改正を自論とする超タカ派の国家主義者である。



 それは、現行憲法の下でも集団的自衛権の行使はできるとする趣旨の発言、できないなら憲法改正で出来るようにするという発言、次期政権の最優先課題は教育基本法改正を掲げた教育改革であるとする発言に鮮明化している。「新しい歴史教科書をつくる会」の運動に参加し、各自治体において「歴史教科書採択」運動を強力に展開している。各地で訴訟問題にまで発展している。



 自民党総裁選の行方は明日の日本国・内閣総理大臣を事実上、決定する。



 安部・自公連立政権は日本国が集団的自衛権を「持ってはいるが使えない」とする内閣法制局の憲法解釈を乗り越え、「持っているものは行使できなければ意味がない」という自論を解釈改憲、または憲法改正を手段に実現することを本気で目指してくる。なぜならば、こうした路線こそ自由民主党結党以来の大悲願だからである。いわば、改革総仕上げ政権、戦後国家主義総括政権である。



 日本国民は真の愛国心は憲法改正にはなく、憲法完全実施を現実化する「世界の平和・日本の平和」を目指す政治運動にあると認識し、野党のホームページに今すぐアクセスし、来るべき07年統一地方選挙・参議院選挙、引き続く衆議院総選挙で自民党・公明党の議員を落選させ、憲法完全実施を追求してきた実績・歴史のある議員・野党を激増させる投票行動に打って出て平和と民主主義教育を進める時である。



 靖国神社か。世界平和か。日本国民の岐路である。
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先ずは経済的な分析を (靖国研究の未解明部分)
2006-09-02 12:57:05
厚生省から回された名簿を祭神としただの、文字通り「神学」的部分の分析は進んだものの、GHQ時代から一種「鹿鳴館的な」役割を担った高等婦人達が関係したと思しき資金面や、供出物資・戦時隠匿物資の行方、河辺機関等への関わりその他、軍人恩給や軍人軍属遺族年金について、票田的役割をも含め、未だにまるで分析が進んでいないのではないですか?

きっと、日本会議に繋がる、「香ばしい」裏情報が出ますよ?フフフフフ。
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自公議員の激増か。護憲野党議員の激増か。 (東西南北)
2006-09-02 17:53:19
 ①アジア・太平洋戦争は自衛戦争ではなく侵略戦争だと認めるのかどうか

 

 ②アジア・太平洋戦争の責任の所在は日本の国家権力にあるのか否か。



 ③極東国際軍事裁判所によって下された確定判決によるABC級の戦争犯罪人は、実は全員無罪で戦勝国家に着せられた濡れ衣にすぎないのかどうか。



 ④今現在の自公連立政権が進める日米安保強化・膨張政策と憲法改正・集団的自衛権行使路線の性格はアジア・太平洋戦争政策のぶり返しであるか否か。



 ⑤天皇独裁(主権在君)の国家主義体制を復活させるか。国民主権(主権在民)の民主主義体制を維持・発展させていくかどうか。
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