情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

厚生労働省9・9通達は、名ばかり店長をなくせるのか?

2008-09-22 04:01:50 | 労働問題
「名ばかり店長」で有名になった「名ばかり管理職」問題で、厚生労働省の労働基準局長が、今月初旬に、小売店や飲食店で、何をもって、名目だけの管理職であるいうことになり、残業代を支払わなければならなくなるかについて、基準を示した。しかし、どうも、この基準、雇う側に有利なようになっているのではないかっていうことで不評のようだ。ぜひ、みなさんの意見も聞かせてください。

 新しい基準は、9月9日付の「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」と題する基発第0909001号通達(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/09/dl/h0909-2a.pdf)。厚生労働省労働基準局長が都道府県労働局長あてに発出されている。

 通達では、

【小売業、飲食業等において、いわゆるチェーン店の形態により相当数の店舗を展開して事業活動を行う企業における比較的小規模の店舗においては、店長等の少数の正社員と多数のアルバイト・パート等により運営されている実態がみられるが、この店舗の店長等については、十分な権限、相応の待遇等が与えられていないにもかかわらず労働基準法(昭和22年法律第49号)第41条第2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)として取り扱われるなど不適切な事案もみられるところである】

と指摘したうえで、基準について説明している。つまり、管理職を口実とした残業代不払いなどの問題を解決するための通達であるということだ。

 そういう問題意識をもっていたら、さぞかし、立派な基準ができただろうと思うが…。

 まずは、「職務内容、責任と権限」についての基準をあげている。その基準では、アルバイトやパートの採用・解雇、人事考課、勤務時間管理をするか否かが、実質的な管理職であるかどうかの基準になるというのだ。
 
 え”~という感じでしょう。

 だって、アルバイトやパートの採用は、各店舗でするのが当然だから、名ばかり店長さんもみんなやってまっせ。そんなことを管理職かどうかの基準にするべきではないでしょう。

 そもそも、管理職に残業代が支払われないのは、自らが時間を管理できること、残業代くらいは管理職でおつりがでること、経営側の立場に近いこと、ではないのか?

 アルバイトやパートの採用権限があるからといって、関係ない。

 次に、通達は、「勤務態様」についての判断要素をあげている。

 ①遅刻や早退について、ペナルティが課されたりするかどうか。

 ②営業時間中は店舗に常駐しなければならないなど長時間勤務を余儀なくされ、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められるかどうか。

 ③アルバイトやパートと同様の勤務態様が労働時間の大半を占めているかどうか。

 このあたりはそんなには問題がなさそうだ。


 最後に「賃金等の待遇」についての判断要素を上げている。

 ①基本給、役職手当等の優遇措置があっても、それを時間あたりに計算すると、残業代を払わないことが労働者に不利益になるかどうか。
 
 ②一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下であるかどうか。
 
 ③長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たないかどうか。さらに、最低賃金を割り込むかどうか。

 これもいいでしょう。

 結局、アルバイトの採用や解雇などの権限があることを基準とすることに問題があるようだ。

 もっとも、この基準が、労働者にとって、不利にならないように、通達には、一応、

【なお、下記に整理した内容は、いずれも管理監督者性を否定する要素に係るものであるが、これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではないことに留意されたい。】

と付してはある。

 しかし、付してはあるが、放っておけば、基準が一人歩きし、それにあてはまらないものは、実質管理職とされてしまうおそれが大きい。

 そこで、この通達でよいかどうかを考え、問題があるとするならば、厚生労働省に「こうしたらどうでっか」と意見を述べましょう!




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3 コメント

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本来…。 (田仁)
2008-09-23 00:52:22
雇用の安定してる大企業や中小の管理職も今や、サービス残業が常態化して労基法は形骸化しつつありますが、偽装請負や名ばかり店長は更に非道い。
雇用側は経営方針に参画出来、自分が働けば働いただけ個人的利益も上がり、しかも自分の労働時間を管理出来るからこそ、労基法に規定が無いんです。
実際は参画はおろか馬車馬の様に働かないと食べてけないから完全な雇用者の言いなりだし、だからこそ労働時間も思う様にはならなくて、過労死しちゃう。
自己責任教の教祖様=小泉さんの時代に濡れ手に粟だった経団連が、自民党に満点を与え、野党第一党を最低評価の上、ありとあらゆる方がで政権交代を邪魔する所以です。
ま、お陰様で自殺者も10年で累計30万超え、最近じゃ終戦直後の様に学校給食を家族の為に児童が持ち帰る程に、自己責任教が浸透しましたよ…。
富の蓄積に50年、転落にはタッタの10年です。
下流社会の直通ラインに、森派の金融ヤクザも貢献しましたし。
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誤記訂正させて下さい。 (田仁)
2008-09-24 19:32:39
『経団連は~略~ありとあらゆる方法で政権交代を邪魔する所以です。』
コレが正しくて『~方がで~』は間違いです。
御免なさい。
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立証責任を経営側へ課せばいい。 (東西南北)
2008-09-28 02:53:18
 1:「名ばかり管理職」が管理監督者であるか否かの利t章責任を経営側に課せばいいと思います。そうなると、記事にある以下の意味が明確になる。

 【なお、下記に整理した内容は、いずれも管理監督者性を否定する要素に係るものであるが、これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではないことに留意されたい。】

 要するに、経営者側が管理監督者性を完全に立証できなければ、管理監督者性を否定するものとみなすことにすればいい。こうした立証責任の基本を明記してあれば、記事にあるような管理監督者性を構成する要素があった場合でも、他方で管理監督者性を否定する要素がある場合において、経営側は管理監督性を完全には立証できないことになるのであるから、「名ばかり店長」を管理監督者ではないとみなす結論になる。

 2:もっと言えば、「名ばかり店長」の労働者性を明記させる基準を明記させる通達になれば最高。「名ばかり店長」の勤務実態は管理監督者ではないどころか、完全に労働者であるという基準を通達に明記すべきです。そうすると、「名ばかり店長」にアルバイト・パートの採用・解雇権があるとしても、「名ばかり店長」は会社の指揮・従属系統に組み込まれている実態があるわけで「名ばかり店長」の労働者性を通達へ明記することになり、「名ばかり店長」の労働者性を実質上も、通達上も明記することになるから基準が一人歩きする可能性は減る。

 3:要するに、経営決定権を持たない勤労者以外は、すべて労働者であって、経営者の指揮・従属系統に属しているということになる。

 

 
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