情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

また銀行に弱者からたからせるのか~銀行優遇の民間競売制度に反対!

2007-11-29 05:59:17 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 11月23日付の週刊法律新聞に政府の規制改革会議が年内にも現在の裁判所による競売とは別に民間競売機関が行う「民間競売制度」の創設に向けた具体案を示す方針を固めたことが掲載されている。えっ、それって公正な制度になるのだろうか?ニュースに出てたっけと思って、検索してみたところ、11月中旬ごろに規制改革会議の第2次答申の一内容として一行程度書かれているだけだった。

規制改革会議の情報を探しても、
【(15)競売の民間開放について【平成19 年度検討・結論】
平成17 年12 月に発足した「競売制度研究会」において、これまでの米国その他の諸外国における民間競売制度等についての基礎的な調査検討を踏まえ、我が国の競売制度の改善策として取り入れるべき点がないか、取り入れるべき点があるとすればどのような内容が考えられるかについて関係機関との緊密な連携の下に検討を行い、結論を得る。(Ⅲ住宅ア⑮)】(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0622/item070622_02-05.pdf
というのがあるくらいだ。

う~ん、やな感じだ。こそっと政府がやることにろくなことはない。

と思っていたら、日本経済新聞11月8日付経済教室に福井秀夫なる大学教授さまが、民間開放を急げという趣旨の論文を書いているのを知って読んでみた。

彼は現行の競売制度について次のように批判する。

【重要なのは、債務者や抵当物件の所有者は、当初は融資を受けようと債権者に協力しようとするが、いったん債務不履行になると、協力する利益が消滅し換価に非協力に転じやすい点だ。つまり担保執行では、通常、債務者に売却の利益はなく、競売手続きへの協力のインセンティブが生じないのだ。だからこそ、競売制度の設計では、権利の初期割り当て、取引費用の低減、情報の非対称性の緩和といった、事後の非協力状況下でも円滑に売却が進むための事前の制度的安全装置を備えることが不可欠なのだ】

なるほど、予想したとおり、完全に金融機関側に立った発想だ。

福井なる教授さまは、続けて、米国で民間競売が活用されているケースを挙げたりしたあと、「当事者でもない第三者や権力機構が、自分の利害にかかわらない他人の選択肢を広げるのは許さない、などと邪魔すべきではない」と、日本の導入を声高に薦めている。

ちょっと待てよ、福井(以下、敬称略)。あんたは、米国ではノンリコースローン、つまり、住宅が競売されたら、例え残債務が残っていてもそれは負担しないですむ制度になっていることについて一言も触れていないが、なぜ、肝心なことに触れないんだ!

日本では、5000万円の家を頭金300万円で4700万円のローンを組んだ場合、例えば、3年後に働き手がリストラされて、ローンが支払えなくなったとすると、残ローンが4500万円、家が3000万円で売れたときに、差額1500万円は借り主の借金として残ってしまう。例えば、田舎の方に土地を持っていたりしたら、それも売らされることになるし、次の仕事で得る給料の差し押さえだってされてしまうかもしれない。

現に、マイホームが競売された後、残債務を長い間支払ってきたが、どうしようもなくなって相談に来るケースは結構ある。「そんなの返さなくていいよ、破産したらいいんだから」と言うと涙を流して「そんなことは知らなかった。つらかった」と話す人もいれば、「連帯保証人に迷惑をかけるわけにはいきません。月の支払を少し安くしてもらえば払えるんです。今後も支払います」等と悲壮な決意を語る人もいる。

これに対し、米国では、同じようなケースでも、家さえ手放せば、住宅ローンの残債務はゼロとなる。いくら別に財産があろうとも、家の借金なんだから、家さえ手放せば、それ以上支払を求められることはない。

したがって、米国では、どこの機関によっていくらの価格で売却されようとも、借り主にとっては大した問題にはならないのだ。

別の視点でいうと、米国では不動産の購入代金を貸し付けるときに、金融機関がきちんと、不動産を値踏みし、支払ができなくなっても、住宅を売却することで回収できるかどうかを判断して、自らがリスクを負う形を取る。

これに引き替え、日本では、金融機関は、抵当権をとるだけでなく、夫婦そろって、あるいは、親子そろって連帯保証人にしてしまうなど、まったくリスクを負わない金融機関甘やかしシステムとなっている。

米国での民間競売は、十分な情報が開示されないこともあり、結局は、貸し付けた金融機関のみが当初に不動産の価値を調査したり、自宅内を閲覧できる様な契約をしているため、十分な情報を持っていることになり、貸し付けた金融機関のみが競売に参加することが多いという。

もし、日本でそういう状況が起きたら、いったいどうなるだろう。おそらくは、これまでの競売よりも安い値段で金融機関が自分で買い取ることになり、金融機関がリスクも負わないままでさらに大儲けすることになる可能性が高い。

福井さんよ、あんたは、こういうことを書きもしないで、「当事者でもない第三者や権力機構が、自分の利害にかかわらない他人の選択肢を広げるのは許さない、などと邪魔すべきではない」などと偉そうに書いているが、それで学者といえるのか。ローンを借りる際、借り手は貸し手の言うことに従うほか無く、民間競売についても、不利益な条件を押しつけられる可能性が大きい。だからこそ、力関係を配慮した公正な制度が必要になるのだ。

付言すると、あんたは、現在の暴力団の競売への介入が排除できるというが、ほんとにそう思う?裁判所の執行官でさえ、暴力団がらみの競売には及び腰だぜ。民間競売機関が暴力団に太刀打ちできるはずがないじゃないか。そんなことは、民間の駐車違反取締機関が銀座あたりのでっかい車に対してのみ、突然、視力障害となってしまうことからも明らかだろ!

本当に、油断も隙もあったもんじゃない!

全国の住宅ローン支払者の皆さん、今後住宅を買う計画のある皆さん、政府に対し、民間競売反対の声を挙げましょう!










★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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