脚本 長坂秀敬、監督 田中秀夫
1987年3月19日放送
【あらすじ(前編)】
女社長殺しの犯人として巡査を取り調べる特命課。巡査は女社長に借金があり、その話し合いのために訪ねたところ、女社長は不在で、思わず金庫内の借用書手を出しかけた。そこを戻ってきた女社長に咎められ、思わず殴り倒し、死に至らしめたのだという。
解決したかに見えたこの事件だが、2つの疑問点が残されていた。1つは巡査が借りた金の使途。もう1つは、犯人である巡査以外知りえない事実を、男が供述できた理由。だが、巡査は殺人を認めた以外は、何も語ろうとしない。
巡査の弁護にあたったのは、大物弁護士である桜井の父親だった。「たかが一警察官のために、父さんほどの弁護士が乗り出すわけがない」と、事情を探ろうとする桜井だが、父親は「たかがとはなんだ。公僕の犯罪は、下にいくほど哀しみが深く、上にいくほど邪なものが多い」と応じ、巡査の犯行の背後に警察組織の腐敗が隠されていることを示唆するとともに、自身が弱き者の味方であることを宣言する。だが、その言葉を額面どおり受け取ってよいものだろうか?父親は巡査が雇えるような弁護士ではない。誰が、何の目的で父親に巡査の弁護を依頼したのか。「このヤマは単純ではないな・・・」と呟く神代。
巡査と接見した父親は、家族の生活を保障することを条件に、借金の理由、そして犯行後に一旦自首したことを口止めする。その言葉に従い、巡査は黙秘を貫く。やむなく、拘置所に男を訪ねる桜井と橘だが、すでに父親が取り調べと称して男の記憶を混乱させていた。
その夜、父親の事務所を訪ねて糾弾する桜井。「貴方は誰に雇われ、何を隠そうとしているんです?」だが、父親は弁護士の守秘義務を盾に、桜井を一蹴する。「心のどこかに、自分の父親を立派だと思う甘えがあった」と自分を責め、父親と正面から戦うことを誓う桜井。特命課刑事たちに、父親の行動を探り、そこから依頼人をたどるよう指示を出す。「大物弁護士だからといって遠慮するな。俺の親父だと言うことも忘れろ。もし証拠を押さえたら、逮捕しても構わん。すべての責任は、俺が持つ!」
刑事たちの調べにより、父親が新宿東署の防犯課刑事や白バイ警官、風俗関係者たちに口止めして回っていたことが判明する。一方、男の調書を調べ上げた桜井は、男に女社長殺しを認めされたのが新宿東署の捜査課長だと確信し、課長を追及する。「あんたは何らかの理由で巡査の犯行を知った。殺しの様子を巡査から聞き、男に誘導尋問の形でそっくり認めされた。誰がそうさせた?桜井弁護士に何をさせようとしている?」はぐらかすような課長の態度に激昂する桜井を副署長が制止し、署長の呼び出しを告げる。若くして出世が約束された“キャリア組”の署長は、権威を傘に桜井を威圧する。
高級官僚候補の若い署長の経歴に傷をつけまいと、定年間近のベテラン副署長が保身に走る――新宿東署の体質が、署員に悪い影響を与えないはずがなかった。「人格で署長を選ぶ時代が来んものでしょうかね・・・」橘と警察組織の欠陥を嘆き合う桜井のもとに、犬養が駆けつける。報せを聞いて、料亭に急ぐ桜井。そこでは、署長との密会を終えた父親の姿があった。血相を変え、父親の車を止める桜井。「貴方は誰の味方なんです。金でヒラを黙らせ、権力のトップに尻尾を振るのが貴方の正義ですか?」父親は桜井の怒りにも顔色を変えず、「では聞こう。正義感で何が買える!」と応じる。ショックを受ける桜井に、父親はなおも続ける。「あの巡査の12年間の正義では、何も買えなかった。だが、今では沈黙で家族の生活が買える」「それが、法曹界の良識といわれた弁護士の言うことですか・・・」怒りに桜井の声が震える。「誰が言おうと、真実は1つだ。君も、泣き言で自分の無能をカバーするようなことはよしたまえ」思わず父親に殴りかからんとする桜井を、橘の声が制した。尊敬する父親に裏切られたショックが、桜井を打ちのめす。
果たして、桜井たち特命課は、警察組織の腐敗を糾すことができるのか?署長や捜査課長が隠そうとする女社長殺しの背景とは?そして、父親の行動の真意は?(後編につづく)
【感想など】
最終三部作の二話目となる本編では、前話で解明された女社長殺しをきっかけに、新宿東署の腐敗の構造が明らかにされていくという展開をみせつつ、大物弁護士である父親と桜井との対決が描かれています。尊敬する父親との対決を余儀なくされる桜井の葛藤。そして、その父親が悪に与していることを知った桜井の衝撃。ここでも前話とは形を変えた“父と子のドラマ”が展開されていますが、圧巻なのが桜井の父親を演じる安部徹氏の存在感。時代劇をはじめ、悪役としての印象が強い安部氏ですが、重厚かつ凄みのある演技の前に、さすがの桜井も圧倒されている感があります。
結局、最終三部作はすべて前後編で紹介することとなりました。詳細な感想は、週内にも投稿する後編でまとめさせていただきます。
1987年3月19日放送
【あらすじ(前編)】
女社長殺しの犯人として巡査を取り調べる特命課。巡査は女社長に借金があり、その話し合いのために訪ねたところ、女社長は不在で、思わず金庫内の借用書手を出しかけた。そこを戻ってきた女社長に咎められ、思わず殴り倒し、死に至らしめたのだという。
解決したかに見えたこの事件だが、2つの疑問点が残されていた。1つは巡査が借りた金の使途。もう1つは、犯人である巡査以外知りえない事実を、男が供述できた理由。だが、巡査は殺人を認めた以外は、何も語ろうとしない。
巡査の弁護にあたったのは、大物弁護士である桜井の父親だった。「たかが一警察官のために、父さんほどの弁護士が乗り出すわけがない」と、事情を探ろうとする桜井だが、父親は「たかがとはなんだ。公僕の犯罪は、下にいくほど哀しみが深く、上にいくほど邪なものが多い」と応じ、巡査の犯行の背後に警察組織の腐敗が隠されていることを示唆するとともに、自身が弱き者の味方であることを宣言する。だが、その言葉を額面どおり受け取ってよいものだろうか?父親は巡査が雇えるような弁護士ではない。誰が、何の目的で父親に巡査の弁護を依頼したのか。「このヤマは単純ではないな・・・」と呟く神代。
巡査と接見した父親は、家族の生活を保障することを条件に、借金の理由、そして犯行後に一旦自首したことを口止めする。その言葉に従い、巡査は黙秘を貫く。やむなく、拘置所に男を訪ねる桜井と橘だが、すでに父親が取り調べと称して男の記憶を混乱させていた。
その夜、父親の事務所を訪ねて糾弾する桜井。「貴方は誰に雇われ、何を隠そうとしているんです?」だが、父親は弁護士の守秘義務を盾に、桜井を一蹴する。「心のどこかに、自分の父親を立派だと思う甘えがあった」と自分を責め、父親と正面から戦うことを誓う桜井。特命課刑事たちに、父親の行動を探り、そこから依頼人をたどるよう指示を出す。「大物弁護士だからといって遠慮するな。俺の親父だと言うことも忘れろ。もし証拠を押さえたら、逮捕しても構わん。すべての責任は、俺が持つ!」
刑事たちの調べにより、父親が新宿東署の防犯課刑事や白バイ警官、風俗関係者たちに口止めして回っていたことが判明する。一方、男の調書を調べ上げた桜井は、男に女社長殺しを認めされたのが新宿東署の捜査課長だと確信し、課長を追及する。「あんたは何らかの理由で巡査の犯行を知った。殺しの様子を巡査から聞き、男に誘導尋問の形でそっくり認めされた。誰がそうさせた?桜井弁護士に何をさせようとしている?」はぐらかすような課長の態度に激昂する桜井を副署長が制止し、署長の呼び出しを告げる。若くして出世が約束された“キャリア組”の署長は、権威を傘に桜井を威圧する。
高級官僚候補の若い署長の経歴に傷をつけまいと、定年間近のベテラン副署長が保身に走る――新宿東署の体質が、署員に悪い影響を与えないはずがなかった。「人格で署長を選ぶ時代が来んものでしょうかね・・・」橘と警察組織の欠陥を嘆き合う桜井のもとに、犬養が駆けつける。報せを聞いて、料亭に急ぐ桜井。そこでは、署長との密会を終えた父親の姿があった。血相を変え、父親の車を止める桜井。「貴方は誰の味方なんです。金でヒラを黙らせ、権力のトップに尻尾を振るのが貴方の正義ですか?」父親は桜井の怒りにも顔色を変えず、「では聞こう。正義感で何が買える!」と応じる。ショックを受ける桜井に、父親はなおも続ける。「あの巡査の12年間の正義では、何も買えなかった。だが、今では沈黙で家族の生活が買える」「それが、法曹界の良識といわれた弁護士の言うことですか・・・」怒りに桜井の声が震える。「誰が言おうと、真実は1つだ。君も、泣き言で自分の無能をカバーするようなことはよしたまえ」思わず父親に殴りかからんとする桜井を、橘の声が制した。尊敬する父親に裏切られたショックが、桜井を打ちのめす。
果たして、桜井たち特命課は、警察組織の腐敗を糾すことができるのか?署長や捜査課長が隠そうとする女社長殺しの背景とは?そして、父親の行動の真意は?(後編につづく)
【感想など】
最終三部作の二話目となる本編では、前話で解明された女社長殺しをきっかけに、新宿東署の腐敗の構造が明らかにされていくという展開をみせつつ、大物弁護士である父親と桜井との対決が描かれています。尊敬する父親との対決を余儀なくされる桜井の葛藤。そして、その父親が悪に与していることを知った桜井の衝撃。ここでも前話とは形を変えた“父と子のドラマ”が展開されていますが、圧巻なのが桜井の父親を演じる安部徹氏の存在感。時代劇をはじめ、悪役としての印象が強い安部氏ですが、重厚かつ凄みのある演技の前に、さすがの桜井も圧倒されている感があります。
結局、最終三部作はすべて前後編で紹介することとなりました。詳細な感想は、週内にも投稿する後編でまとめさせていただきます。