脚本 藤井邦夫、監督 宮越澄
1986年5月15日放送
【あらすじ】
目黒で木曜日の夜に発生する連続婦女暴行事件を追う特命課に、「犯人は警官」との投書が届く。投書の主は、偶然、暴行現場に行き会って犯人の跡をつけたところ、警察の単身者待機寮に入っていったという。血液型や事件当夜のアリバイから、四人の警官がリストアップされる。「容疑者が警官である以上、より厳しく対処せねばならん」神代の言葉の重みを噛み締め、犬養は四人の身辺を洗うべく、研修と偽って待機寮に潜入する。
次第に明らかになる四人の素性。昇任試験のためにガリ勉中の知能犯担当。女嫌いで柔道一筋の巡査長。ヤクザの妹と結婚を上司に反対されてふて腐れる暴力団担当。そして、尊敬する父親に倣って「生涯巡査」をめざす若い巡査。この中に暴行犯がいるのだろうか?
一方、特命課は投書にあった事件の裏を取るが、投書主の言う時間に暴行事件があった形跡はない。また、指紋から当初の主は女だと判明。果たして、女一人で暴行犯を尾行するだろうか?投書の信憑性が怪しまれるなか、橘と叶は目黒近辺の変質者を追う。
問題の木曜日、犬養は杉、江崎の協力を得て四人の行動を見張る。外出した巡査長と巡査を、それぞれ杉と江崎が尾行する。女嫌いを自称していた巡査長は、密かに結婚相談所で見合い相手を紹介されていた。一方、江崎はスカウトに絡まれている間に、巡査を見失う。責任を感じた江崎は杉とともに目黒へ向かう。暴行現場に行き会う江崎だが、杉が所轄署の刑事に不審者と間違われている間に、暴行犯の逃走を許してしまう。
そんななか、投書主らしき女から「早く警官を逮捕しろ」との電話が入る。逆探知した女の住所を訪ねる桜井。女の証言は曖昧だったが、四人の警官の写真を見せると、「この男よ」と迷わず巡査を示した。投書では「顔が見えない」と言っておきながら、なぜ顔が分かったのか?疑惑はさらに深まる。
やがて巡査長、暴力団担当、知能犯担当のアリバイは立証され、特命課は唯一アリバイのない巡査を参考人として取り調べる。巡査は犯行を否定するが、女との関係も、当夜のアリバイも語ろうとしない。犬養の正体を知った知能犯担当から「仲間を調べ回ってまで、手柄を立てようってわけだ」と皮肉られ、神代に「私が潜入したのは、犯人を逮捕するためじゃなく、仲間の潔白を証明したかったらです」と食ってかかる犬養。「それほど信じているなら、彼のアリバイを証明して見せろ」神代の言葉に、犬養は強く頷いた。
巡査は最近、新宿で赤い髪の少女を探していた。ようやく探し出した少女は、巡査の説得でトルエン中毒から立ち直るために入院中だった。事件の夜、巡査は少女を病院に連れて行っていたが、少女との「誰にも言わない」との約束を守って沈黙していたのだ。
また、巡査のかつての上司の証言で、巡査と女の関係が明らかになる。巡査は新宿の風俗街で働いていた女に足を洗うよう説得。女は巡査の行為を愛情と勘違いして、巡査を追い回し、巡査は女から逃げるように勤務地を移った。その後、女は過去を隠して大病院の一人息子と婚約。巡査を憎むとともに、婚約者に過去を明かされるのを恐れ、社会的に抹殺するために嘘の投書をしたのだ。
すべてが明らかになったとき、犬養は巡査に頭を下げ、自分の正体を明かす。「なぜ、言わなかった?」「私は警察官です。人が隠したがっている過去を、話すわけにはいけません」
翌日、橘と叶の追っていた変質者の線から、真犯人が逮捕される。犯人は都議会議員の愛人の息子で、議員は週に一度、木曜日に愛人に会いに来ていた。
こうして、連続暴行事件は解決する。だが、ありもしない事件をでっち上げ、巡査を陥れようとした女への処分はない。「なぜです?」と食ってかかる犬養に、神代は語る。「彼がそれを望んでいたと思うかね?私は、疑われたのが警察官でよかったと思っている。もし、これが一般人だったら、その人の一生を変えてしまうことになったかもしれん」
神代の言葉に、犬養は改めて知る。警察官という職務の重さを。そして「生涯巡査」をめざし、今日も地道にパトロールを続ける巡査の志の尊さを。
【感想など】
独身寮の警官たちに向けられた疑惑を背景に、さまざまな警官の生き様と、警官であることの厳しさを描いた一本。登場人物が多いわりにシーンの繋ぎ方が悪く、人の顔を覚えるのが苦手な私としては、人物配置(特に若い巡査が制服姿と私服姿では別人に見えた)が把握しづらかった印象があります。また、女の証言がデタラメだと分かっていながら巡査を連行するのが不自然だったりと、真犯人が本筋と乖離していたりと、いろいろ文句も言いたくなりますが、全体的な印象は悪くありません。
その原因としては、疑惑の警官4人の人物像が、(掘り下げ不足な感もあるとはいえ)それぞれ練られていること。特に伊吹剛演じる巡査長の恋愛話や、暴力団担当とヤクザの妹との恋模様などは、それぞれ独立したエピソードが作れるのではないかと思うほど。もちろん、メインとなる巡査の人物像も、犬養との会話を通じて印象深いものになっています。「君には盛り場よりも、この街が似合う」という何気ない言葉に、「警官になるとき、父親から『勤務する街の似合う警官になれ』と言われたんです」と笑みを浮かべる巡査。手柄よりも、出世よりも、「街に似合う」ことを目標とするこの巡査こそ、今回の脚本家が、そして多くの一般市民が描くところの理想の警官像でしょう。
加えて言えば、珍しく杉と江崎婦警にも大きくスポットが当たっているのも今回の特徴。さらに、ラストの課長の台詞に込められたメッセージが評価を押し上げているのは、言うまでもありません。
1986年5月15日放送
【あらすじ】
目黒で木曜日の夜に発生する連続婦女暴行事件を追う特命課に、「犯人は警官」との投書が届く。投書の主は、偶然、暴行現場に行き会って犯人の跡をつけたところ、警察の単身者待機寮に入っていったという。血液型や事件当夜のアリバイから、四人の警官がリストアップされる。「容疑者が警官である以上、より厳しく対処せねばならん」神代の言葉の重みを噛み締め、犬養は四人の身辺を洗うべく、研修と偽って待機寮に潜入する。
次第に明らかになる四人の素性。昇任試験のためにガリ勉中の知能犯担当。女嫌いで柔道一筋の巡査長。ヤクザの妹と結婚を上司に反対されてふて腐れる暴力団担当。そして、尊敬する父親に倣って「生涯巡査」をめざす若い巡査。この中に暴行犯がいるのだろうか?
一方、特命課は投書にあった事件の裏を取るが、投書主の言う時間に暴行事件があった形跡はない。また、指紋から当初の主は女だと判明。果たして、女一人で暴行犯を尾行するだろうか?投書の信憑性が怪しまれるなか、橘と叶は目黒近辺の変質者を追う。
問題の木曜日、犬養は杉、江崎の協力を得て四人の行動を見張る。外出した巡査長と巡査を、それぞれ杉と江崎が尾行する。女嫌いを自称していた巡査長は、密かに結婚相談所で見合い相手を紹介されていた。一方、江崎はスカウトに絡まれている間に、巡査を見失う。責任を感じた江崎は杉とともに目黒へ向かう。暴行現場に行き会う江崎だが、杉が所轄署の刑事に不審者と間違われている間に、暴行犯の逃走を許してしまう。
そんななか、投書主らしき女から「早く警官を逮捕しろ」との電話が入る。逆探知した女の住所を訪ねる桜井。女の証言は曖昧だったが、四人の警官の写真を見せると、「この男よ」と迷わず巡査を示した。投書では「顔が見えない」と言っておきながら、なぜ顔が分かったのか?疑惑はさらに深まる。
やがて巡査長、暴力団担当、知能犯担当のアリバイは立証され、特命課は唯一アリバイのない巡査を参考人として取り調べる。巡査は犯行を否定するが、女との関係も、当夜のアリバイも語ろうとしない。犬養の正体を知った知能犯担当から「仲間を調べ回ってまで、手柄を立てようってわけだ」と皮肉られ、神代に「私が潜入したのは、犯人を逮捕するためじゃなく、仲間の潔白を証明したかったらです」と食ってかかる犬養。「それほど信じているなら、彼のアリバイを証明して見せろ」神代の言葉に、犬養は強く頷いた。
巡査は最近、新宿で赤い髪の少女を探していた。ようやく探し出した少女は、巡査の説得でトルエン中毒から立ち直るために入院中だった。事件の夜、巡査は少女を病院に連れて行っていたが、少女との「誰にも言わない」との約束を守って沈黙していたのだ。
また、巡査のかつての上司の証言で、巡査と女の関係が明らかになる。巡査は新宿の風俗街で働いていた女に足を洗うよう説得。女は巡査の行為を愛情と勘違いして、巡査を追い回し、巡査は女から逃げるように勤務地を移った。その後、女は過去を隠して大病院の一人息子と婚約。巡査を憎むとともに、婚約者に過去を明かされるのを恐れ、社会的に抹殺するために嘘の投書をしたのだ。
すべてが明らかになったとき、犬養は巡査に頭を下げ、自分の正体を明かす。「なぜ、言わなかった?」「私は警察官です。人が隠したがっている過去を、話すわけにはいけません」
翌日、橘と叶の追っていた変質者の線から、真犯人が逮捕される。犯人は都議会議員の愛人の息子で、議員は週に一度、木曜日に愛人に会いに来ていた。
こうして、連続暴行事件は解決する。だが、ありもしない事件をでっち上げ、巡査を陥れようとした女への処分はない。「なぜです?」と食ってかかる犬養に、神代は語る。「彼がそれを望んでいたと思うかね?私は、疑われたのが警察官でよかったと思っている。もし、これが一般人だったら、その人の一生を変えてしまうことになったかもしれん」
神代の言葉に、犬養は改めて知る。警察官という職務の重さを。そして「生涯巡査」をめざし、今日も地道にパトロールを続ける巡査の志の尊さを。
【感想など】
独身寮の警官たちに向けられた疑惑を背景に、さまざまな警官の生き様と、警官であることの厳しさを描いた一本。登場人物が多いわりにシーンの繋ぎ方が悪く、人の顔を覚えるのが苦手な私としては、人物配置(特に若い巡査が制服姿と私服姿では別人に見えた)が把握しづらかった印象があります。また、女の証言がデタラメだと分かっていながら巡査を連行するのが不自然だったりと、真犯人が本筋と乖離していたりと、いろいろ文句も言いたくなりますが、全体的な印象は悪くありません。
その原因としては、疑惑の警官4人の人物像が、(掘り下げ不足な感もあるとはいえ)それぞれ練られていること。特に伊吹剛演じる巡査長の恋愛話や、暴力団担当とヤクザの妹との恋模様などは、それぞれ独立したエピソードが作れるのではないかと思うほど。もちろん、メインとなる巡査の人物像も、犬養との会話を通じて印象深いものになっています。「君には盛り場よりも、この街が似合う」という何気ない言葉に、「警官になるとき、父親から『勤務する街の似合う警官になれ』と言われたんです」と笑みを浮かべる巡査。手柄よりも、出世よりも、「街に似合う」ことを目標とするこの巡査こそ、今回の脚本家が、そして多くの一般市民が描くところの理想の警官像でしょう。
加えて言えば、珍しく杉と江崎婦警にも大きくスポットが当たっているのも今回の特徴。さらに、ラストの課長の台詞に込められたメッセージが評価を押し上げているのは、言うまでもありません。