著名人〈山中教授〉になりすましには違法性があるのか

2012-10-16 16:49:20 | 報道

先日、何者かがTwitterでノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった京都大学の山中伸弥教授になりすまし、山中教授本人と思われるような投稿を行なう騒動が発生した。
 
そのTwitterアカウントは、山中教授の名前で、アイコンに山中教授の写真を使用し、プロフィール欄には「京都大学iPS細胞研究所(CiRA)所長」と記載するなど、一見する限り、山中教授本人が使用していると思えるものになっており、実際に多くの人が山中教授本人のものと誤認したようで、フォロー数はおよそ1万7千人に達していたようだ。(現在はそのアカウントは閉鎖されている)
 
ノーベル賞の発表当日である10月8日にはそのアカウントから「ノーベル賞キター」と投稿されたことで多くのユーザーが反応、お祝いや賛辞などの返信の数はおよそ3万8千件にも上ったという。
 
しかしその後、iPS細胞研究所のホームページのニュース欄に山中教授はTwitterによる情報発信をしていないことが掲示され、そのアカウントは何者かによるなりすましであったことが発覚した。
 
現時点のところ、山中教授のなりすましを行なった者が誰なのかは明らかでないが、はたして今回のケースのように、著名人になりすましてTwitterで投稿などを行なうことには違法性があるのか。梅村正和弁護士に聞いた。
 
●業務妨害罪や名誉毀損罪などの犯罪になる可能性がある
 
「まず、刑事上は『不正アクセス行為の禁止等に関する法律』という法律がありますが、これは、他人の識別符号(パスワードなど)を利用して、識別符号の利用権者しかできない行為を行うこと等を罰しており、Twitter等で本人になりすまして発言する行為は対象外です。ただし、なりすまし行為によって、なりすまされた人の仕事に悪影響が出た場合や、名誉が毀損された場合には、業務妨害罪や名誉毀損罪などの犯罪になることはあり得ます。」
 
●なりすましで損害が発生した場合には賠償責任を負う可能性も
 
「次に、民事上は、なりすまし行為によって、なりすまされた人が金銭的な損害あるいは名誉や肖像権侵害など人格的な損害を被った場合には、損害賠償責任が発生します。また、なりすましのコメントを閲覧した人がそれを信じたために何らかの損害を負った場合、なりすましコメントとその損害との間に通常予測可能な程度の因果関係があれば閲覧した人に対して損害賠償責任が発生する可能性もゼロではありません。」
 
●今回の山中教授のケースでは違法性はあるものの、損害賠償請求まではされない?
 
「今回のケースでは、山中教授の肖像権や社会的名誉をある程度は侵害し、その意味で違法性があると言えますが、名誉毀損したとまでは言い難いですし、山中教授や閲覧した人々に何らかの金銭的な損害等が発生したわけでもないので、現実的には損害賠償請求されないでしょう。『悪質ないたずら』ですが、まだ一応『いたずら』の範囲ということになります。法律上違法性がないわけではないが、事実上損害賠償請求される程度までにはなっていないというところでしょうか。」
 
●過去にも剛力彩芽さんや鳩山由紀夫元首相のなりすましが発生
 
今回の山中教授のなりすましは一時的な騒ぎになったものの、その後すぐに終息したため、梅村弁護士の解説の通り損害賠償請求までには至らないと思われるが、Twitterでは過去にもタレントの剛力彩芽さんや鳩山由紀夫元首相のなりすましによる騒動が起きており、今後また新たな著名人のなりすましによって大きなトラブルが起きてしまう可能性は否定できない。
 
なお、Twitterには著名人用に認証マークが用意されているが、認証マークを取得していない著名人のアカウントも少なくないので、認証マークの有無だけでは本人か成りすましかを判別するのは難しいのが現状だ。
 
●著名人でなくとも、他人のなりすましはしないように
 
また著名人に限らず、身の回りの友人や同僚などになりすました場合でも、梅村弁護士の解説にある要件を満たせば責任を問われる可能性があるので、くれぐれもいたずらにTwitterで他人のなりすましをすることがないよう、注意していただきたい。
 
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
 
【取材協力弁護士】
 梅村 正和 弁護士 (うめむら・まさかず)
 リアルバリュー法律事務所
 金融機関での勤務経験が長く、かつ、不動産鑑定士の資格で土地・建物などの評価経験も多い弁護士の事務所。不動産売買や賃貸借だけでなく、相続その他の事案でも、お金や不動産が絡んだトラブルの解決が得


パナソニックの主力工場が脱テレビ アップルに照準

2012-10-16 13:37:44 | 経済


“脱テレビ”の本命は、米アップル向けのビジネスだ──。
 
 パナソニックは液晶パネルを生産する姫路工場で、主力のテレビ向け生産を終了する方針を固めた。価格下落の激しいテレビ用途に見切りをつけて、採算性の高いタブレット端末や業務用モニターに事業をシフト。アップルなど新顧客の開拓に注力する。
 
 「今年度いっぱいで液晶テレビ向けの出荷を終了いたします」
 
 関係者によると、パナソニックは今年8月ごろ、一部の液晶パネルの供給先メーカーや営業先に対して、テレビ向けの液晶パネルの出荷を終了することを告げるレターを送付した。
 
 2010年稼働の姫路工場といえば、2350億円の巨費を投じた最先端工場だ。売れ筋の32インチの液晶テレビなら年間1100万台以上の生産能力を誇り、基幹部品をすべて社内で抱え込む“自前主義”のシンボルでもあった。
 
 ところがテレビの底なしの価格下落と韓国メーカーの攻勢でジリ貧になり、大阪湾岸のプラズマ工場群と共に、昨年度の7721億円の巨額赤字の元凶となったことは周知の通りだ。
 
 6月に就任した津賀一宏社長は採算性重視の方針を打ち出してはいたが、「ついにこの日が来てしまった」(パナソニック関係者)と、事業終焉を嘆く声もある。
 
 しかし、“脱テレビ”は思いの外、前向きな成果も生み出しそうだ。
 
 同工場はテレビに代わる供給先を模索。この夏には米アマゾンの電子書籍リーダー「キンドルファイア」の液晶パネルを受注し、ピークで月産100万台ベースで出荷。この他にも、業務用ディスプレーも手がけている。
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 そして、ここにきて弱点だったハイスペックの液晶パネルの供給先候補として、目下絶好調のアップルの名が浮上している。
 
 すでにアップルのパソコン用の高解像度のモニターとして、サンプル品を供給しているといい、「相手からはかなり好評をいただいている」(パナソニック幹部)。
 
 来年以降の受注が決まれば、崩壊した液晶工場に、次のシナリオが生まれそうだ。
 
 一方、完成品の薄型テレビにも変化の兆しが表れている。
 
 今年投入したラインアップでは、不採算モデルを廃止し、デザインと質感を重視した「グラス&メタル」シリーズが人気を呼んでいる。
 
 英国の権威ある評価サイト「AV Forum」は、同モデルのプラズマテレビを最高ランクに認定。液晶テレビも韓国LGディスプレイ製のパネルだが「パナソニックらしくない、洗礼されたデザイン」と好評で、外部調達なのでコストダウンにも貢献している。
 
 来年度に黒字化を目指すテレビ事業は、“自前主義”の呪縛から解かれたモデルケースになるのか。今後も注目だ。