東日本大震災の被災地で、津波で壊れた民家を無償で修理するボランティア団体の活動が話題を呼んでいる。本来なら100万円単位の費用がかかるだけに、修理を頼む被災者が続出。27日現在で宮城と岩手の両県で497戸がきれいになった。
7月末、仙台市宮城野区蒲生地区。多くの民家が外壁や玄関、窓ガラスが壊れたまま放置される中で、会社員の鈴木祐司さん(49)宅(5LDK)の修理が進んでいた。米国、カナダ、大阪市などから来た男女6人が、塩分で変質した床材や壁材を取り外し、断熱材を入れ替えた上から合板などを取り付ける。
約2週間で「寝泊まりできる最低限の状態」になった。「思い出の詰まったこの家で、家族4人で再び暮らせる。本当に助かった」と鈴木さんは喜んだ。
同区の会社員芳賀正さん(62)も今年1月、自宅1階の100平方メートルの床と壁を取り換えてもらった。「業者に頼むと300万円はかかっただろう」と言う。
この団体は、米ノースカロライナ州を本拠とするプロテスタント系の非営利団体「サマリタンズ・パース」。震災直後から、救援物資の配布や泥のかき出し作業などを続けてきた。家の修理を始めたのは昨夏ごろから。連絡係や通訳などを務めるカナダ在住の栗山豊さん(57)は「古里の自宅に早く戻れるようにしてあげようと始めた」。当初は目標を300戸としていたが、被災者から請われ、510戸まで増やした。
これまで延べ7千人超がボランティアで活動に参加した。活動費約18億円の原資は北米各地の教会を経て寄付されたものだが、被災地は元々、仏教が深く根付く地域だ。「宗教色を前面に出さないようにした」と栗山さんは話すが、「布教活動の一環でもあるので、興味を持った方には(キリスト教の)話はする」。
自治体が新増築を制限する災害危険区域内の民家からも、修理の依頼が来る。区域内でも修理などは可能だが、集団移転を決めた住民の中には「もう住めない場所なのに、いいのか」と疑問視する声も出ている。
こうした声を受け、仙台市の担当者は最近になって団体側と接触した。千葉幸喜・移転推進課長は「やめろとは言えないが、集団移転で安全な場所に再建してもらいたい、という市の意向は伝えた」という。
団体は近く修理の活動を終える。今後は規模を縮小しつつ、地元の教会の復旧や漁業施設の復旧支援などの活動に比重を移す方針だ。(中村信義)