建物がどのような地盤の上に建っているのか。それは、地震の被害が大きくなるかどうかの重要なポイントになる。地震が発生したとき、地盤が軟らかいと、揺れが増幅されるほか、液状化現象が起きる恐れもある。
一般的に地盤が軟らかいとされるのは、川が運んだ砂が堆積(たいせき)した平野や、かつて川や湿地だった所、盛り土をして造成された土地、海を埋め立てた港湾などだ。
東北地方は、奥羽山脈や北上山地、阿武隈山地などでは地盤が固い一方、河川沿いや河口の平野部に地盤が軟らかい地域が広がる。多くは人口が集中している都市に重なる。
宮城県では、石巻市や登米市などがある北上川沿いや、大崎市周辺の鳴瀬川や江合川沿い、岩沼市や角田市などの阿武隈川沿いが揺れやすい地盤だ。
さらに仙台市若林区や宮城野区、岩沼市などの沿岸部は、かつての海岸線に沿って堆積層が広がっており、揺れやすい。県や仙台市の被害想定では、宮城県沖地震や「長町―利府線断層帯」による地震で、若林区や宮城野区などの海よりの地域で揺れが増し、広い範囲で液状化が発生すると予測されている。
山形県では、酒田市から鶴岡市にかけての最上川下流に広がる庄内平野が揺れやすい。県は、想定される庄内平野東縁断層帯や西方沖で地震が発生した場合、「液状化の危険性が高い」としている。
また、東根市から山形市にかけての山形盆地では、西側に厚い堆積層がある。国の地震調査研究推進本部によると、近くには山形盆地断層帯が確認されている。地震が発生する確率は高くないが、家具の転倒防止などの対策は必要だろう。この断層帯が動いた場合は、南陽市や米沢市のある米沢盆地でも液状化が起こると予測されている。
秋田県は、雄物川からの堆積物で作られた秋田平野が揺れやすい地盤だ。
1983年の日本海中部地震など、秋田県はこれまでたびたび地震で大きな被害を受けている。そのため秋田市は昨年、約50メートル四方の区画に分けた詳細な被害想定地図を作製し、インターネットなどで公開している。
雄物川中流にある大仙市や玉川沿いの仙北市などの周辺も、地盤が軟らかいところとされている。
青森県では、下北半島や津軽平野に揺れやすい地盤が広がり、青森市や黒石市、八戸市、むつ市などで液状化が起きやすいと見られている。1994年12月の三陸はるか沖地震では、被害が大きかった八戸市で液状化が確認された。
弘前市は市街地が地盤の固い扇状地にあるが、青森市では市中心部に柔らかい堆積層があって地盤沈下の恐れがある。
福島県は、沿岸部や猪苗代湖周辺などの地盤が軟らかい。
いわき市周辺では、西側に阿武隈山地がある一方で海沿いには堆積層があり、東日本大震災の際には液状化の被害を受けた。
郡山市がある内陸の盆地では、阿武隈川と、奥羽山脈や阿武隈山地から流れ込む河川沿いに軟弱な地盤が続いている。猪苗代湖の周辺では地下に柔らかい泥炭層がある。
岩手県は北上山地と奥羽山脈に囲まれており、北上川沿いや沿岸部を除いて比較的地盤が安定している。
盛岡市は北上川や雫石川によってできた地盤の固い段丘の上にある。しかし、岩手山の周辺は火山活動の影響で積もった土砂が広がり、揺れやすい場所になっている。
海のすぐ近くまで山が迫る沿岸部は地盤が固いが、川沿いや河口部に町ができている宮古市や大船渡市、陸前高田市などの平野部は揺れやすい地盤になっている