複式簿記でやってる自治体は少ない 単式ではほんとうの赤字の実態がみえない
すべての自治体で公認会計士の監査を受けるべきだぁ
二十五日の石原慎太郎都知事の会見で、国の会計制度について「単式簿記をやってる先進国は(ほかに)一つもない。何で複式簿記にしないのか」と批判する場面があった。単式と複式の違いはどのようなものか。また、石原氏の批判の背景には何があるのだろうか。 (石川智規)
Q 単式簿記ってなに?
A 簿記は財務を管理する帳簿記入の手法のことだ。「単式」は簡単にいえばお金の出入りだけを管理、記入する方法。お母さんがつける家計簿に近い。給料などの収入と、食費や生活費などの支出で分ける。国の場合は税収などの歳入と、社会保障費や地方交付税などの歳出に大別される。
Q 複式は。
A お金の出入りに加え、土地や建物などの資産や、借入金などの負債を含めた財産全体を捉える手法だ。家計で言えば、自宅などの不動産や各種ローンも帳簿に明記すると考えればいい。企業は複式簿記で財務を管理し、貸借対照表や損益計算書の名称で決算期に公表している。
Q 国は複式簿記を作ってないの?
A いや、国も二〇〇三年度から毎年「国の財務書類」という複式の帳簿を公表している。特別会計も含め資産や負債を貸借対照表にまとめたものだ。国だけでなく、東京都や神奈川県、大阪市、名古屋市などの主要地方都市も同様に単式と複式の両方を作っている。
Q では石原氏はなぜあんな指摘を。
A 真意は本人にしか分からないが、会見ではこのほか、民主党政権や官僚の施策や予算の使い方に異議を唱えていた。簿記手法の違いよりも、政府のお金の使い方を変えたい、と強調する狙いがあったと思われる。
Q やっぱり複式の方がいいの?
A 単式と複式には一長一短がある。そもそも国の施策の元となるのは税金や国債だ。その「入り」に対して、今年はどの施策にいくら使ったかを示すには、むしろ単式の方が分かりやすい。一方、複式の手法で資産と負債の両面から国の財政を把握することも、行政の効率化につながる。
世界では、英国が複式簿記重視の予算編成をしているが、米国は日本と同様に単式と複式を併用している。財務省は「複式が世界の主流とはいえない」と話している。