“脱テレビ”の本命は、米アップル向けのビジネスだ──。
パナソニックは液晶パネルを生産する姫路工場で、主力のテレビ向け生産を終了する方針を固めた。価格下落の激しいテレビ用途に見切りをつけて、採算性の高いタブレット端末や業務用モニターに事業をシフト。アップルなど新顧客の開拓に注力する。
「今年度いっぱいで液晶テレビ向けの出荷を終了いたします」
関係者によると、パナソニックは今年8月ごろ、一部の液晶パネルの供給先メーカーや営業先に対して、テレビ向けの液晶パネルの出荷を終了することを告げるレターを送付した。
2010年稼働の姫路工場といえば、2350億円の巨費を投じた最先端工場だ。売れ筋の32インチの液晶テレビなら年間1100万台以上の生産能力を誇り、基幹部品をすべて社内で抱え込む“自前主義”のシンボルでもあった。
ところがテレビの底なしの価格下落と韓国メーカーの攻勢でジリ貧になり、大阪湾岸のプラズマ工場群と共に、昨年度の7721億円の巨額赤字の元凶となったことは周知の通りだ。
6月に就任した津賀一宏社長は採算性重視の方針を打ち出してはいたが、「ついにこの日が来てしまった」(パナソニック関係者)と、事業終焉を嘆く声もある。
しかし、“脱テレビ”は思いの外、前向きな成果も生み出しそうだ。
同工場はテレビに代わる供給先を模索。この夏には米アマゾンの電子書籍リーダー「キンドルファイア」の液晶パネルを受注し、ピークで月産100万台ベースで出荷。この他にも、業務用ディスプレーも手がけている。
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そして、ここにきて弱点だったハイスペックの液晶パネルの供給先候補として、目下絶好調のアップルの名が浮上している。
すでにアップルのパソコン用の高解像度のモニターとして、サンプル品を供給しているといい、「相手からはかなり好評をいただいている」(パナソニック幹部)。
来年以降の受注が決まれば、崩壊した液晶工場に、次のシナリオが生まれそうだ。
一方、完成品の薄型テレビにも変化の兆しが表れている。
今年投入したラインアップでは、不採算モデルを廃止し、デザインと質感を重視した「グラス&メタル」シリーズが人気を呼んでいる。
英国の権威ある評価サイト「AV Forum」は、同モデルのプラズマテレビを最高ランクに認定。液晶テレビも韓国LGディスプレイ製のパネルだが「パナソニックらしくない、洗礼されたデザイン」と好評で、外部調達なのでコストダウンにも貢献している。
来年度に黒字化を目指すテレビ事業は、“自前主義”の呪縛から解かれたモデルケースになるのか。今後も注目だ。
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