ペロブスカイト太陽電池で変換効率60%超の可能性 パデュー大学

2017-04-14 11:24:50 | 自然エネルギー

パデュー大学

アメリカ合衆国インディアナ州ウェストラファイエットで創立された公立の総合大学

ペロブスカイト薄膜太陽電池で変換効率60%超の可能性 - パデュー大

パデュー大学の研究チームは、ペロブスカイト系材料を用いた薄膜太陽電池で、変換効率60%超を実現できる可能性があるとの研究成果を報告した。従来のシリコン太陽電池では発電に利用することが困難だった「ホットキャリア」と呼ばれる高エネルギーの電荷を利用できるようになるため、変換効率の大幅な向上が期待できるという。研究論文は、科学誌「Science」に掲載された。

シリコン太陽電池の変換効率には「ショックレー=クワイサー限界」と呼ばれる理論限界があり、単接合の場合、およそ33%が変換効率の上限であるとされる。変換効率が制限される理由はいくつかあるが、その1つとして、高エネルギー状態の電荷であるホットキャリアの寿命が極めて短いため、ホットキャリアのエネルギーを太陽電池外部に電流として取り出す前にエネルギーが熱に変換され失われてしまうという問題がある。

太陽電池のバンドギャップを超えるエネルギーをもった光が入射すると、電子(マイナスの電荷)または正孔(プラスの電荷)が高エネルギー状態に励起して、ホットキャリアが生成される。しかし、シリコン太陽電池の場合、ホットキャリアの寿命は1ピコ秒(10-12秒)程度と極めて短く、その間にホットキャリアが移動できる距離は最大でも10nm程度しかない。このため、ホットキャリアのエネルギーは電流として外部に取り出すことができず、太陽電池の内部で熱に変わってしまう。

研究チームは今回、レーザーを用いた超高速過渡吸収顕微鏡法という手法で、ペロブスカイト薄膜(ヨウ素、鉛、メチルアンモニウムのハイブリッド材料)におけるホットキャリアの動きと速度の測定を行った。その結果、ペロブカイト薄膜では、ホットキャリアの寿命が100ピコ秒程度まで伸び、その移動距離が200nm超に達することを確認したという。

このことは、ペロブスカイト系薄膜太陽電池においては、ホットキャリアの移動距離が太陽電池の膜厚以上になるため、電流として外部に取り出せる可能性があることを意味している。ホットキャリアを利用した場合の太陽電池の変換効率は60%以上になり、従来のシリコン太陽電池の理論限界のおよそ2倍の値まで向上できることになる。

研究チームは、次の研究課題として、ホットキャリアを外部回路に抽出するための適切な電極材料・構造の開発を挙げている。また、商用化を考えたときには、ペロブスカイト薄膜で使用されている鉛を、より無害な他の材料で代替する必要がある。


理研 太陽光の熱を朝から夕方まで回収するシステム

2017-03-11 10:28:39 | 自然エネルギー

理研 太陽光の熱を朝から夕方まで回収するシステム

理化学研究所(理研)とダ・ビンチは1月10日、朝日から夕陽まで、太陽光の光熱エネルギーをフレネルレンズで効率良く回収し、蓄熱タンクに貯めた水を加温、必要に応じてこの熱を取り出して発電と給湯ができる「熱電併給システム」を考案したと発表した。

同成果は、理研と企業が一体となって研究を進める「産業界との融合的連携研究プログラム」にもとづき、2012年4月に理研社会知創成事業イノベーション推進センター内に発足された、光熱エネルギー電力化研究チームの東謙治チームリーダー(ダ・ビンチ社長)、大森整副チームリーダーらによるもの。詳細については、1月16日に理研にて開催される一般向けシンポジウム「明るい未来の光熱エネルギー」にて説明されるほか、1月30日~2月1日にかけて開催される「nano tech2013」でも説明が行われる予定。

再生可能エネルギーの中でも太陽光を利用した発電は、設置する地域の制限が少なく、設備投資が比較的安価であるため、導入しやすいシステムとして注目を集めている。中でも太陽光発電パネルは、光エネルギーを直接電気エネルギーに変換できるため普及が進みつつあるが、蓄電装置のコストが高い、発電は天候の成り行き次第、朝日や夕日の時間帯は水平光になるため光を回収しにくい、パネル材料に添加されている重金属の分離技術が未確立なため耐用年数経過後の廃棄が困難、などの課題がある。こうした課題を解決するために、例えば、太陽光を追尾する装置などが実用化されている、高コストなシステムとなっているのが現状だ。

研究チームは今回、太陽光がもたらす熱エネルギー(光熱エネルギー)に着目し、太陽光追尾装置や駆動部などがなくても、あらゆる時間帯の光熱エネルギーを回収し、電力と温水を供給できる単純かつ高効率な熱電併給システムの開発を目指して研究を行った。

太陽光追尾装置が不要なシステムとするには、どの方向から太陽光が来ても光熱エネルギーを回収できるようにする必要がある。太陽光を損失なく収束するには、透明度が高く、表面の粗さを抑えたレンズが必要となるため、研究チームでは理研大森素形材工学研究室で開発している、同心円状に溝を刻んだ平面型のフレネルレンズに着目した。

フレネルレンズは、成形加工で作られる薄型のプラスチックレンズで、レンズ厚が薄くても光を効率よく収束できるという特長を有する。大森素形材工学研究室のフレネルレンズは、透明度が高く、表面の粗さが20nmの高精度レンズで、超高エネルギー宇宙線を観測するための望遠レンズとして開発が行われているものだ。

研究チームはこのフレネルレンズを、立方体の上面と側面(東側、西側)に組み合わせることで、、建物が反射したり、空気中を乱反射したりする反射光を、光熱エネルギーとして回収することを可能としたほか、立方体の内部には、フレネルレンズが収束した光熱を受ける、アルミ合金でできた逆T字型の熱交換器を設置。これにより朝方は、東側のフレネルレンズ面が朝日を収束して、熱交換器の垂直面を照射。太陽が南中して仰角が大きくなる昼ごろは、上側のフレネルレンズ面が太陽光を収束し、熱交換器の水平面を照射。そして夕方になると、西側のフレネルレンズ面が夕陽を収束し、朝方と反対側の垂直面を照射することで、太陽光追尾システムがなくても、全方向からの太陽光を回収できるシステムを実現した。

また、熱交換器内には流体流路が張り巡らされており、蓄熱タンクの水が循環する仕組みで、ここで熱交換器に集まった光熱エネルギーが水を温める。研究チームでは、このフレネルレンズ・熱交換器・蓄熱タンクで構成したシステムを「フレネル・サン・ハウス」と命名したという。

さらに、電気が必要なときは、蓄熱タンクに蓄えた光熱エネルギーを、ダ・ビンチが開発したロータリー熱エンジンへ供給することで、熱媒体である代替フロン(HFC245faなど)を気化してロータリー熱エンジンを回し発電を行うことが可能で、これにより電力と湯を同時に供給する「熱電併給システム」を構築することが可能だ。ロータリー熱エンジンは、シリンダー容積の変化で回転エネルギーを発生するため、低温域の熱源から生じる低い圧力でも熱仕事効率が良く、40℃まで回転エネルギーを引き出すことが可能だ。そのため、同じ熱量でも、温水を循環利用してそれを使い尽くすことができ、発電総量の増加が見込めるという。

研究チームでは、この熱電併給システムについて、使い勝手の良いコージェネレーションシステムとしての利用が期待できるほか、自家発電装置あるいは分散型電源としても有用だと説明する。また、工場の廃棄熱などを供給すると24時間発電も可能になるほか、発電後の湯を浴用などに利用したりすることも可能であるため、エネルギー利用効率の向上にもつながるとしている。

研究チームでは、一般の家庭では、1日平均で約1kW程度の電力が必要であり、10世帯が共用すると10kW程度の電力需要となることから、導入コストとその回収を考えた場合、家庭用・工業用のどちらでも10kW程度のシステムが費用対効果が良いと考えられるとしており、2013年中に出力1kWクラスのシステムを試作して課題を抽出するとともに、フレネルレンズの構成の見直しや量産化、ロータリー熱エンジンの出力効率の向上などを図っていく計画としている。また、2014年には10kWの実証システムの完成を目指す方針とするほか、地方自治体と連携して、太陽光熱の有効利用と分散型電源の確立を目指したパイロットプラントの建設も進めていきたいとしている。


太陽光を80%の高効率で変換し水蒸気を生み出す材料 東北大学

2017-03-11 09:10:20 | 自然エネルギー

太陽光を80%の高効率で変換し水蒸気を生み出す材料

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構の研究グループは、世界最高レベルの太陽光エネルギーの変換効率を持つ水蒸気発生材料を開発した。3次元構造を持つナノグラフェンを用いた材料で、水蒸気の生成や純水の精製、汚染水の濃縮や浄化などさまざまな用途に利用できるという。

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構の伊藤良助教、陳明偉教授らは、3次元構造を持つグラフェンを用いた高性能な水蒸気発生材料を開発した(図1)。グラフェンは、ナノサイズの細孔がランダムにつながったスポンジ状構造体を持つ、多孔質構造体だ。今回の研究では太陽光をこの3次元多孔質グラフェンに照射した結果、水の蒸発スピードは1平方メートル当たり1.5kg/h(キログラム毎時)となった。この数字は太陽光エネルギー変換率の80%に相当し、これまで発表された水蒸気発生効率の中で世界最高レベルとなっている。

今回の研究は3次元多孔質グラフェンを太陽熱温水器の集光材料に使用することで、太陽光の熱エネルギーを効率よく吸収し、さらにその熱エネルギーが局所的に集中することで反射鏡やレンズなどの集光装置を用いることなく、水から水蒸気を発生させることに成功した。

太陽光で加熱された水は比重差による対流現象や熱伝導によって熱が拡散し、温度が均一化に向かうため熱水は保持されない。しかし、今回の研究では窒素を導入した3次元多孔質グラフェン(図2)を吸収材として使用することで、そのミクロサイズの孔内に捕らわれた水が集中的に加熱される。これにより熱が拡散することなく容易に高温化できることから、水蒸気への変換効率を従来のグラファイト粉を用いた場合の56%から、80%にまで高めることに成功した。


自動車の排熱発電、ヤマハが20年めど実用化−燃費約5%改善

2017-03-08 15:09:19 | 自然エネルギー

自動車の排熱発電、ヤマハが20年めど実用化−燃費約5%改善

【浜松】ヤマハはドイツの政府機関と連携し、2020年の実用化をめどに自動車の燃費改善につながる車載用排熱発電システムを開発する。航空宇宙分野など先端技術の研究開発を担うドイツ航空宇宙センター(DLR)と連携協定を結んだ。従来、熱損失となっていたエンジンなどの排熱を電気に変換し、エネルギー効率を高める。共同開発では3―5%の燃費改善を目標とする。

ヤマハが熱を電気に変える熱電素子を提供し、DLRが排熱発電システムとして開発を進める。自動車エンジンのエネルギー効率は約30%で、残りは熱損失になるとされる。同システムは従来、ムダになっていた排熱を電気として有効活用することで、ガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車(HV)などの燃費を改善する。


フランスの電機大手、蓄電池付き太陽光発電を半額で発売

2017-02-25 11:19:29 | 自然エネルギー

フランスの電機大手、蓄電池付き太陽光発電を半額に3月発売

仏電機大手のシュナイダーエレクトリックは日本企業と組んで、蓄電池を備えた太陽光発電システムの販売に乗り出す。米社が開発した低価格の新型蓄電池を活用することで、リチウムイオン電池を使う既存システムに比べ半額に抑えた。発電事業者は蓄電池があれば昼間にためておいた電気を夜間も電力会社に売れるが、費用がかさむためまだ導入事例は少ない。

発電システムは米社製の「水性ハイブリッドイオン蓄電池」と、太陽光で作…

水性ハイブリッドイオン蓄電池
安全で環境にやさしく、経済的で長寿命な蓄電池です