内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

 竹島問題を大所高所から解決すべき時 (その2)

2012-08-29 | Weblog
 竹島問題を大所高所から解決すべき時 (その2)
 韓国の李明博大統領は、8月10日、ヘリコプターで竹島(韓国名独島)に上陸し視察し、その後も日本側の批判、抗議等に耳を貸さず、石碑を建てるなど、心無い行動を継続した。竹島は島根県に属するが、李承晩・大韓民国(韓国)大統領が、1952年1月18日、「海洋主権」を宣言し、周辺海域に「漁船立ち入り禁止線」、通称「李承晩ライン」を設定し、同島は韓国の支配下にあると一方的に宣言して以来、日韓間の喉もとの小骨となっている。
 今回の李明博韓国大統領の竹島上陸は日韓関係にとって極めて深刻な行為であり、日本としても重大な決意を持って竹島問題の解決に努めるべきであろう。
 1、日韓の古くからの接点、竹島(独島)の歴史 (その1で掲載)
 2、「日韓新時代」は竹島(独島)問題の早期解決が鍵
 竹島の帰属問題は、日本政府としては1954年、1962年に国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案し来ているが、韓国政府が同意していないため実現していない。
 竹島は韓国により事実上占拠されており、韓国側はこれを「実効支配」と称している。しかし本来「実効支配」とは、「政府承認の重要な要件」の一つとして、特定国の政府が国内全域において実効的に支配が確立出来ているか否かを判断する概念であり、日本が領有を主張し、両国間の国際問題となっているので、同島を「実力行使」で占拠しても、日本が領有権を明確に表明している限り、実力行使による「占拠」でしかない。
日本政府は今回も国際司法裁判所へ提訴するなど、国際法にしたがって平和的解決を図るとしているが、これまで通り韓国が国際司法裁判所への付託に同意しない限り係争案件として受理されない。これまでのようにこの問題で建前論や事なかれを繰り返し、或いは韓国側を刺激することを恐れてこの問題を避けて通ることはもはや許されない。
 今回についても韓国政府は、国際司法裁判所への共同提案はもとより、付託自体を拒否する姿勢を明らかにしている。その上、野田首相が今回の一連の行動を遺憾とし、国際司法裁判所への共同提案を促す内容の李明博大統領宛親書を在京韓国大使館に託したが、韓国側はこれを差し戻そうとした上、書留郵便で外務省に返送するとの呆れた行動に出ている。これを受けて日本政府は、当初経済的影響を考慮し対応を慎重に検討するとしていた。しかし韓国大統領の竹島上陸は、日韓両国政府の信頼関係を著しく損なう行動であるので、この行動が日韓関係に影響を与えないはずがない。竹島は日本の領土であるのでしっかりと主張し、短期的に両国関係に影響することがあるとしても、毅然としてあらゆる措置、対策を取るべきであろう。言葉だけの外交や、問題先送り外交により事態の改善をもたらすことはないことが、李大統領の今回の同島訪問で明らかになった。影響を恐れて従来のような事なかれ外交を繰り返すことは、韓国側に日本は従来通り何も出来ない、何もしないとの誤ったメッセージを送り、現状を事実上容認することになる恐れが強い。従来の措置を超える明確且つ具体的な措置を検討、実施すべきであろう。
 領土の保全は、国家、国民の存立の基礎であり、安全保障、防衛の基本的な役割である。従って、韓国政府が竹島を巡る領有権問題で日本の利益を害する行動を継続するのであれば、日韓間の防衛協力については実務的な情報交換や信頼醸成措置程度に止める一方、朝鮮半島有事に際する協力は凍結し、日本自身の領土保全、安全保障に重点をシフトするなど、防衛政策の転換を検討すべきであろう。
 他方、日韓両国は近年において経済の相互依存関係を強め、また民間レベルの文化・芸能交流などが深まっているので、このような民間レベルの日韓交流に影響を与えないよう留意しつつ、国際司法裁判所への付託を含め、首脳レベルでの協議を打診し、常に本件協議への門戸を開放しておく一方、一般的な首脳レベルでの交流を停止する。また日韓経済連携協議の凍結や金融・資本、高度技術分野などでの政府レベルの交流、協力を抑制するなど、竹島問題の解決に向けて明確なメッセージを送り続けるべきであろう。但し、2国間関係は相互の努力で発展するものであるので、日本だけではなく、韓国の官民もこの問題が民間レベルの交流に影響を与えないよう努力することを期待したい。この関連で、日韓間の議員交流を超党派での交流を含めもっと頻繁に行うことが望ましい。
この問題の解決なくして「日韓新時代」の幕開けなどは、実体が伴わない標語に過ぎない。
 なお李明博大統領は、今回の竹島を巡る行動は慰安婦問題に対する日本側のはっきりしない姿勢が背景にあるなどとしている。しかし戦時中の賠償問題については、1965年6月22日に日韓基本条約を締結し、国交を正常化すると共に、請求権問題も経済協力等の形で政府間で処理し、個々人の請求権については相互に放棄し、それぞれの政府が対応すべきものと合意されている。従って明示はしていないものの、慰安婦問題も韓国国内で請求等がある場合には韓国政府が対処すべきことであろう。更に慰安婦問題が韓国の他、フィリピン、台湾など一部アジア地域で問題となったことを受けて、村山連立政権当時、政府間の賠償請求については合意済みとの立場を取りつつも、1995年7月、民間資金も募り、「女性のためのアジア平和国民基金」を設立し、アジア地域で被害を受けたと思われる女性に対し償い金を支払い、日本国民としての償いの気持ちを表わしている。同基金は2007年に解散されているが、戦時という異常な状態でのこととは言え、もしそのような被害を受けられた女性がなおおられたとすれば心からお詫びをしたい。
 また同大統領は、天皇が訪韓されたいということであれば独立運動で亡くなった方に謝罪すべきと発言した旨報道され、日本政府が遺憾の意を表明するなど問題となっている。確かに同大統領は、就任後2008年4月に訪日し、天皇陛下と謁見の上歓談されているのに何故あのような発言をされたのか理解に苦しむ。しかし同発言は、韓国教員大学校で開催された教員関連の会合でのものであり、公開の場や公式の場での発言ではないので、日本政府が公式にコメントする必要はないと思われる。これらの発言の応酬は無用であり、お互いに自制することが望まれる。
 3、模索すべき大所高所からの解決策         (その3で掲載)
 4、歴史も状況も異なる竹島、尖閣列島、北方4島問題  (その4で掲載)
(2012.08.25.)(Copy Right Reserved.)(不許無断転載・引用)

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