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Policy Essayist

電気料金値上げは生産・消費モデルの転換を促す!―グリーン経済応援寄稿― (総集編)

2012-03-07 | Weblog
電気料金値上げは生産・消費モデルの転換を促す!―グリーン経済応援寄稿― (総集編)
 東京電力は福島原発の事故により、供給力不足を火力発電等で補うことになるが、事故処理費用や燃料代等を勘案し、工場やオフィスなど大口需要者に対し電気料金を4月から平均で17%引き上げる方針を明らかにしている。家庭向けについては夏頃より8-10%程度の値上げを検討している。
 これに対し業界筋やマスコミは生産コストが増加し、価格への転嫁による消費や輸出に影響すると共に、円高と相俟って工場の海外移転を加速するなどとして懸念が表明されている。一方日本各地にある原子力発電所(福島第一原発を除き50基)の操業については安全面での確認と改善が求められており、電力の安定供給が日本産業の発展の上で大きな課題になっており、それへの対応が必要になっている。
 1、東京電力の自主再建を支持する
東京電力は、政府機関である原子力賠償支援機構と共に、原発事故の賠償問題と電力の安定供給を見据えた「総合事業計画」を3月末を目途に策定中である。基本的に東電は支援機構を通じて1兆円規模の公的資本の注入、従って事実上の国有化を受け入れると共に、主要金融機関よりの1兆円規模の融資を受ける一方、リストラの他、電気料金の値上げや安全確認を前提として福島以外の原発の再稼動などで2014年3月期に赤字を克服することを目指すことになりそうだ。
電気料金値上げへの懸念は当然であり、何らかの配慮が必要である。しかし東電自体、福島原発事故により周辺住民に与えた損害賠償を抱え、原子炉の管理・処理という長期の負担を負いながらの再建である上、そもそも東電も自然災害の被害者でもあるので、再建過程における一定の値上げは容認し、早期の再建を促さざるを得ないのではなかろうか。
他方、中小企業などへの影響を考えると値上げ幅については更なる簡素化、コスト削減などの企業努力により縮小することが望まれる。政府資金を更に投入して値上げを回避するとの考え方もあるようだが、結果的には一般納税者への負担となるので、受益者負担の原則に従って利用者が負担することが望ましい。消費者負担が市場経済のルールである。また東電への資金供給についても、政府又は政府機関による株式保有による資金注入よりも、むしろ無利子に近い融資の形にして極力自主再建を図らせる方が望ましい。そうすれば東電としても一層のコスト削減に努めざるを得なくなろう。
同時に、電力の生産、供給が東電などの独占状態になっていることが料金を引上げることに繋がるので、日本の今後の電力供給の多様化、安定化のためにも規制を撤廃し新規参入を図ることが不可欠であろう。
また利用者側とすれば、料金引き上げに対応して節電が必要になっている。
 2、節電努力により電気料金の節約は可能
 夏の節電では過度な節電で利用者に不便を強いたり、家庭レベルの過度な節電で熱中症を出した例は見られたが、企業による土日操業や夜間操業などによる電力使用の分散、ビル内や一般的な節電により、10-15%程度の節電は達成出来ることが明らかとなった。節電は節電グッズや防熱、防寒衣料品などの新しい需要を生むと共に、ライフ・スタイルの転換を促している。中・長期的には太陽光などの自然エネルギーを利用した発電の促進により新たな市場が生まれている。
 冬を迎え節電要請が出されたが、電機事業連合会による昨年12月の電力需要速報では、電力10社合計の販売電力量で前年同月比3.5%減となっている。新たなエコグッズなどの生産、需要を生みつつ更なる節電を行えば個々の電力使用料を節約出来る。夏の電力需要が心配されており、使用制限なども検討されているが、例えばピーク時外の夜9時から翌朝6時頃までや週末、祝日につき電気料金を低目に設定すれば、企業等の操業をピーク時外に誘導出来る上、それら企業等については電気料節約となる。
重要なことは、従来のように電力が無制限に使用出来るという産業モデル、生活スタイルから、適量消費のモデル、生活スタイルに転換を図って行くことであろう。それを政府や電力会社の使用規制で行うのではなく、企業、消費者が自発的に節電することによって実現して行くことが出来る。
 東日本大震災からの復旧・復興、そして電力供給の制約、値上げは、日本経済をリセットする良い契機であり、次の通り大量生産、大量消費モデルから、適量生産、適量消費のモデルに転換し、世界の模範となる経済再生を図って行くことが望まれる。
忘れ掛けられているが、世界にはもう一つの緊要な課題がある。地球温暖化、荒々しい気候変動だ。大気だけでなく海の流れが変化しており、世界各所で異常且つ嘗て無く強力な気候変動が起こっている。目には見えないが、大気の下で海流の変動が起こっている。北極海の氷原は夏になると縮み続けており、海流に影響を与える。また北極圏のオゾン層にも穴が確認されている。反対側の南極は陸地であるが、氷河が溶けるなど同じようなことが起こっていることが確認されている。地殻の変動だけでなく、大気や海を含め地球が変動しており、今後人類の生存と持続可能な発展を図って行くためには、地球の健康も維持して行かなくてはならない
 3、適量生産・適量消費モデルへの転換は日本経済再生の切り札となる
 節電の一方で、福島第一原発を補填する電力を確保して行かなくてはならない。そこで遊休している火力発電所の再開と共に安全が確認された原発の操業などが検討されているが、従来通りの電力需要に応えるためには地球温暖化防止のために目標とされている炭酸ガス排出基準を上回ることが予想されている。しかし地球温暖化防止は、地球上の人類及びその他生物の活動の持続可能性に係わる死活的な課題であり、先進工業国と新興経済諸国を中心として世界で真剣に取り組まなくてはならないグローバルな課題である。その努力を日本が軽々に放棄することは許されない。日本は国連気候変動枠組み条約の京都議定書で合意した温室効果ガスの排出基準にも達成していない。
 今後の東日本の復興、再生に当たっては、これまでの生産、消費モデルをそのまま復元するのではなく、化石燃料の量的制約と排出ガス削減の問題、原子力発電操業の制約や温暖化対策への国際的協力の必要性など、国内外の制約ときちんと向き合った上、東日本を含め、日本経済をリセットして新しい生産・消費モデルを構築し、エネルギー・資源の効率的使用と温暖化防止対策において世界に誇れる経済を再構築することが期待される。
 適量消費が定着すれば、価格や品質に対する消費者の目も厳しくなるので、生産者側も品質、価格に対応した適量生産に努めなくてはならなくなろう。消費は、いわば市場における総選挙のようなもので、消費者が製品、サービスを選択する。政治では1人一票しかないが、消費は個々人の予算の範囲以内で複数選択出来る。そのような消費者の選択が適量生産を促すことになる。
 そしてこのような適量消費・適量生産と生活スタイルの転換は、電力を含むエネルギー消費の節減を促す。現在福島原発被災事故の処理を巡り、高額に達すると見られる賠償費用や代替燃料のコスト問題などから、いわば電力料金の値上げか原子力発電の継続かの二者択一が提示されている。しかしこの選択肢は、従来の電力需要を前提とした選択肢であり、上記のように生産・消費モデルや生活スタイルの転換を図れば、従来型の電力への需要は減少し、上記の予測は正しくないことになる。その意味で、適量消費・適量生産と生活スタイルの転換は今後の電力問題の切り札になると共に、炭酸ガス削減を可能にする生産・消費モデルとなろう。
 今、国民の多くは被災地復興と電力危機への対応で理解を得やすい状態になっている。その国民的な理解や支持があれば、これまでの大量生産・大量消費の生産モデルを適量消費・適量生産に基づき、高い電力・エネルギー効率の生産・消費モデルに転換し、世界に誇れる経済とすることは不可能ではない。そこからまた世界の市場を対象とした新しいビジネス・チャンスや雇用機会が生まれるものと期待される。(2012.01.25.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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