内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

大学の世界ランキング・アップに何が必要か?  (その5)

2013-10-11 | Weblog

大学の世界ランキング・アップに何が必要か?   (その5)

 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的           (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                    (その2で掲載)       

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠   (その3で掲載)     

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4で掲載)           

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇   

 日本は“学歴主義”と言われることがあるが、実際は、国家公務員等を含め採用が新規卒業者を対象に行われるので、どうしても出身校が差になると共に、いわゆる“終身雇用”形態となっているため、大学院への進学率は、欧米先進工業国等に比して非常に低いのが現状だ。

 人口千人当たりの大学院学生数では、日本の2人に対し、米国9人、英、仏の各8人、韓国が6人となっている(資料:教育指標の国際比較平成23年版)。また25歳以上の大学院入学者は、諸外国では平均2割程度に達するが、日本では2%以下であり、大学院への社会人入学者が非常に少ない。これを反映して、日本の大学院の規模は諸外国に比して小さく、“高度人材を育成する基盤が弱い”と見られている(経済産業省研究資料)。

 また日本の企業役員等(従業員500人以上)の最終学歴では、米国の上場企業管理職等に占める大学院修了者の比率は、人事部長クラスで約62%、営業、経理部長クラスで約45%であるのに対し、日本の大学院卒の比率は5.9%と極端に低い(経済産業省研究資料)。米国では、高校の校長になるためには修士号取得が必要なことが多い。また国連など、国際公務員の幹部クラスは修士号、博士号取得者が多いが、日本の国家公務員の政策職の幹部には大学院修了者はほとんどいない。日本では博士課程修了者の就職率も6割前後に留まっている。上記の通り主要諸国では大学院修了者への評価は高いが、日本における新卒採用の偏重と大学院修了者の社会的進出の低さが、大学院の規模や大学院進学率の阻害要因になっていると言える。

 日本における高度人材の育成を図るため、大学院制度のあり方が課題と言えよう。

 日本は今後少子化と人口減、長寿化社会を迎える一方、グローバリゼーションの流れの中で、物、人、資金の自由化が更に進み、日本への海外資本による直接投資も増加することになるので、高度技術における国際競争力の維持、促進のみならず、日本国内において経営レベルでも国際競争に晒されることになると予想されるので、経営レベルを含め高度人材の育成が課題となると予想される。

このような内外の社会変化に対応して、大学・大学院での制度や教育のあり方を再点検する時期にあると言えよう。しかし上記の通り、大学・大学院での教育や研究は、企業や行政組織及び関係団体のニーズに影響を受けることになるので、社会全体の理解と協力を得つつそのレベル・アップを図って行くことが期待される。 (2013.9.28.) 

(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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大学の世界ランキング・アップに何が必要か?  (その5)

2013-10-11 | Weblog

大学の世界ランキング・アップに何が必要か?   (その5)

 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的           (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                    (その2で掲載)       

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠   (その3で掲載)     

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4で掲載)           

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇   

 日本は“学歴主義”と言われることがあるが、実際は、国家公務員等を含め採用が新規卒業者を対象に行われるので、どうしても出身校が差になると共に、いわゆる“終身雇用”形態となっているため、大学院への進学率は、欧米先進工業国等に比して非常に低いのが現状だ。

 人口千人当たりの大学院学生数では、日本の2人に対し、米国9人、英、仏の各8人、韓国が6人となっている(資料:教育指標の国際比較平成23年版)。また25歳以上の大学院入学者は、諸外国では平均2割程度に達するが、日本では2%以下であり、大学院への社会人入学者が非常に少ない。これを反映して、日本の大学院の規模は諸外国に比して小さく、“高度人材を育成する基盤が弱い”と見られている(経済産業省研究資料)。

 また日本の企業役員等(従業員500人以上)の最終学歴では、米国の上場企業管理職等に占める大学院修了者の比率は、人事部長クラスで約62%、営業、経理部長クラスで約45%であるのに対し、日本の大学院卒の比率は5.9%と極端に低い(経済産業省研究資料)。米国では、高校の校長になるためには修士号取得が必要なことが多い。また国連など、国際公務員の幹部クラスは修士号、博士号取得者が多いが、日本の国家公務員の政策職の幹部には大学院修了者はほとんどいない。日本では博士課程修了者の就職率も6割前後に留まっている。上記の通り主要諸国では大学院修了者への評価は高いが、日本における新卒採用の偏重と大学院修了者の社会的進出の低さが、大学院の規模や大学院進学率の阻害要因になっていると言える。

 日本における高度人材の育成を図るため、大学院制度のあり方が課題と言えよう。

 日本は今後少子化と人口減、長寿化社会を迎える一方、グローバリゼーションの流れの中で、物、人、資金の自由化が更に進み、日本への海外資本による直接投資も増加することになるので、高度技術における国際競争力の維持、促進のみならず、日本国内において経営レベルでも国際競争に晒されることになると予想されるので、経営レベルを含め高度人材の育成が課題となると予想される。

このような内外の社会変化に対応して、大学・大学院での制度や教育のあり方を再点検する時期にあると言えよう。しかし上記の通り、大学・大学院での教育や研究は、企業や行政組織及び関係団体のニーズに影響を受けることになるので、社会全体の理解と協力を得つつそのレベル・アップを図って行くことが期待される。 (2013.9.28.) 

(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的           (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                    (その2で掲載)       

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠   (その3で掲載)     

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4で掲載)           

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇   

 日本は“学歴主義”と言われることがあるが、実際は、国家公務員等を含め採用が新規卒業者を対象に行われるので、どうしても出身校が差になると共に、いわゆる“終身雇用”形態となっているため、大学院への進学率は、欧米先進工業国等に比して非常に低いのが現状だ。

 人口千人当たりの大学院学生数では、日本の2人に対し、米国9人、英、仏の各8人、韓国が6人となっている(資料:教育指標の国際比較平成23年版)。また25歳以上の大学院入学者は、諸外国では平均2割程度に達するが、日本では2%以下であり、大学院への社会人入学者が非常に少ない。これを反映して、日本の大学院の規模は諸外国に比して小さく、“高度人材を育成する基盤が弱い”と見られている(経済産業省研究資料)。

 また日本の企業役員等(従業員500人以上)の最終学歴では、米国の上場企業管理職等に占める大学院修了者の比率は、人事部長クラスで約62%、営業、経理部長クラスで約45%であるのに対し、日本の大学院卒の比率は5.9%と極端に低い(経済産業省研究資料)。米国では、高校の校長になるためには修士号取得が必要なことが多い。また国連など、国際公務員の幹部クラスは修士号、博士号取得者が多いが、日本の国家公務員の政策職の幹部には大学院修了者はほとんどいない。日本では博士課程修了者の就職率も6割前後に留まっている。上記の通り主要諸国では大学院修了者への評価は高いが、日本における新卒採用の偏重と大学院修了者の社会的進出の低さが、大学院の規模や大学院進学率の阻害要因になっていると言える。

 日本における高度人材の育成を図るため、大学院制度のあり方が課題と言えよう。

 日本は今後少子化と人口減、長寿化社会を迎える一方、グローバリゼーションの流れの中で、物、人、資金の自由化が更に進み、日本への海外資本による直接投資も増加することになるので、高度技術における国際競争力の維持、促進のみならず、日本国内において経営レベルでも国際競争に晒されることになると予想されるので、経営レベルを含め高度人材の育成が課題となると予想される。

このような内外の社会変化に対応して、大学・大学院での制度や教育のあり方を再点検する時期にあると言えよう。しかし上記の通り、大学・大学院での教育や研究は、企業や行政組織及び関係団体のニーズに影響を受けることになるので、社会全体の理解と協力を得つつそのレベル・アップを図って行くことが期待される。 (2013.9.28.) 

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大学の世界ランキング・アップに何が必要か?   (その5)

 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的           (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                    (その2で掲載)       

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠   (その3で掲載)     

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4で掲載)           

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇   

 日本は“学歴主義”と言われることがあるが、実際は、国家公務員等を含め採用が新規卒業者を対象に行われるので、どうしても出身校が差になると共に、いわゆる“終身雇用”形態となっているため、大学院への進学率は、欧米先進工業国等に比して非常に低いのが現状だ。

 人口千人当たりの大学院学生数では、日本の2人に対し、米国9人、英、仏の各8人、韓国が6人となっている(資料:教育指標の国際比較平成23年版)。また25歳以上の大学院入学者は、諸外国では平均2割程度に達するが、日本では2%以下であり、大学院への社会人入学者が非常に少ない。これを反映して、日本の大学院の規模は諸外国に比して小さく、“高度人材を育成する基盤が弱い”と見られている(経済産業省研究資料)。

 また日本の企業役員等(従業員500人以上)の最終学歴では、米国の上場企業管理職等に占める大学院修了者の比率は、人事部長クラスで約62%、営業、経理部長クラスで約45%であるのに対し、日本の大学院卒の比率は5.9%と極端に低い(経済産業省研究資料)。米国では、高校の校長になるためには修士号取得が必要なことが多い。また国連など、国際公務員の幹部クラスは修士号、博士号取得者が多いが、日本の国家公務員の政策職の幹部には大学院修了者はほとんどいない。日本では博士課程修了者の就職率も6割前後に留まっている。上記の通り主要諸国では大学院修了者への評価は高いが、日本における新卒採用の偏重と大学院修了者の社会的進出の低さが、大学院の規模や大学院進学率の阻害要因になっていると言える。

 日本における高度人材の育成を図るため、大学院制度のあり方が課題と言えよう。

 日本は今後少子化と人口減、長寿化社会を迎える一方、グローバリゼーションの流れの中で、物、人、資金の自由化が更に進み、日本への海外資本による直接投資も増加することになるので、高度技術における国際競争力の維持、促進のみならず、日本国内において経営レベルでも国際競争に晒されることになると予想されるので、経営レベルを含め高度人材の育成が課題となると予想される。

このような内外の社会変化に対応して、大学・大学院での制度や教育のあり方を再点検する時期にあると言えよう。しかし上記の通り、大学・大学院での教育や研究は、企業や行政組織及び関係団体のニーズに影響を受けることになるので、社会全体の理解と協力を得つつそのレベル・アップを図って行くことが期待される。 (2013.9.28.) 

(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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大学の世界ランキング・アップに何が必要か?   (その5)

 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的           (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                    (その2で掲載)       

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠   (その3で掲載)     

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4で掲載)           

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇   

 日本は“学歴主義”と言われることがあるが、実際は、国家公務員等を含め採用が新規卒業者を対象に行われるので、どうしても出身校が差になると共に、いわゆる“終身雇用”形態となっているため、大学院への進学率は、欧米先進工業国等に比して非常に低いのが現状だ。

 人口千人当たりの大学院学生数では、日本の2人に対し、米国9人、英、仏の各8人、韓国が6人となっている(資料:教育指標の国際比較平成23年版)。また25歳以上の大学院入学者は、諸外国では平均2割程度に達するが、日本では2%以下であり、大学院への社会人入学者が非常に少ない。これを反映して、日本の大学院の規模は諸外国に比して小さく、“高度人材を育成する基盤が弱い”と見られている(経済産業省研究資料)。

 また日本の企業役員等(従業員500人以上)の最終学歴では、米国の上場企業管理職等に占める大学院修了者の比率は、人事部長クラスで約62%、営業、経理部長クラスで約45%であるのに対し、日本の大学院卒の比率は5.9%と極端に低い(経済産業省研究資料)。米国では、高校の校長になるためには修士号取得が必要なことが多い。また国連など、国際公務員の幹部クラスは修士号、博士号取得者が多いが、日本の国家公務員の政策職の幹部には大学院修了者はほとんどいない。日本では博士課程修了者の就職率も6割前後に留まっている。上記の通り主要諸国では大学院修了者への評価は高いが、日本における新卒採用の偏重と大学院修了者の社会的進出の低さが、大学院の規模や大学院進学率の阻害要因になっていると言える。

 日本における高度人材の育成を図るため、大学院制度のあり方が課題と言えよう。

 日本は今後少子化と人口減、長寿化社会を迎える一方、グローバリゼーションの流れの中で、物、人、資金の自由化が更に進み、日本への海外資本による直接投資も増加することになるので、高度技術における国際競争力の維持、促進のみならず、日本国内において経営レベルでも国際競争に晒されることになると予想されるので、経営レベルを含め高度人材の育成が課題となると予想される。

このような内外の社会変化に対応して、大学・大学院での制度や教育のあり方を再点検する時期にあると言えよう。しかし上記の通り、大学・大学院での教育や研究は、企業や行政組織及び関係団体のニーズに影響を受けることになるので、社会全体の理解と協力を得つつそのレベル・アップを図って行くことが期待される。 (2013.9.28.) 

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 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的           (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                    (その2で掲載)       

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠   (その3で掲載)     

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4で掲載)           

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇   

 日本は“学歴主義”と言われることがあるが、実際は、国家公務員等を含め採用が新規卒業者を対象に行われるので、どうしても出身校が差になると共に、いわゆる“終身雇用”形態となっているため、大学院への進学率は、欧米先進工業国等に比して非常に低いのが現状だ。

 人口千人当たりの大学院学生数では、日本の2人に対し、米国9人、英、仏の各8人、韓国が6人となっている(資料:教育指標の国際比較平成23年版)。また25歳以上の大学院入学者は、諸外国では平均2割程度に達するが、日本では2%以下であり、大学院への社会人入学者が非常に少ない。これを反映して、日本の大学院の規模は諸外国に比して小さく、“高度人材を育成する基盤が弱い”と見られている(経済産業省研究資料)。

 また日本の企業役員等(従業員500人以上)の最終学歴では、米国の上場企業管理職等に占める大学院修了者の比率は、人事部長クラスで約62%、営業、経理部長クラスで約45%であるのに対し、日本の大学院卒の比率は5.9%と極端に低い(経済産業省研究資料)。米国では、高校の校長になるためには修士号取得が必要なことが多い。また国連など、国際公務員の幹部クラスは修士号、博士号取得者が多いが、日本の国家公務員の政策職の幹部には大学院修了者はほとんどいない。日本では博士課程修了者の就職率も6割前後に留まっている。上記の通り主要諸国では大学院修了者への評価は高いが、日本における新卒採用の偏重と大学院修了者の社会的進出の低さが、大学院の規模や大学院進学率の阻害要因になっていると言える。

 日本における高度人材の育成を図るため、大学院制度のあり方が課題と言えよう。

 日本は今後少子化と人口減、長寿化社会を迎える一方、グローバリゼーションの流れの中で、物、人、資金の自由化が更に進み、日本への海外資本による直接投資も増加することになるので、高度技術における国際競争力の維持、促進のみならず、日本国内において経営レベルでも国際競争に晒されることになると予想されるので、経営レベルを含め高度人材の育成が課題となると予想される。

このような内外の社会変化に対応して、大学・大学院での制度や教育のあり方を再点検する時期にあると言えよう。しかし上記の通り、大学・大学院での教育や研究は、企業や行政組織及び関係団体のニーズに影響を受けることになるので、社会全体の理解と協力を得つつそのレベル・アップを図って行くことが期待される。 (2013.9.28.) 

(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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大学の世界ランキング・アップに何が必要か?  (その4)

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大学の世界ランキング・アップに何が必要か?   (その4)

 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的           (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                    (その2で掲載)       

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠   (その3で掲載)     

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 

 中学、高校、大学等への進学は、最終的には公務員採用試験を含め、就職への有利性が考慮されるので、就職、採用試験が暗記、記憶力に重点が置かれている限り、学校教育でも暗記、記憶力に重点が置かれることになる。確かに学生が教師と黒板に向かい合う対峙型となり、学生はそれを記録し、記憶するという教育方式が中心となっている。

 それはそれとして良いのだが、もっと小グループで学生と教師の質疑、意見交換、小論文作成等により、双方交通の授業方式を促進し、学生の個々人の個性引き出し、表現できる授業形態が増えることが望ましい。それにより現在欠けていると見られている議論する能力やコミュニケーション能力も向上するものと期待される。

 そのためには採用、就職試験でも暗記、記憶力、応用力に加え、発想力や創造力、独創性を評価することが望まれる。それを短時間で採点することは難しいので、学校側の評価を取り入れることが現実的であろう。

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇     (その5に掲載)

(2013.9.28.) (All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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大学の世界ランキング・アップに何が必要か?  (その3)

2013-10-11 | Weblog

大学の世界ランキング・アップに何が必要か?   (その3)

 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的         (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                  (その2で掲載)       

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠  

 海外への外国語での研究成果の発信力向上に加え、研究成果の創造性、独創性が求められることは言うまでもない。日本の教育方針や制度、試験制度は、卒業後の公務員・企業の就職試験に至るまで基本的に一貫して記憶力、暗記力に重点を置いている。“応用問題”も採用されてはいるが、これも既存知識や研究の“応用”であり、発想力や創造性、独創性を涵養するものではない。

 教える側も、既存の知識や理論等を教え与えることが主眼となっている。無論基本的な知識を蓄積することは重要ではあるが、米欧等においては、研究者や学者が研究論文を可なり頻繁に出さないとポジションを維持することが困難になるので、理工系や医学系に限らず、社会科学、人文科学系においても独創的な研究論文の発表に常に努力している。日本の場合、詰め込み授業に追われることが多く、また基本的に年功序列の昇進となるので研究成果を出す必要が必ずしもない上、自発的な留学のための休暇・休職なども取り難く、また一定年数勤務後の研究休暇(サバテイカル休暇)なども普及していない。

 従って日本の大学が国際的に高い評価を得るためには、教育姿勢や教育方針・制度など、教育ソフト面の改善、転換が不可欠と言える。

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4に掲載)

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇     (その5に掲載)

(2013.9.28.) (All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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大学の世界ランキング・アップに何が必要か?  (その2)

2013-10-11 | Weblog

大学の世界ランキング・アップに何が必要か?   (その2)

 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的    (その1で掲載)

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力               

 知的活動の分野において、日本の研究成果や論文等が世界の多くの学者、研究者によって評価、引用されるようになるためには、創造性、独創性を重視した教育姿勢、試験(評価)制度と入学試験や公務員を含む就職試験のあり方(新卒者偏重、出身大学主義の採用試験制度など)と大学院レベルへの高等教育の普及と修了者への処遇の改善など、教育姿勢や教育・採用試験制度という教育ソフト面の改善が不可欠と言えよう。

しかし現実論として学者、研究者による研究成果が国際的に評価されるためには、研究成果が国際的な外国語(英語で可)による成果の発表が不可欠である。どんなに良い研究成果や作品でも日本語だけでは国際的に評価されない。外国と国境を接していない日本では外国語に接する機会は少ないので、当面英語での研究成果の発表を日常化することが望まれる。理工系や医学分野等では研究成果の英語等による発表はある程度行われているが、社会科学や人文科学分野では余り行われてない。

そのためには、学生や学者、研究者等の2年以上の主要国への留学を飛躍的に増加させることが最も効果的であろう。学生、研究者等の海外留学を促進するため、例えば海外留学(高校・専門レベルで1年、大学・大学院レベルで2年など)での取得単位を国内単位としての認定を促進することと、海外留学奨学金(原則無利子、成績優秀者等には無償など)を新設、拡充することが望まれる。その上で海外からの留学生、研究者の受け入れを促進することが、日本の研究成果の海外への発信力を高める早道と言えよう。

 もっとも日本の英語教育は、中学、高校の6年間に必修科目として行われているが、海外に行って、日本で6年間英語を習っていて英語がしゃべれないと言うと、信じられないというような顔をされる。英語を「語学」という学問の範疇で教え、試験科目にしていることが、コミュニケーション手段としての言葉なることを妨げているようだ。子供が言葉を反復しながら覚えるように、まず英語を耳で聞き、口でしゃべるようにして行き、必要に応じ高学年になってスペリングや文法などへと高めて行けば良いことであろう。外国語を世界とのコミュニケーション手段として行く上では、試験なども「語学」試験としての必須科目とはせず、生きたコミュニケーション手段として選択科目にするなどの改善が必要のようだ。

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠  (その3に掲載)

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4に掲載)

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇     (その5に掲載)

(2013.9.28.) (All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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大学の世界ランキング・アップに何が必要か?  (その1)

2013-10-11 | Weblog

大学の世界ランキング・アップに何が必要か?   (その1)

 2014年度予算の各省庁要求を政府概算要求を査定する時期になったが、文部科学省は、世界大学ランキング100校入りを支援するために、国公私立の10大学に対し毎年100億円の助成を予算要求すると伝えられている。

 現在、世界大学ランキング100校には日本の国立大学が2校入っているだけであり、一人当たりのGDPを加味すると実質的に世界第2位の経済大国である日本にとっては少し寂しいところだ。ランキング・アップには指導環境など色々な要素が必要だが、各大学の学者、研究者が“独創的な研究を行い、研究論文が内外の研究者などから引用されること”が決定的な要素となる。要するに、各大学に所属する教授ほか研究者の「独創的な研究実績」と「語学力など、対外的な発信能力」が問われていることになる。

 文科省は、10校を選定し、海外の大学との共同研究や著名な研究者の招聘を支援するなどしている。これのような研究交流や人的交流自体は良いことではあるが、新たに毎年100億円もの予算を投入して相当長期を掛けてもどの程度の効果が出るか疑問である。そもそも教育のあり方の転換や教師、研究者の資質や姿勢など、大学院の普及などの制度面、人材面の改善、即ち教育ソフト面の転換がより重要に思える。

 1、 外国大学との共同研究や研究者招聘の効果は局部的、限界的

 外国の共同研究や著名研究者の日本への招聘については、各大学の判断で実施することは大いに良いことであるが、今更という印象を受ける上、その効果は長期を要し、例えば10年間としても1,000億円の予算負担となり、費用対効果の面で疑問が残る。

 外国大学との共同研究でも、iPS細胞分野など日本側に何らかの比較優位のある分野でなければ、各分野で先端を行っているような外国人研究者は日本との共同研究は希望しないであろう。著名な外国人研究者の招聘にしても高額の招聘費が必要となろうし、日本での研究にメリットを感じなければ希望しないであろう。いずれの場合も、日本側に相当高度な研究水準と語学力がなければ得るものは少ないと判断されるであろう。

 招聘事業で一つの例を挙げよう。日本は、1985年9月のプラザ合意で急速な円高を容認し、それにより日本企業の海外進出が急増した。それに伴い海外で活動できる人材や知識等が必要となり、日本の「国際化」が必要とされた。その対策の1つとして90年代初頭より、政府は「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JETプログラム)を開始し、当初は米国を中心とする英語圏から青年を招聘し、地方公共団体と共同して各地の学校等に英語教師として配属し、英語教育の普及を行った。その後英語圏以外も加えたほか、役割も地方公共団体の国際交流促進のための助言等の分野に広げ、当初の4カ国から40カ国ほどに拡大し招聘している。この事業は既に20年以上実施しているので、日本各地において外国語を習得し、或いは地方レベルでの国際交流を担える人材が可なり育っていることが期待される。確かに一定の効果はあったが、最大の効果は、日本に招聘された外国人の日本語能力が顕著に向上している上、各地の伝統文化だけでなく、アニメを含む若者文化や日本食、工芸品、匠の技などへの理解と評価も向上し、それが世界各地に伝えられ、日本の伝統文化、技術の水準の高さと共に、現代の庶民文化、若者文化への興味が世界に広がったことであろう。知日派、好日派外国人が増え、日本各地の草の根文化や工芸技術への評価が顕著に高まったが、本事業の本来の目的である日本での英語の普及や能力向上については、20年以上継続しているにも拘らず、それ程の効果は得られていない面がある。逆にこの制度が恒常化したことにより、地域の国際交流や外国人との関係についてはJETで招聘された外国人に実体上任され、JETへの依存性が高まり、地域住民自体の語学力向上や国際化には余り寄与していないとの弊害も見られる。

 外国大学との共同研究や研究者の日本への招聘事業が長期化することになると、JETプログラムと類似の結果となり、日本の学術研究のレベルや創造性、独創性を高め、それが世界に評価、引用されることにどれだけ貢献することになるのか疑問なしとしない。

 また新たな事業予算の追加も良いが、中・長期的な少子化の趨勢に対応し、教育姿勢と共に、国・公立学校を地域別に統廃合し、また国・公立と私立との学費格差や研究助成格差等を縮小することなど、高等教育制度自体を再点検する必要がありそうだ。また暗記重視の教育方針、試験制度から発想力や創造性、独創性を重視した教育姿勢や試験(評価)制度に優先度と資源の再配分を行い、その中で新たなニーズ、事業を加えて行くなどの工夫と先見性が必要と言えよう。中・長期的な少子化、人口減の中での長寿化社会において、新規事業や学校・学部を増加し続け、教育予算を更に拡大することは現実的に困難と見られる。

 2、 最も必要とされる研究成果の英語等による発表能力                 (その2に掲載)

 3、創造性、独創性を重視した教育・入試制度など、意識と制度の転換が不可欠  (その3に掲載)

 4、 発想力、創造性を加味した就職試験の拡大の必要性                 (その4に掲載)

 5、 大学院レベルの高等教育の普及と修士・博士号取得者への公正な処遇     (その5に掲載)

(2013.9.28.) (All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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消費税増税の実施を支持する  (総合編)

2013-10-11 | Weblog

消費税増税の実施を支持する  (総合編)

 2014年4月から消費税の8%への増税実施を控え(翌15年10月より10%)、その条件となっている経済状況の好転について判断が迫られており、政府は8月下旬には各界から60人の識者から意見を聴取した。意見は賛成論が多かったようであるが、賛否両論と言ったところであり、濃淡はあるが、次の2つの意見に分かれている。

 (1)  年金、医療、介護保険といった社会福祉関係費が増加し、歳入不足は解消しないので消費増税は必要。

 (2)  経済は好転していると言われているが、家計所得や中小企業の所得が増加するに至っておらず、消費増税が実施されると生活は苦しくなる上、   景気に悪影響。

 経済専門家もおおよそ同じような意見であり、どちらに決められても不思議はない。多くの国民は、消費増税を望んではいないが、仕方ないないと思っていると見られる。しかし同時に多くの国民は、家計にしても事業経営にしても収入不足であれば、まず倹約、節約しなければ赤字は解消出来ないことを知っており、国家財政は何故それが出来ないのかという極く自然な疑問を抱いていると見られている。

 今後少子高齢化が更に進み、社会福祉関係費が増加する一方、生産人口、従って国民全体の税負担能力が低下することを考慮すると、消費税増税は仕方ないことであり、法律に従って実施することを支持する。他方、内閣や多くの消費増税支持者、そして行政当局自身が歳入不足を認識していながら、歳入増を図るのは良いが、何故行政経費、特に人件費、管理費の節減を実施しないのだろうか。また社会福祉関係費が中・長期的に増え続けるという認識であれば、何故予算配分を変えようとしないのだろうかという疑問も理解出来るところだ。家計はもとより、どの企業でも団体でも収入不足で赤字となれば取り組まねばならないことであろう。

 また税収を図る上で経済回復が不可欠であるが、そのためにはまず企業や農業、漁業を含む事業者が、外国人投資家を含め、自発的に新規投資し、或いは起業し易い環境を整えて行くことが重要なのではないだろうか。

 1、税収増努力と共に不可欠な行政管理経費の節減と簡素化

 今後少子高齢化と人口減、特に就業人口の減少を勘案すると、消費増税等による増収は国民一人当たりの負担を増加させて行くことになるので、少子長寿化、人口減に備えて人件費、管理費を段階的に節減すると共に、政策的経費の新たなニーズ、優先度に沿った組み換えを行うことが望ましい。

 行政当局は、社会福祉関係費の漸増による歳入不足を解消するため、消費増税は必要としているが、それは「その他の経費の現状維持」を大前提とした議論である。内閣府は、消費税を予定通り10%まで引き上げても、2020年までの基礎的財政収支の黒字化は困難との試算を明らかにしており、一部には15%への消費増税が示唆されているが、「その他の経費の現状維持」を前提としている。行政当局も、少子長寿化と人口減、特に就業人口の減少と社会福祉関係費の漸増を十分認識しており、その上で更なる消費増税を予想している。社会福祉関係費の漸増を趨勢として認めなくてはならない以上、「その他の経費の現状維持」を行うことは困難なことは行政当局自身も認めていることになる。

 消費税1%分の増収は2.5―2.7兆円と言われている。もし行政当局自身が2020年度の基礎的収支達成には更に5%の消費税増税が必要との試算であれば、10%までの消費増税は実施する一方、追加的に必要とされる5%の消費増税による増収分12.5兆円相当分は行政経費の節減で対応することが、少子長寿化、人口減に備えた対応としても望ましいのではないだろうか。行政当局自身による統計と試算に基づくものであるので、理解が得られると思われる。

 会計検査院は、6月26日、“官庁や政府出資法人に対して過剰な余剰積立など不適切な会計処理を指摘した結果、2012年9月までの1年間に約1.8兆円の改善効果があった“とする試算を公表している。これは、独立行政法人の過剰な余剰金の積み上げや労働保険、年金などの特別会計への一般会計からの余分な繰入などであり、過大な補助金の返還や不要財産の国庫返納などとして処理され、不適正経費等が節減されることになる。もっとも会計検査院が毎年1.8 兆円の不適切な会計処理を指摘することは困難とも見られるが、2012年にも約1.1 兆円の改善指摘を行っているので、毎年1-2兆円規模の改善指摘を行うことは不可能ではないだろう。しかしそれも「現行の組織・制度の維持」を前提としているので、「現行の組織・制度」について節減の可能性を点検する必要がある。都道府県についても交付金や各種補助金を受けているので、過剰、不適正な会計処理については国が、また市区町村については都道府県が検査し、改善指摘を実施することが望ましい。

 追加的に必要とされる消費増税5%分の節減をするとなると、会計検査院による改善指摘1-2兆円規模に加え、「現行の組織・制度」からの節減を毎年10兆円規模で行わなくてはならない計算になるが、今後の経済回復、特に2020年の東京オリンピック開催に向けての経済成長効果による税収増が期待出来るので、必要となる節減は相当程度圧縮されるものと予想されるが、今後の経済成長率にもよるが可なりの理解と努力が求められる。

 少子長寿化、人口減は1990年代初頭から行政当局(厚生省)が指摘して来たことであり、現在誰もが現実のものとして認識しているので、それに対応した持続可能な新たな行政モデルを構築することが将来世代のためにも不可欠になっていると言えよう。そのため、独立行政法人、補助金団体、及び特別会計管理を含め人件費、管理費の改善、節減を行って行くことが望まれる。これを行わない限り、今後の税収不足を解消することは困難で、消費税の追加的な引き上げが行われ、「現行の組織・制度」の下で行政各部に吸収されることになろう。

 人件費や諸管理費の節減については、行政サービスの低下や公務員への影響を十分考慮するなど、丁寧な対応が望まれる。人件費については、独法、補助金団体など政府関係機関を加え公務員、準公務員の総定員を削減するか、給与水準を下げ、総人件費を削減するかの選択になるが、総人件費を一定比率漸減することとして、定員を削減するか給与水準を下げるかなどの選択は行政当局に委ねて良いであろう。例えば、現役公務員への影響を最小限にするためには、新規採用を漸減する一方、等級制の適用を60歳までとし、その後は職種や職務内容により決める職能制(定年は設けない)の下で再契約するなどである。また地方公共団体や、民間への転職斡旋を条件として自発的な転職を募集することも検討できよう。特に岩手、宮城、福島の東北3県については人材不足が復興を遅らせている面もあるので、復興支援の一環として政府支援によりこれら地域への転職を促進することが望まれる。これら3県は、より安全で活力のある街作りやコミュニテイ、インフラ作りにより、少子長寿化を見据えた日本の将来の地方を代表する地域として発展する可能性を秘めている。しかしそれは資金だけの問題ではなく、それを適正に執行する人材が不可欠なのである。

 管理費については、独法などの下部組織を含め、事務所スペースを統廃合し、不要不急の施設や土地、その他国有施設、不動産を民間に供給することであろう。これにより人件費及び管理費が大幅に節減できると共に、売却不動産より不動産市場は活性化し、固定資産税が見込まれることになる。また地方の事務所、施設は原則地方公共団体に移譲するか統廃合することにより、地方での行政サービスは地方への一本化が促進されると共に、重複や無駄が少なくなるものと期待される。

 いずれにしても、行政当局自体が2020年度での基礎的財政収支の黒字化の目標を達成するには、10%への消費増税を実施しても達成困難であると見ているようであるので、10%への消費増税を実施する一方、現行の行政組織、予算のあり方を少子長寿化社会において持続可能な新たな行政制度を構築することが望まれる。

 2、企業や起業家の活力や地方の活力を引き出す施策が必要  

 消費需要や民間投資が未だ本格的な回復を示していない中で、景気回復の下支え、或いは呼び水として政府需要、特に公共事業が期待されて来た。伝統的に公共事業による効果は認められるところである。しかし日本の場合、バブル経済の崩壊が進行し始めた1993年から基礎的財政収支は赤字に転じ、景気対策としての公共事業はそれ以降今日まで国債など国の公的債務で手当され始め、景気停滞の中で借金の幅が大きくなって来ている。

 1991年以降の財政収支の推移                     (単位 兆円)

年代

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

収支

  7.9

  8.2

  2.9

-12.6

-19.3

-23.7

-28.1

-23.1

-30.4

-39.2

 

年代

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

収支

-41.0

-30.5

-38.5

-38.8

-30.0

-24.3

-18.5

-10.7

-20.6

-49.0

 

年代

2010

2011

2012

2013

収支

-44.9

-46.8

-48.2*

-47.1*

                   *は推定   参考:IMF統計

  日本の政府総債務残高の推移(中央政府、地方政府、及び社会保障基金の債務合計) (単位 兆円)

年代

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

総残高

301.3

316,.8

347.5

379.3

413.2

457.7

506.7

552.4

606.3

665.8

 

年代

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

総残高

714.5

776.7

818.6

845.9

910.0

939.5

942.4

938.8

961.4

990.6

 

年代

2010

2011

2012

2013

総残高

1,041.7

1,083.8

1,132.2*

1,178.3*

                   *は推定   参考:IMF統計

  従って景気刺激のための公共事業は、1990年代中頃からの長期の経済停滞の下支えとして一定の効果があったとしても、景気回復の呼び水としての役割は果たしていないと言えよう。公共事業が景気を刺激するには、前年より大幅に増額しなくては効果がないが、長期に亘って借り入れを前提として公共事業を継続して来ているので、増加したとしても相対的に小幅となり景気への効果は小さい。確かに公共事業は嘗て必要な社会・経済インフラを整備するなど、貢献して来ているが、その一次効果は公共事業関係業界であり、それが長期に継続するとこれら業界は公共事業に依存し、自発的な発展を阻害する一方、景気対策の選択肢を狭め、各種産業の自発的な発展には貢献しない状況ともなる。それは公的債務を重ね、公共事業を長期に継続して来たが、建設業界自体も自発的、自立的な回復、発展の道筋を示せていない上、経済停滞から脱却できなかったことからも明らかであろう。また新規の公共事業はその維持管理のための後年度負担を増加させ続け、地方経済を圧迫することにもなる。もっとも2020年に東京オリンピックの開催が決定したことにより、短期的には効果は限定的となるが、2020年が近くなるにつれて関連産業への効果はひろがるものと期待される。

 経済回復を図るには、一定の公共事業やは必要ではあるが、経済全体や地方の自発的回復、発展を引き出す施策に重点を移すことが不可欠と言え、次のような施策が期待される。なお、補助金や助成金も対象を限定して実施する場合一定の効果があるが、経済全体を対象とする補助金等は困難である上、減免税の方が対象が広く、企業、個人の自発的な活力を引き出し易いので、ここでは減免税を中心に例示した。

 (1)  法人所得及び事業税の減税

 日本の企業関係税は主要各国に比べ割高であり、日本の企業の収益を圧迫し、企業経営のみならず、役員報酬を含め給与引き上げにも抑制要因となっている上、外国投資、特に直接投資の抑制要因になっている。従って法人所得税、及び事業税水準を引き下げると共に、事業税については事業収入の額に従って標準税率を設定し、上下5%については都道府県に委ねることとし、地方の特性を発揮しやすくすることが望ましい。

 (2)  新規の起業に際しては、2年間法人所得税の猶予

 経済回復のためには、新規の起業を増やすことが必要であるが、新規起業には初期投資(事業所、人件費、仕入れなど)が必要な上、軌道に乗るまでリスクを伴うので、2年間は法人所得税を猶予し、起業し易い環境を整えることが望ましい。

 (3)  株式・投信譲渡所得の年間500万円以下の非課税、1500万円以下の減税

 1990年代中頃以降のバブル崩壊による資産デフレの状況から脱するためには、適正水準の円安への為替是正を維持、安定化させ、輸出関連産業や観光産業が経済を牽引できるようにし、株価を日経平均1万5千円内外から2万円台で安定化させることが重要であろう。しかし一般投資家、特に小口投資家の証券投資への不信感は根強く、また預金金利が超低水準であり、取引手数料や物価上昇を加味すると実質マイナス金利ともなるので、たんす預金化し、資金が保蔵される傾向が強い。これらの保蔵資金を市場に循環させることが重要であるので、株式・投信譲渡所得の年間500万円以下の非課税、1500万円以下の減税が効果的であろう。この措置は、一見税収減となるように思えるが、そもそも保蔵されている資金を市場に還流させ、投資を促進し、一般投資家の消費等を誘引することになると予想される。

 (4)1500cc以下の自動車諸税の減税と車検の5年間への延長など

  従来、減税は税収を減少させ、また効果は期待できないとされて来たが、経済の自発的な回復を図る上では、減税や非課税かは起業家や個人投資家の自発的な投資、出費を引き出す上で最も効果的であろう。その上、税収を図る上では経済の活性化、回復を図ることが最も効果的であることは誰しもが認めるところであろう。減税により経済、社会活動を誘導、促進する手法は多くの先進工業諸国でも取られている。(2013.09.10.)

(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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消費税増税の実施を支持する  (総合編)

2013-10-11 | Weblog

消費税増税の実施を支持する  (総合編)

 2014年4月から消費税の8%への増税実施を控え(翌15年10月より10%)、その条件となっている経済状況の好転について判断が迫られており、政府は8月下旬には各界から60人の識者から意見を聴取した。意見は賛成論が多かったようであるが、賛否両論と言ったところであり、濃淡はあるが、次の2つの意見に分かれている。

 (1)  年金、医療、介護保険といった社会福祉関係費が増加し、歳入不足は解消しないので消費増税は必要。

 (2)  経済は好転していると言われているが、家計所得や中小企業の所得が増加するに至っておらず、消費増税が実施されると生活は苦しくなる上、   景気に悪影響。

 経済専門家もおおよそ同じような意見であり、どちらに決められても不思議はない。多くの国民は、消費増税を望んではいないが、仕方ないないと思っていると見られる。しかし同時に多くの国民は、家計にしても事業経営にしても収入不足であれば、まず倹約、節約しなければ赤字は解消出来ないことを知っており、国家財政は何故それが出来ないのかという極く自然な疑問を抱いていると見られている。

 今後少子高齢化が更に進み、社会福祉関係費が増加する一方、生産人口、従って国民全体の税負担能力が低下することを考慮すると、消費税増税は仕方ないことであり、法律に従って実施することを支持する。他方、内閣や多くの消費増税支持者、そして行政当局自身が歳入不足を認識していながら、歳入増を図るのは良いが、何故行政経費、特に人件費、管理費の節減を実施しないのだろうか。また社会福祉関係費が中・長期的に増え続けるという認識であれば、何故予算配分を変えようとしないのだろうかという疑問も理解出来るところだ。家計はもとより、どの企業でも団体でも収入不足で赤字となれば取り組まねばならないことであろう。

 また税収を図る上で経済回復が不可欠であるが、そのためにはまず企業や農業、漁業を含む事業者が、外国人投資家を含め、自発的に新規投資し、或いは起業し易い環境を整えて行くことが重要なのではないだろうか。

 1、税収増努力と共に不可欠な行政管理経費の節減と簡素化

 今後少子高齢化と人口減、特に就業人口の減少を勘案すると、消費増税等による増収は国民一人当たりの負担を増加させて行くことになるので、少子長寿化、人口減に備えて人件費、管理費を段階的に節減すると共に、政策的経費の新たなニーズ、優先度に沿った組み換えを行うことが望ましい。

 行政当局は、社会福祉関係費の漸増による歳入不足を解消するため、消費増税は必要としているが、それは「その他の経費の現状維持」を大前提とした議論である。内閣府は、消費税を予定通り10%まで引き上げても、2020年までの基礎的財政収支の黒字化は困難との試算を明らかにしており、一部には15%への消費増税が示唆されているが、「その他の経費の現状維持」を前提としている。行政当局も、少子長寿化と人口減、特に就業人口の減少と社会福祉関係費の漸増を十分認識しており、その上で更なる消費増税を予想している。社会福祉関係費の漸増を趨勢として認めなくてはならない以上、「その他の経費の現状維持」を行うことは困難なことは行政当局自身も認めていることになる。

 消費税1%分の増収は2.5―2.7兆円と言われている。もし行政当局自身が2020年度の基礎的収支達成には更に5%の消費税増税が必要との試算であれば、10%までの消費増税は実施する一方、追加的に必要とされる5%の消費増税による増収分12.5兆円相当分は行政経費の節減で対応することが、少子長寿化、人口減に備えた対応としても望ましいのではないだろうか。行政当局自身による統計と試算に基づくものであるので、理解が得られると思われる。

 会計検査院は、6月26日、“官庁や政府出資法人に対して過剰な余剰積立など不適切な会計処理を指摘した結果、2012年9月までの1年間に約1.8兆円の改善効果があった“とする試算を公表している。これは、独立行政法人の過剰な余剰金の積み上げや労働保険、年金などの特別会計への一般会計からの余分な繰入などであり、過大な補助金の返還や不要財産の国庫返納などとして処理され、不適正経費等が節減されることになる。もっとも会計検査院が毎年1.8 兆円の不適切な会計処理を指摘することは困難とも見られるが、2012年にも約1.1 兆円の改善指摘を行っているので、毎年1-2兆円規模の改善指摘を行うことは不可能ではないだろう。しかしそれも「現行の組織・制度の維持」を前提としているので、「現行の組織・制度」について節減の可能性を点検する必要がある。都道府県についても交付金や各種補助金を受けているので、過剰、不適正な会計処理については国が、また市区町村については都道府県が検査し、改善指摘を実施することが望ましい。

 追加的に必要とされる消費増税5%分の節減をするとなると、会計検査院による改善指摘1-2兆円規模に加え、「現行の組織・制度」からの節減を毎年10兆円規模で行わなくてはならない計算になるが、今後の経済回復、特に2020年の東京オリンピック開催に向けての経済成長効果による税収増が期待出来るので、必要となる節減は相当程度圧縮されるものと予想されるが、今後の経済成長率にもよるが可なりの理解と努力が求められる。

 少子長寿化、人口減は1990年代初頭から行政当局(厚生省)が指摘して来たことであり、現在誰もが現実のものとして認識しているので、それに対応した持続可能な新たな行政モデルを構築することが将来世代のためにも不可欠になっていると言えよう。そのため、独立行政法人、補助金団体、及び特別会計管理を含め人件費、管理費の改善、節減を行って行くことが望まれる。これを行わない限り、今後の税収不足を解消することは困難で、消費税の追加的な引き上げが行われ、「現行の組織・制度」の下で行政各部に吸収されることになろう。

 人件費や諸管理費の節減については、行政サービスの低下や公務員への影響を十分考慮するなど、丁寧な対応が望まれる。人件費については、独法、補助金団体など政府関係機関を加え公務員、準公務員の総定員を削減するか、給与水準を下げ、総人件費を削減するかの選択になるが、総人件費を一定比率漸減することとして、定員を削減するか給与水準を下げるかなどの選択は行政当局に委ねて良いであろう。例えば、現役公務員への影響を最小限にするためには、新規採用を漸減する一方、等級制の適用を60歳までとし、その後は職種や職務内容により決める職能制(定年は設けない)の下で再契約するなどである。また地方公共団体や、民間への転職斡旋を条件として自発的な転職を募集することも検討できよう。特に岩手、宮城、福島の東北3県については人材不足が復興を遅らせている面もあるので、復興支援の一環として政府支援によりこれら地域への転職を促進することが望まれる。これら3県は、より安全で活力のある街作りやコミュニテイ、インフラ作りにより、少子長寿化を見据えた日本の将来の地方を代表する地域として発展する可能性を秘めている。しかしそれは資金だけの問題ではなく、それを適正に執行する人材が不可欠なのである。

 管理費については、独法などの下部組織を含め、事務所スペースを統廃合し、不要不急の施設や土地、その他国有施設、不動産を民間に供給することであろう。これにより人件費及び管理費が大幅に節減できると共に、売却不動産より不動産市場は活性化し、固定資産税が見込まれることになる。また地方の事務所、施設は原則地方公共団体に移譲するか統廃合することにより、地方での行政サービスは地方への一本化が促進されると共に、重複や無駄が少なくなるものと期待される。

 いずれにしても、行政当局自体が2020年度での基礎的財政収支の黒字化の目標を達成するには、10%への消費増税を実施しても達成困難であると見ているようであるので、10%への消費増税を実施する一方、現行の行政組織、予算のあり方を少子長寿化社会において持続可能な新たな行政制度を構築することが望まれる。

 2、企業や起業家の活力や地方の活力を引き出す施策が必要  

 消費需要や民間投資が未だ本格的な回復を示していない中で、景気回復の下支え、或いは呼び水として政府需要、特に公共事業が期待されて来た。伝統的に公共事業による効果は認められるところである。しかし日本の場合、バブル経済の崩壊が進行し始めた1993年から基礎的財政収支は赤字に転じ、景気対策としての公共事業はそれ以降今日まで国債など国の公的債務で手当され始め、景気停滞の中で借金の幅が大きくなって来ている。

 1991年以降の財政収支の推移                     (単位 兆円)

年代

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

収支

  7.9

  8.2

  2.9

-12.6

-19.3

-23.7

-28.1

-23.1

-30.4

-39.2

 

年代

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

収支

-41.0

-30.5

-38.5

-38.8

-30.0

-24.3

-18.5

-10.7

-20.6

-49.0

 

年代

2010

2011

2012

2013

収支

-44.9

-46.8

-48.2*

-47.1*

                   *は推定   参考:IMF統計

  日本の政府総債務残高の推移(中央政府、地方政府、及び社会保障基金の債務合計) (単位 兆円)

年代

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

総残高

301.3

316,.8

347.5

379.3

413.2

457.7

506.7

552.4

606.3

665.8

 

年代

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

総残高

714.5

776.7

818.6

845.9

910.0

939.5

942.4

938.8

961.4

990.6

 

年代

2010

2011

2012

2013

総残高

1,041.7

1,083.8

1,132.2*

1,178.3*

                   *は推定   参考:IMF統計

  従って景気刺激のための公共事業は、1990年代中頃からの長期の経済停滞の下支えとして一定の効果があったとしても、景気回復の呼び水としての役割は果たしていないと言えよう。公共事業が景気を刺激するには、前年より大幅に増額しなくては効果がないが、長期に亘って借り入れを前提として公共事業を継続して来ているので、増加したとしても相対的に小幅となり景気への効果は小さい。確かに公共事業は嘗て必要な社会・経済インフラを整備するなど、貢献して来ているが、その一次効果は公共事業関係業界であり、それが長期に継続するとこれら業界は公共事業に依存し、自発的な発展を阻害する一方、景気対策の選択肢を狭め、各種産業の自発的な発展には貢献しない状況ともなる。それは公的債務を重ね、公共事業を長期に継続して来たが、建設業界自体も自発的、自立的な回復、発展の道筋を示せていない上、経済停滞から脱却できなかったことからも明らかであろう。また新規の公共事業はその維持管理のための後年度負担を増加させ続け、地方経済を圧迫することにもなる。もっとも2020年に東京オリンピックの開催が決定したことにより、短期的には効果は限定的となるが、2020年が近くなるにつれて関連産業への効果はひろがるものと期待される。

 経済回復を図るには、一定の公共事業やは必要ではあるが、経済全体や地方の自発的回復、発展を引き出す施策に重点を移すことが不可欠と言え、次のような施策が期待される。なお、補助金や助成金も対象を限定して実施する場合一定の効果があるが、経済全体を対象とする補助金等は困難である上、減免税の方が対象が広く、企業、個人の自発的な活力を引き出し易いので、ここでは減免税を中心に例示した。

 (1)  法人所得及び事業税の減税

 日本の企業関係税は主要各国に比べ割高であり、日本の企業の収益を圧迫し、企業経営のみならず、役員報酬を含め給与引き上げにも抑制要因となっている上、外国投資、特に直接投資の抑制要因になっている。従って法人所得税、及び事業税水準を引き下げると共に、事業税については事業収入の額に従って標準税率を設定し、上下5%については都道府県に委ねることとし、地方の特性を発揮しやすくすることが望ましい。

 (2)  新規の起業に際しては、2年間法人所得税の猶予

 経済回復のためには、新規の起業を増やすことが必要であるが、新規起業には初期投資(事業所、人件費、仕入れなど)が必要な上、軌道に乗るまでリスクを伴うので、2年間は法人所得税を猶予し、起業し易い環境を整えることが望ましい。

 (3)  株式・投信譲渡所得の年間500万円以下の非課税、1500万円以下の減税

 1990年代中頃以降のバブル崩壊による資産デフレの状況から脱するためには、適正水準の円安への為替是正を維持、安定化させ、輸出関連産業や観光産業が経済を牽引できるようにし、株価を日経平均1万5千円内外から2万円台で安定化させることが重要であろう。しかし一般投資家、特に小口投資家の証券投資への不信感は根強く、また預金金利が超低水準であり、取引手数料や物価上昇を加味すると実質マイナス金利ともなるので、たんす預金化し、資金が保蔵される傾向が強い。これらの保蔵資金を市場に循環させることが重要であるので、株式・投信譲渡所得の年間500万円以下の非課税、1500万円以下の減税が効果的であろう。この措置は、一見税収減となるように思えるが、そもそも保蔵されている資金を市場に還流させ、投資を促進し、一般投資家の消費等を誘引することになると予想される。

 (4)1500cc以下の自動車諸税の減税と車検の5年間への延長など

  従来、減税は税収を減少させ、また効果は期待できないとされて来たが、経済の自発的な回復を図る上では、減税や非課税かは起業家や個人投資家の自発的な投資、出費を引き出す上で最も効果的であろう。その上、税収を図る上では経済の活性化、回復を図ることが最も効果的であることは誰しもが認めるところであろう。減税により経済、社会活動を誘導、促進する手法は多くの先進工業諸国でも取られている。(2013.09.10.)

(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切 (その2―2) 再掲

2013-10-11 | Weblog

  変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切 (その2―2) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態 (その1-1に掲載)

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠 (その1―2で掲載)

(3) 定年制は各種の弊害を生んでいる (その1―3で掲載)

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 

 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象としており、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。

 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わってみたい一定年齢以上の国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。

 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提とする「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置くことが望ましい。

(1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」 (その2-1で掲載)

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」

 雇用者は、民間であれば私企業であり団体であるが、公務員の雇用者は国民から選ばれて政権に就いた内閣や地方の首長となるが、民主制においては内閣や首長は国民の選択により変わる。従って選挙によって雇用者である内閣や首長が変わり、政策や方針、施策が変わるが、被雇用者である公務員の閉鎖性、硬直性が円滑な政策転換のブレーキや障害となる可能性がある。特に課長(室長等を含む)以上の管理職がそうであり、政権が交代し日本銀行総裁の交代人事が注目されていることなどでも明らかであろう。

 政策レベルの問題以外でも公務員の雇用形態の閉鎖性は、一旦社会人となった国民が行政に携わる道を実態的に閉ざすという弊害となっている。就労人口の35%強を占める「非正規労働者」にしても「正規労働者」にしても、一定年齢以上になると公務員になれる可能性はほとんどない。「職階制」とすれば、政権交代等に際し、新体制の政策や方針に共鳴できない公務員は他の分野や民間等に転職し易くなる。そのためにも、民間でも職階制が普及することが望まれる。

 2009年9月の戦後初とも言える政党交代による政権交代は、政権運営を経験した人材の不足や未熟さから3年3ヶ月で下野することとなった。しかしそこから多くのことを学んだとも言えよう。当たり前のことではあるが、政権政党が代われば政策や方針、施策が変わるということだ。

 現に民主党政権で政策や重点施策の優先度が可なり変わり、それを国民が期待していたのであるが、行政組織は戸惑った。当然であろう。戦後半世紀以上に亘り政権政党の交代はほとんどなく、行政組織は政権政党の交代に全く慣れていなかった。その上雇用体制は新卒から定年までの終身雇用形態であり、安定的な人事体制であるので、特定政党の下で一貫した政策、手法に慣れており、政策、手法等の変化に戸惑うのは極く自然である。人としての信頼関係を築く暇もなかったし、その余裕もなかった。2012年12月の総選挙で自民、公明連立政権に戻ったが、政策や手法等が変わっていることは明らかだ。それが民意を反映した政府を樹立するという民主主義の目的であろう。

 そして基本的に国民が信任した議員任期の4年後にその成果が問われることになる。国会等での議論、質疑を聞いていると、政権政党の交代により、与党側も与党側も、単に政権政党が一方的に提案、発議し、野党側が唯々反対をするという従来の対決政治ではなく、議論や手法等が丁寧になっており、また世論に一層注意を払い各種の協議、議論を通じ一致点を模索するという協議政治に向かい始めていることは大変喜ばしいことである。与党も野党も等しく国民から選ばれ、4年間の政治を信託された代議員であり、共に国家、国民の利益に奉仕することが期待されている。日本は内外の難局に直面しており、政局志向の対決政治から、国家、国民のために解決策を模索する協議政治に進化すべきであろうし、政権交代のある政治プロセスが多様なニーズを抱える国民の利益、関心を少しずつ実現して行くことになるのであろう。

 そのような観点から、公務員の雇用体制も、政権交代をより円滑に行えるよう閉鎖的、硬直的な終身雇用の等級制から国民に開かれた職階制にすべく、政府が率先して実施努力をすべきであろう。また企業、団体も「非正規雇用」形態をなくすためにも職階制を更に採用、普及することが望まれる。

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その2―1) 再掲

2013-10-11 | Weblog

変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その2―1) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態 (その1-1に掲載)

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠 (その1―2で掲載)

(3) 定年制は各種の弊害を生んでいる (その1―3で掲載)

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 

 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象としており、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。

 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わってみたい一定年齢以上の国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。

 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提とする「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置くことが望ましい。

(1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」

 職階制は、職種に必要な資格要件に基づき職級を定め、同一の職位や職にある者に対し同一の幅の俸給を定める制度であり、欧米諸国や国連など国際機関で広く採用されている。

 日本においても戦後検討され、人事院か職階制について立案し、国家公務員法(昭和22年10月公布)の第29条2項、4項においては、「一般職に属する官職に関する職階制」を規定し、感触の分類の原則及び職階制の実施について規定され、施行された。日本においては旧来よりの終身雇用制に合致しないことから、職階制は凍結された(昭和27年4月人事院、規則六)。そして旧来通り等級制が実施されてきたことから、公務員人事の総理府人事局での一括管理などの改革の一環の中で、2009年4月の国家公務員法の一部改正において職階制関連規定(同法第29条から第32条)は削除されている(削除された関連条項 参考)。また地方公務員についても職階制は導入されていない。

 

(参考)国家公務員法から削除されていた職階制関連条項(2009年4月)

(職階制の確立)

29  職階制は、法律でこれを定める。

 人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、

分類整理しなければならない。

 職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職に

ついては、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者

に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなけれ

ばならない。

 前3項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。

 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第95号)第6条の規定

による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であて、かつ、

この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧

告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。

(職階制の実施)

30  職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。

 職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事

院規則でこれを定める。

(官職の格付)

31  職階制を実施するにあたつては、人事院は、人事院規則の定めるところに

より、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。

 人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再

審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。

(職階制によらない官職の分類の禁止)

32  一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすること

はできない。

 

 昭和22年の国家公務員法に規定されていた「職階制」は、“公務の民主的且つ能率的な運営を促進する”ことを目的としていたものである。それが長期に亘り実施されることなく、旧来より実施されて来た新卒採用、定年までの終身雇用を基本とした「等級制」が既成事実化され、法律上容認されたことになる。無論「等級制」には、雇用者、被雇用者双方にとって雇用の安定性確保等のメリットはあるが、雇用形態の閉鎖性、硬直性は国民に開かれた公務を遂行する上でデメリットも多い。

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」 (その2ー2に掲載)

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その1―3) 再掲

2013-10-11 | Weblog

変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その1―3) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態 (その1-1に掲載)

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠 (その1―2で掲載)

(3) 定年制は各種の弊害を生んでいる

正規雇用形態は、多くの場合、入口の新卒者採用と共に出口である定年制とセットになっており、その上で年功序列の体系となっているので、年齢が決定的な要因になっている。しかし長寿化により、退職後余命が顕著に長くなっており、退職後の過ごし方が大きな問題になっていると共に、年金財源を圧迫する主要因になっている。

平均寿命は、日本の戦後復興が本格化し始め、諸制度が整備し始めた1960年で男性65.3歳、女性で70.2 歳であったが、2010年には男性79.6 歳、女性86.4歳と顕著に伸びている。1960年代の定年年齢を55歳とすると、定年後余命は10年程度となる。2010年には定年が60歳として、定年後余命は19.6年と2倍に伸びており、女性についてはもっと長くなっている。従って現在、定年後の過ごし方と年金財源の不足が社会問題となるのは当然と言えよう。最大の問題は、経験や技能・技術を持ち、働く意欲がある者を、寿命が延びているにも拘らず、年齢により一律に労働市場から排除してしまう上、年金への依存を高めることであろう。

このような状況に対応し、現在年金支給年齢を65歳とし、その穴埋めとして60歳定年の延長や再雇用、或いは定年の撤廃が選択肢として検討されており、当面の対策としてはして良いのであるが、寿命はさらに伸びる可能性があり、定年制を維持する限りイタチごっことなり、抜本的な対策とはならない。顕著な寿命の伸長に対し、雇用制度や諸慣行、社会保障制度などへの対応が追いついていないと言えよう。基本的に年齢に過度に執着しない雇用モデルが必要になっていると言えよう。

「正規就労者」もいずれは定年となるが、職階制を導入すれば、定年以降についても、働く意欲があり健康であれば、自らが選択する職種、技能で組織に留まることが出来るようにすることが可能となろう。定年制を維持すれば、寿命が延びたことにより定年年齢となっても働けるが職のない人口が多くなる一方、年金支給年齢を65歳に引き上げても年金給付期間は以前よりも長期間となっているため、年金の財源を圧迫し続けることになる。恣意的に定められている定年が各種の社会的な障害となっており、顕著な寿命の伸長に対し、雇用制度や諸慣行、社会保障制度などの対応が追いついていないことが明らかになって来ている。

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 (その2で掲載)

 (1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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