子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

「選定資料」を作成する大阪府教委へ要望書を提出

2018-04-09 21:34:06 | 道徳教科書 中学校
大阪府教委は、中学校道徳教科書採択に際して、大阪府内の市町村教委に示す「選定資料」を作成します。
大阪府教委の「選定資料」は、市町村教委の調査研究に大きな影響を与えるものです。
そこで、大阪府教委の「選定資料」作成に際して以下の要望書を提出しました。

2019年度使用中学校道徳教科書の採択に関する要望書

                                       2018年4月9日
大阪府教育委員会教育長   様
大阪府教科用図書選定審議会 様
                 子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

 貴教育委員会の教育への日頃のご尽力に敬意を表します。
 さて2019年度から使用される中学校道徳教科書の採択に向けて、貴教育委員会も準備作業を進めておられることと存じます。今年の中学校道徳教科書採択は、道徳の教科化にともない初めて行われるものです。戦前の修身教育によって教育勅語の「徳目」を子どもたちに徹底して教え込み戦争に駆り立てた反省から、道徳の教科化には強い危惧が現在も存在しています。文科省の中学校道徳教科書検定でも、教科書会社は学習指導要領に明記された「徳目」を全て網羅するように求められました。私たちは、道徳の教科化によって子どもたちの心の中を国家が統制し評価することになるのではないかと強い危機感を持っています。そこで、貴教育委員会が、どのような選定資料を作成するのか、市町村教委にどのような指導・助言をしていくのか、注視しているところです。
 私たちは、日本国憲法に体現される基本的人権、平和、民主主義、そして近隣諸国との友好関係を深める観点から、公正かつ民主的に教科書採択が行われるよう貴教育委員会に要望書を提出します。ご検討の上、回答をお願いいたします。ご多忙と思いますが、回答を4月末日までにお願いします。

【要望書】

1.「人権の取扱い」の観点として人権、平和、共生を重視してください。
 貴教育委員会が作成する「教科書を調査研究する観点」には、従来から「人権の取扱い」が項目に含まれています。昨年の小学校道徳採択において「人権の取扱い」の観点は、「人間尊重の精神、生命に対する畏敬の念に基づき、生きることのすばらしさや生命の尊さについて考え深められるよう取り扱われているか」となっていました。しかし、ここにあげられた観点は、文科省の徳目に示された「生命や自然、崇高なものとのかかわりに関する」ものとなっており、具体的な人権問題に関わる内容とはなっていません。
 大阪には、問題や在日外国人問題、障がい者問題、男女差別などさまざまな人権問題があり、教育課題としても積極的に取り上げられてきたところです。さらに今年の中学校道徳教科書では、LGBTなどもあらたに取り上げられています。
 「人権の取扱い」は、昨年の観点を踏襲するのではなく、大阪の教育課題と結びついた人権、平和、共生の観点を明記してください。また、教科書以外の人権教材の使用を認めることを市町村教委に徹底してください。

2.偏狭なナショナリズムに繋がる「愛国心」を採択基準に加えないでください。
 教育基本法には、「愛国心」に繋がる目標がありますが、そこには「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」が同時に明記され、偏狭なナショナリズムに陥ることがないように求めています。しかし、中学校道徳教科書検定結果を見れば、「日本美化」「日本人はすばらしい」と言った内容がことさら強調されている教科書があります。これらは偏狭なナショナリズムにつながっていくものです。採択基準に偏狭なナショナリズムに繋がる「愛国心」を採択基準に入れないでください。

3.「考え,議論する道徳」を重視する調査の観点を設定してください。
 新学習指導要領では、「考え、議論する道徳」が強調されています。しかし、教科書の中には、教材の前後に「学ばせたい徳目」に誘導する設問を設けているものがあります。
 また、中学道徳教科書で検定合格した8社中5社で「愛国心」等を段階別で自己評価欄を設けています。段階評価は、文科省の「徳目」にそって、自分の「内心」を評価させるものです。中には、「徳目」への「理解」だけでなく「態度や行動」まで自己評価させる教科書もあります。出版社によって段階評価の仕方は多少変わりますが、どれも子どもたちの「内心」を縛るものになることは間違いありません。
 子どもたちは、自由に発想し、幅広く考え、意見交換する中で自分の考えを深めていきます。自由な発想は、「考え、議論する道徳」の基になるものです。教材が、特定の価値観に誘導するものでなく、「考え、議論する」ように取り扱われているかどうか、採択基準として重視してください。

4.各市町村教育委員会に対して「多くの教員の意向が反映される」採択方法を執るように指導・助言してください。
 教科書採択にあたっては、現場の教職員の意見を十分聞き、それを教科書採択に反映すべきです。1997年3月28日「規制緩和推進計画の再改訂について(閣議決定)」の中でも、教科書の採択制度について「将来的には学校単位の採択の実現に向けて検討していく必要があるとの観点に立ち、当面の措置として、教科書採択の調査研究により多くの教員の意向が反映されるよう、現行の採択地区の小規模化や採択方法の工夫改善についての都道府県の取り組みを促す。」ことが明記されています。
 また、国際的にも「ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」によって「教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するための格別の資格を認められたものであるから、承認された計画の枠内で、教育当局の援助を受けて教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。」と明記されています。しかし、大阪府内の市町村教委の中には、教員による調査研究を軽視するところがあるのが現状です。貴教育委員会は、市町村教委に対して「多くの教員の以降が反映される」採択方法になるよう指導・助言してください。

5.各市町村教育委員会に対して採択関連資料の公開度を高めるよう指導・助言してください。
 3月30日、文部科学省は、「教科書採択における公正確保の徹底等について」通知を発出しました。その中で「採択基準、採択結果や採択理由等について十分に公表されているとは言い難い」と採択関連資料の公表度が低いことを厳しく指摘しています。貴教育委員会は、大阪府内の市町村教委に対して、「採択基準、採択結果、採択理由」の速やかなHP・地元の情報公開センター(地域によって名称は様々)で公表を行うよう指導・助言してください。
 さらに文科省通知では「採択権者においては、より一層、採択結果及びその理由をはじめとする教科書採択に関する情報の積極的な公表に取り組」むよう求めています。選定委員会の日程や答申、会議録、さらには市民による教科書アンケートなど、できる限り全ての資料を公開するよう指導・助言してください。 
以上