毎月1~2回、奈良新聞「明風清音」欄に寄稿している。早くも、次回で100本目となる。先週(2024.2.15)掲載されたのは〈「消齢化」社会の到来〉、博報堂生活総合研究所の『消齢化社会』(集英社インターナショナル刊)を紹介した。
※トップ写真は、フリー素材サイト「ぱくたそ」から拝借した
年齢による違いがなくなり、いわば「年齢別マーケティング」の通用しない時代になった、という話で、私は大いに興味をそそられた。以下に全文を紹介する。
「消齢化」社会の到来
興味深い本を読んだ。博報堂生活総合研究所著『消齢化(しょうれいか)社会~年齢による違いが消えていく!生き方、社会、ビジネスの未来予測~』(集英社インターナショナル刊)だ。
同研究所は〈博報堂が「生活者発想」を具現化するために、1981年に設立されました。人間を、単なる消費者としてではなく「生活する主体」という意味で捉え、その意識と行動を研究しています〉(同研究所の公式サイト)。
本書によると、生活者の意識や好み、価値観などについて、年齢による違いが小さくなっているのだそうだ。例えば「ハンバーグが好き」「木の床が好き」「超能力を信じる」などの設問の回答に、年代(20~60歳代)による差は小さく、しかも年々、その差が縮まっているという。
本書カバーの帯に「下の5人の年齢、分かりますか?」として5人の男性の服装の写真(顔なし)が紹介されていたが、私には全く区別がつかなかった。
私にも、こんな経験がある。私は満70歳で、長男は40歳。ある時、墓参りで久々に顔を合わせたところ、どちらもユニクロのスウェットパーカーにデニムのジーンズ姿だった。
消齢化は「家庭生活よりも仕事を第一に考える方だ」「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよいと思う」というような人生観・価値観にも及んでいるという。
私の父は大正生まれだった。先の大戦では、訓練中に戦争が終わったので戦場には行っていないが、頭の構造は戦前のものだった。だから価値観も嗜好も、私とは全く違っていた。
私の4~6歳上の人たちは、団塊の世代だ。学生運動にのめり込んだ人も多いし、会社でも、なりふり構わずよく働いていた。だから体を壊した人も多い。これらの人たちとも、価値観の違いを感じていた。
しかし今の20~60歳代は、戦争も学生運動も経験していない。逆に「失われた30年」をともに経験していて、考え方に断絶がない。だからデモグラ(デモグラフィック=人口動態変数)が有効に働かない。言い換えると「年齢別マーケティングは通用しない」。そういえば、今の若者は昭和歌謡を好むと聞く。
では未来に向けて、どのように消齢化に向き合うか。本書の最終章に「発想転換のための8つのヒント」が示されている。私の言葉でその8つを説明すると、次のようになる。
1.少子化・高齢化を悲観的に見るのではなく「近い価値観を持つ大人たちがたくさんいる社会」と前向きにとらえる。
2.生活者の「年齢」という概念をなくし、いわば「年齢ニュートラル」な発想をする。
3.「高齢」の文字を「消齢」に置き換える。高齢化マーケティングではなく消齢化マーケティングと考え、発想に縛りをかけない。
4.「デモグラ」を疑い、年代を広く捉えて「同じ」を探す。
5.年齢の先入観にとらわれない。若者と高齢者を区別するのではなく、どちらも「消齢者」ととらえる。
6. 消齢化は「同質化」ではない。年齢以外の要素で意識や好みが多様化していることもあるので、それを見落とさない。
7.年齢による差がなくなっているが、それ以外にジェンダーレス化(いわば「消性化」)や、地域による違いがなくなる「消域化」しているものがないか、目配りを欠かさない。つまり次の「消〇化」を予測する。
8.年齢に代わる新たなモノサシを探す。所得レベルとか学歴、居住地、有職・無職など。
「高齢化社会」ではなく「消齢化社会」と考えると、何だか希望が湧いてくるから不思議だ。さて、今日もハンバーグを食べようか。
(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
※トップ写真は、フリー素材サイト「ぱくたそ」から拝借した
年齢による違いがなくなり、いわば「年齢別マーケティング」の通用しない時代になった、という話で、私は大いに興味をそそられた。以下に全文を紹介する。
「消齢化」社会の到来
興味深い本を読んだ。博報堂生活総合研究所著『消齢化(しょうれいか)社会~年齢による違いが消えていく!生き方、社会、ビジネスの未来予測~』(集英社インターナショナル刊)だ。
同研究所は〈博報堂が「生活者発想」を具現化するために、1981年に設立されました。人間を、単なる消費者としてではなく「生活する主体」という意味で捉え、その意識と行動を研究しています〉(同研究所の公式サイト)。
本書によると、生活者の意識や好み、価値観などについて、年齢による違いが小さくなっているのだそうだ。例えば「ハンバーグが好き」「木の床が好き」「超能力を信じる」などの設問の回答に、年代(20~60歳代)による差は小さく、しかも年々、その差が縮まっているという。
本書カバーの帯に「下の5人の年齢、分かりますか?」として5人の男性の服装の写真(顔なし)が紹介されていたが、私には全く区別がつかなかった。
私にも、こんな経験がある。私は満70歳で、長男は40歳。ある時、墓参りで久々に顔を合わせたところ、どちらもユニクロのスウェットパーカーにデニムのジーンズ姿だった。
消齢化は「家庭生活よりも仕事を第一に考える方だ」「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよいと思う」というような人生観・価値観にも及んでいるという。
私の父は大正生まれだった。先の大戦では、訓練中に戦争が終わったので戦場には行っていないが、頭の構造は戦前のものだった。だから価値観も嗜好も、私とは全く違っていた。
私の4~6歳上の人たちは、団塊の世代だ。学生運動にのめり込んだ人も多いし、会社でも、なりふり構わずよく働いていた。だから体を壊した人も多い。これらの人たちとも、価値観の違いを感じていた。
しかし今の20~60歳代は、戦争も学生運動も経験していない。逆に「失われた30年」をともに経験していて、考え方に断絶がない。だからデモグラ(デモグラフィック=人口動態変数)が有効に働かない。言い換えると「年齢別マーケティングは通用しない」。そういえば、今の若者は昭和歌謡を好むと聞く。
では未来に向けて、どのように消齢化に向き合うか。本書の最終章に「発想転換のための8つのヒント」が示されている。私の言葉でその8つを説明すると、次のようになる。
1.少子化・高齢化を悲観的に見るのではなく「近い価値観を持つ大人たちがたくさんいる社会」と前向きにとらえる。
2.生活者の「年齢」という概念をなくし、いわば「年齢ニュートラル」な発想をする。
3.「高齢」の文字を「消齢」に置き換える。高齢化マーケティングではなく消齢化マーケティングと考え、発想に縛りをかけない。
4.「デモグラ」を疑い、年代を広く捉えて「同じ」を探す。
5.年齢の先入観にとらわれない。若者と高齢者を区別するのではなく、どちらも「消齢者」ととらえる。
6. 消齢化は「同質化」ではない。年齢以外の要素で意識や好みが多様化していることもあるので、それを見落とさない。
7.年齢による差がなくなっているが、それ以外にジェンダーレス化(いわば「消性化」)や、地域による違いがなくなる「消域化」しているものがないか、目配りを欠かさない。つまり次の「消〇化」を予測する。
8.年齢に代わる新たなモノサシを探す。所得レベルとか学歴、居住地、有職・無職など。
「高齢化社会」ではなく「消齢化社会」と考えると、何だか希望が湧いてくるから不思議だ。さて、今日もハンバーグを食べようか。
(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
ユニクロに行きますと、若い人に混じって高齢者がいたり、男性もののコーナーで女性が服を選んでいたりして、「消〇化」が進んでいるように感じます。
こないだ、腕時計を買い替えましたが、「G-SHOCK」を選んでしまいました。20歳代の頃から時々使っていますので。横では若い男の子が買っていました。興味深い現象ですね。
見た事のない「消齢化」という文字にびっくり(@_@)です。高齢化はすぐピンと来るのですが・・段々格差ってものが亡くなって来ているという社会現象なのかなあ・・私の父は対象12年生まれで戦争は1年しか行ってませんが平和主義の優しい人でした。自由に育ててくれた気がします。
特に五がいいですね。本当に希望が湧いてくるような気がしますね。消齢化・・NOWい言葉に大賛成!