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田中利典師の「父と子/父への思いと子への思い」(朝日新聞「人生あおによし」第16回)

2024年01月09日 | 田中利典師曰く
今朝(1/9)の毎日新聞1面トップの見出しは、〈168人犠牲 安否不明323人 避難所で死亡 初確認 能登地震1週間〉。死者の数は、前日より40人も増えていて、やりきれない気持ちである。自治体へは、災害関連死対策に注力していただくことを願う。
※トップ写真は、吉野山の桜(2022.4.7 撮影)

さて、今日の「田中利典師曰く」は「父と子/父への思いと子への思い」、2014年の朝日新聞「人生あおによし」の第16回である。利典師のご父君はもと国鉄職員。務めを続けながら山修行をされていたが、のち退職されて専業の僧侶となった。利典師のご長男も、修験僧の道を歩んでおられる。では、以下に全文を紹介する。

父と子/父への思いと子への思い
父は若くして在家から宗門に入り、宗議会議長の重職を5期15年務めました。私が修験僧となり、宗門の実務に携わっているのも全て父によって導かれた道です。

先に書きましたように、山上参りは5歳から、奥駈も大学卒業後に父の後を追って体験しました。その導きで、なんとか山伏となれたのでした。その父も13年前の夏、暑い夜に86歳で生涯を閉じました。

私も長男が小学校に入った時、山上ヶ岳へ連れて行きました。手を引いて登る道すがら、言い表し得ぬ感慨がありました。父から受け継いだものを息子に伝え受け継ぐ意味の尊さを感じたのです。その息子も私と同じ龍谷大学を卒業して修験僧の道に導かれています。

大峯山も時代に即して形を変えねばならない時代を迎えていますが、親が子に、子がまたその子に伝え続ける伝統と信仰の本質は貫いてほしいものです。

父が心血を注いだ宗門の発展に尽くすことが恩に報いることだと思い、私もこの道に邁進してきました。ただ内側の論理だけを優先する体質はなかなか急変は出来ない感もあります。

来年は私も総長職15年目、父の年数と符合するものもあり、来年迎える還暦を汐(しお)に、宗門の仕事にひと区切りをつけ、父のように人々の悩みに直接寄り添うような宗教者本来の生活に身を置く中で、父から受け継いだこの道の完成を目指していきたいと考えています。

まさに修験の教えにある「山の行より、里の行」を心に置いて、これからの人生を歩み直したいと願うのみです。
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